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弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

弁理士制度-訴訟代理

2006-04-03 00:12:47 | 弁理士
現在の弁理士制度では、審決取消訴訟については単独で訴訟代理ができます。また侵害訴訟については、研修を受けて特定侵害訴訟代理の付記を受ければ、弁護士と共同で訴訟代理できます。
弁理士会の声明「弁理士法改正の方向性」では、業務遂行能力が十分でない弁理士の増加を問題にしていますが、訴訟代理能力はどうなのでしょうか。
弁理士試験では、民法・民訴法基礎といった知識は必須試験範囲に入っていません。私が受験勉強を通じて感じたのは、受験のために産業財産権法を深く極める過程で、それなりにリーガルマインドも併せて身につけたように思います。しかし、これで訴訟代理が単独で行えるまでの能力が身についているかどうかです。特に最近の弁理士受験では合格枠が増えて必要勉強時間が減っていると推定されます。

もし、現在の弁理士試験制度では訴訟代理まで任せるのに無理があるのだとしたら、対応を考える必要があります。

私は、平成16年度の特定侵害訴訟代理能力担保研修を受けて付記弁理士になりました。その準備のため、平成15年度に青山学院大学で民法・民訴法基礎の講義を受けています。
たまたま付記登録後、審決取消訴訟の訴訟代理を受任しました。その審決取消訴訟の業務を通じて、「能力担保研修を受けておいて良かった」とつくづく実感しました。能力担保研修が侵害訴訟を対象にするといっても、要するに民事訴訟を遂行する上での必要な実務能力研修ですから、審決取消訴訟実務にも通じます。
研修を受けずに訴訟代理を受任したら、ずいぶんととまどったと思います。その結果、クライアントに迷惑をかけることになったかもしれません。その経験から、「審決取消訴訟を受任するつもりがあるのなら、民法民訴法基礎研修と能力担保研修とは受けておくべきである」との結論に至りました。

(元)裁判官や調査官の方が、弁理士相手に審決取消訴訟について講演する際には、必ず「訴訟代理人の弁理士の中にはひどい人がいる」という話が出ます。よくやっている人がいる一方、裾野部分では能力不足の弁理士が代理して顧客に迷惑をかけている場合が多いのでしょう。こういう話を聞くにつけ、弁理士の訴訟能力付与が課題だと感じます。

もし、現在の弁理士試験制度では、受験勉強を通じての訴訟能力担保が難しいのであれば、より一層、試験制度の改革によって訴訟能力向上を図る必要があるということになります。

ひとつの方向は、弁理士試験の必須科目の中に「民法・民訴法基礎」といった範疇を入れ込み、この科目のための勉強を通して法的思考力を訓練し、最低限の訴訟代理能力を身につけるという方法です。
もうひとつの方向は、取り敢えず弁理士試験合格では訴訟代理権は付与せず、追加の試験なり研修+試験で合格した者に訴訟代理権を付与するという方法です。

審決等取消訴訟の出訴数は年間500件程度のようです。特許出願年間40万件と対比するとごく僅かであり、弁理士のうちで審決取消訴訟の代理人となる比率もわずかでしょう。そうとすると、すべての弁理士に訴訟代理能力を具備させる必要があるのかということになります。
弁理士試験の中に民法・民訴法基礎を入れてしまうと、肝心の特許法全般の勉強がおろそかになる可能性があります。私の理解では、合格者の人数によってトータル必要勉強時間が決まるのであり、トータルの中に民法民訴法が入れば特許法の勉強時間が減るだけです。
以上を勘案すると、弁理士試験と訴訟能力担保のための試験は分離した方が得策かもしれません。弁理士試験には民法・民訴法基礎を入れ込まず、そのかわり訴訟代理権は付与しません。弁理士合格後に別途試験を受け(現在の能力担保研修と付記試験のような)、合格したら審決取消訴訟の訴訟代理権と侵害訴訟の共同代理権を付与する、という方策が好ましいようです。
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