ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産科医不足 横浜でも深刻

2007年07月17日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

神奈川県の産科の状況が厳しいことは、以前より、繰り返し報道されてきました。横浜市でも、他市からの『お産流入』が顕著になり、かなり深刻な状況のようです。

参考:

神奈川県の産科医療の状況

厚木市立病院 出産受け入れ停止へ

神奈川県の産科医不足の状況

分娩予約は抽選 閉院も続々 “お産難民”深刻に

神奈川:どこで産むの?
神奈川:自治体 危機感薄く
神奈川:近所の医院も分娩受けず

衆議院厚生労働委員会 奥田美加先生発言

****** タウンニュース、2007年7月12日

産科医不足 横浜でも深刻

4年間で20人減、他市からの「お産流入」も顕著に

Yokohama  「自宅の近くで出産できない」「産科が見つからない」-。横浜市内で産科不足の窮状が顕著になっている。市内の医師数はここ数年横ばいの状況の中、なぜ「産科医」が足りないのか。横浜市産婦人科医会の明石敏男会長に、現状を聞いた。

 神奈川県産婦人科医会のまとめによると、横浜市内の分娩件数は平成16年に33238件だったが、17年に31722件に減少、一転、昨年は33023件と増加している。しかし、平成14年から18年の4年間で、産科医師数は211人から191人に20人減、医師一人あたりの分娩件数は172・9人と増え、分娩件数の増加と「産科医不足」が数字として明らかになっている。

 「産科医不足の現状はとても深刻」と明石会長は語る。産科は24時間体制の勤務状況と、出産時に予見できない事態もあり、訴訟のリスクが高い。「体力・精神的な負担も多く、開業医が産科を辞めてしまうケースが多い」という。病院の産科においても、厳しい勤務状況に対して待遇が伴わないため辞めてしまう。昨年度、市内の医大を卒業後、産科の医局に入ったのは4大学で7人。開業医の高齢化や後継不足も伴い、産科医が増える見込みは少ない。

 そして市内で顕著なのは他市からの流入だ。横浜南部では横須賀市など以南から、横浜北東部では川崎周辺から病院・診療所(開業医)の「お産ができる病院」探して流入するケースが増加。今まで一人年間100~200件の分娩を扱っていた開業医も、今までの倍以上の分娩件数に立ち合わなければならないという。「分娩予約は半年先まで満杯」という診療所も多い。打開策として、助産師の増員などでしのいでいるが、実際にお産の診療を行うのは産科医。件数が増えても、人件費までカバーしきれないのが現状だ。県産婦人科医会の調査では、横浜市内の分娩取扱施設が5年後には7施設の減、産科医数も4人減と予測。明石会長は「産科を辞めた地域のお産をカバーすることで精一杯」とその悪循環を懸念する。

 市では今年度予算で、緊急産科医療対策費として約800万円を計上。医療機関へ助成し、「健診は診療所、出産は病院」という役割分担で産科医不足を補う。病院勤務の産科医も減る中で、現状に対する早急な対策になるのか。産科医・母親ともに安心して出産に臨める体制となることが望まれる。

(タウンニュース、2007年7月12日)

****** 神奈川県産科婦人科医会HPより

神奈川県内産婦人科志望医師激減についての緊急アピール

                2006年11月29日

 神奈川県産科婦人科医会会長   八十島唯一
 神奈川県産科婦人科医会副会長 東條龍太郎
 神奈川県産科婦人科医会副会長   平原史樹
                         (横浜市立大学医学部教授)  
 聖マリアンナ医科大学教授 石塚文平
 北里大学医学部教授    海野信也
 東海大学医学部教授    三上幹男

 本県内において一昨年来、急速に進行している産婦人科医師不足、更には、病院、診療所での分娩取扱い中止が相次ぐ中、昨年にも増して、産婦人科専攻希望医師が激減しております。本年4月本県で初期研修を修了した約600余名の医師のなかから産婦人科を専攻した医師は全県でわずか12名でしたが、明年4月からの次年度は激減してわずか7名の見込みとなっております。

 私たちはこの理由として、現在の最善の医療を尽くしても避け得ない妊娠・分娩に伴う不幸な結果に対しての診療不信、さらにつづく訴訟、また、産婦人科医師不足のため、不眠不休で終夜勤務をしても、そのまま朝から通常勤務、手術へと入らざるを得ないという過酷極まりない勤務環境があると考えています。現在、神奈川県内の産婦人科医の勤務環境は、全国レベルで指摘されている過酷さの平均からもさらに劣悪な状態となっており、皆で必死に支えているのが現実です。現在県内の分娩扱産科医療機関はマンパワーとしても、施設としても許容能力を超えており、母児の生死にかかわる緊急救急対応に際して東京、関東近県の医療機関を何時間も探し回って依頼することが頻繁に発生しており、他県で発生している送院の遅延による不幸な事例がいつ本県で発生してもおかしくない逼迫した状況であります。私たちは誠実に最善は尽くしておりますが、許容能力を超えたことは診療上不可能であります。すでに、その深刻な問題点と改善へ向けての諸提言は各方面に重ね重ね切実に訴えているところです。

 県民の皆様におかれましては、今現在、県内すべての地域で産婦人科医療が許容限界をこえていることに十分ご理解賜り、ご協力をお願いするとともに、関係各機関、行政へも重ね重ねではありますが、ご理解と早急なご対応をお願いたします。
 以上関係行政機関、報道関係に公表をいたしました。                        

神奈川県産科婦人科医会HPより)