★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-01-31 13:43:10 | コンサート情報

 

<コンサート情報>


タルティーニ(クライスラー):コレッリの主題による変奏曲
ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第5番「春」
アイヴス:ヴァイオリンソナタ第4番「キャンプの集いの子供の日」
バッハ:無伴奏バイオリンソナタ第1番
アンタイル:ヴァイオリンソナタ第1番

ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

ピアノ:ヴァレンティーナ・リシッツァ

会場:東京オペラシティ コンサートホール

日時:2011年3月24日(木) 午後7時

 ヴァイオリンのヒラリー・ハーンは、1979年、米国ヴァージニア州に生まれる。10歳でカーティス音楽院に入学。1995年にはドイツで、ロリン・マゼール指揮のバイエルン放送交響楽団と協演し、国際デビュー。1996年にはフィラデルフィア管弦楽団と協演し、ソリストとしてカーネギーホールデビューを飾った。2008年発表のシェーンベルクとシベリウスの協奏曲のCDが、ビルボード誌のクラシック・チャートで初登場1位になるなど、これまで多くの賞を受賞している。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-01-28 13:52:17 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~ロン・ティボー国際音楽コンクール ガラ・コンサート~

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 op.63
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47 (成田達輝)
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47 (ソレンヌ・パイダシ)

 
ヴァイオリン:成田達輝(2010年度ヴァイオリン部門第2位)
        ソレンヌ・パイダシ(同第1位)

ゲスト:南紫音(2005年度同部門第2位)

指揮:金聖響

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

会場:サントリーホール

日時:2011年3月23日(水) 午後7時

 半世紀にわたる歴史と伝統を持つロン・ティボー国際音楽コンクール。2010年は、11月6日から15日にかけて、パリでヴァイオリン部門コンクールを開催した。そして、パリでのコンクールの緊張感をそのままに、上位入賞者が金聖響と東フィルとの共演をサントリーホールで行う。

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◇クラシック音楽CD◇ミシェル・ベロフのドビュッシー:ピアノ名曲集

2011-01-27 14:13:04 | 器楽曲(ピアノ)

ドビュッシー:ベルガマスク組曲(第1曲~第4曲)
         2つのアラベスク(第1番~第2番)
         子供の領分(第1曲~第6曲)
         レントより遅く
         小さな黒人

ピアノ:ミシェル・ベロフ

CD:EMI Music Japan Inc. TOCE-91051

 日本人がドイツ音楽に対して抱く感情は、大体皆似たようなところに落ち着くであろうが、ことフランス音楽に関しては、随分と違ってくるのではないかと推測している。その繊細で優美な音楽をそのまま素直に受け入れる人と、ドイツ音楽との違いに面食らう人など、さまざまな感情が交差しそうだ。特に違うのは声楽曲ではなかろうか。ドイツリートの愛好者が皆フランスの声楽曲の愛好者になるかというと、なかなかそうにはいかない。そんなフランス音楽の中でも、ドビュッシーだけは例外的存在ではなかろうか。勿論ドイツ音楽とは大分雰囲気は違うのであるが、今回のCDに収められたドビュッシーのピアノ曲は日本人の感性もぴたりと合うし、特にベルガマスク組曲の「月の光」、2つのアラベスクの第1番、「レントより遅く」などの名曲を聴くと自然に口ずさみたくなるほどだ。これらの曲に肌が合わない日本人はそう多くないはずだ。

 クロード・ドビュッシー(1862年―1918年)の曲は、よく印象主義音楽といわれることが多い。絵画の印象派との関連はどうなのかは私には分らないが、「牧神の午後への前奏曲」や「海」などの管弦楽曲を聴いていると、どうしても絵画、それもマネとかモネの印象派の絵画を連想してしまう。輪郭が曖昧で、全体に靄のかかったような絵を、ドビュッシーの音楽にダブらせて聴くことが私は多い。それとドビュッシーの音楽というと、必ずラヴェルの音楽に対比してどうのこうのと言われることが多い。ラヴェルはジャズの要素も積極的に取り入れるなどかなり革新的な作曲家であった。ドビュッシーもジャワのガメラン音楽に興味を持つなど、既成のクラシック音楽の枠に捉われない進歩的な作曲家ではあったが、曲から受ける印象は意外に古風なところがある。このことが、逆にドビュッシーの愛好者が幅広く存在することに繋がっているのであろう。でもやはり、ドビュッシーやラヴェルがその後の現代音楽へと続く道を最初につけたことも確かであろう。

 このCDで演奏しているミッシェル・ベロフは、1950年にフランスのエピナルに生まれている。1966年にパリ音楽院を首席で卒業。1967年には「オリビエ・メシアン国際コンクール」で優勝し、脚光を浴びる。現在までミッシェル・ベロフというとすぐオリビエ・メシアンの名が思い浮かぶほどその印象が強い。1980年代半ばに右手首を痛め、一時演奏活動を中止していたが、1990年代に入って回復し、現在ではパリ音楽院で教鞭もとっているという。しばしば来日しているので日本での知名度は高い。得意なのは、ドビュッシーやラヴェルそれにメシアンなどのフランスの作曲者やバルトークなどもよく弾く。一方では、リストとかプロコフィエフなどの技巧的な曲もしばしば取り上げている。

 今回のCDでは、ドビュッシーのピアノ独奏曲のみを集めたものをベロフが弾いている。聴く前は、きっとベロフは幻想的な雰囲気の弾き方をするのであろうと予測していたが、聴いてみると意外にもきりっと引き締まったドビュッシーとなっていた。正直な話、少々意表をつかれたようで、面食らった。しかし、よく聴くとはっきりと1音1音が聴き取れるドビュッシーもありか、という印象に落ち着いた。ライナーノートで松沢 憲氏はベロフの演奏について「ベロフのピアノは大変堅実だ。・・・聴き手によってはもしかしたら無骨な印象を持たれる方もあるかもしれないし、ベロフの演奏には確かにそういう側面もある。・・・音楽に対する堅実なアプローチ、つまり堅実に譜読みし、音楽を堅実に感じている。まさしく音楽家の鑑というべきである」と書いている。つまり、ベロフのピアノ演奏は、真正面からドビュッシーに取り組み、曖昧な表現を極力排除しているのだ。やはり最後は、こんなドビュッシーもありか、という結論にたどり着いてしまった。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-01-26 13:24:46 | コンサート情報

 

<コンサート情報>


シューマン:アダージョとアレグロ
ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ
エルガー:愛の挨拶
クライスラー:愛の喜び
フォーレ:エレジー
ポッパー:ハンガリー狂詩曲
チャイコフスキー:ペッツォ・カプリチオ-ソ
ラフマニノフ:チェロソナタ

チェロ:辻本 玲

ピアノ:有森直樹

会場:サントリーホール

日時:2011年3月20日(日) 午後2時

 チェロの辻本 玲は、1982年生まれ。11歳まで米国フィラデルフィアで過ごす。東京芸術大学を首席で卒業。2003年、第72回日本音楽コンクール第2位および聴衆賞受賞。2008年、シベリウスアカデミー(フィンランド)に留学し、その後、ベルン芸術大学(スイス)に留学。2009年、第2回ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位入賞。2011年3月から各地でデビューリサイタルを行う。

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◇クラシック音楽CD◇リヒテルのグリーク/シューマン:ピアノ協奏曲

2011-01-25 13:52:36 | 協奏曲(ピアノ)

グリーク:ピアノ協奏曲

シューマン:ピアノ協奏曲

ピアノ:スヴャトスラフ・リヒテル

指揮:ロブロ・フォン・マタチッチ

管弦楽:モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団

 グリークのピアノ協奏曲は、1868年、グリークがまだ25歳の時に完成させたというから、その才能を若いときから開花させた作曲家ということになろう。ノルウェー出身の彼は、ノルウェーの民俗音楽から作曲の着想を得ていることが多いことから国民楽派の作曲家と呼ばれている。グリークについて私は直ぐに組曲「ペールギュント」を思い浮かべる。クラシック音楽を聴き始めた頃、「ペールギュント」の第1曲「朝」のメロディーが流れるともう熱中して聴いたことを思いだす。それと、あまり有名ではないが、3曲のヴァイオリンソナタが絶品だ。何か北欧の澄み切った空気がそのまま流れて来るような気がして、聴き終わった後の何と清々しいことか。「君を愛す」などの歌曲などにも愛すべき曲がある。そして、ピアノ独奏曲「抒情小曲集」が、また独特な雰囲気があって一度聴くと忘れられない魅力に溢れている。グリークは、クラシック音楽のビギナーからシニアーに至るまでを同時に満足させることができる数少ない作曲者の一人である。

 シューマンのピアノ協奏曲は、1845年に完成しているので、グリークのピアノ協奏曲が作曲される23年前ということになる。グリークは、シューマンのピアノ協奏曲にヒントを得てピアノ協奏曲を作曲したのではないか、とも言われているが、成る程何となく似ているようにも思える。ただ、シューマンのピアノ協奏曲の方が、圧倒的にロマンの香りが濃く、曖昧模糊とした雰囲気の中でピアノの音が響くという感じが強い。グリークにピアノ協奏曲は、北欧のピリッとした引き締まった空気が全体覆っているかのようであり、その意味から言うと、2曲のピアノ協奏曲は、両極端に位置するのかもしれない。シューマンは、昨年生誕200年ということがあって、コンサートでもFM放送でも、いつもより多く取り上げられた年で、シューマン・ファンの一人である私にとっては嬉しい年であった。私がシューマンを聴き始めたのは、「クライスレリアーナ」「フモレスケ」「幻想曲」などのピアノ独奏曲が中心であった。そのあとピアノ協奏曲を聴いたので、そう違和感なく聴くことができた。シューマンのピアノ曲は篭ったような独特の雰囲気を持っており、リスナーにとって好き嫌いがはっきりと分かれるのではないだろうか。

 今回のCDは、このグリークとシューマンのピアノ協奏曲をリヒテルが弾いたもの。伴奏は、ロブロ・フォン・マタチッチ(1899年―1985年)指揮のモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団。この録音は、ピアノ演奏、伴奏ともそれぞれの曲のトップクラスに楽々と入るほどの名演と言っても間違いない。ここでのリヒテルのピアノは、いつものピアノと決闘するといった雰囲気が薄れ、特にシューマンのピアノ協奏曲ではロマンの香りが濃く、曲の持つ独特雰囲気を引き出すことに成功している。一方、グリークのピアノ協奏曲では、リヒテルのピアノが一層際立っており、劇的な雰囲気を持つこの協奏曲を十二分に演出するのに成功してと言えよう。これに加えて素晴らしいのが、マタチッチ指揮のモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団の伴奏である。非常に奥行きがある音の構えで、ピアノ演奏を引き立てると同時に、オーケストラ演奏の部分で十二分に自己主張している。マタチッチは9回も来日しており、当時の日本のファンには懐かしい指揮者だ。

 グリークのピアノ協奏曲の第1楽章の出だしのピアノの響きが、充分に説得力を持っており、深みもある。オーケストラの音もピアにしっかりと合っている。スケールの大きい演奏は、充分に満足できるもので、よくあるこけおどし的演奏とは全く違う。第2楽章は、オーケストラ演奏から始まるが、この演奏が心にしみじみと沁みる響きとなっているのが、誠に素晴らしい。リヒテルのピアノは第1楽章にも増して集中度が高まり、北欧の澄んだ空気が伝わってくるかのようでもある。第3楽章は、リヒテルとオーケストラのコンビネーションが絶妙であり、相互にボールをやり取りでもするかのように軽快に曲がクライマックスに向かって進んで行く。一方、シューマンのピアノ協奏曲の第1楽章は、シューマン独特の夢幻的な雰囲気がうまく表現されている。第2楽章の内省的な表現も成功。リヒテルのマジックにでもかかったかのように、辺りに詩的な雰囲気が立ち込める。第3楽章は、リヒテル本来の力強く、スケールの大きな演奏で締めくくられている。(蔵 志津久) 

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-01-24 14:14:51 | コンサート情報

 

 <コンサート情報>


「地方都市オーケストラ・フェスティバル2011」

会場:すみだトリフォニーホール

大阪交響楽団 指揮:児玉 宏(音楽監督・首席指揮者)
  モーツアルト:交響曲第35番「ハフナー」 他
  2011年3月19日(土) 午後3時

関西フィルハーモニー管弦楽団 指揮:藤岡幸夫(首席指揮者)
  チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」他
  2011年3月20日(日) 午後3時

セントラル愛知交響楽団 指揮:斉藤一郎(常任指揮者)
  バッハ(野平一郎編曲):ゴルトベルク変奏曲 他
  2011年3月21日(月・祝) 午後3時

群馬交響楽団 指揮:カール=ハインツ・シュテフェンス
  ブラームス:交響曲第2番 他
  2011年3月26日(土) 午後3時

広島交響楽団 指揮:秋山和慶(音楽監督・常任指揮者)
  リムスキー=コルサコフ:交響曲第2番「アンタール」
  2011年3月27日(日) 午後3時
   

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-01-21 13:52:42 | コンサート情報

 

<コンサート情報>


~イタリア統一150周年記念 フィレンツェ五月音楽祭 特別派遣~

ヴェルディ:歌劇「運命の力」

指揮:ズービン・メータ

演出:ニコラ・ジョエル

管弦楽:フィレンツェ五月祭管弦楽団

合唱:フィレンツェ五月祭合唱団

出演:レオノーラ=アマリッリ・ニッツァ 
    ドン・アルヴァーロ=ワルター・フラッカーロ
    ドン・カルロ=ロベルト・フロンターリ 他

会場:東京文化会館

日時:2011年3月14日(月)午後4時/16日(水)午後6時/19日(土)午後3時/21日(月・祝)午後3時

 フィレンツェはオペラ発祥の地であり、音楽活動の中心がフィレンツェ歌劇場。ここを中心に繰り広げられる「フィレンツェ五月祭」は、68年前に始められたもので、バイロイト音楽祭、ザルツブルク音楽祭と並ぶヨーロッパの三大音楽祭として有名。4度目を迎えるフィレンツェ歌劇場の来日公演は、イタリア統一150周年記念を記念し、5年ぶりの実現となるもの。フィレンツェ歌劇場は、新たに38歳のフランチェスカ・コロンボ女史を総裁に迎え、現在、新しいオペラハウスを建設中。今回の来日公演で指揮を執るのは首席指揮者のズービン・メータ。           

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◇クラシック音楽◇ロータス・カルテットのシューマン:弦楽四重奏曲全曲(第1番~第3番)

2011-01-20 13:37:09 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)

シューマン:弦楽四重奏曲全曲(第1番~第3番)

弦楽四重奏:ロータス・カルテット(第1ヴァイオリン:小林幸子/第2ヴァイオリン:藤村 彩/     
                     ヴィオラ:山碕智子/チェロ:斎藤千尋)

CD:LIVE NOTES WWCC‐7524

 弦楽四重奏曲は、いわばクラシック音楽の奥座敷に当る場所に置かれた作品群という感じがする。あまり表には出ない(出たがらない?)方が幸せであるし、華やかすぎる場所ではどうも居心地が悪いのである。32曲のピアノソナタを作曲したベートーヴェンは、12曲の弦楽四重奏曲を書き残しているが、この対比がまた際立っている。ピアノソナタは、ベートーヴェンの激しい自己主張に貫かれ、外に向かって何事かを訴えているような曲が多いのに対して、弦楽四重奏曲の方はというと、ベートーヴェンの内省の吐露とでも言ったらよいような、自己の内面と対話しているような、内に向かって書かれた曲が多い。そんな性格を持つ弦楽四重奏曲であるが、そのリスナーはというと、私が見る限りクラシック音楽が一番好きな人達ではないかと思う。クラシック音楽に、単に表面的な華やかしさを追い求めるのではなく、高い精神を追い求めるような傾向がある人達なのである。だから弦楽四重奏団のレベルが、その国のクラシック音楽のレベルを現しているといってもいいのかもしれないほどだ。

 わが国には、以前から弦楽四重奏の演奏に取り組んでいる演奏グループが数多く存在し、現在も地道な演奏活動を行っている。これらの演奏会に行くと、オーケストラのコンサートとは何処か違う雰囲気に包まれているのだ。クラシック音楽を人生の伴侶と考えているような人達の集まりかのような、あたたかくもまた緊張した雰囲気に包まれる。そんな日本の弦楽四重奏団の中で、1992年に結成された大阪のロータス・カルテットの存在は、大いに注目すべきものがある。創立当初は4人とも女性(現在は第2ヴァイオリンが元シュトゥットガルト弦楽四重奏団の第1ヴァイオリン奏者マティアス・ノインドルフに交代している)で、時々メンバーが集まり演奏するのではなく、当初から常設の弦楽四重奏団を目指したというから半端ではない。1993年に大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門で第3位に入賞した後、全員でドイツに渡り、シュトゥットガルト音楽芸術大学に入学。そしてメロス弦楽四重奏団に師事したというから、もうこれは踏ん切りがいいというか、凄い決断力だと感心させられる。

 まあ、ここまでならそんなに騒ぐことでもないかもしれないが、ここからが凄い。メロス弦楽四重奏団のほかに、アマデウス弦楽四重奏団やラ・サール弦楽四重奏団にも薫陶を受け、次第に実力を付けたロータス・カルテットは、1997年、ロンドン国際弦楽四重奏コンクールでメニューイン特別賞、パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールで第3位特別賞、BDI音楽コンクール弦楽四重奏部門で第1位と国際コンクールでの受賞を重ねるのだ。そして、現在ではメロス弦楽四重奏団なき後、ドイツにおいて、その穴を埋めるまでの存在に成長を遂げているという。このように国際的に活躍している日本の弦楽四重奏団は、ほかに有名な東京カルテットが存在するだけだ。最近は、国際コンクールで優勝する日本の若い演奏家がマスコミなどで大きく取り上げられているが、ロータス・カルテットは、それらに劣らずの活躍とみていいだろう。ただ、最初に書いた通り、弦楽四重奏団は、クラシック音楽界の中でも地味な存在であることが、あまりマスコミに取り上げられない理由ということになろうか。

 今回は、そんなロータス・カルテットが2003年1月に横浜で録音したCDを取り上げたい。メンバーは設立時のメンバーとなっている。曲はシューマンの弦楽四重奏曲全曲(第1番~第3番)である。シューマンの弦楽四重奏曲は、多分にベートーヴェンの弦楽四重奏曲に影響を受けているといわれるが、実際聴いてみればそう内省的にならず、シューマン独特のロマンの香りも随所に顔を出し、何回も聴くうちにその良さが分ってくるような性格の曲である。もし、演奏団体名を知らずに、第1番の出だしの部分を聴いたとしたら、「これはヨーロッパの弦楽四重奏団に違いない」と感じるはずだ。それほど弦の響きが豊かで奥行きが限りなく深い。東欧の弦の響きに近いものを持っている。それにしてもその演奏スタイルは、演奏技術を見せびらかすというところから一番遠い所にあるといっていい。これは心からの共感をもってシューマンの世界を表現しているとしか言いようがないほどの秀演である。第1番のしみじみとした豊かな世界、第2番の軽やかな足取りを連想させる世界、そして、第3番のベートーヴェンの弦楽四重奏を思い出させるような堂々とした世界―ロータス・カルテットは、ものの見事それぞれの持つ世界を描き切っている。今こんな素晴らしい弦楽四重奏団を我々が持っていること自体を誇りに思う。3曲を聴き終わった後、無性に嬉しくなってしまった。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2011-01-19 13:26:47 | コンサート情報

 

<コンサート情報>


チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」

指揮:チョン・ミョンフン

管弦楽:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

ピアノ:チョ・ソンジン

会場:サントリーホール

日時:2011年3月13日(日) 午後3時

 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団は、プラハ国民歌劇場の付属オーケストラがスタート。初のコンサートは、1896年で、指揮者はドヴォルザーク。1901年にオーケストラとして独立した。2009/10シーズンからインバルが首席指揮者を務めている。優美な弦の音色とバランスのとれた豊かな管楽器の音色が絶妙のバランスを保ち、世界にファンが多い。

 指揮のチョン・ミョンフンは、1953年、韓国・ソウル生まれ。ピアニストとしてキャリアを始め、1974年チャイコフスキー国際コンクール第2位。その後、指揮者としての活動を開始し、1989年、パリ・オペラ座バスティーユの音楽監督就任。現在、フランス国立放送フィルの音楽監督、アジア・フィルおよびソウル・フィルの音楽監督も兼任している。

 ピアノのチョ・ソンジンは、1994年、韓国・ソウル生まれ。2010年からソウル芸術高等学校で学ぶ。2008年、青少年のためのショパン国際ピアノコンクール(モスクワ)で第1位。2009年、第7回浜松国際ピアノコンクールで最年少で第1位。2010年、NHK交響楽団と共演およびリサイタルを開催し、好評を得る。

 

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◇クラシック音楽CD◇ピエール・モントゥーのベートーヴェン「英雄」とシューベルト「未完成」

2011-01-18 13:47:19 | 交響曲(ベートーヴェン)

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
シューベルト:交響曲第8番「未完成」

指揮:ピエール・モントゥー

管弦楽:ロイヤル・コンセルトヘボウ

CD:ユニバーサルミュージック(DECCA) UCCD‐5132

 私は、フランスの名指揮者であったピエール・モントゥー(1875年―1964年)については、昔はあまり意識しなかったが、最近になればなるほど、その指揮ぶりの的確さや、自然な曲運び、雄大な構成力などに引き付けられる。昔は、何といっても神様のフルトヴェングラーをはじめとしてワルターそれにトスカニーニ、あるいはフリッチャイ、ベーム、ムラヴィンスキーといったドイツ系、イタリア系、ロシア系の個性ある指揮者に興味があったわけである。これらの指揮者はいずれも個性的で、その曲に対する自分の感情を、前面押し出して指揮するタイプである。猪突猛進型とでもいおうか、オーケストラを自分の思い描く世界へと引っ張っていく。これはこれで聴いていて分りやすいし、「成るほど、ベートーヴェンはこんな考えで曲をつくったのだな」と想像力が湧き上がり、若き日の感情を移入するには、これらの指揮者は、私にとっては誠にもって相応しくも有難い存在であったわけである。

 ところが、時が過ぎ、長年にわたって同じ曲を聴いていると、「ホントにベートーヴェンはあんな感情で作曲したのであろうか」という素朴な疑問が頭を過ぎるときがある。そんなときにモントゥーの指揮したものを聴くと「はっ」と思い当たることがあるのである。モントゥーの指揮は、基本は楽譜に忠実に再現するということであろう。そしてそのことが、単に楽譜に忠実にだけで終わらないところが凄い所なんだろうと思う。曲づくりはあくまで自然で、自分の意思を強烈に打ち出すようなことをモントゥーはしない。しかし、いずれの場合でもスケールの大きな曲づくりは、凡庸な指揮者には到底真似できないところなのである。その結果、聴き終わった時には、個性の強い指揮者以上に、雄弁にその曲をリスナーに強烈に印象付けるという結果をもたらす。これは、オーケストラのメンバー一人一人の持ち味を最大限に発揮させたうえで、曲全体のバランスがづくりが誠に当を得ているから成せる技なのであろう。

 このCDは、そんなモントゥーがロイヤル・コンセルトヘボウを指揮し、名曲中の名曲ベートヴェンの「英雄」とシューベルトの「未完成」の2つの交響曲を録音したもので、ドイツ系指揮者では到底望めない、それぞれの曲の原点がリスナーの前に自然に提示されることに驚かされる。ベートーヴェンの「英雄交響曲」の第1楽章の響きからして、ドイツ系指揮者とは全く違う。力強さはあるが、同時に明るく爽快な響きが辺りを覆う。古い絵画を修復してみたら、我々が日頃見慣れたものとは違う絵が現れた、とでも表現したらいいのであろうか。もし。今ベートーヴェンが聴いたら、多分「僕のイメージはフルトヴェングラーよりモントゥーの方に近い」というのではないかと、私は密に思っている。この第1楽章のスケールの大きさは、他に比較するものがないと言ってもても言い過ぎでないだろう。第2楽章も、基本的には第1楽章と代わりはないが、葬送行進曲の足取りは限りなく悲しみにくれている表現が強烈であるし、ゆっくりとしたテンポがその思いを倍増させる。第3楽章のスケルツォもドイツ系指揮者ならおどろおどろしく指揮するところが、モントゥーはあくまで爽やかな曲づくりを目指す。しかも、オーケストラのメンバー一人一人のつくりだす響きは限りなく美しい。第4楽章も通常我々が聴きなれた「英雄」とは違う。モントゥーは、一音一音を確かめるようにゆっくりと曲を進める。そこには熱狂は少しもないが、逆に作曲家ベートーヴェンの姿がくっきりと現れてくるから不思議だ。ここでもオーケストラの響きは限りなく美しいことを特筆しておく。

 シューベルトの「未完成交響楽」指揮ぶりは、ベートーヴェンの「英雄交響曲」ほど意外性は少ないが、それでもオーケストラの持てる能力を自然に発揮させ、その上で曲づくりをするというモントゥーの真価は発揮されている。第1楽章は、スピード感を持った曲運びが聴いていて心地良いし、統率力のある、全体に締まった指揮ぶりには共感が持てる。第2楽章は、モントゥーの持ち味を最大限発揮させており、自然に盛り上がるオーケストラ響きが何とも心地よい。上辺だけの悲愴感なんてモントゥーはオーケストラに決して求めはしない。あるのは「シューベルトの作曲した未完成交響楽はこんなにも豊かな響きに満ち満ちている」という表現なのだ。そして指揮者とオーケストラの一体感が手のとるように分る演奏だ。凡庸な揮者が演奏するお涙頂戴指揮の演奏とは月とすっぽんなのだ。モントゥーはその人柄から、生涯にわたって、聴衆からもオーケストラのメンバーからも敬愛された指揮者であったわけであるが、このCDを聴いていると、そのことがひしひしと伝わってくる。(蔵 志津久) 

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