ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

出産扱う産科は65% 3000施設、常勤医は8000人 学会調査、推計を下回る

2006年06月17日 | 地域周産期医療

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参考:http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/JYOSEI/center.htm

日本全国では、総合周産期母子医療センターが54施設、地域周産期母子医療センターが187施設認定されている。

北海道では、総合周産期母子医療センターが2施設、地域周産期母子医療センターが25施設認定されている。しかし、地域周産期母子医療センターと認定された施設が、次々に産科部門を閉鎖せざるを得ない事態に追い込まれているようなので、現在の2次医療圏を統合してより広域の二次医療圏に設定しなおし、2次医療圏の数を思い切って減らして医師の再配置を進めてゆくしかないと思われる。

****** 共同通信、2006年6月15日

出産扱う産科は65% 3000施設、常勤医は8000人 学会調査、推計を下回る

日本産科婦人科学会(武谷雄二(たけたに・ゆうじ)理事長)は14日、産科や産婦人科を掲げる医療機関のうち、実際に出産を扱っているのは約65%に当たる3063施設で 、常勤医師は7985人とする初の全国調査の結果を発表した。

厚生労働省の調査を基にした推計(5000施設以上、1万1000人以上)を大幅に下回った。

少子化に加え、医師の高齢化や厳しい労働環境の産婦人科を目指す医師が減っているなどで、出産の扱いをやめる施設が増えているためとみている。

調査は同学会の委員会(委員長・吉川裕之(よしかわ・ひろゆき)筑波大教授)が、産婦人科の集約化に向けた具体策を検討するために実施。全国の地方部会を通じ、昨年12月 1日時点で調査し、東京都の一部を除き回答があった。

産科、産婦人科のある病院(20床以上)と有床診療所は計4740施設あった。このうち出産を扱っているのは1280病院、1783診療所の計3063施設(約65%)。 残る1677施設(約35%)は、妊婦健診は行っていたが、出産は扱っていなかった。

また、出産を扱う常勤医師は7985人で、1施設平均2.45人。大学病院を除くと平均1.74人だった。大学病院を含めても平均医師数が2人以下しかいない県も、青森、 福島、岐阜など8県あった。

病院の約78%は医師が4人以下。医師1人の病院が最も多かったのは石川県で40%、2人以下の病院が多かったのは帝王切開を受けた女性が死亡し医師が逮捕、起訴された病 院のある福島県で71%だった。

厚労省などは昨年、医師不足の地域での産科医療の安全確保のため、医師の集約化を進める方針を打ち出している。しかし調査では、集約化の第一段階の目標である医師5人以上 を確保している病院は334施設にとどまり、その半数以上は大都市のある都府県だった。

=産婦人科医の不足=

産婦人科医の不足 労働時間が長く、当直や深夜の緊急呼び出しが多いなど勤務環境が過酷で、医療訴訟を抱える割合も高いことなどから、産婦人科を目指す若手医師が大幅に減っている。さらに2 004年、新人医師に指定病院での2年間の臨床研修を義務付ける制度が始まり、これまで派遣を受けていた関連病院での医師不足に拍車をかけているとみられる。

(共同通信、2006年6月15日)


読売新聞:“マイ助産師”見つけよう

2006年06月17日 | 地域周産期医療

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今、多くの産科医が、その激務に耐えられず、産科業務に従事することを辞めていて、全国各地の多くの産科施設が閉鎖に追い込まれ、連日、新聞各紙で大きく報道されている。

厚生労働省や日本産科婦人科学会などが公表している資料によれば、病院における産科医の激務を緩和し、地域の産科医療を存続させるための今後の方策として、国を挙げて、産科医の集約化策を柱にすえて大きく動き出そうとしているようだ。

報道されている多くの事例では、産科医が撤退して産科が閉鎖された病院にも助産師がそのまま残っていることが多い。彼女達の多くは、病院の産科以外の部署で看護師として働いている。要するに、助産師資格を持っていて助産業務に従事する意欲が十分にありながらも、助産業務には従事していない者が日本中に非常に多く存在していることになる。

ところがその一方で、現在、分娩を取り扱っている産科施設の多くが、助産師不足で悩んでいるという矛盾した現実もある。

今後、国の政策として、日本の多くの地域で、産科医療の生き残りのために、瀕死の状態にあるいくつかの産科施設が統合されて、産科医の集約化策が実行に移されてゆく筈である。その際には、産科医と一緒に助産師も連動して同じ施設に集約化することが非常に重要だと思う。

産科医が撤退して分娩取り扱いを中止している病院にとり残された助産師達が、院内助産院を立ち上げるような動きが一部に報道されている。産科医の体制が不十分となり安全な分娩管理ができなくなったという理由で、産科医が撤退し分娩の取り扱いが中止となった病院で、とり残された助産師だけで分娩の取り扱いを再開するような動きが全国的に広がってゆくようであれば、分娩時の安全性確保という観点からは非常に問題だと思われる。

参考:

産婦人科医療を安定的に供給する体制の提案、日本産科婦人科学会

緊急提言(日産婦委員会):ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う病院は3名以上の常勤医を!

拡大産婦人科医療提供体制検討委員会配付資料

朝日新聞 神奈川: 助産師の活躍期待

****** 読売新聞、2006年6月16日

どうする?私たちのお産 “マイ助産師”見つけよう

 静岡県浜松市の主婦佐藤友子さん(30、仮名)は2人目のお産に、同市の「石井第一産科・婦人科クリニック」を選んだ。6人の助産師が、母乳育児に熱心に取り組み、入院中は毎日母乳の勉強会があり、丁寧に教えてくれた。

 3年前に初めてのお産で入院した病院では、母乳で育てたかったのに相談に乗ってもらえず、ノイローゼのようになってしまった。

 「1人目の時、あんなに悩んだのがウソみたいです」

 同クリニックでは、お産も助産師が中心となり、できるだけ医療処置を行わない自然なお産を目指している。院長の石井広重さん(56)は「いよいよ生まれるという時に呼ばれていくけれど、僕が分娩(ぶんべん)室にいるのは10分程度。そうでなければ、常勤医師1人で年間600件のお産はこなせない」

 産科医が不足している今、リスクの低いお産は助産師に任せてはどうか、という議論が盛り上がっている。しかし、石井さんのクリニックのように、助産師が活躍している診療所は少ない。

 厚生労働省によると、日本の赤ちゃんの47%は、ベッド数19以下の診療所で生まれている。ところが、2万6000人いる助産師のうち、診療所勤務は2割足らず。雇用は義務付けられているわけではないため、1人もいない診療所もある。

 診療所に助産師が少ない背景には、待遇の問題などもあるが、横浜市などで出産準備クラスを開いている日本出産教育協会代表の戸田律子さんは「妊婦がもっと助産師の役割を知り、活躍している所を選ぶようになれば、そうした施設が増える手助けにもなるのでは」と話す。

 戸田さんのクラスに来る妊婦の中にはお産の知識はあっても、看護師と助産師の区別が付かない人が3~4割はいるという。

 実際どこで産むか選ぶ際、助産師の有無を考慮する妊婦はあまりいない。首都圏のある総合病院は、助産師が妊婦健診を担当する「助産師外来」を導入し、きめ細かいサービスに取り組んでいるが、きれいな病室や豪華な食事が売り物の診療所に妊婦が流れ、ベッドが余っているという。

 このような状況で、自ら「助・助産師」を名乗り、母親と助産師をつなぐ活動に力を入れる女性もいる。横浜市の熊手麻紀子さんは3人の子の出産や子育てを助けてもらった経験から、2001年に母親の体験談を集めた「だから日本に助産婦さんが必要です」を自費出版した。

 「助産師は、妊娠・出産や子育てのプロ。お産の場でもっと活躍すれば、女性も支援が受けやすいし、医師の負担も減らせるはず。ホームページで情報発信している人も多いので、相談ができる“マイ助産師”を見つけて」と、熊手さんは話している。

(2006年6月16日  読売新聞)

****** 読売新聞、2006年5月1日

助産師6700人不足

産科施設 75%“定員割れ”

 全国的に産婦人科医不足が問題になる中、出産を扱う産科施設の75%で助産師が不足し、その不足数は約6700人に上っていることが日本産婦人科医会(会長・坂元正一東大名誉教授)の「助産師充足状況緊急実態調査」で明らかになった。

 厚生労働省の助産師の需給見通し(1700人不足)を大幅に上回るもので、産科医に加え、助産師も不足と我が国の産科医療が極めて深刻な状況にあることが改めて浮き彫りになった。

 調査は昨年12月から今年2月にかけて、産婦人科を標榜(ひょうぼう)するほぼすべての医療機関6363施設を対象に実施。5861施設から回答(回答率92・1%)を得た。

 分娩(ぶんべん)を取り扱っている医療機関(有床診療所と病院)は2905施設。現在、計1万6748人の助産師(うち病院は1万3872人)が勤務していた。

 これら産科施設が、24時間態勢の整備に加え、週40時間勤務や助産師自身の産休、育児休暇の確保など、労働基準法を順守する、労働環境を維持するには計2万3466人の助産師が必要で、計6718人(病院は2515人)が不足していることが分かった。

 また、分娩を扱う医療機関で、必要な助産師の数を満たしていなかったのは75・3%に当たる2188施設に上った。

 厚労省の今年の助産師の需給見通しによると、助産師の不足は1700人程度と今回の調査より少なかった。

 同医会常務理事の佐藤仁(まさし)・舘出張(たてでばり)佐藤病院院長(群馬県高崎市)は「この深刻な状況が続けば、多くの産婦人科の医療機関が機能マヒに陥る。スタッフ不足の過重な負担を避けるため、現在は許容されていない、看護師が分娩前に妊婦の容体を監視・管理することを、認めてもらいたい」と話している。

 助産師 看護師資格を持つかそれと同等の教育を受けた女性が、国家試験に合格すると免許が与えられる。正常分娩の場合、医師の監督なしで病院、家庭などでの出産に立ち会い、介助、支援ができる。助産婦と呼ばれていたが、法改正に伴い、2002年3月に助産師に改められた。

(2006年5月1日  読売新聞)