犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

水車

2012-12-30 23:49:19 | 飲む
 三回目の忘年会は、この年末に帰省中のKさんと渋谷ののんべえ横丁で飲みました。

 お目当ては、91歳の大ママがやっている会津(→リンク)でしたが、残念ながら開いていなかった。年末年始は常連さんのサポートも難しいのかもしれません。

 それで、のんべえ横丁でほかの店を物色します。30軒ほどある店は、どこも6、7席しかない小さな店ばかりです。ほとんどの店は、年末の夜ということで、ほぼ満席。

 やっと見つけたのが水車というお店でした。先客には白人二人と東洋人一人の三人組。東洋人も日本人ではないようで、会話は英語でした。

 カウンターの内側には、かなり高齢のママさん。英語の会話に入れなくて手持ち無沙汰のご様子。われわれが入るとさっそく声をかけてくれました。

 昭和ひと桁生まれの82歳。私の母と同じです。会津の91歳には及びませんが、こちらも開店46周年だそうで、節目節目に常連さんたちが記念パーティーをしてくれた写真が店内に掲示されています。ビールを飲みながらお店の歴史などを話している間、われわれが頼んだ馬刺しはすっかり忘れられていました。

 東京は亀戸の生まれ。戦時中は学徒動員で精工舎の工場で働いていたそうです。

「時計作ってたんですか」

「いや、あのころはセイコーも軍需物資作ってたんだよ。何に使うのか金属の球を磨く仕事でね」

 戦争末期には被災したそうです。

「3月10日の大空襲ですか」

「10日って言われてるけど、9日の夜でしたよ」

(ふーん、そうなんだ)

「でもね、アメリカにもえらいところがあるのよ。空襲するときは、ちゃんと予告していたのよ」

「じゃ、政府がそれを国民に伝えなかったんですか」

「そう。だからいちばん悪いのは東條英機だと思うわ」

(予告してたとしても、一般市民への無差別爆撃は戦争犯罪だと思うが…)

「この店も若い人が来るけど、だらしがないのよ。若い人がしっかりしないと、日本は目茶苦茶になっちゃうよ」

 矛先は若者に向かいます。

「『じゃあ、どうしたらいいんですか』なんて私に聞くわけよ。そんなこと自分で考えろって。第一、選挙に行ったかってきくと、みんなしてないんだって」

(先の総選挙を棄権した私は二の句が継げませんでした)

「戦争を知らない人が大部分でしょ。だから、私、ブログで若者たちに伝えようと思うのよ」

「ブログ!! インターネットもするんですか?」

(そのとき、携帯電話が使えない母のことが思い浮かびました)

 馬刺しを食べ終えた私たちは、おでんを頼みました。東京式で牛すじはなくてちくわぶがあったのがうれしかった。

 話は、店に来たことのある芸能人の話題から、皇室の話題へ。秋篠宮の出生秘話なんていう、私には初耳の話もありましたが、ママさんによれば10人中8人は知っている公然の秘密だということです。

「ママさんは、若いときに何か夢があったんですか」

「そうね。普通にお嫁に行きたかったわね」

 そうこうするうちに時刻は11時を回りました。

 最後に会津の話をすると、91歳の大ママが最近骨折して入院しているとのこと。店を閉めていたのはそれが理由かもしれません。ちょっと心配です。

なお、水車のママのブログはこちら(→リンク

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2 コメント

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belief (noga)
2013-02-19 13:06:29
日本人の絶大なる力により‘テロには断固として戦う。’ という信念を、この地上に示されなくてはならない。
日本人は、自己の信念を明確に示すことができるか。意思がなければ、発言内容はぶれる。

太平洋戦争初期に、フィリピンでは、キング少将もジョーンズ少将も投降して、米比軍将兵75000人以上の命を救った。
太平洋戦争末期に、日本軍は米空軍の爆撃機の襲来をゆるし、東京大空襲では数時間で10万人という多くの人たちが犠牲になった。
日本人指導者には戦いの勝敗は事前に見分けられないのか。洞察力はないのか。人の命を断固として守れるのか。
’やってみなければ分からない’とか、 ’なってみなければわからない’ という話をいつまでも続けるつもりか。


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コメントありがとうございます (犬鍋)
2013-02-20 23:43:42
ただ、私の読解力ではコメント内容がよくわかりませんでした。
返信する

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