弁理士の日々

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文藝春秋の高橋洋一論文(2)

2008-01-12 17:12:20 | 歴史・社会
文藝春秋1月号「大増税キャンペーンに騙されるな~財務省が最も恐れる男が増税論の詐術を論破」高橋洋一(内閣参事官)
財務省と自民党与謝野馨氏らが目論む増税路線については前回報告しました。
ここでは同じ論文の中の、「日本銀行の愚かなプライド」についてまとめます。

「日本の名目成長率は異常だ。2000年代のOECD(経済協力開発機構)各国では、日本だけが平均0.3%ととびぬけて低い。OECD平均は5.1%、日本の次に低いドイツでも2.0%ある。」
「政府はずっと『デフレ脱却』を目指しているが成功していない。その原因は単純で、日本銀行が資金量を絞っていることだ。・・・日本銀行の出す資金量が少ないことは数字からも明らかだ。」

日本銀行は、インフレ率0~2%がいいといいながら、実は0%を目指してきました。そこで06年3月、インフレ率がプラスになるやいなや、量的緩和政策を解除して金融引き締めに転じ、06年7月07年2月に利上げしました。その結果、今でもデフレが続いています。これは「2006年度デフレ脱却」という政府の公約、「インフレ率が安定的にプラスになるまで金融緩和を継続する」という日銀の公約を破ったことになります。

では何故日本銀行はもっと積極的にデフレ解消をしようとしないのか。
財務省の「財政原理主義」と同様、日本銀行には「反インフレ至上主義」があるといいます。そこにはマクロ経済の観点は感じられません。
仮に2%程度のインフレ率(これが世界標準)を目標とした場合、日本銀行が国債を買えばいいのです。国債を買ってそのかわりにお金を出すことで物価が上昇します。経済学を勉強していれば簡単にわかる方法です。
だが、日本銀行は財務省に対するエリートとしての矜持から、国債を買いたがりません。国債引き受けは、日本銀行の屈辱の歴史なのです。戦前の軍拡路線のため、日銀は国債を無尽蔵に引き受け、終戦後のハイパーインフレとなりました。これに懲りて、経済合理性とは関係なく、組織のDNAとして国債は買わない。
しかし日本以外の国もそのような歴史があるから、現在では、多くの国でインフレ目標政策が採用され、ハイパーインフレにならないように、しかも中央銀行に金融政策手段の独立性が確保されるようになっています。

日本銀行が「デフレを脱却する手立てがない」というのは、国債を買って財務省に屈したと見られるのはいやだというメンタリティの裏返しです。
しかし海外の学者は、まさかメンツのためにデフレ脱却ができないと思わないから、「インフレ目標を採用して日本銀行が国債を買えばいい」と指摘し、そうしない「BOJ(日銀)はステューピッド」という一致した見方をします。全ての一流学者が異口同音に日本銀行の政策は稚拙だと語っていました。

「国債を買わずに『反インフレ(事実上のデフレ容認)』という日本銀行のアイデンティティが、『増税なき財政再建』を邪魔したのだ。かたや財務省は『財政原理主義』の『増税』がアイデンティティである。二つの日本社会のスーパーパワーの、マクロ経済を無視したデフレのままで増税という自己中心主義が、今の日本の経済と財政の窮状につながっている。」

「まず、デフレ脱却できなかった日本銀行総裁の後任人事で政治が試される。デフレ脱却なのか、継続なのか、国民は賢明な判断を求めている。」


高橋氏のこのような見方を念頭に置いて、これからの財政政策を見守っていきたいと思います。

同論文中の「余り金をポケットから出せ!」「国有資産を抱えこむな」「日本の公務員の権限は世界一?」については次回に。
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