820note

820製作所/波田野淳紘のノート。

短編戯曲祭。

2021-02-26 | メモ。
T Factory主催の「第1回T Crossroad 短編戯曲祭 <2020年の世界>」がぶじに千秋楽を迎えました。
ご来場いただいた皆さま、言葉に命を吹き込んでくださった俳優陣の皆さま、スタッフの皆さま、そして何より演出の川村毅さん、製作の平井佳子さんに心よりの感謝を申し上げます。

波田野はFプログラムに参加していました。
『清経』は昨年の十一月に書き上げたのですが、どうにも文体が壊れたままであり、「書く」というよりもただ無理に言葉を継ぎはぎする作業に終始してしまったように思います。
戯曲としては、顔を覆いたくなるような、火を噴きそうになるような、風通しの悪い言葉の連なりでした。それを演出、俳優陣の皆さんが、言葉の到達した場所より、はるか彼方へと連れていってくださった。
行軍中に倒れた者が、諸先輩方に肩を組まれて、行くべきところへ引っ張っていただいたような感覚です。

死者の死に、不潔な手で触れてしまったのでは、と今も悩みます。
作品の核を引き受けていただいた田中壮太郎さんに、深く感謝いたします。

26作品のすべてを観られたわけではありませんが、出自も年代も違う作家たちの、さまざまな切り口の2020年が立ち現れていくさまは、不思議な高揚をもたらしてくれました。わたしたちはこういう時を生きているのか、と。

僕は川村毅氏を師と定め、その劇作・演出を追いかけてきた者ですが、このように連続して氏の演出した作品に触れると(しかも自作を演出していただくと)「とてもじゃないが、かなわねえ」とあらためての大きな衝撃がやってきます。何という読みの豊かさ。その深さ。徹底して作家のせりふを中心に据え、その可能性を汲みとり、壊さぬように扱いながら、そのことによってより大きな世界がくっきりと舞台の上に立ち現れる。演出家の眼差しの確かさ。

自分の、言葉を扱う手つきの底の浅さを思い知りました。
演劇に関するこわばりがほぐれ、ほっと蘇生したような心持ちです。

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