あたたかさの底に、まだつめたいものが混じります。
生まれたての春の風はいつも、あたらしい季節に迷いこむ心細さを抱えているようで、そんな風に吹かれるたびに大丈夫だよと、ぜんぜんへっちゃらだよと、自分のことはさておいて、先輩面して、肩をたたいてやりたい気持ちになります。こちとら、何十回目の春だもの。しっかりしなくちゃ、ね。
はじめて自作以外の戯曲を演出させていただくことになりました。
やるせない芝居になればいいなと思います。
観終えて、いてもたってもいらなくなるような、面白いとか、つまらないとか、そういったことばが出番をなくすような。
どうかあなたに観ていただけたらと思います。
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◆ふねをゆらす♯0/Project ONE&ONLY The Trial ♯03 参加
『The Loving』
作:白土硯哉
演出:波田野淳紘(820製作所/ふねをゆらす)
◇Player
松本美香(ふねをゆらす)
佐々木覚(820製作所)
【ふねをゆらす】
演出・波田野淳紘と、女優・松本美香による演劇ユニット。
この世界にちらばるものがたりを、よせてはかえす深酔いの波にのせ。
◆日時&場所
2010年4月
3日(土)14:00
4日(日)18:00
7日(水)20:00
11日(日)14:00
@小劇場 楽園(下北沢)
小田急線・井の頭線「下北沢」駅より徒歩3分→
http://www.honda-geki.com/map.html
※開場は開演の30分前。受付開始は60分前。
◆チケット
¥2,500(前売り・当日とも)
◇予約フォームは
コチラ。
※メールにてご予約の際は件名を「チケット予約」とし、①お名前②電話番号③日時④枚数をご記入の上、お送りください。折り返し確認メールを返信します。→byebye_@mail.goo.ne.jp
☆リピーター割引
当公演は
Project ONE&ONLYによる企画公演「The Trial ♯03」への参加作品として上演されます。公演期間中のどの回も、チケットの半券をお持ちの方は1,000円引き、二枚以上お持ちの方は2,000円引きでご覧いただけます。
※4,500円で三通りすべての演出をご覧いただけます。
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ProjectONE&ONLY The Trial♯03
The Loving ~rondo~
2010年4月3日(土)~11日(日)
三組のユニットが創り出す三つの異なったハーモニー。
同じ一つの戯曲を、三人の演出家がそれぞれの味つけでお届けします★
□巻ノ壱
演出 波田野淳紘
出演 佐々木覚、松本美香
○巻ノ弐
演出 小暮正太郎
出演 池澤夏之介、水木ノア、池田充枝、渡部智子
◇巻ノ参
演出 吉岡英利子(
NIPPONいとしのチチバンド隊)
出演 山崎いさお、溝口亜紀
※日程、他団体の詳しいプロフィール等は
主催者公式ホームページをご覧ください☆
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◇Note
かつて坪内逍遥という小説家がいた。
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小説家は東京という都市に生き、海べりの静かな町に死んだ。
時代は混とんとしていた。
ちょんまげも帯刀もあだ討ちも消えた。牛鍋やネクタイやガス灯がやってきた。
あたらしいものがどっと押し寄せ、目に映る風景をあらためた。
古いものは遠くへと去りながら、まだなお人々の胸にわだかまっていた。
よせてはかえす波の勢いの、とくべつに激しい時代に小説家は生きた。
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小説家も恋をした。
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小説家は、日本ではじめて、シェイクスピアの全戯曲の翻訳をした。
やがて彼は、彼の生きた国で、近代演劇の祖と呼ばれるようになる。
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かつてどこかにいたはずの人間は、ほんとうにそこにいたのだろうか。
かつてどこにもいなかった人間は、ほんとうにいなかったのだろうか。
演劇にできることは、出会うはずのない者どうしを、引きあわすこと。
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潮流に逆らうこと。
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昭和三年、シェイクスピア全集訳了。昭和十年二月二十八日逝去。死の間際まで校訂をかさねた。