弁理士の日々

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テロ特措法をどうすべきか

2007-11-02 20:42:46 | 歴史・社会
テロ特措法が10月末で期限切れとなるに当たり、その延長の是非が大きな政治課題になっています。
そもそも日本がインド洋で行っている給油活動は、国際政治の中でどのような意味を持っているのか持っていないのか、という点がよくわかりません。そして、「日本としての行動の大儀」が議論されるのではなく、「給油した油がどう使われたか」「守屋前次官は100回も接待ゴルフをした」というような末節のみが議論になっています。

月刊誌「世界」11月号では、テロ特措法の問題について4つの記事を載せています。

① 小沢一郎氏「今こそ国際安全保障の原則確立を」
 もともとこの記事を目的に「世界」誌を購入したのですが、まだこの記事について詳細には読んでいません。いずれにしろ、民主党の小沢代表がアフガン支援についての独自の議論を展開している論文です。

② 田岡俊次氏「『給油をやめると日米関係は危うい』は本当か?」
 「テロ特措法に基づいてテロとの戦いを続ける」といっても、アラビア海に補給艦と護衛艦を1隻ずつ派遣し、米国、パキスタンの軍艦に洋上給油するだけであり、供与する燃料も年間35億円分程度のわずかなものです。
 米駐日大使らが「パキスタンの軍艦は日本の油でないと動かない」と述べましたが、これが間違いであることは明らかです。
 パキスタン海軍も米海軍も、自前の補給艦を十分に持っています。
 従って、日本の給油活動が「不可欠」とする根拠はなく、単に「日本がタダで油を入れてくれれば嬉しい」というに過ぎません。
 アメリカでもパキスタンでも、日本の補給艦が6年間も補給を続けていることを知る人は稀であり、自分が知らないことが中止になって怒る人はまずいません。
 米国にしても、米政府の方針を米議会が否決することは稀ではありません。日本においても、「日本政府は継続したいのだが、野党が多数を占める議会が反対してできなかった」ということになれば、これこそ「普通の国」であってあまり角が立ちません。

 以上、洋上給油を継続するかしないか「どちらでもいい」程度のことに過ぎません。


③ 伊勢崎賢治氏「日本は『美しい誤解』を生かせ」
 OEF(不屈の自由作戦)(タリバン・アルカイダ掃討作戦)は、NATO加盟国にとってNATO条約5条の「集団的自衛権」の行使です。テロ特措法による日本自衛隊の洋上給油はこちらの範疇です。
 一方、ISAF(国際治安支援部隊)は、アフガンの治安維持のために国連が国連憲章第7章に基づき全国連加盟国に参加を呼びかけた「国連的措置」です。両者の法的な根拠の違いは明確です。

 タリバン政権崩壊後のアフガンにおいて、カルザイ政権下で健全な国を建設するため、民主選挙、国軍の整備、警察の整備、旧軍(北部同盟の軍閥)の武装解除などを平行して進めることが必須です。
この中で、旧軍の武装解除(DDR)(武装解除・動員解除・社会再統合)の活動が、実は日本国の主導で行われ、そして成功裏に完了していたなんて、皆さん知っていましたか?
この活動、伊勢崎賢治氏が日本代表としてリーダーシップを取って開始し、そして成功してしまいます。日本は、アフガン復興においてそのような大きな貢献を成し遂げていたのです。

 伊勢崎氏は成功の要因を「美しい誤解に基づく」と言っています。アフガンの当事者はだれも日本自衛隊による洋上給油のことを知らない。日本は軍事的な関与を行わず、中立の立場でアフガニスタンのことを考えてくれている。そのような誤解があったからこそ、日本による武装解除活動が成功したというのです。

今、アフガンの現地では、OEFによる空爆で民間人の犠牲が深刻です。日本の洋上給油はこの活動を支援しているのです。
今回のテロ特措法延長騒動で、日本が洋上給油していることが有名になると、「美しい誤解」が消えます。そうさせないため、自衛隊の給油活動は静かに収斂するのが一番いい、と伊勢崎氏は訴えます。

日本は国策で、アフガン復興支援をNGOにやらせています。そのNGOに、日本は待避勧告を出しました。日本が空爆の支援をしていると知られると、日本人NGOに危険が迫るからでしょうか。
アメリカへの遠慮から洋上給油を継続するより、給油を止め、今まで通りの復興支援を継続していく方がよっぽどましです。


④ 川邊克朗氏「自衛隊の『次の戦場』はどこか?」
日本のメディアにおいて、防衛省を担当する記者は、「防衛記者会」という記者クラブに所属しています。防衛記者会は、長年の当局からの接待攻勢と、防衛記者の"兵器オタク"化と懐柔策の成功で「防衛省広報部」と揶揄されるほどの「報・官」の癒着ぶりと言うことです。
小池vs守屋バトルにおいても、直ちに守屋援護論を展開したようです。
自衛隊イラク派遣でも、記者会はイラク報道で当局にまんまとメディア・コントロールされました。


以上、「世界」誌の特集を読む限り、
○ アメリカ主導の反タリバン軍事活動において、自衛隊による洋上給油はやってもやらなくてもどちらでもいい程度のようです。
○ 国連主導によるアフガニスタン復興支援の観点では、今までの日本によるめざましい活動を継続するため、自衛隊による洋上給油は中止した方が良いようです。

福田首相は、テロ特措法を成立させることを目的に民主党と大きな取引をする必要などないのです。

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