820note

820製作所/波田野淳紘のノート。

ぐらりんこ。

2011-04-27 | メモ。
その人と話すといつも、どうしてもじぶんの軸がぐらぐらしてしまう。嘘がつけない。いつも嘘をついているわけでもないけれど、じぶんに対する甘やかしとか、しぜんにまとってしまう虚飾はやっぱりある。未来に対する先行投資のようなもの。時間の流れのもたらす解決への期待であったり、楽観的な予測だったり、じぶん自身の欠けている箇所にはだいたいそういうものが詰まっている。それはなくてはならないものだ。でも気をつけないと腐敗する。あっという間にわが身を蝕む。未来に追いつかれ、抜き去られ、ぼくはどこにもいなくなる。全身に毒がまわっている。いつも気をつけて、本当に心をこめて「つとめ」を果たしていないと、軸なんて簡単にぶれてしまうものだ。からだの垢といっしょのことだ。その人と話すとき、ぼくははじめてじぶんの口臭に気がついたように、毎度のこと、顔を赤らめる。そういう友達がいる。

あはは、ららら。

2011-04-25 | 生活の周辺。
台本を書いたり、調べものをしたり、夢日記をつけたり、呆然としている春です。

同期の仲間たちとご飯を食べました。
集合するはずの時間に「いま起床した」という連絡が入ったりします。そんなのお茶の子さいさいです。僕も前回やらかしました。

そうして小川くんを待っているあいだ、宮野くんが、近くにあるバーの話をしてくれました。壁が水槽になっていて、お魚のきぶんでお酒を飲めるそうです。男どうしで行くと門前払いを食らうとのこと。気取っていやがります。天ぷらやさんのショーケースを、穴のあくほど見つめていた網谷くんに、そっと尋ねてみました。

――おとなの男は、やっぱり、おしゃれなバーの一つや二つ、知ってるものなの?

彼は表情で答えてくれました。



聞く相手を間違えました。

小川くんが来て、少し遅れて島田さんも来て、あはは、あははと夜が更けます。
あの頃が古くなる。ぼく達は笑います。
いつだって森の奥を、未知の夜を、たった一人で歩くのですから。見よう見まねで歩くのですから。それだけは変わらないのだから。
くだらなくって少しばか。そんなのが大事です。

ひとりごと。

2011-04-16 | 生活の周辺。
おとなになればなるほど、こどものじぶんが深々と息づいていくのを感じます。平たい青空がつづきます。ずうっと泣いているような気がします。おとなのぼくは、こどものぼくを、そのままにしておくことができます。たんぽぽが咲きました。ふたつの花が揺れました。話のできる相手なんて、そんなにはいないものです。直視すること。忘却に抗うこと。語りつづけること。しゃべり残したこと、話し忘れたこと、教えられなかったことを数えながら。ああ、春のねむけが苦しいよ。中指に蜜を塗りたくって、誰に向かうのかはわかりませんが、Fuck!
じゃあちょっと、カレーを食べにいきます。
風がつよくなりました。

CM台本。

2011-04-10 | 生活の周辺。
[1]

公園のベンチに大滝秀治が座っている。
口を開く。

――「がんばる」って、いうのかなあ。

そのまま10秒間、目をそらさずにこちらを見つめ続ける。
やがて、

――ずうっと、見ている。


[2]

運転席に江頭2:50。
助手席に前田敦子。
前田が口笛を吹いている。
江頭の絶妙なハミング。
サビが終わり、二人声を合わせて、

――ひとりと、ひとりで、ひとつの歌が。

我慢できなくなったように江頭が、

――俺はさあ……!

と叫ぶが、前田が鋭く、

――前見て、前。


[3]

渓流。
小泉純一郎が無表情で釣りをしている。
画面が変わる。深い森。汗をふきふき、薪を拾いあつめる鳩山由紀夫。物音がする。熊だ。かたまる鳩山を守るように、すっと身を乗りだす影。森喜朗だ。
画面が変わる。「あぢちっ」麻生太郎がカレー鍋を焦がす。
画面が変わる。石原慎太郎が大きなキノコを手にして「……障子に」とささやく。安倍晋三が聞いてないふりをする。
画面が変わる。焚き火を囲みながら、もそもそとカレーを食べる彼ら。沈黙がつづく。その姿に重なるように、テロップが映し出される。

――がんばりかたは、いっぱいだ。

一瞬、皿を洗う小沢一郎のため息を映したあと、ブラックアウト。


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最後のは逆に腹が立つ。

おかえりなさいこどもたち。

2011-04-07 | 生活の周辺。
きのう友人に第二子が誕生した。
こどもは未来のかたちそのもの。むくむくと大きくなあれ。

どんな気持ちなんだろう、家族が増えるって。
あたらしい命が生まれるって。それまでどこにもいなかっただれかを迎えるって。
ぜんぜん想像ができないんだ。こんなにあたりまえなことを。
二人の子の父であること。どんなにふかい愛がそこに宿るんだろう。

保育器のなかで泣いている。ふたつの目をぎゅっとつむって、きみの声がこぼれてる。

なにをどういうふうにしていけばいいのか、わからないこともある。
それでも大丈夫だよ、って、ちゃんと言えるおとなでぼくはあろう。

ね、あたたかい日に生まれてよかったね。
光も風もわらってるぜ。

ぼくはコーラを飲むよ。コーラが祝杯だよ。
きみはあたたかなミルクをたくさん飲め。いそがないで、ゆっくりとさ。