一昨日からきいている、ネストル・ファビアン・コルテス・ガルソン(芸術監督)とブレーメン・バロックオーケストラの「BACH to the Roots!」(2019年録音)。今日これから楽しむのは、チェンバロ協奏曲第1番をもとに再構成(復元)された、ヴァイオリン協奏曲(BWV1052R)です。ヴァイオリン独奏はトモエ・バディアロヴァ(三原朋絵)で、再構成はガルソンがおこなっています。
ところで、この「BACH to the Roots!」。はじめてCDタイトルをみたときに、BachをBackと読み替えるのだなと思い、収録曲はすべて初期稿で録音されているものだと、かってに考えていました。そのため、じっさいに入手してきいたときには、「あれれ」と。演奏は初期稿によるものではなかったのです。しかし演奏じだいは、びっくりもするし、とても楽しめるものでした。
たとえば、管弦楽組曲第2番。フェリペ・マクリミリアノ・エガーニャ・ラブリンのフルートはただ美しいだけでなく、じつに華麗な装飾をきくことができます。それだけでなく、たとえばサラバンドでは、楽譜からのだいたんな逸脱も。サラバンドは前半(A)、後半(B)がそれぞれ反復するように記譜(||: A :||: B :||=AABB)されていますが、ガルソンたちはABAB(||: A | B :||)と演奏しています。しかも、はじめのABはフルートと通奏低音、あとのほうはトゥッティというくふうも。
ヴァイオリン協奏曲では、だいたんな逸脱はみられませんが、ここではガルソンの再構成の手腕と、バディアロヴァの闊達なヴァイオリンが楽しめます。ほかの2曲もふくめていえるのは、ふつうこういう放縦ともいえる演奏だと、ともすれば下品になりそうなものですが、それがまったくないということ。すべてが品よく、変な「アク」はありません。とにかく楽しめます。
CD : arc 20021(Arcantus)