弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

麺通団「恐るべきさぬきうどん」

2008-12-25 21:55:10 | 趣味・読書
11月に1泊2日で高松に滞在し、高松市内の一般うどん店(さぬき麺業)でさぬきうどんを2回、食しました。こちらで報告したとおりです。そこでも書いたように、何だかさぬきうどんは奥が深そうだ、という印象を受けて帰って来ました。

調べてみると、香川県内の各地には多くの小さなうどん屋が散在し(全部で700軒ほどだとか)、その土地の人たちが日常に利用しているようです。そしてその中には、香川のうどん好きの人たちがうなるようなおいしいうどん屋が存在し、それがまた近くを通ってもうどん屋だとわからないようなへんてこな店が多いといいます。
それがここ10年ほど、そのような怪しいうどん屋の存在が全国的に知れ渡り、一大さぬきうどんブームが巻き起こったというのです。私は全然知りませんでしたが。
そのブームの起爆点になったのが、書籍「恐るべきさぬきうどん」「恐るべきさぬきうどん〈第2巻〉」「恐るべきさぬきうどん〈第3巻〉最後の聖麺」「恐るべきさぬきうどん〈第4巻〉―誰も出るとは思っていなかった」だといいます。これらをまとめて文庫本としたのが以下の書物です。
恐るべきさぬきうどん―麺地創造の巻 (新潮文庫)
麺通団
新潮社

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恐るべきさぬきうどん―麺地巡礼の巻 (新潮文庫)
麺通団
新潮社

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香川には、「タウン情報かがわ(TJ Kagawa)」というタウン誌があり、1989年当時、そこの前編集長でそのとき連載執筆担当をしていたのがT尾氏です。
T尾氏は当時30代で、ごく普通の善良なうどん好きをやっていました。それがあるとき、A藤氏に「中北」といううどん屋に連れて行かれ、すべてが始まったのです。その店は、高松市の郊外の田んぼと民家の中、偶然には絶対発見できないような場所にあって、しかも民家の納屋みたいなところでうどんを食べさせるのです。民家のような母屋で卸し用のうどんを製麺しており、納屋のようなところで客にうどんを出します。
「製麺屋なんである。客は基本的に“間に合わせ”なんである。しかもこのできたてのうどんが、何とも香ばしくてうまいうまい。ついでに天ぷらも揚げてくれて、これがうまいうまい。近所のおっちゃんやおばちゃんがワンサカ来て食べよる。何なんだここは。」

香川県下には、このような怪しいうどんやが各所に散在しているのですが、香川でタウン誌の編集をしているT尾氏のような人でも知らなかったぐらいですから、今から十数年前には本当にマイナーだったのでしょう。

編集屋の血が騒いだT尾氏は、さっそく「タウン情報かがわ」で怪しいうどん屋の探訪記連載を始めることにします。1989年、題して「ゲリラうどん通ごっこ」

1993年、この「ゲリラうどん通ごっこ」をまとめた「恐るべきさぬきうどん」第1巻が発売になり、1999年の第4巻に至ります。

タウン誌での「ゲリラうどん通ごっこ」と単行本「恐るべきさぬきうどん」の情報は次第に全国に知れ渡るに至り、各種雑誌での紹介があり、テレビに取り上げられ、1999年頃から「香川の怪しいうどん屋」が大ブレークするようになったようです。

今回私が読んだ文庫本は、単行本1~4巻を加筆・再構成して2000年に新潮OH!文庫で発売され、その後新潮文庫から発売されたものです。「麺通団」という団名も文庫本のときにできたのかも知れません。団長はT尾氏です。

さて、「恐るべきさぬきうどん」の本に戻りましょう。
「怪しくてうまいうどん屋があるらしい」という情報が入ると、団長はだれか団員を連れて、車で探訪にでかけます。だいたいが道に迷い、あるいは偶然にその店を見つけます。この類の怪しい店は、昼前に行けば打ちたてゆでたてのうどんにありつけますが、その時間を過ぎると作り置きの玉を湯がいて食すことになります。さぬきうどんというのは、茹でてからの時間経過とともに急速に特質が失われるらしいのです。ところが団長は、だいたいが2時前後に店に到着するという体たらくぶりです。

記事は、通をてらうことなく、団長が感じたままを文章にしているようです。随所で団長がぼけ、団員がつっこみます。団員がいないときは団長が自分でつっこんでいます。このようなノリで、香川県下の田園地帯を西に走りまた南に走り、うどんやのおばちゃん、常連客のおっちゃん、それに麺通団の面々の掛け合いを描いていきます。
「ゲリラうどん通ごっこ」というネーミングの由来は本の中で語られていませんが、「ゲリラ」であるからには名の知れたうまい店にはあまり興味を示さず、「穴場中の穴場(彼等のいう「針の穴場」)」を追い求めます。「ごっこ」としたのは、自分たちは決して「通」ではない、という謙遜の意味を込めているように思います。


香川県に、このようなうどん文化が連綿と続いていたとは。そしてT尾団長によるこのような抱腹絶倒のうどん探訪記が編まれていたとは。この11月の高松訪問のあと、私は初めて知ることになりました。

そして、それまで地元の人とごく僅かなマニアしか知らなかったこれら怪しいうどん店は、「恐るべきさぬきうどん」刊行を契機に全国に知れ渡り、2000年以降、大変なことになっているようです。次回に続く。
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