元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「公共の敵」

2016-12-03 06:27:21 | 映画の感想(か行)
 (英題:Public Enemy)2001年韓国作品。日本では一般公開はされておらず、私は第16回の福岡アジア映画祭で観た。元ボクシング選手のハミ出し刑事と、連続殺人犯の顔を持つエリート金融マンとの壮絶な闘いを描くカン・ウソク監督作。かなり面白い。こういうシャシンに出会えることも映画祭の醍醐味だと思う。

 どしゃ降りの夏の夜、住宅街の道ばたで張り込みをしていた刑事チョルジュンは、ふいに尿意を覚えて電柱の陰で用を足すが、その際に怪しい男とぶつかって倒れる。怒ったチョルジュンは男に殴りかかるが、男はナイフを振りかざして襲ってくる。不覚にも傷を負って相手を取り逃がしてしまったチョルジュンだが、事はそれで終わらなかった。



 一週間後、近くの住宅で刃物でメッタ刺しにされた老夫婦の死体が発見される。一人息子で銀行員のギュファンは両親と仲が悪く、参考人として名前が挙がるが、チョルジュンは彼こそが雨の降る夜に刃傷沙汰に及んだ男だと直感する。そして、この殺人事件の犯人もギュファンだと断定したチョルジュンは、本格的に捜査を開始。対するギュファンも権謀術数に長け、容易にシッポを出さない。2人のバトルはエスカレートしていく。

 かなり血糊が多く、陰惨な話にもかかわらず全編笑いが絶えないのは、ソル・ギョング扮する刑事のキャラクターに尽きるだろう。その型破りな言動には目を見張るばかりだが、本人はいたって大真面目なのが痛快だ。この作品に限らず、優れた韓国映画の主人公は根本的にシリアス路線であり、それが周囲の状況によりたまたまコメディの世界に突入してしまう。その落差が大きな笑いを呼ぶのだろう。イ・ソンジェ演ずる犯人をはじめ脇の面子も万全で、テンポの良い演出により大いに楽しませてくれる。

 残念ながら日本で封切られなかったのは、関係者の話だと監督が買い付け料を吹っ掛けていたということだ。しかし、実績のない作家に大金を払うほど映画の国際市場は甘くない。ここは是非妥協してまずは知名度を高めることに専念してほしい。ただでさえ、日本で封切られないアジア映画の快作が少なくない昨今である。
コメント
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