★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇コンサート情報

2016-03-31 07:49:28 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~東京交響楽団首席オーボエ奏者  荒木奏美  オーボエ・リサイタル~

バッハ:フルート・ソナタ ホ長調 BWV1035
シューマン:幻想曲集 op.73
スカルコッタス:ソロ・オーボエとピアノ伴奏のためのコンチェルティーノ
細川俊夫:「スペル・ソングー呪文のうたー」オーボエのための
       (「第11回 国際オーボエコンクール・軽井沢」のための公益財団法人ソニー音楽財団委嘱作品)
ブリテン:幻想曲 op.2
モーツァルト:オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370
パスクッリ:「椿姫」の楽しい思い出
 
オーボエ:荒木奏美

ヴァイオリン:水谷 晃
ヴィオラ:青木篤子
チェロ:伊藤文嗣
ピアノ:宇根美沙惠

会場:上野学園 石橋メモリアルホール

日時:2016年4月12日(火) 午後7時

 東京交響楽団首席オーボエ奏者の荒木奏美は、第11回「 国際オーボエコンクール・軽井沢」で第1位「大賀賞」を受賞したが、今回はこの受賞記念演奏会で、「東京・春・音楽祭」の一環として開催される。東京交響楽団の実力派演奏者たちなどが共演。

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◇クラシック音楽◇NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー

2016-03-29 13:49:08 | NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー

~マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団 来日公演~          
                              

ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
シベリウス:バイオリン協奏曲
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番から第4楽章“アレグロ”(アンコール)
ブラームス:交響曲第1番
        交響曲第3番から第3楽章(アンコール)

ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン

指揮:マレク・ヤノフスキ

管弦楽:ベルリン放送交響楽団
                              
収録:2015年3月16日、東京・サントリーホール

放送:2016年3月24日(木) 午後7:30~午後9:10

 今夜のNHK‐FM「ベストオブクラシック」は、ベルリン放送交響楽団来日公演から、ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲、シベリウス:バイオリン協奏曲、ブラームス:交響曲第1番の放送である。指揮はマレク・ヤノフスキ、ヴァイオリンはフランク・ペーター・ツィンマーマン。ベルリン放送交響楽団(RSB)は、ベルリンに本拠を置くオーケストラ。創設は1923年。第二次世界大戦後は東ベルリン側に属し、DDRラジオ放送局の放送オーケストラとなった。ドイツ再統一後の1994年に、RIAS室内合唱団、ベルリン放送合唱団、ベルリン・ドイツ交響楽団を所有する会社の傘下に入った。これまでの首席指揮者には、オイゲン・ヨッフム(1932年―1934年)、セルジウ・チェリビダッケ(1945年―1946年)、ヘルマン・アーベントロート(1953年―1956年)、ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス(1994年―2000年)などが名を連ねてきた。そして、2002年からマレク・ヤノフスキが首席指揮者に就任している。

 指揮のマレク・ヤノフスキ(1939年生まれ)は、ポーランド出身。フライブルクやドルトムントの歌劇場で音楽監督を務めた後、欧米各地のオーケストラを指揮。これまで、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団の音楽監督および首席指揮者を歴任するなど、常に一流オーケストラを指揮してきたことが分かる。そして、2002年から、ベルリン放送交響楽団の首席指揮者を務めている。ヴァイオリンのフランク・ペーター・ツィンマーマン(1965年生まれ)は、ドイツ出身。エッセンのフォルクヴァング音楽院で学ぶ。1976年「全国青少年音楽家コンクール」で優勝。その後、ベルリン芸術大学で学ぶ。初来日は1983年。現在、ドイツを代表するヴァイオリニストの一人として、高い評価を得ている。

 今夜の最初の曲は、ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲。この曲でのマレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団の演奏は、曲に真正面から取り組む姿勢が如実に聴き取れた。リスナーも思わず襟を正して聴き入るといった塩梅の演奏内容である。ただし、音楽がコンコンと湧き出すような演奏スタイルであるため、堅苦しさを感じさせないところは流石。2曲目は、シベリウス:バイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は、フランク・ペーター・ツィンマーマン。この協奏曲は1903年に作曲されたが、1905年に、よりシンフォニックな形に改訂された。現在通常演奏されるのは、この改訂版。通常のヴァイオリン協奏曲が、ヴァイオリンの名人芸的要素を多分に取り入れているのに対し、シベリウス:バイオリン協奏曲は、ヴァイオリンとオーケストラとが対等に渡り合い、高度な技巧をヴァイオリン独奏者に要求する難曲に一つに数えられている。今夜のツィンマーマンの演奏は、如何にもドイツ音楽の正統的な演奏家の第一人者らしく、重厚に、大きなスケールで弾き通し、見事な出来栄えと言ってよかろう。そしてマレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団の伴奏のど迫力ぶりといったら、半端なものでない。このため、この協奏曲の特徴が十二分に発揮された演奏になったようだ。

 最後の曲は、ブラームス:交響曲第1番。この曲は、着想から完成まで21年が費やされ、1876年に完成した。ブラームスは初演後も種々の改定を加えた。よく「ベートーヴェンの交響曲第10番」と言われる。この交響曲第4楽章の第1主題はベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章の「歓喜の歌」を思わせることなどからそう言われるのであろう。しかし、そのことは、ベートーヴェンの模倣ということでなく、ブラームスは、ベートーヴェンの交響曲の延長線上に、自分の最初の交響曲を位置づけた結果にほかならない。マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団は、この交響曲の演奏で持てる力をフルに発揮した感じだ。マレク・ヤノフスキの指揮ぶりが凄い。その集中力の高さは、現役の指揮者の中でも一、二を争そうのではなかろうか。鋼鉄のような頑強な曲のつくりは、ドイツのオーケストラの真髄に触れる思いがした。今夜のマレク・ヤノフスキの指揮を聴きながら、私は、「何となくフリッチャイやシューリヒトの指揮を思い起こさせるなあ」と感じ入ってしまった。マレク・ヤノフスキは、日本では、そう有名な指揮者ではなさそうであるが、今夜の演奏を聴くと「巨匠マレク・ヤノフスキ」の実力や恐るべし、なのである。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2016-03-28 10:43:14 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~マウリツィオ・ポリーニ ピアノ・リサイタル~

シューマン:アレグロ ロ短調 op.8
        幻想曲 ハ長調 op.17
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 op.60
      2つのノクターン op.55
      子守歌 op.57
      ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53「英雄」

ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ

会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

日時:2016年4月9日(土) 7時

 ピアノのマウリツィオ・ポリーニ(1942年生まれ)は、イタリア・ミラノ出身。1958年ジュネーブ国際コンクールで1位なしの第2位。1960年、18歳で第6回ショパン国際ピアノコンクール優勝。1974年、初来日。現役で最も高い評価を受けているピアニストのうちの一人。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2016-03-25 10:37:22 | 新譜CD情報

 

<新譜CD情報>

 

~小菅 優のベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集第5巻「極限」 若きピアニストが挑むベートーヴェン、ついに最終章~

小菅 優

<DISC 1>

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」
          ピアノ・ソナタ第12番「葬送」
          ピアノ・ソナタ第22番
          ピアノ・ソナタ第23番「熱情」

<DISC 2>

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番
          ピアノ・ソナタ第31番
          ピアノ・ソナタ第32番

録音:2015年8月、水戸芸術館

ピアノ:小菅 優

CD:ソニーミュージックジャパン SICC-19004~5

 このCDは、小菅 優が2011年から着手したベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集録音の最終章。<DISC 1>に「悲愴」と「熱情」、そして<DISC 2>に「30~32番」の後期三大ソナタを収録。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2016-03-24 09:01:12 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~名指揮者サー・ネヴィル・マリナー、91歳にしての来日公演~

プロコフィエフ:交響曲第1番「古典交響曲」
ヴォーン・ウィリアムズ:トマス・タリスの主題による幻想曲
ベートーヴェン:交響曲第7番

指揮:サー・ネヴィル・マリナー

管弦楽:アカデミー室内管弦楽団

会場:東京オペラシティ コンサートホール

日時:2016年4月9日(土) 午後2時

 名指揮者サー・ネヴィル・マリナー、91歳にしての来日公演。1958年、ロンドンの中心部の教会に誕生した「アカデミー・オブ・セントマーティン・イン・ザ・フィールズ(通称:アカデミー室内管弦楽団)」との歴史的な演奏会。

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◇クラシック音楽◇新刊情報

2016-03-22 12:41:39 | 新刊情報

 

<新刊情報>

 

書名:クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり! 

著者:中村洋子

発行:ディスクユニオン

 中村洋子・アナリーゼ講座(人気ブログ「音楽の大福帳」)を補筆し、歴史的名演奏のCD解説も収録したのが同書。音大生の99%は、基本的な「和声」「対位法」を理解できていない。それは西洋クラシックの基礎であるバッハを本当に学んでいないからなのだ。譜例を基に作品をアナリーゼする。
 
 

 

書名:アメリカを歌で知る
 
著者:ウェルズ恵子

発行:祥伝社

 アメリカが自由の国として輝いていた時代、そこにはいつも歌があった。戦後の荒廃の中、歌う楽しさ、歌う喜びをもたらしてくれた、アメリカの歌たち。それらの歌にはどのようなルーツがあり、なぜ長く歌い継がれてきたのか。新天地アメリカが発展し、国土が拡大していく過程で、歌に人々は何を求め、何を託してきたのか。そして、それらの歌は、なぜ後世に遺ったのか。
 


 

書名:ベートーヴェン 器楽・室内楽の宇宙

著者:中村孝義

発行:春秋社

 ベートーヴェンが音楽で成し遂げた一大革命とは?彼が最も愛したピアノ、そして弦楽器による純粋器楽の室内楽作品の成り立ちと音楽の構造を詳細に解読。人間の情感を余すところなく描き、世界と人間精神の究極の理想を指し示す、その音楽の力の源をさぐる。

 

 

書名:「音大卒」の戦い方~音大生が自立するために今からすべきこと~

著者:大内孝夫

発行:ヤマハミュージックメディア

  「音大を出てどうする?」「音大を出たけれど思ったような人生になっていない」 そんな悩みを持つ方は数多くいると思う。しかし「音大での経験」は、社会で生きるための強力な武器になるのだ。同書では、音大生の持つ潜在的な力や可能性を紹介するとともに、音大生、音大卒業生がどのように自立し、豊かな人生を送れるかを、これから実践できる手法を交えて詳細に解説。 銀行出身、現音楽大学勤務の著者が、本音でガイドする。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2016-03-21 09:58:47 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン ウィーン・プレミアム・コンサート~

バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 
ドニゼッティ:クラリネット小協奏曲 
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

ヴァイオリン:フォルクハルト・シュトイデ、小林美樹
クラリネット:ペーター・シュミードル
ピアノ:山本貴志

管弦楽:トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン
 
会場:サントリーホール

日時:2016年4月8日(金)  午後7時

 「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」は、ウィーン・フィル及びウィーン国立歌劇場のメンバーを中心に、ヨーロッパで活躍するアーティスト仲間たちも加わった30名による特別編成オーケストラ。同オーケストラによるコンサートは、これまでに計89公演、来場者は15万人を超える。


 

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2016-03-18 10:48:09 | 新譜CD情報

~服部隆之:NHK大河ドラマ「真田丸」オリジナル・サウンドトラック~

真田丸

  服部隆之: NHK大河ドラマ「真田丸」の付随音楽

           1. 真田丸 メインテーマ
           2. 作戦決行
           3. 出港!真田丸
           4. 後に日本一の兵と呼ばれる男
           5. 四面楚歌
           6. 忍
           7. ふたりでひとつ
           8. 行軍
           9. 作戦成功
           10. 落城
           11. 栄枯盛衰
           12. 陽はまた昇る
           13. 岐路
           14. あこがれ
           15. 小国がゆえ
           16. 偉大な背中
           17. 絆
           18. 時代を作った男たち
           19. 祈り
           20. 家康という男
           21. 戦国狂想曲
           22. 激戦
           23. 静心なく
           24. 軍略
           25. 動乱
           26. 謀反
           27. 首桶
           28. 六文銭
           29. 真田の郷
           30. 真田丸紀行

指揮:下野竜也

管弦楽:NHK交響楽団

ヴァイオリン:三浦文彰

ピアノ:辻井伸行

CD:エイベックス・クラシックス AVCL‐25888

 このCDは、NHK大河ドラマ「真田丸」オリジナル・サウンドトラック 。三谷幸喜(脚本)×服部隆之(作曲)のコンビによるNHK大河ドラマは、大ヒット作「新選組」以来。ヴァイオリンソロを全編にフューチャーしたテーマ曲は、ヴァイオリニスト三浦文彰が下野竜也指揮NHK交響楽団と熱演。そして、番組の最後を飾る紀行のテーマには、ピアニスト辻井伸行も登場。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2016-03-17 05:01:04 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~坂本龍一が音楽監督を務める「東北ユースオーケストラ」 第1回演奏会~

坂本龍一:ラストエンペラー/母と暮せば
ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー
チャイコフスキー:交響曲第5番   ほか

指揮:柳澤寿男

管弦楽:東北ユースオーケストラ

音楽監督/ピアノ:坂本龍一

ピアノ:山下洋輔

朗読:吉永小百合

司会:渡辺真理

会場:東京オペラシティ コンサートホール

日時:2016年3月26日(土) 午後2時

 東北ユースオーケストラ(音楽監督:坂本龍一)は、2013年9月から10月にかけて、宮城県松島町にて開催された東北と世界をつなぐ音楽祭「ルツェルン フェスティヴァル ARK NOVA 松島 2013」をきっかけに企画・編成されたオーケストラ。楽団員は東日本大震災の被災三県(岩手県・宮城県・福島県)を中心に、ふだんは異なる組織で演奏をしている小学校・中学校・高等学校の子どもたちが、プログラム(演奏)ごとに楽団編成を変えながら活動する。東北ユースオーケストラの活動は、単なる演奏目的にとどまりまらない。東北の子供たちが、優れた音楽家による指導や演奏をはじめ、普段は会うことのないさまざまな人々との交流を通じて世界を知り、沢山の仲間たちとともに経験していく「成長の場」でもある。

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◇クラシック音楽CD◇ベロフのプロコフィエフ:ピアノ協奏曲全集(第1番~第5番)他

2016-03-15 16:26:31 | 協奏曲(ピアノ)

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲全集(第1番~第5番)
         ヘブライの主題による序曲Op.34
         束の間の幻影Op.22(第1曲~第20曲)

ピアノ:ミシェル・ベロフ

指揮:クルト・マズア

管弦楽:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

クラリネット:ミシェル・ポルタル

弦楽四重奏:パレナン四重奏団

CD:EMIミュージック・ジャパン TOCE16144~5

 セルゲイ・プロコフィエフ(1891年―1953年)は、ウクライナ地方南部のソンツォフカ村に生まれた。5歳の時から作曲を始めたというから、その早熟ぶりが窺える。そして、11歳の時に交響曲を、12歳の時にはオペラを作曲したという。13歳でサンクトペテルブルク音楽院に入学。同音楽院卒業試験でバッハのフーガと自作のピアノ協奏曲第1番を弾き、アントン・ルビンシテイン賞を得ている。26歳の時、ロシア革命が起こり、これが引き金となり、日本を経由してアメリカに渡る。この時のプロコフィエフの日本滞在は、ヨーロッパの大作曲家の初の訪問となり、演奏会を開催するなどして、当時の日本楽壇に少なからぬ影響を及ぼした。

 その後、プロコフィエフは帰国するが、57歳の時、ジダーノフ批判の対象となり作曲活動を制限されてしまう。ジダーノフ批判とは、労働者階級に寄与しない芸術活動は排除するもので、多くの芸術家が命を絶つという悲惨な現実が待っていた。それでも、作曲活動を続けられたというのは、既にプロコフィエフは、世界的名声をえており、旧ソ連政府といえども、そう簡単に手出しができなかったからと言われている。プロコフィエフが死んだのは、1953年3月5日であり、偶然にもスターリンが死んだ同じ日の3時間前であった。スターリンの死はたちどころに世界に知られたが、プロコフィエフの死は、ほとんど誰にも知られることはなかった。

 そんなプロコフィエフのピアノ協奏曲全集(第1番~第5番)とヘブライの主題による序曲Op.34、それに束の間の幻影Op.22(第1曲~第20曲)を収録したのがCD2枚組のこのアルバムで、フランスの名ピアニストのミシェル・ベロフが弾いている。そして伴奏指揮は、昨年惜しまれつつこの世去ったクルト・マズア(1927年―2015年)である。プロコフィエフは旧ソ連政府の弾圧の対象になったが、最後まで作曲の筆を折ることはなかった。一方、クルト・マズアは、優れた指揮者であると同時に、ドイツ統一の際の英雄としてドイツ国民から崇拝された。そんなことを考えると、このCDは、何か因縁めいた録音に思えてくる。

 ドビュッシー、メシアンなど近代フランス音楽の演奏で知られるミシェル・ベロフ(1950年生まれ)は、フランスのピアニスト。パリ音楽院に進み1966年に首席で卒業。1967年第1回オリヴィエ・メシアン国際コンクール優勝。1970年メシアンの「幼な児イエズスに注ぐ20のまなざし」の全曲演奏を行い注目される。しばしば来日しており、日本でもファンが多い。ベロフは、一般的には、ドビュッシーやラヴェルといったフランス印象主義音楽、さらにバルトークやメシアンのスペシャリストとしての印象が強いが、一方で、リストやムソルグスキー、プロコフィエフといったヴィルトゥオーソ向けの難曲も得意としている。

 このCDで、超絶技巧を必要とするプロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番~第5番を、ベロフは唖然とするほどのテクニックで弾きこなしている。しかし、それは内容が空疎なヴィルトゥオーソではなく、プロコフィエフの現代的で、リズム感覚に溢れた、力強い作曲様式を的確に捉え、その特徴を余すところなくリスナーに届けてくれる。このため、このCDで、プロコフィエフのピアノ協奏曲全曲(第1番~第5番)を一気に聴き続けても、少しも長いとは感じられない。限りなく充実した演奏内容に仕上がっているのである。一方、同じプロコフィエフの「ヘブライの主題による序曲」と「束の間の幻影」では、フランス音楽を得意とする、いかにもベロフらしい、微妙なニュアンスの表現力が光る。ベロフのように、超絶技巧と同時に微妙なニュアンスを併せ持っているピアニストを、私はほかに聴いたことがない。(蔵 志津久)

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