★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇ベーム&ウィーン・フィルのモーツァルト:レクイエム

2011-08-30 10:32:33 | 宗教曲

モーツァルト:レクイエム(死者のためのミサ曲)

指揮:カール・ベーム

管弦楽・ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

独唱:エディット・マティス(ソプラノ)/ジュリア・ハマリ(アルト)/ウィスロウ・オフマン(テノール)/カール・リッダーブッシュ(バス)

合唱:ウィーン国立歌劇場合唱連盟

CD:ユニバーサルクラシックス(独グラモフォン) UCCG‐4639

 私にとってモーツァルトのレクイエムほど不思議な曲はない。最初に聴いた時から、今に至るまでこれは本当にモーツァルトの作品であろうかという疑念が常に頭をよぎる。今でこそ、モーツァルトはクラシック音楽の代表的作曲家であることに間違いないのであるが、モーツァルトが生きていた時代、それに亡くなって暫くは、必ずしも今ほど著名な作曲家ではなかった。それがケッヘルなどの努力により、作曲した作品の全容が人々の前に明らかになるにつれ、その偉大な作曲家像が築かれていったのである。このことは、モーツァルトの前の作曲家であってもそうである。よく、バッハの作品はメンデルスゾーンが再発見したかのように書かれているが、その前に、モーツァルトも盛んにバッハのフーガなどを研究していたし、そのモーツァルトの研究成果をベートーヴェンが学んだことも知られている。つまり、モーツァルトはバロック音楽を勉強し、その成果の上に立って古典美としてのクラシック音楽を完成させた大作曲家だったわけである。

 古典美のクラシック音楽の特徴は、中世音楽やバロック音楽の基づいた宗教的音楽あるいは王侯貴族の音楽とはことなり、ある特定の使命感を持つ音楽でなく、普遍的な美学に基づいた音楽である。要するにどんな人が聴いても「美しいな」と感じることの出来る客観的な音楽なのある。そこには、些細な曖昧さもないし、節度を持った音楽が構築されたわけである。我々が現在、モーツァルトの音楽に魅了されるのは、正にこのためなのである。ところがである。モーツァルトの全作品中、このレクイエムだけは、それまでのモーツァルト像をぶち壊してしまうほどのエネルギーに満ちた特異な作品だ。そこには、中庸を心得た節度のあるイメージはない。あるのは、怒りであり、激しい慟哭であり、そして祈りである。もうモーツァルトのトレードマークの古典美などというイメージは、吹っ飛んでしまう。モーツァルトはレクイエムの作曲について、次のような手紙を書き残している。「・・・人はだれも、自分の生涯を決定することは出来ないのです。摂理の望むことが行われるのに甘んじなくてはいけないのです。筆をおきます。これは僕の死の歌です。未完成のまま残しておくわけにはいきません」。 

 実際にはモーツァルトは、このレクイエムの作曲を半分にも行かないほどで生涯を閉じてしまう。後は、弟子のジェスマイアーなどが補作したものが、現在、我々が聴いているモーツァルトのレクイエムである。つまり、モーツァルトのレクイエムといっても、半分以上はモーツァルト以外が作曲した曲であり、このことも「レクイエムは本当にモーツァルトの作品なのか」という原因になっている。つまり、これまでジェスマイアーの補作をベースに幾人もの人が自己流に解釈してモーツァルトのレクイエムを“作曲”するという大変変則的な作品となっているのだ。それでも、今日に至るまでモーツァルトの代表作と言われるのは、そんなマイナス面をも凌駕するほど、我々現代人の心を捉えて離さない何かがこの曲には込められているからだ。もう古典的な美意識などはかなぐり捨てたモーツァルトの心の底からの叫びが聴こえてくる。日本は今年、国難とも言われる東日本大震災に見舞われ、多くの方々の命が奪われてしまった。このモーツァルトのレクイエムを聴いていると、あたかもモーツァルトが、日本の東日本大震災で亡くなった方々の御霊に向かい作曲したかのようにも聴こえ、涙を禁じえなくなる。それほどモーツァルトのレクイエムは、時空を超えて、我々一人一人の胸に訴えてくるものがある。

 そんな、古今のレクイエムの名曲中の名曲を、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルそしてソプラノのエディット・マティスをはじめとした独唱陣および合唱陣が、考えうる最高の演奏を披露しているのが今回のCDである。1971年にLPレコードとして発売されたもので、今ではもう歴史的名盤の1枚に入るのかもしれない。その演奏は、白熱の限りを尽くしたものとなっており、ベームの指揮は、曲の核心を突く。少しもリスナーに媚びることなく、さりとて、独りよがりの世界にのめり込むこともない。独唱、合唱陣を含め、正統的な重々しい響きが辺りを覆い尽くし、聴いていて厳粛な気分に引き込まれてしまう。これほど分厚く、重々しく演奏されたケースは稀であろう。そして、そんな激しい感情の渦巻く間に、わずかな救いの音楽が時折聴こえてくる。あたかも、砂漠の中に迷い込みながら一時、オアシスで休息し、清流の水で喉を潤す思いがする。全ての演奏者がカール・ベームの棒に集中して一糸乱れない、見事としか言いようもほどの演奏には、ただ脱帽するしかない。集中度の高さ、完成度の高さ、緻密さ、どれを取っても一級の仕上がりを見せている名盤である。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-08-29 10:31:53 | コンサート情報

 

<コンサート情報>


~北ドイツの名門音楽祭が誇る合唱団を迎え~

モーツアルト:交響曲第25番
        ミサ曲ハ短調

指揮:井上道義(交響曲第25番)
    ロルフ・ベック(ミサ曲ハ短調)

管弦楽:オーケストラ・アンサンブル金沢

独唱:アガータ・ウィレフスカ(ソプラノ)/リヒャルト・レシュ(テノール)/トーマス・セルク(バス)

合唱:シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭合唱団

会場:東京オペラシティ コンサートホール

日時:2011年9月20日(火) 午後7時

 指揮の井上道義は、これまで新日本フィル音楽監督、京都市響音楽監督・常任指揮者を務め、2007年より新日本フィル首席客演指揮者。2007年よりオーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督ならびに石川県立音楽堂アーティスティック・アドバイザーに就任。

 指揮のロルフ・ベックは、フランクフルト音楽大学卒業。ヘルムート・リリングに合唱芸術を師事。バンベルグ交響楽団合唱団を世界一流の合唱団に育て上げる。1994年シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭音楽監督就任。

 合唱のシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭合唱団は、2002年ロルフ・ベックにより結成された。シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭は、1986年世界的指揮者バーンステインにより創立され、毎年夏にドイツの同名の州において開催されている。

 管弦楽のオーケストラ・アンサンブル金沢は、1988年指揮者の岩城宏之が創設音楽監督(永久名誉音楽監督)を務め、外国人を含む40名からなる日本最初のプロの室内オーケストラとして、石川県立音楽堂を本拠地に石川県、金沢市が設立。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2011-08-26 10:33:35 | 新譜CD情報

 

 

<新譜CD情報>

 

ズービン・メータ「第九」~ 東日本復興支援演奏会 in ミュンヘン~

バッハ:管弦楽組曲第3番より「アリア」 

ベートーヴェン:交響曲第9 番「合唱」

指揮:ズービン・メータ

管弦楽:バイエルン国立管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送交響楽団

独唱:ソプラノ=アニヤ・カンペ/ アルト=リオバ・ブラウン/ テノール=クラウス・フロリアン・フォクト/バス・バリトン=ミヒャエル・フォッレ

合唱:バイエルン国立合唱団、ミュンヘン・フィルハーモニー合唱団、バイエルン放送合唱団

録音:2011年5月2日、ミュンヘン(ライブ録音)

CD: Naxos Japan[SACD-hybrid]

 指揮のズービン・メータは、3月11日の東日本大震災のとき東京に滞在中であった。4月10には再来日し、NHK交響楽団と復興支援慈善演奏会を行った。そして、5月2日にミュンヘンにおいて東京と同じ曲目の慈善演奏会を開催したが、このCDは、そのときのライヴ録音盤。普段はライバルとしてしのぎを削るバイエルン国立管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送交響楽団の3つのオーケストラが手をとりあって実現した歴史的演奏。 なお、このアルバムによる収益は日本赤十字社を通じて東日本大震災の被災地へ寄付される。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-08-25 10:30:56 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~かまくらプレミアム・オーケストラ・シリーズ Vol.16 ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団~

モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番
        交響曲 第40番
        交響曲 第41番
 
指揮:アイヴォー・ボルトン

管弦楽:ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団

ピアノ:モナ=飛鳥・オット

会場:鎌倉芸術館 大ホール

日時:2011年9月19日(月/祝)

 ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団は、1841年、モーツァルトの夫人コンスタンツェの援助の下、ザルツブルクの地元住民によって「ザルツブルク大聖堂音楽協会およびモーツァルト音楽院(モーツァルテム)」として創立された。1908年、現在のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団に改名され、1958年以降、ザルツブルク市より財政援助を受けて活動している。現在、毎年行われるザルツブルク音楽祭のレギュラーメンバーとしてモーツァルト・マチネーを行っている。

 指揮のアイヴォー・ボルトンは、オペラ指揮者として、1944年よりバイエルン国立歌劇場と密接な関係を持っており、バイエルン劇場賞を受賞。2005年、同劇場の指揮者として初来日を果たす。これまで、ヨーロッパの主要オーケストラから招かれ客演しているほか、ザルツブルク音楽祭には毎年出演。2004年よりザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の首席指揮者を務めている。

 ピアノのモナ=飛鳥・オットは、ドイツ人と日本人の両親の間に1991年、ミュンヘンで生まれる。EPTA欧州ピアノ教育者連盟国際コンクール第1位など、これまで多くの受賞歴を持つ。2009年にはバイロイト音楽祭でリサイタルを開催。2009年~2010年、西南ドイツ・フィルハーモニー交響楽団の欧州、日本などのツアーに参加する。現在、ヴュルツブルグ国立音楽大学特別奨学生として在学中。

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◇クラシック音楽CD◇ヴンダーリッヒ&フィッシャーディスカウのマーラー:「大地の歌」

2011-08-23 10:31:08 | 歌曲(男声)

マーラー:「大地の歌」

指揮:ヨーゼフ・クリップス

管弦楽:ウィーン交響楽団

独唱:フィリッツ・ヴンダーリッヒ(テノール)/ディートリッヒ・フィッシャーディスカウ(バリトン)

CD:独グラモフォン 00289 477 8988

 マーラーの「大地の歌」は、一体交響曲なのか、はてまたニ部の独唱つき管弦楽曲なのか、どの本を見ても曖昧にしてあり、どっちとも取れる表現をしているケースが多い。はっきりと交響曲「大地の歌」と書いてある場合もあるが、実際にこの曲の全曲を聴き通してみると、やはりこれは独唱付き管弦楽曲であるという感じを強く受ける。それほど、この曲において独唱者の力量がはっきりと表面に現れてくる。独唱者がつまらなければ、いくら指揮者やオケが頑張ったところで、所詮出来具合は知れたところ、と言った塩梅だ。そういうわけでマーラー:「大地の歌」を聴く場合は、まず独唱者の名前を確認してから、次に指揮者とオケの名前を見るという習慣を付けておいた方が無難だ。つい、指揮者の名前に引き付けられてCDを買ってから、独唱者の名前を見たら無名な歌手であることが分り、いやな予感がしたのだが、案の定、聴いてみてがっくりと来た経験を私は持っている。ただ、私には「大地の歌」はこうあらねばならないという固定概念が出来上がっているので、ただ、それに合わない歌手を排除しているに過ぎない、ということなのかもしれないのだが・・・。

 今回のCDは、録音は1964年6月14日のウィーン楽友協会ホールでのライヴ録音と、40年以上も前の大分古い演奏ながら、独唱がテノールのフィリッツ・ヴンダーリッヒ(1930年―1966年)とバリトンのディートリッヒ・フィッシャーディスカウ(1925年生まれ)と、当時人気絶頂の2人のスター歌手を揃えた演奏だけに見逃す分けにはいかなくなってしまった盤である。マーラー:「大地の歌」の名盤というとマーラーに直接薫陶を受けたワルター指揮の数種類の録音を筆頭に幾種類もの名盤があるが、そのほとんどが、テノールにアルトという組み合わせが多い。マーラーは、アルトまたはバリトン独唱といったようにどちらでもいいという風に作曲したのだが、これまでは、テノールとアルトの組み合わせが圧倒的に多かった。これは、コンサートでの華やかさを演出するには、男声歌手2人よりも男女の独唱者を揃えた方がいいといった単純な理由からだろうと推察される。しかし、フィッシャーディスカウだけはこの昔からの慣わしに逆らい「大地の歌」を得意にしてきており、バーンスタイン指揮の名盤も残されている。最近になって徐々にアルトに代わりバリトンが歌うケースが増えていると聞く。その意味でフィッシャーディスカウは先駆者であったのである。

 このマーラー:「大地の歌」は、全部で6楽章からなり、テノールとアルトまたはバリトンが交互に歌うという実に分りやすい構成を取っていることもあり、昔から日本では人気のある曲で、ビギナーでも充分楽しむことが出来る大衆性がウリとなっている。基となったのが、ハンス・ベートゲが編んだ詩集「中国の笛」であり、同じ東洋人として日本人が聴くには違和感を感じないところが人気の秘密であろう。「悲歌行」「宴陶家亭子」「採蓮曲」など李白などの唐詩が用いられ、マーラーも東洋的音階を使うなど、東洋的情緒がたっぷりなところが、クラシック音楽ではなかなか求められない魅力を発揮している。第1楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」、第2楽章「秋に寂しき者」、第3楽章「青春について」、第4楽章「美について」、第5楽章「春に酔える者」、第6楽章「告別」からなる。特に30分ほどかかる長大な第6楽章「告別」の最後の「愛しき大地に春が来て、ここかしこ百花咲く緑は木々を覆い尽くし、永遠にはるか彼方まで青々と輝き渡らん 永遠に 永遠に・・・」などを聴くと、後期ロマン派の面目躍如といった感じを強く受け、西洋と東洋の融合という、マーラーが狙った斬新性に感動させられずにはいられない。

 第1楽章のヴンダーリッヒの歌唱は、詩の「生は暗く、死もまた暗い」といった歌詞を的確に表現し、聴くものを釘付けにしてはおかない。このライヴ録音のCDは、このヴンダーリッヒのこの歌唱を聴いただけで、東洋的な深遠さの世界へとリスナーを自然に誘う。第2楽章のフィッシャーディスカウの歌は、オケの奏でる永遠の東洋的な静寂さを背景にして、力強くしかも包容力あり、説得力に富んだものだ。第3楽章は、楽しくうきうきとした曲であり、ヴンダーリッヒのテノールの技が一段と冴え渡る。第4楽章は、まるで物語を語るようなフィッシャーディスカウの歌声が、聴くものを陰影感豊かな世界へと導き入れる。第5楽章は、東洋を強く感じるような曲であり、美しいメロディーにも酔わされる思いがするが、ヴンダーリッヒの澄んだ歌声は、詩にピタリと寄り添い、実に軽快だ。そして、クライマックスともいえる第6楽章を、フィッシャーディスカウが熱唱し、後期ロマン派音楽が爛熟の境に入ったことを十二分に実感することができる。何かここでマーラーは、人生の最後の旅路を終えようとするかのような、悟りの境地ににも似た音楽を余す所なく開陳し尽すのである。マーラーは、この「大地の歌」最後の楽章でおいて、現世と来世とを、あたかも音楽で表現しようと試みたかのように私には思えてならない。ヨーゼフ・クリップス指揮ウィーン交響楽団は、中庸を得た安定感ある演奏を繰り広げている。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-08-22 10:31:18 | コンサート情報

 

<コンサート情報>


~東京交響楽団第592回定期演奏会~

シューマン:チェロ協奏曲

ブラームス(シェーンベルグ編):ピアノ四重奏曲第1番

指揮:大友直人

管弦楽:東京交響楽団

チェロ:宮田 大

会場:サントリーホール

日時:2011年9月17日(土) 午後6時

 2009年に日本人として初めて「ロストロポーヴィッチ・チェロコンクール」で優勝を果たした期待の宮田 大が東京交響楽団の定期演奏会に初登場し、自身が選んだシューマンのチェロ協奏曲を演奏する。そして、ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番をシェーンベルグがオーケストラ用に編曲した曲が演奏される。シェーンベルグの手紙によると編曲の理由は「この曲が好きだから。また、原曲の演奏の機会が少ないから。そして、ピアニストが優れているほどバランスが悪くなり、いい演奏にならないから」だそうである。シェーンベルクの個性が随所に聴かれる作品。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2011-08-19 09:50:16 | 新譜CD情報

 

<新譜CD情報>

 

~ベルリン・フィル定期公演での佐渡 裕のライヴ録音~

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番

武満 徹:5人の打楽器とオーケストラのための「フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユーコール」

指揮:佐渡 裕

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

CD:エイベックス・クラシックス AVCL‐25733~4

 ベルリン・フィルの定期公演に招かれた佐渡 裕が、2011年5月20日~22日に指揮した演奏会のライヴ録音。この曲目は、ベルリン・フィルと音楽監督のサイモン・ラトルの希望により決定されたという。ベルリン・フィルの定期公演に招かれた日本人は、近年では小澤征爾以来で、客演3日目では、満場のスタンディングオベーションを受けた。この熱気に満ちた佐渡 裕の指揮ぶりが聴ける。 

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-08-18 10:31:32 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~東京文化会館レクチャーコンサート 「祝祭と音楽」シリーズ~

フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番
ドビュッシー:ヴァイオリンソナタ
サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ第1番
ラヴェル:ヴァイオリンソナタ

ヴァイオリン:レジス・パスキエ

ピアノ:池田珠代

会場:東京文化会館 小ホール

日時:2011年9月16日(金) 午後7時

 ヴァイオリンのレジス・パスキエは、わずか12歳でパリ国立高等音楽院のヴァイオリン科と室内楽科を一等賞で卒業する。その2年後、ニューヨークでデビューし、世界各国の主要オーケストラとも共演する。また、ジャン=クロード・ペネティエとロラン・ピドゥと共に「パリ・ピアノ・トリオ」を結成。これまで、ジョルジュ・エネスコ賞、シャルル・クロス賞、フランスのレコード・アカデミー賞などの受賞歴を持つ。1985年、パリ国立高等音楽院ヴァイオリン科および室内楽科教授に就任。同年、フランス政府より文化勲章を受章する。

 ピアノの池田珠代は、横浜雙葉学園時代にピティナコンクール、鎌倉コンクールで入賞。桐朋女子高ピアノ科を経て1989年渡仏。同年、パリ国立高等音楽院に入学、1995年、金賞受賞で卒業。プーランク国際コンクールにおいて大賞第1位を受賞するなど、数々の国際コンクールに入賞。現在、世界各国で演奏活動を行うと同時に、ラジオ・フランス、テレビにも多数出演するかたわらスーレンヌ音楽院で講義をしている。夫君でありピアニストのパトリック・ジグマノフスキーとのピアノデュオは、現在フランスで絶賛されている。

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◇クラシック音楽CD◇ジャクリーヌ・デュ・プレのドヴォルザーク:チェロ協奏曲(ライヴ盤) 他

2011-08-16 10:31:12 | 協奏曲(チェロ)

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番

チェロ:ジャクリーヌ・デュ・プレ

指揮:セルジュ・チェリビダッケ
管弦楽:スウェーデン放送交響楽団(ドヴォルザーク)

指揮:ダニエル・バレンボイム
管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団(サン=サーンス)

CD:ワーナーミュージック・ジャパン WPCS‐22178

 これは、イギリス出身の女流チェロ奏者のジャクリーヌ・デュ・プレ(1945年―1987年)が録音したライヴ演奏を収録したCDである。ドヴォルザーク:チェロ協奏曲が、指揮:セルジュ・チェリビダッケ/管弦楽:スウェーデン放送交響楽団で、1967年11月26日にストックホルム・コンサート・ホールでの収録。サン=サーンス:チェロ協奏曲が、指揮:ダニエル・バレンボイム/管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団で、1971年1月23日、フィラデルフィア・アカデミー・オブ・ミュージックでの収録である。ジャクリーヌ・デュ・プレは、ギルドホール音楽学校で学び、16歳にして1961年ロンドンでデビューし、国際的チェリストとしてのキャリアを積んだというから、早くからその才能を開花させたチェリストであった。21歳の時、現在指揮者として活躍している、当時ピアニストであったダニエル・バレンボイムと結婚。しかし、25歳(1970年)の若さで、多発性硬化症の兆候が出始め、第一線のチェリストとしては引退せざるを得なかった。そして、1987年に42歳の若さでその一生を終えている。その余りにも短い演奏家としての活動期間から、悲劇の天才的チェリストとして、後世の現在に至るまで長くその名が語り継がれることになる。

 ジャクリーヌ・デュ・プレの演奏の特徴は、何といっても自由奔放なその演奏スタイルにある。最近の演奏家は、どの楽器でも質の向上は目覚しいものがあるが、演奏技術が均一化され、画一化された印象は拭えない。それに対し、ジャクリーヌ・デュ・プレの演奏は、自分が感じた音楽を誰の気兼ねもなく、堂々と正面から挑み掛かり、見事に自己表現を成し遂げてしまう、いわば、天才的な音楽的感覚が他の演奏家と一線を画しているところであろう。そのため、演奏曲を素直に披露するといった弾き方ではなく、自分はこう感じたから、こう弾くのだという個性的な演奏スタイルが身上だ。このCDでは、このことがドヴォルザーク:チェロ協奏曲での演奏に顕著に現れている。それに、このCDでのセルジュ・チェリビダッケの指揮ぶりが、ジャクリーヌ・デュ・プレの持つ感性とマッチして、相乗効果をもたらしているとでも言おうか、実に大らかで情熱的演奏が見事である。チェリビダッケ(1912年―1996年)は、ルーマニア生まれで、主にドイツで活躍した指揮者だ。フルトヴェングラーの前にベルリン・フィルの常任指揮者を務め、最後はミュンヘン・フィルの芸術監督をルドルフ・ケンペから引き継いでいる。楽団員ともトラブルを起こすなど、平穏な指揮者活動ではなかったようだが、その演奏は、現在の指揮者には求められないようなスケールの大きい、形而上学的な世界を描き切って見せる凄さを内包した指揮ぶりに特徴がある。ジャクリーヌ・デュ・プレとセルジュ・チェリビダッケの天才肌の二人の組み合わせのこのCDは、正に聴き応え充分と言ったところ。

 ドヴォルザーク:チェロ協奏曲は、セルジュ・チェリビダッケ指揮のスウェーデン放送交響楽団による第1楽章のオーケストラだけの演奏の部分だけ聴いても、とてつもないロマンの香りに陶然となってしまうほどだ。そして、ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロが重々しく弾き語り始める。同時に安らぎを求めるように、細やかでリズミカルなチェロの音色が辺りを覆い、チェロ協奏曲の醍醐味を十二分に満喫することができる。特にチェロとオーケストラとが対話するように演奏されるところが、まるで一遍の小説を読んでいるようで、興味が尽きない演奏内容になっている。第2楽章は、しみじみとしたメロディーが心の奥底に染み渡わたる演奏だ。とてつもなくゆっくりとしたテンポが、このことをより一層印象付けているかのように感じられる。この辺を聴いていると、ジャクリーヌ・デュ・プレとセルジュ・チェリビダッケの音楽性の同一性が、明確にリスナーに伝わってくる。目を閉じれば、あたかも目の前に緑の草原が地平線まで広がっているかのようだ。そして、最後の第3楽章が始まる。ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロが投げかける問いに、セルジュ・チェリビダッケの指揮が答えるといった塩梅で演奏が力強く進んでいく。このため曲の持つスケールが十二分に表現され、終楽章として大満足な出来栄えだ。ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロは、決して標準的な世界を描くわけではないが、とにかく一度聴いたら忘れられないような個性に裏打ちされている。

 サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番は、夫君のダニエル・バレンボイムの指揮のフィラデルフィア管弦楽団の伴奏で、ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロ演奏がライヴ録音で聴ける。ここまでなら、理想的な録音と思うが、既にジャクリーヌ・デュ・プレには、多発性硬化症の兆候が出始めており、体調が充分とは言えない状況下で行われたものだけに、聴きようによっては、デュ・プレ特有の奔放さが陰を潜めているともとれるかもしれない。このCDのライナーノート(エリザベス・ウィルソン著)によると、ヴァイオリニストのピンカス・ズッカーマンは、この時のデュ・プレ様子について「病状が進み、腕の筋肉もコントロール能力も落ちていたジャクリーヌは、反応のいい楽器が手に入ったことをとても喜んでいた」と語っていたという。ここで言う「反応のいい楽器」とは、バレンボイムが筋力の衰えたデュ・プレのために、楽に弾ける新しいチェロをプレゼントし、これをコンサートで弾いたことを指している。サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番は、オペラ「サムソンとデリラ」、ピアノ協奏曲第4番などの傑作と相前後した作曲された内容の充実したチェロ協奏曲。チェロの神様のカザルスは、この曲を「ベートーヴェンの田園交響曲にインスピレーションを得た作品」とデュ・プレに説明したという。この伸び伸びとした田園風景を彷彿とさせるチェロ協奏曲を、堂々と弾きこなし、病を抱えていることを忘れさせる演奏内容となっている。むしろいつものデュ・プレの自由奔放さが陰を潜めただけ、逆に安定した構成力が魅力とも聴けるライヴ録音である。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-08-15 10:43:37 | コンサート情報

 

<コンサート情報>


~ラチャ&リリー デビュー・リサイタル~

ドビュッシー:「美しき夕暮れ」「月の光」
フランク:ヴァイオリンソナタ
アクロン:「ヘブライ・メロディー」
チャイコフスキー:「ワルツ・スケルツォ」
サン=サーンス:「サムソンとデリラ」よりカンタービレ
ラフマニノフ:「ヴォカリーズとエレジー」
ワックスマン:「カルメン幻想曲」

ヴァイオリン:ラチャ・アヴァネシヤン

ピアノ:リリー・マイスキー

会場:浜離宮朝日ホール

日時:2011年9月15日(木) 午後7時

 ヴァイオリンのラチャ・アヴァネシヤンは、1986年アルメニア生まれ。2003年よりブリュッセルの王立音楽院のイーゴル・オイストラフのクラスで学び、最初の1年間で5つの国際コンクールで優勝。2006年アンリ・ヴュータン国際コンクール、ユーディ・メニューイン・コンクール、2008年カール・ニールセン国際コンクールで1位獲得。2011年4月リリースの「ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第2番」でCDでデビュー。現在、エリザベート王妃音楽大学でオーギュスタン・デュメイに学んでいる。

 ピアノのリリー・マイスキーは、1987年パリ生まれ。父は世界的チェリストのミッシャ・マイスキー。2001年―2004年、パーセル音楽院で学ぶと同時にジャズ・ピアノも学ぶ。日本へはミッシャ・マイスキーの共演者として度々来日。現在、ベルギー在住。

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