★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇コンサート情報

2008-11-28 08:56:20 | コンサート情報

                     

                     <コンサート情報>


シューベルト:弦楽四重奏曲第12番「断章」
ベートーベン:弦楽四重奏曲第8番「ラズモフスキー第2番」
シューマン:ピアノ五重奏曲

ベルリン弦楽四重奏団

ピアノ:仲道郁代

会場:浜離宮朝日ホール(東京)

日時:08年12月2日(火) 午後7時

主催:コンツェルト・ハウス・ジャパン

 ベルリン弦楽四重奏団は、1965年に当時ベルリン歌劇場管弦楽団(ベルリン・シュターツカペレ)のコンサートマスターであったカール・ズスケおよび首席奏者によって結成された。70年には旧東独国家から国家芸術賞を受賞し、同時にベルリン弦楽四重奏団を名乗ることを許される。あくまでドイツ正統派の解釈に基づき、素朴に音楽をつむぎだしていくのが特徴。今回が13回目の日本公演。ピアノの仲道郁代は日本を代表するピアニストの一人。06年/07年はデビュー20周年に当たり2回の「デビュー20周年リサイタル」を行った。07年度、レコードアカデミー賞を含むCD「ベートーベン・ピアノ・ソナタ全集」が絶賛を受ける。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2008-11-26 14:28:57 | コンサート情報

 

                     <コンサート情報>


第5回定期演奏会 ショスタコーヴィチ・プロジェクトⅤ

シュニトケ:弦楽四重奏曲第3番
一柳 彗:弦楽四重奏曲第2番「インタースペース」
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第6番

弦楽四重奏:クヮトロ・ピアチェーリ

会場:王子ホール(東京・銀座)

日時:08年11月29日(土) 午後3時

問い合わせ:東京コンサーツ

 クヮトロ・ピアチェーリの第1バイオリンは大谷康子(東京交響楽団ソロ・コンサートマスター/東京音楽大学教授)、第2バイオリンは斉藤真知亜(NHK交響楽団第1バイオリン・フォアシュピーラー/東京音楽大学非常勤講師)、ビオラは百武由紀(元東京都交響楽団首席奏者/東京シンフォニエッタメンバー/愛知県立芸術大学教授)、チェロは苅田雅治(元東京都交響楽団首席チェロ奏者/東京音楽大学教授/桐朋学園大学講師)。同弦楽四重奏団では現在ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲全曲(全15曲)に取り組んでいるが、今回はその5回目で、弦楽四重奏曲第6番などを取り上げる。これはショスタコーヴィチ50歳の時の作品で、明るい曲調ながら、どこか哀愁が漂う曲。

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◇クラシック音楽◇吉野直子のハープ・リサイタル

2008-11-25 16:34:54 | 器楽曲

ドビュッシー:アラベスク第1/2番
サルツェード:古代様式の主題による変奏曲
リスト:愛の夢第3番
レスピーギ:シチリアーナ
アルベニス:ザラゴーザ

ハープ:吉野直子

CD:CBSソニー 32DC 5002

 ハープという言葉は普通の日本人なら誰でも知っているが、いざ本物のハープの音を聴いたことがあるかと問われて、あるという日本人は意外に少ないかも知れない。私もコンサート会場でオーケストラの一員として演奏しているところのほか、生のハープの演奏はあまり耳にしたことはない。しかも、オーケストラの音は馬鹿でかいといってもいいほど大きいので、繊細で小さな音を奏でるハープの印象はというと結果として薄いものになってしまう。ところが、開演前のコンサート会場で一番先に来ていつも一生懸命に音を調整しているのがチェロとハープ奏者なのである。私は開演前の音の調整を聴きながら「ハープという楽器は調整が難しい楽器なのであろうか。それとも駆け込みで練習をしているだけなのか」と未だに解けぬ謎を追い続けている。

 というわけでハープ独奏のCDは2枚しか持っていない。そしてそのうちの1枚が今回のCD「吉野直子ハープ・リサイタル」である。所有枚数は2枚と少ないのであるが、聴く機会は他のCDと同じか、多いくらいなのであるから我ながら驚いてしまう。特にこの吉野直子の最初のCD(録音は1987年9月)は、何しろジャケットがいい(私は聴く前にジャケットを見て、演奏内容を判断するという間違った性癖がある。ただ本人は8割方これで当たると固く信じている)。床の上で足を交互に曲げ、微笑んでいる吉野直子の写真を見ただけで、その優美なハープの音色が聴こえて来るようではありませんか。実際に聴いてみると、実に繊細で、それでいてぴんと背を伸ばしたような造形美に、聴いていて絵もいわれない気持ちにさせられる。特にサルツェードの古代様式の主題による変奏曲は、このCDの中でも白眉の演奏といってもよかろう。

 こんなにもハープをわがものにしている吉野直子とはと、経歴を見てみればなるほどと納得させられる。1967年にロンドンに生まれる。帰国後3歳で「桐朋学園子供のための音楽教室」に入る。6歳のとき一家で渡米し、ロサンゼルスでマクドナルド女史のもとハープを始める。第1回ローマ国際ハープ・コンクールで第2位に入賞。1985年7月、最も権威のある第9回イスラエル国際ハープ・コンクールで優勝したが、このときまだ17歳の若さだったというから凄い。また、音楽以外のことも広く知っておきたいということから音楽大学には進まず、ICU(国際基督教大学)に入学し、美術史を専攻したというのも、これまた凄い。07年のルツェルン音楽祭ではクラウディオ・アバド指揮のもと、マーラーの交響曲第3番のハープを演奏するなど、現在ますますその演奏に磨きがかかっている。

 私は日本人なのでハープというとすぐに琴とか三味線を思い出してしまう。琴は昔の日本ではしょっちゅう聴かれたが、最近あまり聴いたことがない。琴は日本の楽器であるが日本の楽器の中では西洋音楽とあまりかけ離れてはないなあという印象を前から持っていた(今見たら吉野直子のハープ演奏で宮城道雄の春の海がCDに収録されていた!)。これに比べ三味線は純日本的と思ってきたが、最近吉田兄弟の三味線演奏のCDを聴いて「これなら世界で演奏しても共感を得られるのでは」と思ったほどだ。新しい感覚の演奏は、音楽自体の持つ存在感をも変えてしまうのかもしれない。ところで吉野直子のホームページで今回のCDの以後、16枚のCDが発売されていることが紹介されていた。この中から2枚目の吉野直子のCDを買って、暖かいリスニングルームでハープ三昧の冬の夜でも過ごそうかなと思っている。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2008-11-24 13:06:06 | コンサート情報

 

                     <コンサート情報>

兄妹のコラボレーションによる“全国ツアー”

バッハ:2つのメヌエット
ブラームス:アダージョ
ヴィターリ:シャコンヌ
千住 明:バイオリンとストリングオーケストラの為の「彩霧」

千住 真理子&千住 明トークコーナー

バイオリン:千住 真理子

指揮:千住 明

管弦楽:スーク室内オーケストラ

会場:和光市民文化センター(サンアゼリア)大ホール(埼玉県)

日時:08年11月29日(土) 午後2時

主催:和光市文化振興公社

 バイオリンの千住真理子は、NHK交響楽団と協演し12歳でデビュー。日本音楽コンクールに最年少15歳で優勝、レウカデア賞受賞。パガニーニ国際コンクールに最年少で入賞を果たす。1993年文化庁「芸術作品賞」、1994年村松賞、1995年モービル音楽賞奨励賞受賞。1999年2月、ニューヨーク・カーネギーホールでソロリサイタルを開き成功を収める。CDは、2000年のデビュー25周年記念CDなど、いずれも高い評価を得ている。指揮の千住 明は1960年10月21日生まれ。東京芸術大学作曲家卒業、同大学院を首席で終了。終了作品「EDEN」は史上8人目の東京芸術大学買上となり、同大学美術館「芸術資料館」に永久保存されている。1997年第20回、99年第22回、第27回日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞等、受賞歴多数。東京音楽大学客員教授。チェコのスーク室内オーケストラは、作曲家のヨセフ・スークにちなみ1974年に結成された。2000年までは作曲家の孫に当たるバイオリニストのヨセフ・スークが芸術監督を務め、現在はコンサート・マスターのマルティン・コスがその任を引き継いでいる。2002年にアントン・ドボルザーク世界賞を受賞。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2008-11-21 15:14:01 | コンサート情報

 

                     <コンサート情報>

①ブラームス:交響曲第1~2番
②ブラームス:交響曲第3~4番
③ハイドン:交響曲第92番(オックスフォード)
 マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌
 ベートーベン:交響曲第6番(田園)

指揮:サイモン・ラトル

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

メゾ・ソプラノ:マグラネダ・コジェナー

会場:サントリーホール(東京)

日時:プログラム①08年11月25日(火) 午後7時
   プログラム②08年11月26日(水) 午後7時
   プログラム③08年11月27日(木) 午後7時

主催:フジテレビジョン

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は1882年5月に設立され、現在世界を代表するオーケストラの一つに数えられている。1956年にはヘルベルト・カラヤンが終身指揮者兼芸術監督に就任。カラヤンの辞任後、1990年からはクラウディオ・アバドが第5代常任指揮者に就任した。02年9月、サイモン・ラトルが首席指揮者・芸術監督に就任、現在に至っている。指揮者のサイモン・ラトルは、1955年英国リバプール生まれ。英国王立音楽院で指揮と打楽器を学ぶ。80~98年までバーミンガム市交響楽団首席指揮者兼芸術顧問、次いで音楽監督に就任。94年、音楽界への貢献が認められ爵位を授与され、以後サー・サイモン・ラトルと呼ばれている。メゾ・ソプラノのマグダレナ・コジェナーは、チェコのブルノ生まれ。1995年ザルツブルグの第6回モーツアルト国際コンクールで優勝。03年にはフランス政府から芸術文化勲章・シャヴァリエ賞を授与された。

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◇クラシック音楽◇ベルリン・ブランディス弦楽四重奏団のシューベルト:弦楽四重奏曲第10/9番

2008-11-20 16:55:10 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)

シューベルト:弦楽四重奏曲第10番/第9番

ベルリン・ブランディス弦楽四重奏団

CD:ORFEO(日本グラモフォン)35D-10090(C113 851A)

 クラシック音楽にとって頂点に位置するのがオーケストラおよびオペラであるとするなら、ピアノ、バイオリン、チェロなどの独奏者およびリートがそれを取り巻くパーソナリティ群、そして奥座敷に控えるのが弦楽四重奏団といったと図式になろうか。弦楽四重奏団は常日頃あまり華々しい話題を提供することはないが、その国の音楽のレベルを推し量るには、弦楽四重奏団の質を見ればおおよそのことは分かるといっても間違いではあるまい。私は昔ラジオにしがみつきクラシック音楽を聴いていたときには弦楽四重奏曲が今よりずっと多く流されており、オーケストラと同じくらい、いや身近な存在ではオーケストラ以上に親近感を持っていた。バリリ弦楽四重奏団、ウィーンコンチェルトハウス弦楽四重奏団、ブタペスト弦楽四重奏団、ブッシュ四重奏団、スメタナ弦楽四重奏団、ヴェーグ四重奏団、イタリア弦楽四重奏団、アルバン・ベルク弦楽四重奏団などなど懐かしい名前を今でも思い出すことができる。

 どの位前のことだろうか、深夜ラジオで音楽評論家・山根銀二氏の解説でバリリ弦楽四重奏団によるベートーベンの弦楽四重奏曲の全曲放送などは、正にラジオとにらめっこしながら「何とか全曲を聴いてしまおう」とばかり意気込んで聴いていたのを昨日のように思い出す。今考えると昔の日本のクラシック音楽番組は凄かったなと思う。今のFM放送でベートーベンの弦楽四重奏曲全曲を流す局はあるのか(あったら御免なさい)。昔は当然のごとく流されていたし、ベートーベンのピアノソナタ全曲放送もよく行われていた。

 それに、今考えると可笑しいのだが、山根銀二氏の解説はまるで大学の教授の講義のようで、こちらもその格調高い内容を授業を受けるかのごとく聞いていた。まあ、音楽番組というよりは、今なら差し詰め放送大学に近い内容であった。一曲一曲これはベートーベンが何歳のときにどういう意図で作曲したかを延々と、こと細かに解説するのだ。これでベートーベンという人がどういう人かが手に取るように分かって面白かったのを覚えている。翻って今の音楽放送をみてみると、すべてが“分かりやすい”“短く”“面白く”がモットーで、ベートーベンの弦楽四重奏曲全曲放送などはおよそ避けて通られている。情けないし、悲しいことではある。何故もっと硬派のクラシック音楽評論家や放送ディレクターが出てこないのか。こんな状態だと将来日本のクラシック音楽界は衰退を辿ることになってしまう。喝だ!

 今回のCDはベルリンフィルのメンバーからなる「ベルリン・ブランディス弦楽四重奏団」のシューベルトの弦楽四重奏曲第10番/第9番である。聴くとその音色にたちどころに虜になる。なんとやわらかく、あたたかく、伸びやかな音色であろうか。全身をゆったりとした音色で包まれたような気分に浸れるという、あまり例がないほどの感覚に痺れてしまうほどだ。これがベルリンフィルの実力かと感動させられる。同四重奏団は1976年1月に設立され、すぐ高い評価を得ている。中心メンバーは第1バイオリンのトーマス・ブランディスとチェロのヴォルフガング・ベトヒャー。ブランディスは1962年にベルリンフィルの第1コンサートマスターに就任したが、四重奏活動に専念するために1983年からベルリンフィルを離れた。ベトヒャーは1963年から1976年までベルリンフィルの首席チェロ奏者を務めたあと、同四重奏団の結成に参加した。このCDの録音データを見ると1982年11月、ベルリン、ジーメンス=ヴィラとある。

 ベートーベンの弦楽四重奏曲の話に戻すが、現在のわが国のコンサートは放送とは大違いで、熱心にベートーベン演奏に取り組んでいる。その一つがプレアデス・ストリング・クァルテットである。08年9月15日には第1生命ホール(東京)で「ベートーベン弦楽四重奏曲全曲演奏会Ⅳ」が行われた。私も当日聴いたが、その演奏の素晴らしさには感動させられた。「世界に出ても恥ずかしくないだけの力を持ったクァルテットが誕生した」と思ったものだ。当日の満席の聴衆も惜しみない拍手を送っていたのを思い出す。同クァルテットは09年3月22日(日)に連続演奏会のⅤを行うことにしており、その先も続く。その息の長い活動に拍手を送りたい。このほか古典四重奏団もベートーベン・ツィクルスを続けている。

 そして08年12月31日(!)には東京文化会館で「ベートーベン弦楽四重奏曲(8曲)演奏会」(クァルテット・エクセルシオ/古典四重奏団/ルートヴィヒ四重奏団)が行われることになっている。ジルベスターコンサート(大晦日コンサート)でベートーベンの弦楽四重奏曲8曲が演奏されるのは、世界広しといえどもここだけではないでしょうかね。このように日本のコンサートでのベートーベンの弦楽四重奏曲の演奏は熱心に取り組まれているのにもかかわらず、そのCDにお目にかかれないのは残念なことだ。採算の面で問題があるのだろうが、ここはCDメーカーさんに頑張ってもらって発売してもらえないものだろうか。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2008-11-19 15:05:44 | コンサート情報

 

                     <コンサート情報>


滝澤恭子デビュー20周年シリーズ

ドビュッシー:バイオリンソナタ
イザイ:冬の歌
プーランク:バイオリンソナタ
メシアン:バイオリンとピアノのための幻想曲
フランク:バイオリンソナタ

バイオリン:竹澤恭子

ピアノ:小川典子

会場・日時:いずみホール(大阪) 08年11月22日(土) 午後2時
       紀尾井ホール(東京) 08年11月28日(金) 午後7時

主催:いずみホール=大阪新音/紀尾井ホール=梶本音楽事務所

 バイオリンの竹澤恭子は桐朋女子高校音楽科在学中に第51回日本音楽コンクール第1位、1986年の第2回インディアナポリス国際バイオリンコンクールで優勝し、国際的に名前が知れわたる。1993年第3回出光賞受賞、1999年度愛知県芸術文化選奨文化賞を受賞。使用楽器は日本音楽財団から貸与された1710年製作のストラディヴァリウス。ピアノの小川典子は1987年リーズ国際コンクール第3位入賞を機にロンドンと東京を拠点として活躍。01年英国の著名なピアニストのキャサリン・ストッツ
とピアノデュオを結成。1999年文化庁芸術選奨文部大臣新人賞受賞。06年川崎市文化賞受賞。

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◇クラシック音楽◇キャサリン・ストッツの“ラフマニノフ・ピアノ・コレクション”

2008-11-18 16:53:19 | 器楽曲(ピアノ)

ラフマニノフ・ピアノ・コレクション

前奏曲集 作品23 第1番~第4番
前奏曲 嬰ハ短調 作品3の2
メロディ ホ短調 作品3の3
道化師 作品3の4
コレルリの主題による変奏曲 作品42
愛の悲しみ(クライスラー/ラフマニノフ編曲)
愛の喜び(クライスラー/ラフマニノフ編曲)

ピアノ:キャサリン・ストッツ

CD:NECアベニュー CDCF-159/NACC-5525

 最近私はラフマニノフが大好きになり、昔買っておいたCDを奥から引っ張り出して聴いている今日この頃である。そんなことで、今回の1枚も昔買っておいて、これまであまり聴いてこなかったCDをじっくりと聴いてみた。録音は1987年のようで今から20年以上前ということになるが、音質は上々の出来栄えでピアノの音質をダイナミックに聴くことができる。昔何故このCDを購入したかというと、ジャケットのキャサリン・ストッツの顔つきに思わず引き込まれ買ってしまったというのが本当のところである。通常、女流演奏家が顔写真を撮らせる場合は、にっこりと微笑むのが普通である。ところがストッツはというと、まるでベートーベンのような風貌でカメラに向かって睨んでいるではないか。「う~ん これは只者ではない」というのが第一印象で、当時どういうピアニストかあまり知らずに買ってしまったわけである。

 で、今回このCDをじっくりと聴いてみると・・・やはり、演奏内容もそん所そこらにいるピアニストとは段違いの力量を持っているということを認識させられた。もし、何の前知識なしにこのCDを聴いたら多くの人が男性ピアニストと思うに違いない。ストッツはそれほど力感に溢れたピアニズムの持ち主なのだ。中音から低音にかけての力強さは思わずリヒテルのピアノタッチを連想してしまったほどである。ここで演奏された曲はすべて、実に生き生きとスケールの大きな彼女のピアノ演奏で、従来の固定概念に捉われたラフマニノフ像を根底から崩してしまう。「ラフマニノフのピアノ独奏曲はこんなにも雄大で逞しかったのか」と改めて思い知らされた。モーラ・リンパニーのラフマニノフの演奏も凄かったが、彼女の演奏はどこかに女性らしさが隠されていて、和めた。ところがストッツのラフマニノフの演奏には一部の隙もない、緊張感溢れる濃厚な演奏に仕上がっている。特に「コレルリの主題による変奏曲」は彼女の演奏技術が十二分に駆使され、多分同曲のCDの中でトップの内容となっているのではないか。

 キャサリン・ストッツはリーズ国際ピアノコンクールで一躍全英の注目を集め、ロイヤル・フィルやBBC交響楽団など英国の一流オーケストラと数多くの協演を行い、次第に英国以外に活動の場を広げることとなる。若き日のチェリスト・ヨー・ヨー・マとのデュオは評判を呼んだようだ。CDに若き日の演奏としてフォーレやドビュッシーをはじめ、このラフマニノフなどが残されている。

 ところで、このCDの最後にクライスラーが作曲しラフマニノフが編曲した「愛の悲しみ」と「愛の喜び」が、アンコール曲のように付けられているが、この2曲は編曲が素晴らしく、ストッツの演奏もあたかもラフマニノフの想いが乗り移ったかのような熱演を聴かせる。クライスラーは名バイオリニストであると同時にバイオリンの名曲を数多く残した作曲家でもあった。一方、ラフマニノフは名ピアニストであると同時に数多くの名曲を残した作曲家であった。そんなことで何かラフマニノフはクライスラーに対してかなりの親近感を持っていたのではないか。2曲の編曲を聴くとそのことが思い浮かぶ。ピアノで聴く「愛の悲しみ」「愛の喜び」は実に素晴らしい。今後コンサートで取り上げるピアニストが出てきてほしいものだ。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2008-11-17 15:38:38 | コンサート情報

 

                     <コンサート情報>


バッハ:組曲第1番
ヴィヴァルディ:ソナタイ短調
バッハ:組曲第3番
ヴィヴァルディ:ソナタ変ロ長調
バッハ:チェロ組曲第5番
ヴィヴァルディ:ソナタホ短調

チェロ:マリオ・ブルネロ

通奏低音:ブルネロ・バロック・エクスペリエンス

会場:紀尾井ホール(東京)

日時:08年11月21日(金) 午後7時
   08年11月23日(日) 午後2時

主催:新日鉄文化財団

 チェロのマリオ・ブルネロは、1960年イタリア生まれ。1986年イタリア人として初めて第8回チャイコフスキー国際コンクールに優勝。1987年に第3回「東京の夏 音楽祭」のため初来日し、話題を呼ぶ。現在、世界屈指の名チェリストとして世界的に活躍する。近年は指揮者としても活動し、好評を得ている。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2008-11-14 15:09:11 | コンサート情報

 

                     <コンサート情報>


バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番
コダーイ:チェロソナタ
シュニトケ:チェロソナタ第1番
プロコフィエフ:チェロソナタ

チェロ:山崎 信子

ピアノ:ヴァディム・サハロフ

会場:津田ホール(東京・千駄ヶ谷駅前)

日時:08年11月20日(木) 午後7時

主催:津田塾大学

 チェロの山崎信子は広島生まれ。第44回日本音楽コンクール・チェロ部門第1位。桐朋学園大学音楽学部卒業後、文化庁海外派遣研修員として、2年間ジュネーブでピエール・フルニエに師事。帰国後、内外の主要オーケストラと協演を行う。また、カザルスホール・チェロ連続演奏への出演のほか、現在、プレアデス・ストリング・カルテットの主軸としてベートーベンの弦楽四重奏曲全曲演奏に取り組んでいる。1987年に「村松賞」「グローバル音楽賞第1回奨励賞」受賞。現在、東京芸術大学准教授。ピアノのヴァディム・サハロフは、バクーに生まれ、旧ソビエト圏内で活動を開始。1989年にはフランスに移住し、ヨーロッパ各地で活躍する。クレーメルには「ギレリス、リヒテルの後を継ぐ本格派ピアニスト」と賞賛された。

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