弁理士の日々

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ザカリー著「闘うプログラマー」

2013-04-16 22:37:08 | サイエンス・パソコン
先日、パソコンOSの変遷として、私が今まで使ってきたパソコンOSと、それぞれについての印象を記しました。なぜこのような記事を書いたかというと、以下の書籍を読んだからです。
闘うプログラマー[新装版] ビル・ゲイツの野望を担った男達
クリエーター情報なし
日経BP社

闘うプログラマー〈上〉〈下〉―ビル・ゲイツの野望を担った男達」という書籍があり、Windows NTの開発物語であることは、以前から知っていました。1994年出版とあります。
最近になって、アマゾンから私にお勧めとして「闘うプログラマー」が紹介されました。そこで試しに買ってみたのが上の本です。2009年に発売された[新装版]だったのですね。

主人公のデビット・カトラーは、1988年にDECを退社してマイクロソフトに入社しました。DECでの郎党を引き連れてです。
当時、マイクロソフトが提供するパソコンOSはMS-DOSでした。次世代のOSとしては、IBMと共同でOS/2を開発していましたが、ビル・ゲイツはこれを大失敗と考えるに至っていました。そんなとき、カトラーがDECを辞めたがっているという噂を聞きつけ、マイクロソフト入社を勧めたのです。
カトラーがリーダーとなって開発を進めたのが、Windows NTです。1998年に開発が開始され、発売されたのが1993年7月です。「闘うプログラマー」は、この期間にWindows NT開発に携わったメンバーに丹念なインタビューを行い、その結果を紡ぎ上げた物語です。

この5年間のプログラマー達の仕事ぶりは、壮絶の一語に尽きます。そしてそれは、リーダーのカトラーが激烈な人だったことによります。詳しくは本を読んでください。
本の末尾には、取材した人の名前が挙がっています。130人ぐらいの名前です。本の中では、これら直接話を聞いた人たちの活動の様子が活き活きと描かれています。私生活を顧みずに仕事に打ち込むことが要求されたので、家庭を顧みず、離婚にいたり、恋人と別れた人たちもいました。
マイクロソフトはそもそも、優秀な若者達が集まっていたはずですが、リーダーのカトラーは、そのなかでも優秀な頭脳と献身的な仕事とを要求したのです。

この本は、1994年に出版されていますから、初代のNTが発売された以降については当然ふれられていません。
当時、Windows 3.1がすでに発売されてパソコンOSはWindowsの時代に入っていました。そのため、NTも開発の途中でWindowsと互換性を有するOSになっており、名前もWindows NTと付けられました。しかし、このソフトが個人用パソコンのOSにはなりませんでした。
1995年にはWindows 95が発売されましたが、これはNTとは全く別のOSです。
さらにそれから5年、2000年になってWindows 2000が発売になりました。このWindows 2000が、WindowsNTをベースとした初めての個人パソコン用OSです。NTの発売からは実に7年の歳月が経過しています。この7年にどのような経緯があったのかについては、もちろん「闘うプログラマー」には記述されていません。

パソコンOSの変遷にも書いたように、Windows98からWindows2000に変化したときの使い勝手の向上が大きく印象に残っています。何しろ、毎日のようにパソコンがフリーズしていたのに対し、ほんとどフリーズしなくなったのですから。
私としては、Windows2000によってWindowsOSが完成したと思っています。その後のXPも7も、Windows2000の延長線上にあります。そのWindows2000が、NTをベースとしているのですから、ベースとなったWindowsNTは、現在のウィンドウズOSの元祖であるといっていいでしょう。それだけの影響力を発揮するNTの開発経緯が、「闘うプログラマー」に記述されています。ここまで優秀な大勢のメンバーが、ここまで仕事一筋に打ち込んではじめて完成したのです。普通の人の普通の集団にはできない仕事です。激烈で優秀なリーダーであるカトラー、彼を取り巻く優秀なプログラマー達、そしてカトラーらを雇ったゲイツ、これらの人たちがたまたま存在したことに基づく作品でしょう。
日本でも、同じように優秀な人たちが集い、これに匹敵するような優秀な製品が創出されるとうれしいです。しかし、一筋縄でないだろうこともわかります。
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