朴裕河教授の勝訴のあと、インタビュー記事(リンク)を掲載していた京郷新聞に、裁判に関する記事がでました。
相当に悪意のある記事です。この記事がどれほど悪質かは、判決文を読んでからでないとわからないかもしれません。
まずは判決文(要約版)をお読みください(リンク)。
全文も日本語で読めますが、55ページに渡る長大な文なので、暇な方限定です(リンク)。
京郷新聞2017年2月13日(リンク)
【記者コラム】こんな無罪なんて、朴裕河の場合
昨年、平壌で第7回労働党大会を取材中だった英国BBCの記者が、金正恩労働党委員長に対する無礼な報道をしたという理由で、3日間抑留された。その頃、日本の産経新聞記者も、朴槿恵大統領に関する記事のために8か月間抑留された。名誉毀損と出国禁止という法律用語が使われているが、その本質は変わらない。
名誉毀損、この言葉が否定的に感じられるのは、政治権力が不当に使っているせいだ。政権側は、権力に対する監視を個人攻撃だと言って罪に問い、損害賠償を求め、刑事処罰を試みる。しかし、名誉毀損の罪に問うことは悪ではない。名誉毀損は憲法が保障した人格権の侵害であり、人格権は表現の自由に劣らない基本権である。
言論(著述)による名誉毀損は、どこにおいても違法である。米国、英国では、重い損害賠償責任を負う。数十億ウォンの懲罰的損害賠償が認められることもしばしばである。ドイツ、フランスならば、損害賠償に加えて刑法で罰せられる。ただし、公益目的であって真実ならば責任を免れる。真実の発見のためにだけ、人格保護が後回しになる。
朴裕河世宗大教授に対する一連の一審裁判が終わった。『帝国の慰安婦』によって慰安婦たちの名誉を毀損した民事・刑事裁判だ。まず、2015年、民事裁判所が本に対する削除要求を認め、2016年には慰安婦被害者たちに対する損害賠償を命じた。先月、刑事裁判所は名誉毀損嫌疑について無罪を宣告した。朴教授は「賢明な判決」と評した。
問題になった本とそれに反論した本の両方を繰り返し読んだ私は、無罪判決文を入手した。名誉毀損を認めた二つの民事判決をどのように突破したのか知りたかった。被害者が生存している歴史的事実をどこまで記述できるのか、裁判所は厳しく論証したはずだった。米国、ヨーロッパ、国連が関わった世紀の事件であり、表現の自由に関する世界的な裁判である。
判決文は目を疑わせるものだった。これといった論証は一つも見当たらなかった。すべての叙述は事実(fact)と意見(opinion)に分けられる。事実は真実(truth)と虚偽(false)に分かれる。名誉毀損は、事実のうち主に虚偽を摘示した場合に適用される。意見は刑事罰の対象ではない。だが、現実においては事実と意見が入り混じっている場合がしばしばで、そのため判事は事例を勉強し、判例を研究する。
これに先立つ二つの民事事件は熱気があった。2015年の削除要求事件で民事裁判所は、34か所において(虚偽)事実の摘示と名誉毀損があるとした。2016年の損害賠償請求事件でも、同じ作業を経て、名誉毀損と人格権の侵害を認めた。刑事事件は、すでに認められた34か所を含め35か所の名誉毀損について争った。ところが裁判所は30か所を「単純意見」とした。論証はしなかった。
イ・サンユン裁判長は、35か所の表現が真実であるか虚偽であるかの区別さえせず、歴史記述の限界を明らかにすることもしなかった。そして判決文にこう書いた。「不明瞭な概念や抽象的で模糊とした表現、前後で矛盾していると見られる叙述等が多数発見されている点等に照らして見るとき、(中略)被害者らに対する既存の社会的評価に有意味な程度の否定的影響を及ぼすのは難しい。」
大雑把に言えば、朴教授の粗悪な研究と難解な表現のために、名誉を毀損することにさえ失敗したということだ。そのためか、「性急な一般化、過度の飛躍、論理的誤謬」のような学界の評価も裁判所は認めた。こんなにも簡単な判決で、歴史的紛争に整理がついたのだろうか。
「名誉が保護してもらえると信じられない社会では、人々は意思形成過程に参加することに躊躇する。このような社会において表現の自由は、他人のことを考えずに自分の見解を貫こうとする個人の専有物になる危険がある」。法学部の憲法教科書の「表現の自由」の解説である。結論に一行、無罪とだけ記しても、表現の自由が守られるわけではない。
この記事を書いたのは社会部のイ・ボムジュン記者。写真を見ると相当若そうです(写真)。
しかし、あの判決文を読んで、どうしてこんな解釈ができるのか、不可解というほかありません。読解力が低いというのでは説明がつかない。あきらかに、判決を歪曲して読者に伝えようとしています。
彼こそ、「虚偽の事実を摘示した」ことにより、名誉毀損で訴えられるべきです。
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記事の下記の記述に引っかかりました。
「事実は真実(truth)と虚偽(false)に分かれる。」
事実に虚偽が含まれるという認識がなかったからです。
Webの反対語辞典で「事実」を引くと、「虚構」が出ました。
1.実際に起こったことで、その人の気持ちや考えだけでは動かすことができないことがら「事実誤認」「事実上(=実質的には)決着した」
↑普通の意味
2.[法]それが、あったかなかったか、証拠にもとづいて判断できることがら。「虚偽の事実」
↑法律用語
法律用語では虚偽も「事実」のようです。