久しぶりになつかしい友人の夢を見た。
夢のなかでぼくは学校の卒業式に出席していた。中学校だか、高校だか、大学だかわからない。見覚えのない学校の敷地のなかで、心細さと、安堵と、しんとした寂しさのようなものを感じていた。そこへ友人があらわれた。久しぶりだね、とうれしくて、相手の腕をつかむようにして歩きだした(そうだ、ぼくは男どうしで腕をとったり、お尻にさわったりもするような、面倒な男子だった、友人らはよく逃げた)。学校を挟んで、ぼくの家と友人の家は反対の方向にあるようで、いつもは通ることのない、向こう側の通学路を歩んだ。人の流れが森にむかう。ショートカットできる道がそこにあるのだ。うっそうとした森の暗さのなか、起伏の多い土の道をいく。前方には友人がいる。初めての道にまごつくぼくをふり返る。ふと、ここしばらく会えていなかったから、こんな機会に会えてよかったよと伝えようとして、目が覚めた。
目が覚めて、ぼんやりとしていた。寝覚めのいい夢だった。何か知っている感覚だな、と考えて、気がついた、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』だ。宇宙にぽつんと浮かんでいることの寂しさだ。どうしようもなくここにいることの。
その友人はもちろん死んでいない(はずだ)が、ジョバンニとカムパネルラのようにして、ある広大さのなかで隣りあうという経験をもった。
前日の稽古で、別役実さんの戯曲を声に出して読んだ。
別役実さんの創作もすべて、宇宙にぽつんとあることの寂しさに貫かれているとぼくは理解している。触れると消滅してしまいそうな、存在の裏返りそうな、所与のもの。ただしわれわれは、そこからしかものを書きだすことはできないのだろう。
なんであんなに心に蓋をせずに生きられたのだろう。いちばんぐらぐらとして危険な時期に。ぼくはあれからどのようにでこぼこになったんだろう。お酒を飲みたいと思うのはこういう夜なんだ。
夢のなかでぼくは学校の卒業式に出席していた。中学校だか、高校だか、大学だかわからない。見覚えのない学校の敷地のなかで、心細さと、安堵と、しんとした寂しさのようなものを感じていた。そこへ友人があらわれた。久しぶりだね、とうれしくて、相手の腕をつかむようにして歩きだした(そうだ、ぼくは男どうしで腕をとったり、お尻にさわったりもするような、面倒な男子だった、友人らはよく逃げた)。学校を挟んで、ぼくの家と友人の家は反対の方向にあるようで、いつもは通ることのない、向こう側の通学路を歩んだ。人の流れが森にむかう。ショートカットできる道がそこにあるのだ。うっそうとした森の暗さのなか、起伏の多い土の道をいく。前方には友人がいる。初めての道にまごつくぼくをふり返る。ふと、ここしばらく会えていなかったから、こんな機会に会えてよかったよと伝えようとして、目が覚めた。
目が覚めて、ぼんやりとしていた。寝覚めのいい夢だった。何か知っている感覚だな、と考えて、気がついた、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』だ。宇宙にぽつんと浮かんでいることの寂しさだ。どうしようもなくここにいることの。
その友人はもちろん死んでいない(はずだ)が、ジョバンニとカムパネルラのようにして、ある広大さのなかで隣りあうという経験をもった。
前日の稽古で、別役実さんの戯曲を声に出して読んだ。
別役実さんの創作もすべて、宇宙にぽつんとあることの寂しさに貫かれているとぼくは理解している。触れると消滅してしまいそうな、存在の裏返りそうな、所与のもの。ただしわれわれは、そこからしかものを書きだすことはできないのだろう。
なんであんなに心に蓋をせずに生きられたのだろう。いちばんぐらぐらとして危険な時期に。ぼくはあれからどのようにでこぼこになったんだろう。お酒を飲みたいと思うのはこういう夜なんだ。