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「奇 々 怪 会」 とは、どういう会なのか

昭和30年前後にイギリスのネス湖で恐竜ネッシーの存在が話題となり(湖面を泳ぐ姿が目撃され、写真に撮られたりした)、ヒマラヤで雪男の足跡が発見された等などが新聞やテレビで話題になりました。
こうした話題は昔から私達の興味を引く出来事だったようです。

いや、もっともっと旧くには・・・
秋田出身の国学者・平田篤胤は異界・幽冥の世界の有様をまとめて、1822年(文政5年)に『仙境異聞』を出版しています。
実は文政3年秋の末、篤胤45歳の頃、江戸で天狗小僧寅吉の出現が話題となっていたそうです。
寅吉は神仙界を訪れ、そこの住人たちから呪術の修行を受けて、帰ってきたというのです。
篤胤は、天狗小僧から聞き出した異界・幽冥の世界の有様をまとめて、出版したのが『仙境異聞』であります。これが当時大きな話題となったと伝えられています。
ことほど左様に”不思議な話”は、いつの時代でも人の興味を引き付けるのだと思われます。

心霊現象、死後の世界、臨死体験、輪廻転生、古代文明、オーパーツ、超常現象、UFO、UMA、ツチノコ・・・・・
身近では霊的な場所、遺跡、神社、お寺、巨木等なども私達の興味を引き付ける様です。

奇々怪会は、こうした事に興味を持つ人の集まりです。
新規の入会を希望する方は下記までご連絡ください。
メール arashigeru@yahoo.co.jp

日本伝承大鑑24 遠野伝承園 御蚕神堂

2024年03月20日 | 伝承大鑑
遠野伝承園 御蚕神堂【とおのでんしょうえん おしらどう】

遠野市の観光地でも屈指の知名度を誇る施設が、遠野伝承園である。遠野地方の農家の生活様式を再現した施設であり、国指定の重要文化財である菊池家曲り家を中心に、井戸や湯殿・雪隠などが展示されている。その中に「オシラ堂」と呼ばれる建物がある。曲り家から廊下伝いに中に入る構造となっているが、わずか6畳ほどの狭い室内には、壁一面に“オシラ様”と呼ばれる神様の御神体が並べられている。その数は約1000体。その圧倒的な威圧感は、時に見学者の体調にまで影響を与えるほどとも言われている。

オシラ様は、主に東北地方の農家を中心に信仰されてきた神である。蚕の神とも農業の神とも言われ、あるいは女性の神、馬の神ともみなされている。この地方の農家に関係する事柄全てに関わる神であると言ってもおかしくない。その御神体は、約30cmほどの桑の木を棒状にしたものの先端に、顔が彫ったり描いたりしてかたどられており、それに着物のように布が幾重にも重ねられている。そして御神体は2体一組とされ、それぞれ男女であったり、あるいは馬と女性の組み合わせであったりする。代々家に祀られており、現存する最古の像で制作年が判っているものは大永5年(1525年)となっている。

オシラ様を家に祀るに当たっては、かなり厳格で細かな掟が存在する。“命日”と呼ばれる祭りの日は、旧暦1・3・9月16日と定められている。その日は御神体を神棚から下ろし、布を着重ねさせ(地元では“オセンダク”と呼ぶ)、家人(主に本家の最長老の女性)が祭文を唱え、少女が御神体を背負ったりして“遊ばせる”という一連の行事がおこなわれる(あるいはイタコが祭文を唱えて遊ばせる場合もある)。そして禁忌も数多い。例えば、二足四足の動物の肉を食べると、顔が曲がるとされる。また一度オシラ様を家で祀ると拝むことを止めることが出来ないとされ、また粗末に扱うと祟ると言われている。

オシラ様の始まりに関する伝説は何種類かあるが、最も有名なものは『遠野物語』第69話に収められたパターンである。
ある時、父と娘の二人暮らしの農家があった。その家では牡馬を一頭飼っていたが、娘と馬は仲が良く、娘が馬小屋で馬と一緒に寝ることもよくあった。そのうち娘と馬は相思相愛の関係となり、夫婦の契りを交わすまでとなった。そのことを知った父親は、怒りに任せて馬を桑の木に吊り下げて殺してしまった。事の次第を知った娘は、吊り下げられた馬の首に取りすがって泣き叫ぶ。それを見てさらに憎悪を募らせた父は、斧で馬の首を斬り落としてしまったのである。すると馬の首は天へと飛んでいき、娘もそれに取りすがったまま彼方へと消え去っていった。それがオシラ様の始まりであるとされる。

さらに『遠野物語拾遺』第77話には、次のような話も残されている。
馬の首と共に消え去る直前に、娘は父親に「3月16日の朝、夜明けに庭の臼の中を見たら、父を養うものがある」と告げる。その日になって父が臼の中を見ると、馬のような頭を持った白い虫がいっぱい湧いていた。それに桑の葉を与えて養った。それが蚕であるという。

オシラ様の伝説は、中国の“馬娘婚姻譚”を踏襲し、養蚕の起こりを伝えたものであると考えられている。しかしその伝承に留まらず、独自の信仰形態を獲得して土着している点では、オリジナルを遙かに凌駕した存在であると言える。現在でも遠野市内の個人宅に祀られているオシラ様を公開しているケースもあるが、やはり伝承園のインパクトと圧倒感は別格であり、その脈々と重ねられてきた信仰の強さや深さを実感することが出来ると言えるだろう。