弁理士の日々

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若い女性の意識はこの20年で変わったのか

2012-08-08 19:42:00 | 歴史・社会
アンアンのできれいになれた?
北原みのり
朝日新聞出版
以下、スパムコメント対策として一部文字をイメージ表示しています。

何かでこの本の存在を知り、読んでみました。

雑誌「an an」(以下「アンアン」)は、1970年に創刊されました。
著者の北原みのり氏の目から見ると、80年代の空気の中心にアンアンがいました。中でも、1989年4月に発売されたアンアンの特集「で、きれいになる。」の衝撃が忘れられないとのことです。
そのアンアンが、創刊から40年でどのように変わってきたのか、アンアンが創刊された70年代に“新しい女”の時代を生きた女たちは、今どんな60代を迎えているのか。そんなことを考えながら、著者の北原氏はアンアンを創刊号から読み直してみようと思いました。「キラキラしていた女の雑誌が、普通の雑誌になるまでの40年に、日本の女に何が起きたのかを考えてみたくなった。そして、自分のことも振り返りたい。」
北原さんは国会図書館で創刊号からのアンアンを読み、そしてできあがったのが上記の本です。
アンアンの記事を通して見えてきた、この40年間の日本の若い女性の意識の変化、それは私の想像外のことでした。
もちろん、アンアンの記事は編集者の意図でできあがるわけで、その時代の女性の意識を100%反映しているとは限らないでしょうが、それでも、その時代の読者の意識に強く影響されてはいるはずです。

《70年代》
『国会図書館で40年前のアンアンを手にしたとき、雑誌というものがこれほど当時の空気をそのままページに留めるものだということに、改めて気づかされた。』
『70年代のアンアン、信じがたいほどの斬新さに満ちていた。・・・これが地続きの日本、たった40年前の日本とはにわかに信じがたい世界がそこには繰り広げられていた。』
『衝撃の二点目は、アンアンが驚くべきウーマンリブ体質だったことである。』
『アンアンの衝撃の三点目は、アンアンの限りない反体制的姿勢だろう。』

《80年代~90年代前半》
『70年代のアンアンが高い志のもとに自由を謳歌するお姫様だったとしたら、80年代のアンアンは、今の感覚からいうと“悪ふざけ”にも見えるほど、徹底して軽く、明るく、おしゃべりで行動的な女の子に見える。』
『高度経済成長がピークに達しバブルに向かって小躍りするように街が浮かれていたあの時代の始まりは、私の記憶の真ん中にあり、強い感情とともによく覚えている。両親が郊外の新興住宅地に家を持ち、転校して小学校が変わった。』
『今の時代、どこをどう探してもひとかけらも見つかりそうもない、軽すぎる勢い。世の中は良い方向に豊かに明るく軽くなっていくという未来を疑うことなく、アンアンも女の欲望を丸出しにしながら、あの時代をそのまま生きていた。』
『アンアンが当時目指していた「女」は、個性的な仕事に就き自由に遊べる女だ。そういう女が実際に溢れていたわけではない。でも、アンアンの職業特集で見えてくるのは、一般企業の正面玄関からはことごとく弾かれても、男と比べものにならない低賃金であっても、働き続けようとする女たちの有無を言わせないようなひたむきさだ。』

そして1989年4月に発売されたアンアンの特集「で、きれいになる。」です。
『欲望を丸出しにしているのに、きれい。そして、全然男に媚びていない。何が斬新だったのかを一言で表すなら、すべてが完璧な「女目線」だった、これに尽きる。』

92年、アンアンは読者モデルを公募し、篠山紀信が撮影するという企画を打ち出しました。世間をあっと言わせた「きれいな裸」特集です。
『巻頭に林真理子が感動的なエッセーを寄稿している。エッセーというよりは、高らかに新たな時代を宣言するかのように熱い。』

《90年代後半~00年代》
97年の特集では「愛情と信頼と、すべてをゆだねられる一番好きな恋人とこそ」と「愛」が連呼されます。
『愛、愛、愛。そういえば、これまで「愛ある」をアンアンが声高には主張してこなかったことに、ここに来て初めて気がつく。』
『一方で、97年と98年には、アンアンがいままで紹介したことがない、本格的なハウツーテクニックがページを占めていくことだ。』
2000年に北原氏はアンアンからコメントを求められました。ところがそれは「男を悦ばす極上のテクニック」というコーナーだったのです。
2000年1月号でアンアンが掲げた目標『今年こそ、“恋愛の勝ち組”を目指すぞ!「男が追いかけたくなる女」になりたい』
『あの頃に発売された本や、歌を振り返ってみると、女の子たちの叫びのようなものが、聞こえてくる気がする。・・・この社会には、女の子の居場所がない、と。
バブル世代の女は、自分たちがいる場所が世界の中心だと思えていた。・・・若く未来のある女が、世界で一番自由で強く、世の中の真ん中にいられる。女であることの居心地の悪さを感じたことはないけれど、「居場所がない」と苦しむのは、少なくとも80年代の女にはなかった感性だ。
わずか数年で女の子から見える世界は180度変わってしまった。』
01年から03年ころには、アンアンの記事は完全に変わってしまいました。
80年代には「自分のため」だったが、90年代後半以降「男に奉仕する」「男に媚びる」に変身してしまいました。
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以上は、アンアンの記事を北原氏が通読して事実としてまとめたものです。このまとめから、いったい何が見えてくるのでしょうか。私には、日本の若い女性を取り巻く環境が、恐ろしく変化してしまったように思えてなりません。
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