★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇新譜DVD情報

2014-04-29 10:24:29 | 新譜DVD情報

 

<新譜DVD情報>



~シャイー&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のマーラー:交響曲第2番「復活」(ライヴ録音)~

マーラー:交響曲第2番「復活」

指揮:リッカルド・シャイー

管弦楽:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

収録:2011年5月、ライプツィヒ(ライヴ録音)。

DVD:キング・インターナショナル KKC9071~2

 リッカルド・シャイー(1953年生まれ)は、イタリア・ミラノ出身の指揮者。ローマの音楽院を卒業した後、シエナのキジアーナ音楽院などで学ぶ。14歳で指揮者としてデビュー。1982年から1989年までベルリン放送交響楽団(現在のベルリン・ドイツ交響楽団)の首席指揮者を務める。1988年ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の常任指揮者に就任。2005年ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団カペルマイスターおよびライプツィヒ歌劇場の音楽総監督に就任。2015年より、ダニエル・バレンボイムの後任として、ミラノ・スカラ座の音楽総監督に就任する予定。このDVDの交響曲第2番「復活」は、作曲者歿後100周年を記念して、2011年5月に地元ライプツィヒで行われた「国際マーラー音楽祭」での模様を収録。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2014-04-28 10:00:49 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~モイツァ・エルトマン(ソプラノ) & グザヴィエ・ドゥ・メストレ(ハープ) デュオリサイタル~

シューベルト:至福/死と乙女/野ばら/月に寄せて
モーツァルト:ピアノソナタ第16番(ハープ・ソロ)
R.シュトラウス:万霊節/私の思いのすべて/セレナーデ
スメタナ:モルダウ(ハープ・ソロ)
ヴェルディ: 歌劇「リゴレット」より「慕わしき人の名は」
プッチーニ:歌劇「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父さん」
ほか

ソプラノ:モイツァ・エルトマン

ハープ:グザヴィエ・ドゥ・メストレ

会場:東京オペラシティ コンサートホール

日時:2014年4月30日(水) 午後7時

 ソプラノのモイツァ・エルトマンは、ハンブルク生まれ。ケルン音楽大学で学ぶ。2002年、ドイツ連邦コンクールで1位並びに現代音楽特別賞受賞。06年、モーツァルト「ツァイーデ」のツァイーデ役でザルツブルクにデビュー。以後、世界の主要オペラハウスに出演し、現在、最も注目されているソプラノの一人。

 ハープのグザヴィエ・ドゥ・メストレは、16歳の時に、パリ・ハープ・コンクールで優勝。その後、主要な国際コンクールで数々の賞を受賞。98年、世界で最も権威のあるUSA国際ハープ・コンクールで優勝。その翌年、ウィーン・フィルのソロ・ハーピストに就任、2010年まで務め、以後、ソロ活動を行う。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2014-04-25 11:21:55 | 新譜CD情報

 

<新譜CD情報>

 

~テノールのヨナス・カウフマンが歌うシューベルト:歌曲集「冬の旅」~

シューベルト:歌曲集「冬の旅」

テノール:ヨナス・カウフマン

ピアノ:ヘルムート・ドイチュ

CD:ソニーミュージックジャパン SICC30151

 テノールのヨナス・カウフマンは、ミュンヘン音楽大学で学び、1994年ザールブリュッケン州立劇場でプロデビュー。2009年バイエルン州立歌劇場で<ローエングリン>タイトルロールを歌い、絶賛を博す。2010年バイロイト音楽祭のデビューを果たす。シューベルト:歌曲集「冬の旅」は、もともとはテノールの音域のために書かれた。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2014-04-24 11:22:02 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番「幻想」

ピアノ: 伊藤 恵

会場:紀尾井ホール

日時:2014年4月29日(火/祝)

 ピアノの伊藤 恵は、名古屋市出身。桐朋女子高等学校、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学、ハノーファー国立音楽大学で学ぶ。1983年、ミュンヘン国際音楽コンクール・ピアノ部門で優勝。現在、東京芸術大学音楽学部器楽科・准教授。

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◇クラシック音楽◇NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー

2014-04-22 10:24:30 | NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー

 

<NHK‐FM「ベストオブクラシック」レビュー>

 

~第15回ショパン国際ピアノコンクール優勝者 ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル~

バッハ:パルティータ第3番
                              
ベートーヴェン:ピアノソナタ第7番 
               
ショパン:ノクターン 作品32第2    
     軍隊ポロネーズ 作品40第1         
     ポロネーズ 作品40第2
     マズルカ 作品63第1/作品63第2/作品63第3
     スケルツォ第3番 
                              
ベートーヴェン:ピアノソナタ第2番から第3楽章(アンコール)
                              
ショパン:前奏曲 作品28第7(アンコール)      

ピアノ:ラファウ・ブレハッチ

収録:2013年7月3日、ドイツ・ラインガウ ヨハニスベルク城フュルスト・フォン・メッテルニヒ・ザール

提供:ヘッセン放送協会

放送:2014年3月3日(月) 午後7:30~午後9:10

 今夜のNHK‐FM「ベストオブクラシック」は、“ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル”。ラファウ・ブレハッチ(1985年生まれ)は、ポーランド出身のピアニスト。ブレハッチは、ルービンシュタイン音楽学校を卒業後、フェリクス・ノヴォヴィエイスキ音楽大学で学ぶ。2003年の第5回浜松国際ピアノコンクールで初めて国際コンクールに参加し、1位なしの2位の入賞を果たす。2004年に第4回モロッコ国際ピアノコンクールで優勝。そして2005年、第15回ショパン国際ピアノコンクールで優勝した。この時同時に、マズルカ賞・ポロネーズ賞・コンチェルト賞・ソナタ賞も併せて受賞し、一躍世界にその名が知られるようになった。意外なことに、ポーランド人の優勝者は、1975年の第9回コンクールのツィマーマン以来30年ぶりだったという。2014年1月には、4年に1回、優秀かつ有望な演奏家に贈られるギルモア賞を受賞した。ギルモア賞は、匿名の6人のメンバーで構成する芸術諮問委員会が、ノミネートされた候補者を時間をかけて専門的に評価し、その音楽の才と演奏能力を、様々な状況で行われた、数多くの演奏を通して査定するもの。4年の選考期間の間、候補者は選考対象となっていることを知らされないという。今回、ブレハッチは「あり余るヴィルトゥオジティと深い音楽の才」と評価され受賞した。要するにブレハッチは現在、名実ともに世界のトップの座にあるピアニストの一人なのである。

 最初の曲は、バッハ:パルティータ第3番。これは全6曲からなるパルティータ(クラヴィーア練習曲集第1巻)の中の1曲。パルティータとは、統一性をもって構成された組曲を意味する。クラヴィーアとは、鍵盤楽器の総称で、バロック時代にはチェンバロのほか、クラヴィコード、フォルテピアノなどを指す。バッハは、パルティータ第1番を1726年、第2番と第3番を1727年、第4番を1728年、第5番と第6番を1730年に出版したが、1731年にこれらをまとめて、新たにクラヴィーア練習曲第1巻として出版した。バッハは、その後クラヴィーア練習曲集を第4巻まで出版している。なお、練習曲と付いていても技巧的練習曲を指すわけではない。クラヴィーア練習曲集第1巻(パルティータ)は、イギリス組曲、フランス組曲、平均律クラヴィーア曲集と共にバッハの代表的クラヴィーア組曲集として、現在でも多くのピアニストによって演奏されている。パルティータ第3番は、ファンタジア、アルマンド、コレンテ、サラバンド、ブルレスカ、スケルツォ、ジーグからなる。ここでのブレハッチの演奏は、軽快で、しかも確信に満ちたピアノタッチの美しさにリスナーは酔わされる。テンポは中庸を得たもの。そして、その空間には奥深さが感じられ、バッハの深遠さを覗き見る思いがする。私は、聴き進むうちに、知らず知らずのうちにディヌ・リパッティの録音を思い出していた。

 次の曲は、ベートーヴェン:ピアノソナタ第7番。ベートーヴェンは、21歳の時、ボンからウィーンに移り、最初はピアノストとして、後からは作曲家として徐々に名声を得ることになる。ピアノソナタ第7番は、そんな新進気鋭のベートーヴェンが取り組んだ意欲作だ。1798年に作品10としてまとめられた3曲のピアノソナタのうちの第3曲目。作曲時期は、1797年から1798年にかけて作曲されたと思われる。ベートーヴェンは、ピアノソナタの第1番~第4番までを全て4楽章構成で作曲した。これは、ハイドンやモーツァルト時代から見ると、随分思い切った革新的取り組みであり、若きベートーヴェンの意気が読み取れる。その後作曲した第5番と第6番で3楽章構成変えている。そして、この第7番においては再び4楽章構成に戻したのだ。あたかも初心に立ち戻るかのように。それだけに内容の充実した作品に仕上がっている。第2楽章では、作者後期の作品にも通じる、深みのある部分を垣間見させている。ここでのブレハッチの演奏は、如何にも人間臭いベートーヴェン像を描いて見せてくれる。青年ベートーヴェンの心意気が鍵盤から零れ落ちそうだ。今のブレハッチの心情は、丁度若き日のベートーヴェンに共感を覚えるかのように、生き生きした演奏内容に、聴き惚れることしきり。第1楽章では弾む心を存分に発揮させ、第2楽章では後期の作品にも通じる深遠さを表現し、第3楽章では、揺れ動く若者の情感を、そして第4楽章はまとまりの良い構成美を披露してくれた。

 そして、ブレハッチのお得意のショパン作品集へと移る。曲目は、ノクターン作品32第2、軍隊ポロネーズ作品40第1、ポロネーズ 作品40第2、マズルカ 作品63第1/作品63第2/作品63第3、それにスケルツォ第3番である。ブレハッチのショパン演奏は、幻想的で、優雅な気分が覆い尽くす。そして、少しも線が細くならないのがいい。音色は丸みを帯び、刺々しいところがないのが好感が持てる。この辺は、ショパンと同じポーランド出身という、理屈を越えたものが大きくものを言っているようにも感じられる。第15回ショパン国際ピアノコンクールで優勝した時、ブレハッチの容貌がどこかショパンに似ていることが話題になったように、内面の精神的なものまでも似ているかもしれない。そのことが最もよく出ていたのが、作品63第1/作品63第2/作品63第3の3曲のマズルカの演奏だったように思う。詩情を湛えたその演奏は、テクニックを越えて別次元の空間に、リスナーを誘ってくれるかのようだ。そして、最後のスケルツォ第3番の演奏では、持てる力を全力で投入する迫力を聴かせてくれた。ただ、ブレハッチの場合は、こんな時でもバランスの良い音楽にまとめ上げるだけの高い能力を持ち合わせているところが、他のピアニストとは一線を画している。(蔵 志津久)  

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2014-04-21 11:32:42 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~ラン・ラン ピアノ・リサイタル~

モーツァルト: ピアノ・ソナタ第5番/第4番/第8番

ショパン:バラード第1番/第2番/第3番/第4番

ピアノ:ラン・ラン

会場:サントリーホール

日時:2014年4月26日(土)  午後7時

 ラン・ラン(1982年生まれ)は、中国出身のピアニスト。1997年に渡米し、フィラデルフィアのカーティス音楽院で学ぶ。2002年、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭においてレナード・バーンスタイン賞の最初の受賞者となる。2008年北京五輪開会式で演奏を行う。

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◇クラシック音楽◇新譜CD情報

2014-04-18 10:58:33 | 新譜CD情報

 

<新譜CD情報>

 

~アルゲリッチ&アバドの2013年3月のルツェルン音楽祭におけるライブ録音盤~

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番/第25番

ピアノ:マルタ・アルゲリッチ

指揮:クラウディオ・アバド

管弦楽:ルツェルン音楽祭管弦楽団

CD:ユニバーサルミュージック(ドイツ・グラモフォン) UCCG1649(ライブ録音)

 イタリア出身の名指揮者のクラウディオ・アバド(1933年―2014年)は、2014年1月に死去した。ウィーン国立歌劇場音楽監督、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督と世界のクラシック音楽の頂点に立った指揮者であった。このCDは、2013年3月に行われたルツェルン音楽祭のライヴ録音盤。

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2014-04-17 13:45:28 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~武蔵野市民文化会館「開館30周年記念」特別公演  エフゲニー・キーシン ピアノ・リサイタル~

シューベルト:ピアノ・ソナタ第17番

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番「幻想ソナタ」
          「12の練習曲」作品8より

ピアノ:エフゲニー・キーシン

会場:武蔵野市民文化会館(東京都武蔵野市)

日時:2014年4月22日(火) 午後7時

 エフゲニー・キーシンの演奏会は、東京都内では、この20年ほどサントリーホールでのみで行われてきたが、長きにわたる粘り強い交渉の末、開館30周年を迎える武蔵野市民文化会館での公演が奇跡的に実現した。エフゲニー・キーシン(1971年生まれ)は、ロシア出身ののピアニスト。10歳でモーツァルトのピアノ協奏曲を弾いてデビューを飾る。コンクール入賞歴はほとんどないが、国際的ピアニストとして高い評価を得ている。

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◇クラシック音楽CD◇アルゲリッチ&アバドのプロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番他

2014-04-15 11:19:14 | 協奏曲(ピアノ)

~アルゲリッチが今は亡きアバドと共演した名盤~

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番

ラヴェル:ピアノ協奏曲
      ピアノ組曲「夜のガスパール」

ピアノ:マルタ・アルゲリッチ

指揮:クラウディオ・アバド

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

CD:ユニバーサル ミュージック UCCG 4662

 これは、若き日のマルタ・アルゲリッチ(1941年生まれ)とクラウディオ・アバド(1933年ー2014年)の共演を1枚のCDに収めたもの。それぞれの曲のベスト1かベスト2のいずれにかは必ずリストアップされるという、類まれな名盤と言って間違いなかろう。アバドは今年の1月20日に、突然この世を去ってしまったので、追悼盤としての意味合いもある。このジャケットの2人の顔を見ると、若さに溢れ、演奏家としての充実した日々を送っていたことを窺わせる。マルタ・アルゲリッチは、アルゼンチンのブイノスアイレス出身のピアニストで、現役としては、世界を代表するピアニストの一人。音楽教育はウィーンで受け、1957年、ブゾーニ国際ピアノコンクール優勝。またジュネーブ国際音楽コンクールにおいても優勝し、その名が世界的に知られることとなる。さらに1965年、ショパン国際ピアノコンクールで優勝。このアルゲリッチは、ピアニストのほか若手育成にも力をいることでも知られる。「別府アルゲリッチ音楽祭」「マルタ・アルゲリッチ国際ピアノコンクール」「ブエノスアイレス-マルタ・アルゲリッチ音楽祭」、さらにルガーノにおいて「マルタ・アルゲリッチ・プロジェクト」を開催している。最近では、毎年のように日本を訪れており、わが国でも多くのファンを有している。一方、クラウディオ・アバドは、イタリア・ミラノ出身の指揮者。ヴェルディ音楽院の後、ウィーン音楽院で指揮を学ぶ。1959年に指揮者としてデビューを果たす。1972年、ミラノ・スカラ座の音楽監督に就任。1986年には、ウィーン国立歌劇場音楽監督に就任。さらに、1990年、カラヤンの後任としてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督に就任し、これによりアバドは、世界の指揮界の頂点を極めたことになる。一度は病に倒れるが、その後復帰し、ルツェルン音楽祭管弦楽団などを指揮していた。2014年1月の突然の訃報は、世界のクラシック音楽ファンを悲しませた。

 最初の曲は、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番。プロコフィエフは、全部で5曲のピアノ協奏曲を作曲しているが、最も知られているのが、この第3番である。作曲期間は、1916年~1921年と5年間をかけている。この間、プロコフィエフは、第一次世界対戦、そしてロシア革命を体験し、ロシアからアメリカへと亡命する。このため、この曲の初演は、シカゴで行われた。時として、プロコフィエフの曲は現代音楽的な要素を帯びるが、この曲は、逆に新古典的な曲であり、バランスの良い仕上がりを見せ人気が高い。要するに、安心して聴けるところがリスナーの支持を得たようであり、同時にピアニストの技巧が最大限に発揮されるところが人気の秘密なのであろう。オーケストラのパートは、単にピアノの伴奏というよりは、独立した楽曲ちして、聴いていて大いに楽しめる。このCDでのアルゲリッチのピアノ演奏は、アルゼンチン出身というラテン系の優位さを最大限に発揮する。ピアノの鍵盤をリズミカルに、激しく打ち付ける抜群のリズム感覚が何とも凄い。そして、あたかもオペラのワンシーンを見ているかのように、ドラマチックに曲を盛り上げていく様は、聴いていて手に汗握るがごとくスリリングである。しかし、一方では、ゆっくりとしたテンポで、弱音の部分に来ると、抒情味たっぷりに弾きこなす。そんなアルゲリッチの演奏を聴いていると、アルゲリッチとこの曲の相性が抜群に良いことに気付かされる。アバドの指揮ぶりは、そんなアルゲリッチの演奏を存分に盛り立てる。一般にアバドの指揮は、少しも奇を衒うことがない正統的なものだが、ここでもその特徴が発揮されている。アルゲリッチとのやり取りは、間髪を入れず行うが、そこには少しの“崩れ”は見られない。聴き終わって、何かすっきりとした感覚に覆われるのは、このためであろう。

 2曲目は、ラヴェル:ピアノ協奏曲。ラヴェルは、ピアノ協奏曲を2曲残している。一つは、このピアノ協奏曲で、もう一つは、左手のためのピアノ協奏曲だ。ピアノ協奏曲は、1931年に完成し、初演は、1933年にフランスの名ピアニストであったマルグリット・ロンがピアノ演奏し、曲は彼女に献呈された。この曲は、フランス風の華やかさに全体が覆われた、美的な感覚を持った作品。このためもあって、アルゲリッチのピアノ演奏は、プロコフィエフの時の激しさを取り除き、抒情味を一層強調した演奏スタイルに変身を遂げる。このようなフランスの感覚を持った曲でもアルゲリッチは、完全に自分の中で昇華させ、自分の語り口で演奏できるところが、プロコフィエフの時とは違った意味で凄さを感じる。第2楽章の独白のような部分の弾きっぷりの良さには、多くののリスナーは惚れ惚れと感じてしまうだろう。ピアノの音色自体は丸身をおび、しかも美しい。まるで目の前で、鮮やかな色彩が舞っているかのごとくである。第1楽章と第3楽章は、軽快なテンポで弾かれるが、少しの無駄のない演奏技能は、聴いていて小気味いいこと、この上ない。アバドの指揮も、プロコフィエフの時と同じく、軽快であると同時に、あくまで正統的でもあり、アルゲリッチとの息も完全に合っており、センスの良い仕上がりを見せる。アルゲリッチもアバドも、決して曲の表面だけをなぞるような演奏はせず、完全に自分のものとして演奏しているところが、高い評価の原因だろう。

 最後の曲は、アルゲリッチのピアノ独奏で、ラヴェル:ピアノ組曲「夜のガスパール」(「水の精<オンディーヌ>」「絞首台」「スカルボ」)が収録されている。この曲は、は、ルイ・ベルトランの詩集を題材にしたピアノ組曲。ルイ・ベルトランは、散文詩という様式を確立し、ボードレールの散文詩にも大きな影響を与えた詩人だという。1曲目の「水の精<オンディーヌ>」の詩の内容は、「人間の男に恋をした水の精オンディーヌが、結婚をして湖の王になってくれと愛を告白する。男がそれを断るとオンディーヌはくやしがってしばらく泣くが、やがて大声で笑い、激しい雨の中を消え去る」。2曲目の「絞首台」の詩の内容は「鐘の音に交じって聞こえてくるのは、風か、死者のすすり泣きか、頭蓋骨から血のしたたる髪をむしっている黄金虫か」。そして3曲目の「スカルボ」の詩の内容は、「スカルボ―身体の太った地の精。邪悪な侏儒。それは夜な夜な人足絶えた町なみをうろつき、片目の目は・・・つぶれている」。この詩は、19世紀の前半のロマンティシズムの台頭期の作品であり、怪奇な幻想に満ちた内容を持つ。ラヴェルは、この詩の内容の雰囲気をたぎらせた名曲のピアノ組曲「夜のガスパール」を書いた。ここでのアルゲリッチは、文学的な表現力を存分に発揮し、怪奇で幻想に満ちた雰囲気を巧みに演出してみせる。しかし、そこには、何ら意図的なところは感じさせない。あたかも、リスナーは知らず知らずのうちに、怪奇で幻想に満ちた詩を読んでいるかのような感覚に捉われる。私は、アルゲリッチのピアノの音色に魅了された。全体が幻想感に覆われた感じがする反面、その芯は、あくまでしっかりとしたタッチの上に構築されている。透明感を持った、しかも暖かみのあるその音質は、この曲の絶妙な味わいを表現するのに、ぴたりと合う。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇コンサート情報

2014-04-14 10:37:56 | コンサート情報

 

<コンサート情報>

 

~“イタリアオペラ界の貴公子”ルスティオーニが日本デビュー 二期会 名作オペラ祭~

プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」(オペラ全3幕/字幕付原語<イタリア語>上演)

演出:栗山昌良

指揮:ダニエーレ・ルスティオーニ

管弦楽:東京都交響楽団 

蝶々夫人:腰越満美
スズキ:永井和子
ケート:佐々木弐奈
ピンカートン:水船桂太郎
シャープレス:福島明也
ゴロー:牧川修一
ヤマドリ:畠山茂
ボンゾ:峰茂樹
神官:馬場眞二

合唱指揮:佐藤宏 

合唱:二期会合唱団

台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ

会場:東京文化会館

日時:4月23日(水) 午後6時30分/24日(木)午後2時/26日(土)午後2時/27日(日)午後2時

 “イタリアオペラ界の貴公子”として今、世界が注目する若手(30歳)指揮者ダニエーレ・ルスティオーニ(1983年生まれ)が、2014年4月東京二期会「蝶々夫人」で日本デビューを果たす。ルスティオーニは、2008年1月、若干24歳にして、サンクト・ペテルブルクのミハイロフスキー劇場において、リリア・カヴァーニ演出のマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」を指揮して、絶賛を浴びた。2010年、27歳でミラノ・スカラ座にデビュー。2013年、バーリのペトルッツェーリ劇場の音楽監督に就任した。

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