ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

医師不足対策

2007年07月05日 | 地域医療

経済協力開発機構(OECD)がまとめた加盟国の人口10万人当たりの医師数のデータを見ると、全体平均は290名ですが日本は200名で、日本の医師数は加盟国の中では最低クラスです。従って、日本の医師数そのものが足りてないのは明らかで、長期的な医師不足対策としては、日本の医師数そのものを増やす(医師養成数を増やす)必要があります。

しかし、医学部の入学定員を増員しても、その効果が現れるまでには10年近くを要しますから、医師不足の即効薬とはなり得ません。

医師不足に対する当面の対策としては、現状の少ない医師を何とかうまくやりくりし、地域医療を維持していくようにいろいろ工夫していく必要があります。例えば、医師の拠点病院への集約化、地域における病診連携システムの構築、勤務医の労働環境や待遇の改善、ワークシェアリング、院内保育所の整備など、さまざまな対策を同時並行的に推進していく必要があります。

個々の病院でも、あの手この手で新人医師を増やすよう努力する必要があります。即戦力となる経験豊富な中堅医師に来てもらえたら大いに助かるのは間違いありませんが、そういう医師はどこでも引っ張りだこでしょうから、リクルートはなかなか難しいと思われます。即戦力にはならなくても、初期研修医、後期研修医に多数応募してもらって自前でも専門医を養成していけるように、病院の研修態勢を整備する努力も大切です。

ただ、この新人獲得競争では、自分の所属する診療科だけが独り勝ちすればいいというものではありません。例えば、ある病院の産婦人科医が倍増したとしても、新生児科医、麻酔科医などがいなくなれば、その病院では周産期医療を維持することは絶対に不可能です。また、外科医、泌尿器科医、病理医、放射線科医(読影、治療)などがいなくなれば、婦人科腫瘍をちゃんと扱うこともできなくなってしまいます。要するに、各診療科にバランスよく新人が参入してくれないと困ります。従って、研修態勢整備や新人勧誘には、病院の総力を挙げて真剣に取り組んでいく必要があります。

また、今、地域の医療を支えている基幹病院の勤務医達が職場を辞めないでも済む勤務環境を作ることが非常に大切です。例えば基幹病院の産婦人科の場合だと、少なくとも7~8人は産婦人科医が常勤している必要があります。それでも、週に1回は当直業務をこなす必要があり、他の診療科に比べると激務です。

その上で、医学生、初期研修医、後期研修医たちをしっかりと教育し、彼らを地域の中でベテラン医師にまで育て上げていく後進育成システムを各地域の中でしっかりと確立していく必要があります。

誰も地域医療の崩壊を望んでいるわけではありませんが、基幹病院が診療を年々縮小し、勤務医の平均年齢が年々上がって、頭数もだんだん減っているような地域では、数年以内にその地域の医療が完全に崩壊する可能性もあります。

国も県も大学も、今後我々が進むべき道の指針はいろいろと示してくれますが、決して直接救済してくれるわけではありません。それぞれの地域で、何とかして自力で道を切り開いていく必要があります。