ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

「バースセンター」構想 上田の母親ら「集い」発足 (信濃毎日新聞)

2007年07月04日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

上小医療圏(上田市周辺)の産科医療の実態が今どうなっているのか?については、報道記事で公表されている以上のことは全く分かりませんが、今のところ、この地域で正常分娩の受け入れ施設が不足して困っているという情報はあまり伝わってきません。

現在、この地域で一番問題となっているのは、分娩が異常化した場合の救急搬送の受け入れ施設が医療圏内でなかなか見つかりにくいことだと聞いています。

正常分娩か?異常分娩か?は、分娩が終了して初めて言えることです。例えば、常位胎盤早期剥離、弛緩出血、子癇、脳出血などは、正常分娩だと思っていても、一定の確率で誰にでも起こり得るわけで、これらの異常がいつ誰に起こるのか?を発症前に予測することは非常に困難です。母児の救命のためには、発症してからの迅速かつ適切な医学的対応が不可欠です。

どの医療圏の産科医療の状況も非常に厳しくなってきています。産科2次医療体制を充実させることは、どの医療圏においても、地域で一丸となって取り組んでいくべき最重要課題の一つだと思われます。

参考:長野県・東信地域の産科医療の状況

****** 信濃毎日新聞、2007年7月4日

安心してお産できる仕組みを 上田の有志「集い」発足

 お産を担う医師の不足を受けて、上田市の母親ら市民有志が3日までに、「安心してお産と子育てができる地域をつくる住民の集い」(志摩修吾会長)を発足させた。医療機関と連携しながら、助産師がお産を担う「バースセンター」を地域ごとに設けるよう市などに提言する考えだ。地域でお産を支える新たな仕組みを整える狙いで、県内では珍しい取り組みとなる。6日には諏訪中央病院(茅野市)の鎌田実・名誉院長を招いてお産について考える講演会を開く。

 医師不足の対策として、国は医師を拠点病院に集約する方針を示している。これに対して、「住民の集い」事務局の片桐直希さん(62)は「集約化では病院が遠くなる上、お産が集中して十分なケアができなくなる」とし、「身近な地域で安心してお産ができるよう考えていかなくてはならない」としている。

 現在の構想では、バースセンターには助産師が常駐し、逆子などの心配がない「正常出産」を担当する。日ごろから地域の医療機関(産科・産婦人科)と連携しながら、「異常出産」となりそうな場合は妊婦を医療機関に移す。また、医療機関を訪れた妊婦には自宅近くのセンターを紹介し、どちらで出産するか選んでもらうなど補い合う仕組みだ。講演会や勉強会を通じて、設置場所や助産師の人数などを探っていく。

 県内では、分娩(ぶんべん)を行っている医療機関が2001年の68から05年には53に減少。上田市では信大が派遣医師を引きあげる方針を示したことで、市産院の廃止問題が浮上。住民の署名運動で存続が決まった経過がある。

 講演会では、鎌田名誉院長が「いのちの誕生もいのちの終わる時も選べる地域になりたい」をテーマに講演。市産院の広瀬健副院長と猪俣理恵助産師が意見を述べる。質疑応答の時間も設ける。

 午後6時から上田市の上田中央公民館。会費500円、定員150人。参加申し込みは片桐さん(電話090・3200・1164)へ。

(信濃毎日新聞、2007年7月4日)