風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演 Aプロ @東京文化会館(3月5日)

2013-03-05 23:38:06 | バレエ

先日に引き続き、二度目のAプロです。
違う点は、「ボレロ」のメロディがエリザベット・ロスであること。


『ディオニソス組曲』
やっぱり好き、この作品。
今日は二度目なので、オスカーばかりに目がいっていた昨日とちがい、舞台全体を余裕を持って観ることができました。
波の音とともに始まる最初の酒場の場面は、どのダンサーもとても艶やかな踊りなんですね。いいわー。うっとり。。
若者役の大貫さん、男性群舞のときはもちろんだけど、酒場のときの踊りもすっきりしていて、改めていいなと思いました。
そしてオスカーは、今日もやっぱり素晴らしかった。女性群舞(赤と黒の衣装の)や男性群舞が踊っているときに、一人だけ輪から外れてその様子を余裕いっぱいに楽しそうに眺めてるあの表情。なのに男性群舞の中に助走をつけて飛び込んでいく直前に鋭く群舞を見据える目が・・・もう・・・!あそこの踊り、大大大好きです。『シンコペ』では普通の明るい若者なのに、こっちではちゃんと神に見えるから不思議。実に美しく、セクシーで、眼福なディオニソスでした。
もっとも今日の席はL側だったので、マヌーラ・ムウの場面のあの子供のように眠るオスカーが全く見えなかったのは非常に非常に残念でありました・・・。一方R席からは見えずL席からは見えたのは、器械体操服な那須野さん笑。
本日のゼウスは、ジュリアン。ギリシャ彫刻のような顔立ちなのだけれど、いわゆる“ゼウスっぽい”雰囲気は感じられず、好色が特徴なゼウスにしては清潔でソフトすぎる雰囲気。
と最初は思っていたのですが、セメレーの子宮から胎児(ディオニソス)を取り出し、自分の腿に埋めるあたりのジュリアンが・・・・大変ツボでした!自分のせいでセメレーが死んだのだから本来なら非常に嘆き悲しむべき場面であるところ、そういう人間らしい感情を殆ど表さないこのゼウスは神らしくてよかった。一般的な猛々しいゼウスのイメージとは違うけれど、こういうゼウスもありかも。ギラギラ感がなく淡泊で、思うままに男も女も愛して、それに対する罪悪感は希薄。だって神だから。そんなゼウス、萌える。
カテリーナ・シャルキナのセメレーもとても綺麗でしたが、ジュリアンもカテリーナも、お互いを愛している感じがせず、友人同士のように見えてしまったのは残念でした。これはゼウスが神っぽくてよかったということとは、別の問題かと。

『シンコペ』
昨日より、二度目の今日の方が楽しめました♪
無機質は無機質だけど、ダンサー達はとても楽しそうに踊っていて、観ているこっちも楽しくなる。
カテリーナ・シャルキナオスカー・シャコンの二人が、明るくキレがあってよかったです。
またこの作品の味も、少しわかったような気がしました。
いつか死ぬときに、その瞬間には頭の中でこんなことが起きてるかもしれないって想像すると、なんだか死ぬのが怖くなくなる。そんな風に思わせてくれる作品。
こういう発想が出てくるジルの頭の中って、一体どうなってるんだろうか。。
でも、単体でチケットを買いたいような作品か?と言われれば、やっぱり答えはNoかな・・・(ごめんね、ジル!)

『ボレロ』
すごかったです、エリザベット・ロス・・・。
昨夜のジュリアンが心に残ったままだったので今日はノれるだろうか?と少し心配だったのですが、そんな心配は完全に無用でした。
ジュリアンとは全く別物のボレロ。
しなやかに、しかしエロスによるわけではなく、あくまで毅然とリズムを支配し、最後にはリズムを、そして観客全てをも丸ごと包み込む母性のようなものさえ感じさせる強く、気高く、暖かなメロディ。
そこにあるのは、強い「生」。
最後の「死」でさえも、自ら納得して飲み込まれていく潔さがある。
彼女のメロディは、パンフにあるこの言葉がぴったりだと思いました。
「少しずつ他のダンサーたちに囲まれていくテーブルの上のソリストの踊りは一種の永久運動を思わせる。厳密さと性的欲望の狭間で、ベジャールは“挑発的”側面を拒むことによって、ソリストとダンサーたちのあいだに明白な官能的対立が存在しながらも、ダンスは純粋であり続けるという、驚くべき平衡を保つことに成功した」

でも昨日のジュリアンのボレロも、ほんと良かったのです。
あの不思議な絆のあるメロディ&リズムはクセになる。
今日のカーテンコールはリズムの「おー!」の叫びも無かったなぁ。あれ、好きだったのに。。

二つのボレロの印象を一言でいうなら、ジュリアンのそれはとても男性的なボレロで(ディオニソス組曲の「男性的」とは違う意味で)、エリザベットのそれはとても女性的なボレロ。
ボレロって、メロディを踊るダンサーによってこんなにも全体の印象が変わるんですね。
全く違うタイプのボレロを二日連続で観られたことは、実に贅沢な体験でした。
一方で二人のボレロに共通しているところは、“人間の体温”を感じさせるところだと思います。ジュリアンやエリザベットのメロディにはリズムに対する不思議な優しさがあり、たとえ最後にあるのが「死」だとしても、観終わった後に心に暖かいものが残るボレロでした。
私はとても好きだなぁ、こういうボレロ。
そして、踊り始めるときは汗一つかいていないメロディの体が、だんだん汗で光り始める過程は、何度見てもうっとりしちゃいました。その身体、その内に秘められた感情に、人間って本当に綺麗だなぁって感じた。

あと、やっぱりリズムの那須野さん。
今日は昨日と反対側の席だったので、那須野さんと同時に立ち上がるR側のダンサーが見えたのですが、メロディに反応している様子が、昨日観た那須野さんの方が繊細に表現されていたように感じました。
こういうある意味セクシーな踊りってアジア人には本来不向きな気がするのに、そんなことないどころか、すごくいい。
とはいってもリズム全部がアジア人になってしまうと、あの美しくも濃い独特の空気はおそらく出ないように思うので、アジア人が少し混ざっている程度が割合としては丁度いいのではないかなと思います。だからこそ那須野さんのようなダンサーの魅力も引き立つのではないかと。

他に今回気付いたことは、ボレロって少し上の位置から観た方が絶対にいいですね。
上から観ると、リズムがメロディを囲んでいく様子がよくわかる。
もっとも臨場感も大事だと思うので、2階席くらいが理想的ではないかなと思いました。

ところで。
メロディを踊るにはベジャール(今はジル?)の許可が必要って、ナニサマと思ってしまうのは私だけだろうか。
むかし友人からその話を聞いたとき、友人は「だから貴重なんだよ」と言っていたけれど、私は「はぁ?」と思いましたよ。
「ベジャールのボレロ」を引き継いでいきたいのなら、BBLが引き継げばよいのです。観客はそのボレロを一つの基準にするでしょう。それでいいではないですか。
悪いメロディに踊られて「こんなのがボレロと思われては困る」という考えが根本にあるのだとしたら、観客の観る目を信用していないとしか思えないです。良いメロディも悪いメロディも、みんなにどんどん踊らせればいい。あとは観客がちゃんと判断しますよ。それこそ「白鳥の湖」のように。
そもそもボレロはメロディだけでなくリズムによっても全く雰囲気が変わるのですから、やるならリズムまで指名しないと意味ないと思うのです。youtubeに東京バレエ団のボレロが上がっていますが、BBLのリズムとは全く別物ですし(どちらが良い悪いではなく、別物だと思います。私の好みはBBLの方ですが)。
またメロディの印象も、リズムによって全く変わります。
だったら、メロディ指名制なんかいらなくね?と。
そのあたり、どうもベジャールさんの考えに共感できない私でした。。

☆アフタートーク(ジル・ロマン&エリザベット・ロス)☆
本日のジルは、めっちゃご機嫌。
エリザベットはとても落ち着いていて、昨日のジュリアンに比べると、ずっとお姉さんって感じ笑。
でもキュートな雰囲気もあり、彼女もとても性格がよさそう。
ジルは今日も最後はレディファースト。さらに観客に向かって投げキッス!
最後まで上機嫌なジルでした。

そしてすっかりBBLに嵌ってしまった私は、『ライト』のチケットを追加購入してしまいました、と。
さすがにお財布がもたないので、3000円のエコノミー券にいたしました。。。

★Aプロ(3月4日)の感想はこちら
★Bプロ(3月10日)の感想はこちら


♪『ディオニソス』より、ショナ・ミルクのソロ
このマヌーラ・ムウの場面のハジダキスの音楽が切なくて、泣きそう。。。
でも、演出が『~組曲』とはだいぶ違うのですね。
後ろでずっと仁王立ちしてるレイザーラモンみたいなの、もしかしなくてもゼウス?やだこの衣装、猛々しすぎるでしょ・・・。いくらなんでも二丁目すぎるでしょ・・・。と思ったら、別動画でこれはニーチェであることが判明。じゃあこの杖みたいのは何なのだ・・・?ペン・・・?
そしてディオニソスが眠らないで歩いてる・・・。マヌーラ・ムウ(組曲ではセメレー役とは違うダンサーが踊っていました。もちろんセメレーを象徴しているわけですが)が、子供のように眠るディオニソスを優しく撫でるあの仕草が大っ好きなのに(><)!
とはいえ、この映像のショナ・ミルクは、文句なしに美しいですね。

 


♪エリザベット・ロスの『ボレロ』
実際の舞台の迫力は全く伝わりませんが、この演目で“引き”のカメラ映像は貴重なので。
リズムあってのメロディ、リズムあっての「ボレロ」ですもの!

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