820note

820製作所/波田野淳紘のノート。

『踏みはずし』 出演者紹介①、洞口加奈さんのこと。

2013-10-17 | 生活の周辺。
洞口さんと一緒に芝居を創るのはもう何度目になるだろう。『東京環状』ではじめてお会いしてから、長い時間が経った。もとから力と技術を持っている人だったが、年を追うごとにしなやかさと人を惹きつける力が磨かれていくのを、舞台をともにしながら、彼女の出演する芝居を観ながら感じていた。

いまに至るまで、舞台に立つ彼女の姿に一貫して流れているものは、ある高潔さのようなものだ。
もしも、幼く貧しく錯乱したものを許容し志向する時代のただ中にあっても、気高さと正気、微笑を手放すことのない人だ。
カポーティの小説の章タイトルに、「まだ汚れてない怪獣」という素晴らしいものがあったが、彼女の背後に、まだ汚れていない、汚されることのない無垢の大きな力をぼくは感じる。
無垢はまた、無意識の部分、自覚できない部分、影の領域の豊穣ともつながっているわけだ。その沃土から、いままで洞口さんの演じたことのない役を連れ出してこようと思った。

今回、彼女の培ってきた自分自身に対するイメージを壊していこう、と伝えたら、きちんと次の稽古場でそれを試していた。芝居の芯を背負いながら、よりいっそう繊細に、大胆に、あるスリルを持って自分自身を演奏すること。
北米の先住民が「世界の果てでダンス」をすることで世界の再生を図ったように、切実な希求のもたらす祈りを身に引き受けること。
こんなわけのわからないことをお願いしても、まかせておけと頷く洞口さんである。ぼくたちはもっと先へ行けるはずさ。



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悲しくてこっけいで、やるせなくて、心のあまり動かしたことのない場所を刺激するような芝居をつくりたいと、いつもそう思っています。

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