820note

820製作所/波田野淳紘のノート。

この頃のこと。

2017-04-02 | 生活の周辺。
ずいぶん長いあいだ、何も書いていなかった。
言葉が枯れて、ぼんやりとしている。書かないから枯れるのだけど。



昨年10月には短編『月の光の下』を書き、theater 045 syndicateの中山朋文さんの演出で、劇王神奈川Ⅴにて上演されました。今井勝法さん、織田裕之さん、佐々木覚が参加した三人芝居でした。
11月にはSPIRAL MOONに『荒野ではない』を書きおろし、秋葉舞滝子さんの演出によって上演されました。印田彩希子が客演をしました。

どちらの作品においても、これまで書いたことのないことを書こうと試みた。傷も多かった。戯曲の狭小な射程を、遠く広げてくださる演出家と役者に出会えて幸福だった。



11月には、創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう vol.6」のプレゼン審査のため、福岡に向かいました。
今回の課題戯曲は川村毅さんの『春独丸』であり、刊行時に読み「いずれ演出をしたい」とひっそり夢想したものでした。プレゼンでは数分の抜粋上演をして、審査員の方たちからの質問に、しどろもどろになって答えました。出演は、洞口加奈と千葉恵佑さん。プレゼン後、劇場近くの櫛田神社に参拝し、有無をいわさぬ眠気に急激に襲われたことを覚えています。

晩秋、大学時代の友人に再会して、映画をいっしょに観にいった。
友人は、シナリオライターとして書きつづけていた。作品を読ませてもらい、特別な刺激を得た。構成の巧さにも舌を巻いたが、何よりも文体に心を動かされた。ひりひりとした熱を持ち、みずみずしいにおいの立ちのぼる文体。

年末年始は、死んでいた。書けなかった。

1月には加藤好昭が、伊藤全記さんの主宰する7度の公演『あこがれ』に参加。これが素晴らしかった。ファニーさと狂おしさが同時に胸を打つ。加藤くんの深奥に秘められたものが、存分に解き放たれていた。

年明けから、『春独丸』の稽古を開始。
この戯曲の内包する語りの姿勢を必死に探り求めた。衝突もあった。迷子にもなった。解釈より以前に、作家の意図を読み違えているのではないかとひどく不安になった。ほかならぬ川村さんの戯曲だ。ぼくがもっとも切実に読み、言葉の流れに目を凝らしつづけてきた作家だ。千秋楽の開演前にようやく気がついたこともあった。つくづく、自分が演出という行為を無自覚にしていることを思い知らされた。

3月、上演審査。
最優秀作品賞と観客賞を受賞しました。
役者とスタッフの力が重なりあって生まれ落ちた作品でした。関わってくださった方に、応援を寄せてくださった方に、何よりご観劇くださった方に、心より感謝します。

上演の記録は以下となります。

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【FFAC企画】創作コンペティション
一つの戯曲からの創作をとおして語ろう vol.6
『春独丸』

2017.3.24fri-25sat
ぽんプラザホール

作/川村毅
演出/波田野淳紘

◇出演
洞口加奈
千葉恵佑(ひるくらいむノ快車

◇スタッフ
音響/齋藤瑠美子
照明/みなみあかり(ACoRD)
演出助手/佐々木覚
作曲/Soul(Fis block
制作協力/薄田菜々子(beyond)

http://artlier.jp/events/detail1313.html

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講評と、その後の懇親会時に審査員の方々にいただいた言葉は、今後の糧となる重要なものでした。
叶うことならもう一度、上演の機会を得たい。ラストシーンを作り直したい。

財団の菅原さんをはじめ、お力添えくださったスタッフの皆さんに感謝いたします。
血みどろになって、がんばります。

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