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日銀「新型オペ」の評価

2009-12-13 16:01:17 | 歴史・社会
日銀が12月1日に明らかにした新たな金融政策(新型オペ)は、金利は政策金利と同じ0.1%で、期間は3カ月。国債や社債、コマーシャルペーパー(CP)、証貸債権など「全ての日銀適格担保」を裏づけに資金を貸し出す。供給額は10兆円程度を予定しているというものでした。
この政策が発表された直後のマスコミ評価は冷たいものでした。「これでは不十分だ」「政策の小出しは最悪だ」といった評価でした。12月2日の日経朝刊でも「今回の政策によって日本経済がデフレの解消に向かうと本当に期待できるのか。円高とデフレに向き合うには力不足との見方が市場関係者には多い。早くも政府や日銀による追加対策を求める声が上がり始めている。」としています。「無担保コール翌日物金利をゼロにする「ゼロ金利政策」には戻らない。金融の量的緩和の手段として、国債の買い切りを増やすのも避けた。肩すかしを食ったと市場が感じるようだと反動が恐い。」

しかしこの金融政策の発表を境として、9千円を割り込むかと懸念された日経平均株価は上昇を続け、4日には1万円を超えました。為替でも円が下がり続け、1ドル86円から90円にまで変化しました。

12月5日の日経朝刊で、この金融政策が解説されています。
『金融緩和で新手法 日銀「追加」の余地確保』
『日銀が1日決めた金融緩和は、翌日物金利をこれ以上下げられない中、わかりやすい追加的な緩和余地を別途確保した点に特徴がある。今回、3ヶ月に広げた「利下げ」対象の金利期間をさらに長くしたり、そのために必要な資金供給額(今回は10兆円程度)を増やしたりすれば、デフレ防止努力を印象づけられるのだ。経済や市場が再び不安定になるなら、そうした措置も検討対象になりそうだ。』
『どうやって、一般にもわかりやすい緩和の余地をつくり出すか。』
2001年春には、誘導対象の翌日物金利が実質ゼロに近づき利下げ余地がなくなる中、金融機関への資金供給量拡大で緩和を進める量的緩和政策を誘導しました。このときは不良債権に起因する金融システム不安の緩和に貢献します。
今回は、金融システム不安解消より実体経済への刺激や円高防止が重要であり、「利下げ」の対象を翌日物金利から広げる「やや長めの金利の低め誘導」を日銀が考案しました。
景気の二番底が現実味を帯びるなど厳しい情勢になれば、追加の対策を打って出ます。
・「利下げ」の対象をさらに長めの短期金利にしたり、資金供給量を増やしたりする。
・長期国債の購入拡大
・時間軸政策の再導入:日銀は06年に物価安定の目安となる消費者物価上昇率を0~2%程度とする判断を公表しているが、(時間軸政策の)効果を上げるために、例えば物価が1%上がるまで利上げはしないというのも一案
(編集委員 清水功哉)

今回の新型オペ政策が発表された直後は懐疑的であった日経新聞も、発表直後から始まった円の下落と日経平均株価の急上昇を見て、この政策を見直したということでしょうか。

以上は12月5日までの状況です。
その後、ドル円は7日に90円を超え、日経平均も10100円を超えました。しかしその後、また円高傾向となり、日経平均株価も急落して10日には9900円を割り込みます。ところが11日はまた反撥して10100円を超えました。日本経済は、ちょっとした外乱に影響されて乱高下を繰り返す状況となっています。

政府と日銀は常に連繋して、タイムリーな政策を実現するとともに、市場に強いメッセージを送り続けてほしいものです。
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