友ちゃんブログ

適当で、いい加減・・・それが理想

電話帳で一大事 (下)

2015年04月27日 00時09分54秒 | お仕事

電話帳で一大事 (上)

電話帳で一大事 (中)

 

では、続きを(会話は大筋では間違いはないが、脚色されたものとしてお読みいただきたい)

 

 

渡海さんの家は、玄関のすぐ脇に和室があった。

しかも玄関からすぐに入れるような間取りだった。

引き戸を開け、中に入った。

奥を見ると、ご主人はテーブルの先に座っていらっしゃった。その横に、奥様もいらっしゃった。

 

 「この度は誠に申し訳ございませんでした」と正座をし頭を深々と下げた。

「はい」

 「これはお詫びの印に」と、異人堂で買ったお菓子を差し出した。

「俺は、そがんと(そのような品)をもらう為に電話した訳じゃなかばい」

 「いや、これはお詫びとして会社からの・・・」

「いやいや、それは受け取れんけん、持って帰えらんな」

 「いや、そういう訳には・・・」

「よかけん、会社にもって帰えって」

 「はい、分かりました」

 

「そこじゃ、なんやけん。こっちに来んね」

 「はい、それじゃ、失礼します」

「あんたが電話に出た人かね?」

 「あっ、いや、違います。電話に出たのは業務部長です」

「あっ、そうね。まぁ、あんたが責任者という事やろうけん、話ばするけど・・・」

 

詳しい会話のやり取りは覚えていない。

一言一句聞き漏らさないように聞いていたつもりだっがが、

玄関を入るまでほどは無いにしろ、恐ろしさは消えてなかった。

 

ご主人のお話を要約すると、

●あんたが会社の代表(責任者)として来ているので、あんたに文句を言うが、決してあんた個人をどうこう言う訳じゃないない。

●工事(仕事)をお願いしたこともない会社から、突然請求書が送られてきたら、誰だってびっくりするだろう。

●こんなことをするのは、893よりひどい。893だって何らかで絡んで(仕事をして)から、法外な請求をしてくるはずだ。

 何もしてないのに、いきなり請求してくるなんてことは893でもしない。

●請求漏れがうち一軒だけなら、まずは電話の一本があってしかるべき。

 

 

こちらの言い訳話も聞いていただいた。

(詳しいことは覚えていない)

 

 

「ところで、あの請求書を書いたのは誰ね?」と尋ねられた。

「わたしです」 それは間違いないので、そう答えた。

どうやって調べたかはお話しなかったと思う。

 

 

 

私としては予想外の展開だった。

確かに、お酒が入っているようではあるが、泥酔ではない。

怒鳴り散らすわけでもない。

わがままな言い分を聞かせるために、呼びつけた訳でもない。

 

それどころか、一通り話を終えると

「ところで、あんたは、大村ね」

 「はい、そうです」

「飲むとは好いとっとね」

 「あまり飲めませんが、好きです」

「飲みに出るね」

 「たまにですね」

「あぁ、そうね。 今日はこれだけ文句を言うたばってん、おいはそがん悪か人間じゃなかとばい。もう、言いたかしこ文句言うたけん、この話はこれで終わりたい。あんたとは今日初めておうた(会った)ばってん、同じ大村なら、これから先に飲み屋で会う事もあるかも知れん。そん時は気持ち良く会いたかけんな」

 「あっ、はい」

奥様が、「今日はお酒も入って、あがん電話ばさしたけど、悪か人間じゃなかですけん、許してくださいね」

 「いえいえ、あっ、はい」

 

 

 

今度は、私から話を

 「あの、実は私は10年ほど前に、前の道に下水本管を入れる仕事で来たことのあるとですよ。挨拶周りに伺ったんで、その時お会いしとります」

「あら、うちの前の道のや?」

 「はい、そうです。」

「あら、そうね。おいは、あん時の現場監督に電話せんばって思とったとばい」

 「何でですか」

「いや、あん工事の時、重機でうちの雨樋を壊されたとさ。現場監督が後で修繕します、ち言うたまんま来んやったったい」

 「あら、そうでしたか。それはすみませんでした。お詫びします」

「会社はどこやったかね?」

 「〇〇建設工業です」

( 中略 ) 

 

「あんたは、おいから怒られる運命やったとばい。アハハ」

 「そうかもしれんですね。アハハ」

 

その後、お茶を頂きながら少し雑談を。

1時間程経って失礼させて頂いた。 

 

 

会社に戻り総務部長に報告をした。

お菓子は受け取ってもらえなかったこと(お菓子は事務所のおやつになった)と

無礼については許して頂いたことを説明した。

 

聞くと、私が会社を出た後すぐにもご主人から

「早う責任者ばやらんか!!何時になったら来るとや!」と電話が入っていたそうである。

皆は電話口で怒鳴っている渡海さんの様子を聞いているので、

会社を出て1時間過ぎても戻らない私の事を随分心配してくれていたらしい。

なのに、笑顔で「いい人でしたよ」という私の言葉に不思議がっていた。

 

椅子に座わり、私はひとりにんまりと笑った。

電話があり「行って来い」と言われ、お菓子を買って玄関までの、あの”恐怖心”は何だったのか?

確かに、漁師町の男と女は気が荒いのかも知れんが、義理人情に厚い良いご夫婦だったじゃないか。

なんかビビッて損した気分と、晴れ晴れとした気分だった。

相手が良い人だったとはいえ、ひとつのトラブルを納めてきたという達成感を味わい終え、

中断していた業務に戻った。

 

( 私としては大して怒鳴られることも無く良かったのだが、皆さんの御期待を裏切るような結末だったことをお詫び申し上げます。へへへ)

 

 

 

 

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