駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

風の中の訃音

2017年12月05日 | 人生

        

 師走になったせいか晴天で冷たい朝が続く、ちょっと危ないがポケットに手を突っ込んで歩いてしまう。

 今の時期になると身内の不幸があり新年のご挨拶を・・という葉書が来る。昨日見なれぬ名前の通知があるので誰かなと読むと長女K子が59歳で永眠という文字が目に入った。冷水を浴びせられたように何とも言えぬ感覚が背筋を走った。三十五年前SLE(全身性エリテマトーデス)と診断した患者さんだ。そういえば去年の年賀はがきに入退院を繰り返しているような添え書きがあったように記憶する。色白の可愛い女性で、最後に医院に寄られたのが十五年くらい前と思う。ぽつりと今は総合病院の専門医に通院しているがこんな大変な病気とは思わなかったとつぶやかれたのを覚えている。

 可愛い人なのに縁に恵まれず、おそらく病気のことがあって身を引かれたのではと想像する、親の面倒を見ておられたと仄聞するが、その親御さんから訃報が届くとは何ということだろう。酷いと思うのは過ぎた忖度かもしれないが、世の中は理不尽に満ちていると思い知らされた。

 帰ってきた酔っ払いを聞いてなんだこれはと思ったのを昨日のことのようにはっきりと憶えている。フォーククルセダーズとは同世代で、彼らの歌を聞いて青春を過ごした。はしだはしだのりひこさんはのっぽの中のチビで、のっぽの二人とは一味違った個性を感じていたが、特別の興味はなくどんな人だったかはよく知らなかった。訃報に続き、ナベツマさんのブログを読んで、あーそういう男気というか決断力のある人だったんだと知り、風の中を歩き回った青春を思い出しながら彼の歌声が聞こえる気がした。

コメント
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