Activated Sludge ブログ ~日々読学~

資料保存用書庫の状況やその他の情報を提供します。

●反戦川柳人・鶴彬さん…《兵士として未曾有の「隊長への質問」で処罰されるが屈せず…命をかけて反戦の川柳を詠み続け、ついには…》

2023年07月30日 00時00分16秒 | Weblog

[↑ 三上智恵監督/最新作『沖縄、再び戦場 (いくさば) へ(仮)』製作応援のお願い (https://okinawakiroku.com/images/hero_pc_l.png)]


(2023年07月17日[月])
【佐高信 『反戦川柳人 鶴彬の獄死』【著者に訊く!】 2020628】
 (https://www.youtube.com/watch?v=btPpLVm4K2g
デモクラシータイムス》《兵士として未曾有の「隊長への質問」で処罰されるが屈せず、そののちも、命をかけて反戦の川柳を詠み続け、ついには監獄で赤痢に罹患し29歳の若さで獄死した鶴彬。さまざまな文献を引きながら、魂に叫びの真髄に迫る渾身の著。更には『佐高信評伝選5』(旬報社)の司馬遼太郎藤沢周平での辛辣な司馬批判。もう1冊『日本の闇と怪物たち 黒幕、政商、フィクサーたち』(平凡社新書)も紹介。著者・佐高信の八面六臂の活躍ぶりに驚く。》

 「大陸へ」ではなく「大陸」だそうだ。「万歳とあげて行った手を大陸においてきた」。
 鶴彬さんの「生きた世」…《鶴彬(つるあきら)獄死の末(さき)ある戦(いくさ)》。キシダメ独裁政権、自公お維コミが目指すそんな「世」でいいの? トランプ氏により《安倍政権が「戦争のできる国」への大転換を行い》、バイデン氏により《岸田政権は「軍事国家」へ大転換》(琉球新報)。人の親や祖父母として子や孫を、そんなに「人殺し」に行かせたいものかね? 全く理解不能だ。

   『●『石原莞爾/その虚飾』読了 (2/2)
     「「手と足をもいだ丸太にしてかへし
       万歳とあげて行った手を大陸へおいてきた
       /…鶴彬は、こうした刺し貫くような反戦川柳をつくって逮捕され、
         赤痢にかかって、手錠をかけられたまま、二十九歳で病死した」」

   『●閉塞の時代に: 安倍晋三首相の危険な「思い入れの強さ」
    「東京新聞…記事【鶴彬(つるあきら)の愛好家らが運動 
     反骨の川柳作家 都内に句碑を】」

   『●「女性が輝く社会」の「女性を愚弄した発言」…
      「タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう」(鶴彬さん)
    「「タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう」(鶴彬さん)とでも
     脳内では? 与党自民党の桜田義孝前五輪相や元癒党お維の
     丸山穂高衆院議員…よくもまぁ、こんな議員に投票できるよな。
     《そもそもこうした議員を選ばないよう吟味するのは、
     有権者の責任である》…「1/4と2/4」の皆さん、このままでいい
     のですか? 《子育て支援を公約》《子育ての党》といったフザケタ
     与党自公や「子を人殺しに行かせたくて仕方ない」癒党お維を支える
     「1/4」の皆さん、選挙に行きもしないことで間接的に与党や癒党を
     支えている「2/4」の眠り猫な皆さん…」

   『●「戦争や軍国主義を批判、風刺、反体制的な句を作った
         俳人四十四人が治安維持法違反容疑で検挙され…」
   『●《戦争が廊下の奥に立つてゐた》…《そんな時代にしては
          ならない》はずが、癒党お維や与党議員ときたら
   『●与党自公や癒党お維は、戦争したくて(させたくて)、人殺しに
             行きたくて(いかせたくて)しかたないのね?
   『●鶴彬さんの「生きた世」…自公を支持する皆さんは
         人の親として「そんな世」を目指しているの?
   『●東京新聞の社説《苛烈な言論統制の末にあったのは…。》、川柳作家
       《鶴彬(つるあきら)/獄死の末(さき)に/ある戦(いくさ)》
   『●《攻撃的兵器…他国領域も攻撃できると声高に宣言するような国を「平和
     国家」とはとても呼べない。戦後日本の平和を築いてきた先人への背信》

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●《…人の不幸で金もうけ。カジノ誘致への心配は数々あれど、もう一つ不安の種が加わった。「政治汚職の温床」》

2020年01月07日 00時00分36秒 | Weblog

[※ 自公選挙公約「子育て…」小躍りするアベ様日刊ゲンダイ(2017年12月19日)↑]



東京新聞のコラム【筆洗】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019122602000128.html)。

 《▼治安悪化のおそれ、ギャンブル依存症、子どもへの悪影響、人の不幸で金もうけ。カジノ誘致への心配は数々あれど、もう一つ不安の種が加わった。「政治汚職の温」。情けない》。

   『●「まん延する差別」な、「御持て成し」どころでない
        「うらあり」だったニッポン…「病んだ空気」が蔓延
   『●《全国民を勝負師に》…「国民にギャンブルを
      奨励するギャンブル国家の道…憲政史上、由々しき法案」
   『●《全国民を勝負師に》…「さすがに六時間で可決させるのは
                無理だろうな」「だったら、賭けるか」(筆洗)
   『●室井佑月さん「安倍政権の掲げる成長戦略は…
      他人の不幸や不運を踏み台にしたものばかり。ろくでもない」
   『●「カジノより学校にエアコンを! …被災者を助けて!」
         …どこら辺が議場の秩序を乱し、品位を傷つける?
   『●浜矩子さん《昼間は超効率的に労働させ…
      夜間は退廃の不夜城活動で経済活性化に貢献させる…》、あぁ…
   『●「働かせ方壊悪」…(斎藤美奈子さん)「こんな形で働かされたら
                      子育てなんかできない…少子化促進法」
   『●「米ラスベガス・サンズに日本に参入する免許を与えるよう
               強く要求」されておきながらアベ様は平気で…
    「《トランプ大統領が自身の大口献金者であるカジノ大手の
     ラスベガス・サンズに日本に参入する免許を与えるよう強く要求
     してたんじゃないのぉ! アベ様ときたら、あまりの予想通りの展開過ぎて、
     呆れたねぇ。憲政史上最悪の国会で、アベ様は《そんな事実は、
     これはまったく、一切なかったということをはっきりと申し上げておきたい
     と明言。息吐く様にウソをつく。《ニヤニヤと笑みを浮かべながら…、
     根も葉もないヨタ話と言わんばかりに笑い、鼻にもかけないような態度をとり、
     事実を完全に否定》しておきながら、なんじゃそりゃ」
    「《カジノに貿易、武器購入まで……。トランプに尻尾を振ることしかできない
     “忠犬”の安倍首相によって、日本はどこまでも売り渡されつづけて
     いくのだろう》…世界中の笑いものだ」

   『●大阪「ト」の万博、お維とアベ様らが賭博場開帳のために 
            《血税をつぎこむための隠れ蓑》…上前はどこに?
   『●賭博場開帳…《ばくちで生きながらえる自治体になりたい》
        というカジノ誘致横浜市長の後ろ盾が最低の官房長官
   『●賭博場開帳が《人口減、税収減など、横浜の将来への
     強い危機感》を払拭し、《市民が誇れる、持続可能な街作り》に?

 市民に向かって、横浜市の林文子市長は盛んに「IRで財政が豊かになる」と仰るが、カジノ抜きの「IR」ならば、カジノ抜きでリゾート施設の誘致を進められてはどうか? カジノ込みの「IR」でなければ、「財政が豊か」にならないのならば…《人の不幸で金もうけ》《他人の不幸や不運》の上にしか達成できない「財政の豊かさ」って一体何なのか? 賭博場開帳が《人口減、税収減など、横浜の将来への強い危機感》を払拭し、《市民が誇れる、持続可能な街作り》になるとでも?

   『●室井佑月さん「悪魔とはこういう顔か」!? ⇒
     デンデン王国の国王御夫妻やウルトラ差別主義者らの御顔
    「【カジノ法案強行採決!山本太郎が安倍政権の被災地無視に
     吠えた!「誰のために政治をやっているんだよ!」】…失礼?
     《委員会が開かれていること自体がおかしい》!」

   『●「カジノより学校にエアコンを! …被災者を助けて!」
        …どこら辺が議場の秩序を乱し、品位を傷つける?
    「「カジノより学校にエアコンを! …被災者を助けて!」…
     どこら辺が議場の秩序を乱し、品位を傷つける?
     【室井佑月「品位なんて糞食らえ!」】…《「カジノより…」
     当然のことでしょう?…〈伊達忠一議長はその場で…と注意した〉
     だって。議院の品位ってなんだよ?》

 《他人の不幸や不運を踏み台に》するカジノ、その裏では…《政治汚職の温床》、自民党議員やお維関係者らによる薄汚さ。
 リテラの記事【IR汚職、秋元議員逮捕に続き安倍直系議員にも強制捜査…中国企業から接待受けた「政治家12人リスト」も流出】(https://lite-ra.com/2019/12/post-5165.html)によると、《自民党の秋元司衆院議員がIR=カジノをめぐる収賄疑惑で東京地検特捜部に逮捕された。さらに衝撃的だったのが、白須賀貴樹衆院議員や、勝沼栄明前衆院議員の事務所にも家宅捜索に入ったことだ。勝田前議員は秋元議員と同じ、IR=カジノ利権の本丸と言われる二階派所属。そして、白須賀議員は第二次安倍政権が誕生した2012年の衆院選で初当選、安倍首相の出身派閥である細田派に属する典型的な安倍チルドレン議員だ》。

 日刊ゲンダイの記事【秋元カジノ疑惑のキーマンも逮捕…維新議員の息子だった】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/266771)によると、《紺野容疑者は秋元容疑者をはじめ、複数の自民党議員との接点が明らかになっているが、なんと紺野容疑者は、カジノ誘致を推進している日本維新の会の現職議員の息子だと日刊ゲンダイの調べで判明》。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019122602000128.html

【コラム】
筆洗
2019年12月26日

 江戸の当時、公家の暮らしはそれほど裕福ではなく、中には「内職」に走る家もあったそうだ▼司馬遼太郎さんによると三条実美の家の内職はカルタの絵付け。もっとびっくりするのが「王政復古の大号令」の岩倉具視である。博徒に賭場を貸すことで稼いでいたらしい▼当時、博打(ばくち)は固く禁じられていたが、公家の屋敷には町奉行の権限も及びにくい。いい隠れみのになると目をつけた博徒と手を組み、秘密の賭場を開かせていたそうだ▼公家の立場を利用した岩倉卿の「古傷」はそっとしておくとしても、許し難いカジノ誘致をめぐる現職国会議員の逮捕である。自民出身の秋元司衆院議員。カジノを含む統合型リゾート(IR)事業への参入を狙っていた中国企業から現金数百万円を不正に受け取ったとして収賄容疑で逮捕された▼昨年までIR担当の内閣府副大臣。経歴だけ見ればカジノ政策の専門家だろう。中国企業を博徒呼ばわりする気はないが、賭場の開帳を狙い、秋元議員の立場に目をつけて金を渡していたとみられる。秋元議員は金銭授受を否定するが、「ばれっこないだろう」とうかつに張った賽(さい)の目は「逮捕」へと転がったか▼治安悪化のおそれ、ギャンブル依存症、子どもへの悪影響、人の不幸で金もうけ。カジノ誘致への心配は数々あれど、もう一つ不安の種が加わった。「政治汚職の温床」。情けない
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●無事帰国した安田純平さんに、是非、現地の様子や拉致事件の全貌、生還できた教訓等々を聞いてみたい

2018年10月30日 00時00分05秒 | Weblog

[※ 青木理さん(『サンデーモーニング』 2018年10月28日)↑]



久田将義責任編集TABLO』(http://tablo.jp/)の二つの記事。
畠山理仁さんの記事【ジャーナリスト・安田純平さん帰国で炎上する『自己責任論』について私はこう考える|畠山理仁】(http://tablo.jp/case/international/news004023.html)。
久田将義責任編集の記事【戦場ジャーナリストには意義がある 安田純平さん帰国で『自己責任論』を拡散する人達へ|久田将義】(http://tablo.jp/case/international/news004025.html)。

 《だが、安田さんはあなたではない。「私だったら行かない」でいいだろう。「私だったら謝る」でいいだろう。「帰ってこなくていい」という冷たい言葉を放った人は、その先に何を見ていたのか。…安田さんは生きて帰ってきた。だから私は少し待ちたい。安田さんのジャーナリスト生命をここで終わらせてしまうことのほうが、社会にとって大きな損失ではないだろうか》。
 《今回の「事件」について、安田さんは記事か本か映像で発表するでしょう。それは僕らが分からなかった中東情勢を知らせてくれるでしょう。また過去の安田さんがシリアに行って撮影した映像も、彼が現地入りしたからこそ初めてわかるものでした》。

   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(2/2)
   『●「自己責任」を叫ばれた人の立場
   『●「自己責任」バッシングと
     映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』
   『●「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。
                     伝えようとした人が現場にいたからです」


 安田純平さんに自己責任論を投げつけ、「沈黙」させれば気が済むのですか? 
 『サンデーモーニング(2018年10月28日)』での青木理さんの御話。政府側の言い分(ケリー国務長官)ではあるが「メディアやジャーナリストの危険性をゼロにすることは無理」であるが、一つ方法があって、それは「沈黙」「目と耳をふさぐ」こと…でも、それは「降伏・放棄」である。
 「降伏・放棄」は、圧政者を利し、圧政や戦禍に苦しむ市民を見放すことになる。



 かつて同番組で、青木理さんは以下の様にも述べておられました。

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■(サンデーモーニング、2016年3月20日)青木理さん: 「自己責任や、「公共の迷惑」か? 安田さんのような活動が無いと、戦場で何が起きているのか知りようがない。紛争は究極の人権侵害が起こる場所。そこで何が起きているのか、女性や子供といった弱者がどうなっているのか、我々は何も知り得なくなる。こういうジャーナリストの活動が知る権利、「公共の利益」を代表している」
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 無事帰国した安田純平さんに、是非、現地の様子や拉致事件の全貌、生還できた教訓等々を聞いてみたい。《戦場で何が起きているのか…そこで何が起きているのか、女性や子供といった弱者がどうなっているのか》、安田純平さんから聞いてみたい。
 ジャーナリストである《安田さんが背負っている責任》は、畠山理仁さんが言うように、《この40か月の体験を、いずれ社会に還元してくれるだろう。それに対する評価を受けること》。

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
    「帯より、「世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 
     自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録!
     民営化の果て、その現場とは?」
       ファルージャ 日本人人質拘束事件

   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……
   『●安田純平さんの無事な解放を祈る… 
     「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?
   『●自己責任であり、「公共の迷惑」なのか?: 
      青木理さん「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」
   『●異常過ぎる非情な自己責任論者達… 
      安田純平さんの「罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したこと」?
   『●「自己責任などと声高に言わずに出掛けていくのは、
        使命感からだ。…安田純平の解放を心から喜びたい」
   『●《「ひどい環境から解放されて良かったね」とねぎらわれ》ても、
                      帰国しても《ひどい環境》が待っている

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http://tablo.jp/case/international/news004023.html

ジャーナリスト・安田純平さん帰国で炎上する『自己責任論』について私はこう考える
畠山理仁
2018年10月27日 ジャーナリスト 安田純平 帰国 炎上 畠山理仁 自己責任論

 

 シリアで拘束されていた安田純平さんが解放され、約40カ月ぶりに帰国した。筆者は安田さんと面識はあるが、友人関係ではない。しかし、共通の知人である記者仲間が安田さんの解放を願って動いたり、あえて動かなかったりしたことを知っている。

 記者たちは安田さんのための行動を自己責任でやってきた。そんな人たちの心労が減ったことは喜ばしい。また、私自身も安田さんの帰国を喜んでいる失われてもいい命などこの世には一つもない。それは皆さんの命もまったく同じことである。

 しかし、安田さん帰国の第一報が流れると、日本では『自己責任論』を盾にしたバッシングが始まった。私にはバッシングする人たちが何を求めているのかがわからなかった。

   「危険地帯に勝手に行って捕まった」

 そう憤る人もいた。しかし、そこが危険地帯であるとどうやって知りえたのだろうか。誰かが「現地で何が起きているか」を取材し、伝えているからではないか。

   「行くべきではなかった」「謝るべき」

 そんな意見も目にした。だが、安田さんはあなたではない。「私だったら行かない」でいいだろう。「私だったら謝る」でいいだろう。「帰ってこなくていい」という冷たい言葉を放った人は、その先に何を見ていたのか

 安田さんは目的を持ち、自らリスクを負ってシリアに行った。それ以上でもそれ以下でもない。私たちの「目」や「耳」の役割を果たすであろうジャーナリスト、「現地に行くなと言う理由がわからない。多様な情報があるからこそ、机上の「論」も成り立つ。わざわざ情報を遮断して世界を歩こうとするのは、とても危険なことではないだろうか。

 事実として、安田さんは日本の外務省が退避勧告を出しているシリアに入った。しかし、そのことをもって、日本国が「国としての責任」を免れるわけではない。

 普段から政治家は「国民の生命と財産を守るのが仕事だ」と胸を張る。政治家は特別職の公務員であり「全体の奉仕者」だ。国民を選別していいはずがない。もちろん、あなた自身も守られるべき存在である。

 たしかに安田さんは、政府にとって厄介な事案を引き起こしたかもしれない。しかし、多様な人たちの集合体が国である。多様性を認められない国は、民主国家とは呼ばれない

 紛争地を取材するジャーナリストは、リスクを負った結果、不幸にして命を落としてしまうこともある。「死」は大変に重い情報だ。しかし、生きて帰れば、より多くの情報を社会に伝えられる。当然ながら、本人にとっても社会にとっても「生還が最善だ

 だから私には、生還を喜ばない人たちが何に重きを置いているのかがわからない。もし、他人にを要求するような社会であるならば今の日本はとても病んでいると思う。

 安田さんはジャーナリストだ。この40か月の体験を、いずれ社会に還元してくれるだろうそれに対する評価を受けることが安田さんが背負っている責任だと私は思う。

 安田さんは生きて帰ってきた。だから私は少し待ちたい。安田さんのジャーナリスト生命をここで終わらせてしまうことのほうが社会にとって大きな損失ではないだろうか。(文◎畠山理仁 [第十五回開高健賞受賞作家])
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http://tablo.jp/case/international/news004025.html

戦場ジャーナリストには意義がある 安田純平さん帰国で『自己責任論』を拡散する人達へ久田将義  
2018年10月28日 久田将義 安田純平 帰国 戦場ジャーナリスト 拡散する人達 自己責任論

 ジャーナリスト安田純平さん帰国の報に対して、ネットを中心に余りにも勘違いしている人がいます。「自己責任だからしょうがない」論。そこから「自己責任だから死んでも仕方ないまで発展する人もいます。大丈夫ですか? 何かがおかしい、とご自分では省みないのですか?

 まず、同じ日本人として、日本人が無事に帰ってきたことに「お疲れ様」と言うのがです。というより、日本人でなくても人が生死の境目から帰還したら同じような気持ちを抱くのが真っ当な心根ではないでしょうか。

 安田純平さんは戦場ジャーナリストです。つまり、一般の人が行けない戦地に行って現場をリポートするのが目的であり「職業」です。

 この仕事の日本における泰斗として明治時代、西南戦争に従軍したジャーナリスト福地桜痴(源一郎)がいます。文字通り、戦場ジャーナリストの先駆けです。彼の記事のおかげで現在も西南戦争のリアルが伝わってきます。「翔ぶが如く」(司馬遼太郎著)などの作品も彼の取材がなければ成立しなかったかも知れません。彼も一歩間違えれば「戦死」の可能性がありました。また、日露戦争に従軍して「乃木大将と日本人」をアメリカ人記者スタンレー・ウォッシュバーンが著しました。

 福地から始まった(とされる)日本での戦場ジャーナリズム。戦場に赴き、最小限の安全を確保しつつ、現場戦地をリポートする事は、意義があるのです。危険地帯を危険と報道すれば政府は国民に対してその国へ渡航する事に注意を則します。つまり、公益性がある仕事なのです。

 戦場カメラマン沢田教一さんはピューリッツア賞を取りましたが、現地で亡くなりました。安田純平さんは亡くなれば偉かったのでしょうか。日本人が、いや、人が亡くなってよくやったねとほめる事人間のあるべき姿として、生き方として間違っています

 安田さんに対する批判で、少し理解できるのが「安田さん英雄論批判」です。これは安田さんのせいではありません。僕も、「誰が安田さんを英雄とか言っているのか」と驚きましたが恐らく、テレビ朝日の玉川徹さんの言葉が拡散されているかと思われます。これには玉川さんに苦言を呈しておきたいです。英雄は言い過ぎだろう、と。こういった風潮に対して、過剰に反応するムキがあるのかと思います。

 が、それが「自己責任論」へと結びつくのは余りにも愚かです。

 安田さんのツイートも見ました。現政府に対して、反旗を翻す内容でした。その文章表現は僕は、品がないものもあったと思いましたしたが、僕も品のないツイートをしています。

 しかし、この国では言論の自由、表現の自由が認められています。基本、何を言っても良いのです(これについては何度も言ったり書いたりしています)。けれども、「政府に助けてもらうのはおかしい」という論こそ、全くおかしいものです。憲法に基づき、政府は政府の役割を果たすのみです。すなわち日本国民の安全を保障する、です。

 今回の「事件」について、安田さんは記事か本か映像で発表するでしょう。それは僕らが分からなかった中東情勢を知らせてくれるでしょう。また過去の安田さんがシリアに行って撮影した映像も彼が現地入りしたからこそ初めてわかるものでした。

 少女が銃声に耳をふさぐ様子。幼き子供が亡くなってしまった事。こんな悲劇が世界で起きている事を安田さんは伝えてくれました。これは日本人にとって非常に貴重な情報です。

 安田氏の帰国に関して、ずっと言われているのが自己責任論です。すなわち、自分の事は自分で責任を取ると言う事ですが、一見、勇ましく聞こえます。勇ましい事を言う人ほど、僕は疑心を持ちます。例えば本当の愛国者は愛国とかわざわざ口に出して言わないものです

 主にネトウヨと言われる人たちが批判していると思われますが、ネトウヨと保守は違います。ネトウヨと右翼民族派は違います。同じと言ったら右翼は怒るでしょう。これも記事に書いています。


   【新大久保】「もう商売にならない...」民族派や任侠団体が
   嫌韓デモに悩まされる地元住民の駆け込み寺に?


 ネトウヨも左翼も同じ日本人ではないですか。日本を良くしよう、子供たちが笑顔で育って欲しい、貧しい人たちが一人でもいなくなって欲しい、自殺者が一人でも減って欲しい、弱者の立ち場にたった政治を行って欲しい立場は違えど、そう考えていると僕は信じたいものです。

     (2011年夏頃の小高地区(筆者撮影))

 現場に行くという意味では、福島第一原発事故取材だって、同様です。僕はまだ大熊町や小高が放射線量が高く、立ち入り禁止になっている時期に地元の人間と入りましたが、これも自己責任です、当然。そんな事は分かっているのです。安田さんも当然理解しています。「で? それからどういう議論が生まれるの?」という事です。

 戦場ジャーナリズムは戦争が起きているかぎり、必要なのです。行きたくない、けれど行かなくてはならない。そういう思いで取材に出かけています。そして、思想がどうであれ、人柄がどうであれ彼らの仕事には意義がある事なのです。歴史に残る事なのです。

 福地桜痴のした仕事のように。

 自己責任論でそういったジャーナリズム活動を委縮されるのは先進国として世界の尊敬を集めている国がするべき態度ではありません。「さすが日本だ」。そういう評価を得るべく恥ずかしくない言動を取りたいものです。(文◎久田将義
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●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」

2016年12月10日 00時00分11秒 | Weblog


東京新聞の記事【開戦75年に考える 悲劇の記憶が蘇る】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016120802000141.html)。

 《沖縄は先の大戦で、日本国内で唯一、住民を巻き込んだ凄惨な地上戦の舞台となりました》。

   『●中学生を「青田買い」する自衛隊:
     「体験入隊や防衛・防災講話」という「総合的な学習の時間」も
   『●自衛隊配備で「住民分断」: 
     「自衛隊の配備計画…いずれの島でも人々は分断されている」
    「東京新聞の半田滋さんによるコラム【【私説・論説室から】
     島を分断する自衛隊配備】…。《「賛成派が新たな職を得て
     優遇される一方、反対した人は干され、島を出ている」という。
     …自衛隊の配備計画は与那国に続き、奄美大島、宮古島、
     石垣島でも急速に進む。いずれの島でも人々は分断されている》」

   『●「しかし、沖縄にはいまだ“戦後”は
     一度たりとも訪れていない」…安倍昭恵氏には理解できたのだろうか?

 《戦争による悲劇の記憶》が今も色濃く残る沖縄。それを強いた、そして、強い続けている「本土」ニッポン。「ありがとう」「申し訳ない」の一言も無く。そんな沖縄に…沖縄差別できる神経が分からない。沖縄の人々を分断して恥じない「本土」人々の気が知れない。現在進行形の《身代わり》。《反省と不戦の誓いを…沖縄を二度と、身代わりにしてはならない》…アベ様や最低の官房長官沖縄負担軽減担当相のスガ殿、「差別と断定できない鶴保庸介沖縄担当相らの鹿さんや馬さんの耳には、東風。脳ミソもトウフ。

   『●沖縄差別、その究極の姿:「報道の自由」「知る権利」の
           破壊に立ち向かわない「本土」マスコミの差別意識
   『●安田浩一さん「沖縄の新聞は本当に『偏向』」? 
      …沖縄への「思い込みによる差別で、それを許す日本社会」
   『●「第二の加害者」として「悪質なデマ」「事実関係を
       無視した沖縄攻撃」「蔑視・差別」、沖縄イジメに加担
   『●沖縄出身脚本家上原正三さん、「民意を顧みず、
      基地を押し付け…沖縄を植民地としてしか見ていない証拠」
   『●「歴史的暴言」、アベ様のシモベらの度の過ぎた
      差別意識の酷さ…無数の「沖縄差別」の氷山の一角が露見
   『●沖縄差別・沖縄破壊の「やりたい放題」…
     「歴史的暴言」から想起されるナチソネ氏や「産経のドン」等々
   『●高江破壊と歴史的暴言: 「みんなが嫌がる“仕事”を押し付け、
              無用な衝突を招いている張本人は誰か」?

   『●「差別意識に基づく、官憲による歴史的暴言」
       …ガルトゥング氏「非常に深刻な状況となる兆候…」と警鐘

   『●前泊博盛さん「在日米軍は、本土から…
      ウルトラマンに見えるが、沖縄から見ると怪獣でしかない」
   『●沖縄差別: 「両論併記は比較すべきものでもないものすら
                     “論”に昇格させてしまう危険なロジックだ」
   『●「どっちもどっち」論と云う暴論の上を行く、
      鶴保沖縄北方相「差別だと断じることは到底できない」論
   『●差別の掛算…「権力者が決めたことなのだから
      建設計画に従うべき」×「沖縄は黙って受け入れるべきだ」
   『●「沖縄の声に耳を傾けて、理解を得るべき担当相が、
          県民を敵視するかのような発言…。もはや失格」
   『●高江の皆さん、ご唱和を! 「鶴保庸介沖縄担当相殿、
                「無実だと断じることは到底できない!」」
   『●グッドタイミングな沖縄県警やアベ様、
      「負担軽減」相らのヤルことのあまりのアザトさ…「沖縄イジメ」
   『●「民主主義の圧殺現場」としての
          辺野古破壊や高江破壊…生活と生態系を根こそぎ破壊

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016120802000141.html

【社説】
開戦75年に考える 悲劇の記憶が蘇る
2016年12月8日

 先島諸島と呼ばれる沖縄県南西部の島々が自衛隊配備で揺れています。蘇(よみがえ)るのは戦争による悲劇の記憶です。太平洋戦争、七十五年前のきょう始まる。

 作家、司馬遼太郎さんは四十二年前の一九七四年の四月、先島諸島を訪れています。米軍統治から施政権が日本に返還された「本土復帰」から約二年後のことです。

 司馬さんはそれまでに三回、沖縄を訪れていて、四度目となる旅の様子は「街道をゆく」シリーズの「沖縄・先島への道」(朝日文庫)に詳しく記されています。

 沖縄は先の大戦で、日本国内で唯一住民を巻き込んだ凄惨(せいさん)な地上戦の舞台となりました。

 今は復元されましたが、司馬さんが那覇を訪れた四十二年前、旧琉球王府の首里城はありませんでした。日本軍が高台の首里を陣地とし<兵も石垣も樹(き)も建造物もこなごなに砕かれた>(「沖縄・先島への道」から引用。以下同じ)からです。

 司馬さんにも従軍経験がありました。所属していた戦車連隊は四五年のはじめ、旧満州にいましたが、その後、栃木県の佐野に移駐します。<米軍が関東平野の海岸に上陸し、東京・横浜が戦場になるという想定のなかにわれわれは組み込まれていた>からです。

 関東平野で地上戦に突入すれば「本土決戦」に戦局好転の望みをかける日本軍との間で激しい戦闘となることは避けられません。兵士のみならず、民間人にも多大な犠牲が出ていたはずです。


◆「沖縄は身代わりに」

 凄惨な事態は<関東平野だけでなく、上陸地として予想されていた中部地方の沿岸や南九州の沿岸においても、かわらない>だろうと想像し、こう続けます。

 <沖縄は、身代わりになった

 その沖縄に住む人々は、終戦から七十一年がたつ今も「軍事」の影に苦しめられています

 七二年に苛烈な米軍統治が終わりましたが、沖縄には今も在日米軍専用施設の約74%が集中し、騒音や事故、米兵らの犯罪など過重な基地負担を強いられています

 県民の多くが米軍普天間飛行場の国外・県外移設を求めても、日米両政府は聞き入れようとせず名護市辺野古への県内「移設」を強行しようとしています。今も続く「身代わり」の構図です。

 そして新たに浮上したのが南西地域防衛を目的とした先島諸島への自衛隊配備です。きっかけは冷戦終結と中国の海洋進出でした。

 東シナ海の尖閣諸島周辺では中国公船が繰り返し、日本の領海に侵入したり、領海に隣接する接続水域を航行したりしています。

 日本側は、海上保安庁の巡視船を増強して警備を強化していますが、先島諸島は陸上自衛隊の空白地域だったため、中国を強く意識してこの地域への陸自配備を進めているのです。

 司馬さんが四十二年前の旅で訪れ、<人に行き交うことがまれである>と記した日本最西端の与那国島には今年、百六十人規模の沿岸監視隊が発足しました。

 宮古島には七百人規模、石垣島には六百人規模のミサイル部隊と警備部隊を配備する計画です。地元では、過疎化対策や抑止力強化の観点から配備を歓迎する人たちもいますが住民の意見は割れているのが実情です。

 島の主要産業である観光への影響を懸念する意見のほか、有事には自衛隊が標的にされ、周辺住民が巻き込まれると心配する声が聞こえてきます。底流にあるのは先の戦争の悲惨な記憶です。

 大戦末期、米軍の攻撃を避けるため、この地域の住民はマラリア発生地帯への疎開を軍部によって強制され、多くの人が罹患(りかん)して亡くなりました。患者数は当時の人口の約半数とも言われています。

 同じく大戦末期には、軍命により石垣島から台湾に疎開する際、船が米軍に攻撃され、多くの犠牲者が出ました。自衛隊配備でこうした戦争の記憶が蘇るのです。


◆反省と不戦の誓いを

 安倍晋三首相は今月下旬、日米開戦の地、真珠湾をオバマ米大統領とともに訪問します。犠牲者の慰霊が目的ですが、無謀な戦争に突入した痛切な反省と、「不戦の誓い」も語るべきでしょう。

 国際紛争を解決する手段としては武力を用いることはない平和国家日本の揺るぎない決意です。自衛隊の存在は認めるとしても、この決意に背くような形で配備を強行することがあってはなりません。沖縄を二度と、身代わりにしてはならないのです。
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●小沢裁判、こういうお茶を濁す総括「社説」で良いのか

2012年04月28日 00時02分53秒 | Weblog


asahi.comの社説(http://www.asahi.com/paper/editorial20120427.html)。一方、東京新聞の二つの社説(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012042702000138.htmlhttp://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012042702000135.html)とコラム(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2012042702000081.html)。両紙の対照的なこと。

 読売や産経など、私は、読む気になれないので、どんな論調なのか知りもしない。まず、asahi.comの社説。政治的責任を問うたり、検察に謝罪を求める前に、確信犯的に世論を誤誘導したマスコミとしての謝罪は必要ないのだろうか? 収支報告書の期づれの問題が、そもそも政治的責任を問われるような問題だったのか? まさか水谷建設適金疑惑の核心的証拠を握っている訳でもないのでしょう。それも既に嘘であることがほぼ明らかになっている(『●水谷建設裏金問題、小沢一郎氏でなく自民党議員だった!?』)。この件、なぜ報じないのか? 検察情報に乗っかり、デタラメな報道ばかりを繰り返しておいて、何の反省もないのだから酷いものだ・・・。

 『天声人語』(http://www.asahi.com/paper/column20120427.html)に云う

   「この人が回す政治に実りは乏しかった▼若き小沢氏は
    心ならずもオヤジに弓を引き、創政会に名を連ねた。
    以来、創っては壊しの「ミスター政局」も近々70歳。
    「最後のご奉公」で何をしたいのか、その本心を、蓄財術とともに聞いてみたい」

には同意する。でも、こんな無茶苦茶な検察審査会のあり方や、検察・マスコミの動向、石川氏らの秘書裁判の過程など、そういったことが一体全体、小沢氏の「政治に実りは乏しかった」ことと一体何の関係があるのか?

 比較的まっとうだと、私は思う、東京新聞の社説やコラムと読み比べてもらいたい。asahi.comの社説と東京新聞の社説や「自省を込めて書」いたコラム【洗筆】との明白なギャップ。

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http://www.asahi.com/paper/editorial20120427.html

2012年4月27日(金)付
小沢氏無罪判決―政治的けじめ、どうつける

 民主党の元代表・小沢一郎被告に無罪が言い渡された。
 これを受けて、小沢氏が政治の表舞台での復権をめざすのは間違いない。民主党内には待ちかねたように歓迎論が広がる。
 だが、こんな動きを認めることはできない。
 刑事裁判は起訴内容について、法と証拠に基づいて判断するものだ。そこで問われる責任と、政治家として負うべき責任とはおのずと違う。政治的けじめはついていない。
 きのう裁かれたのは、私たちが指摘してきた「小沢問題」のほんの一部でしかない。

■「うそ」は認定された

 私たちは強制起訴の前から、つまり今回の刑事責任の有無にかかわらず、小沢氏に政界引退や議員辞職を求めてきた。
 「数は力」の強引な政治手法や、選挙至上主義の露骨な利益誘導などが、政権交代で期待された「新しい政治」と相いれない古い体質だったことを憂えればこそだった。
 3人の秘書が有罪判決を受けたのに国会での説明を拒む態度も、「古い政治」そのものだ。
 そして本人への判決が出たいま、その感はいよいよ深い。
 判決は、小沢氏の政治団体の政治資金収支報告書の内容はうそだったと認めた。それでも無罪なのは、秘書が細かな報告をしなかった可能性があり、記載がうそであると認識していなかった疑いが残るからだという。
 秘書らの裁判と同じく、虚偽記載が認められた事実は重い。しかも判決は、問題の土地取引の原資が小沢氏の資金であることを隠す方針は、本人も了承していたと認定した。
 資金の動きを明らかにして、民主政治の健全な発展をめざすという、法の趣旨を踏みにじっているのは明らかだ。
 小沢氏は法廷で、自分の関心は天下国家であり、収支報告書を見たことはないし、見る必要もないと言い切った。

■説明責任を果たせ

 これに対し私たちは、政治とカネが問題になって久しいのにそんな認識でいること自体、政治家失格だと指摘した。判決も「法の精神に照らして芳しいことではない」と述べている。
 まさに小沢氏の政治責任が問われている。何と答えるのか。無罪判決が出たのだからもういいだろう、では通らない。
 この裁判では争点にならなかったが、秘書らに対する判決では、小沢事務所は公共工事の談合で「天の声」を発し、多額の献金や裏金を受けてきたと認定されている。
 小沢氏は一度は約束した国会の政治倫理審査会に出席し、被告としてではなく、政治家として国民への説明責任を果たすべきだ。
 民主党にも注文がある。
 輿石東幹事長はさっそく、小沢氏の党員資格停止処分を解除する考えを示した。だが、党として急ぐべき作業は別にある。
 「秘書任せ」の言い訳を許さず、報告書の内容について政治家に責任を負わせる。資金を扱う団体を一本化して、流れを見えやすくする――。
 今回の事件で改めて、政治資金規正法の抜け穴を防ぐ必要性が明らかになったのに、対策は一向に進んでいない。マニフェストに盛った企業・団体献金の廃止もたなざらしのままだ。
 こうした改革を怠り、旧態依然の政治の病巣の中から噴き出したのが「小沢問題」だ。これを放置する民主党の姿勢が、政治と国民との亀裂を広げていることに気づかないのか。
 小沢氏の強制起訴によって、人々の視線が司法に注がれ、刑事責任の有無ですべてが決まるかのように語られてきた。
 だが、判決が出たのを機に、議論を本来の舞台に戻そう。これは根の深い政治問題であり、国会で論じるべきなのだ。
 それを逃れる口実に裁判が使われるようなら、検察官役の指定弁護士は、控訴にこだわる必要はないと考える。
 検察審査会が求めたのは、検察官の不起訴処分で終わらせずに、法廷で黒白をつけることだった。その要請は果たされた。さらに公判で明らかになった小沢事務所の資金管理の実態などは、今後の政治改革論議に貴重な教訓を提供してくれた。

■検察は猛省し謝罪を

 この裁判は、検察が抱える深刻な問題もあぶり出した。
 捜査段階の供述調書の多くが不当な取り調べを理由に採用されなかったばかりか、検事が実際にはなかったやり取りを載せた捜査報告書まで作っていた。あってはならないことだ。
 法務・検察は事実関係とその原因、背景の解明をいそぎ、国民に謝罪しなければならない。「検察改革」が本物かどうか、厳しい視線が注がれている。
 気になるのは、小沢氏周辺から強制起訴制度の見直しを求める声が上がっていることだ。
 ひとつの事例で全体の当否を論ずるのはいかにも拙速だし、政治的意図があらわな動きに賛成することはできない。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012042702000138.html

【社説】
政争よりも政策実現を
2012年4月27日

 小沢一郎元民主党代表の無罪判決で「反小沢」と「親小沢」勢力との抗争が激化する見通しだという。しかし、国会にそんな余裕はない。国民が期待するのは、よりよい生活のための政策実現だ。
 小沢氏は政治資金規正法違反の罪で強制起訴されたことを受け、二〇一一年二月、民主党員の資格停止処分を受けた。無罪判決により、民主党がこの処分を解除するか否かが、当面の焦点となる。
 小沢氏に近い輿石東幹事長は五月上旬にも処分解除に向けた手続きを始めると表明したが、党内には判決確定まで解除すべきではないとの意見がある。
 小沢氏や近い議員らは、野田佳彦首相が今国会成立に「重大な決意で臨む」と断言した消費税増税に反対している。増税派は小沢氏の足かせとなる党員資格停止が長引くほどよいと思っているのか。
 権力闘争は政治に付きものであり、活力を生む面はある。しかし、大震災と原発事故後の非常時だ。不毛な政争に費やす時間があるなら、よりよい生活のための政策を一つでも多く実現してほしいというのが国民の願いに違いない。
 首相が消費税増税に突っ走れば小沢氏らとの抗争を泥沼化させかねない。消費税増税を実現しようと自民党の求めに応じて「小沢氏切り」に踏み切れば、民主党は分裂するだろう。首相はそこまでして消費税率を引き上げたいのか。
 ここは政権交代の原点に返り、まずは政府や国会の無駄に徹底的にメスを入れることに再挑戦する必要がある。
 その上で、年金、医療、介護、子育てなどの社会保障制度を将来にわたって持続可能なものにするにはどうしたらよいのか、その財源をどう確保するのか。与野党が知恵を出し合ってほしい。
 今の制度が変わるのか見通せない中で消費税増税の前例だけつくられても国民は納得がいかない。
 後半国会には議論すべきことが多く残されている。歳入の四割を占める赤字国債を発行する公債特例法案は成立のめどが立たず、原子力安全委員会などに代わる原子力規制組織の設置も遅れている。
 衆院「一票の格差」是正でも与野党の意見は大きく隔たる。国会が違憲・違法状態を自ら解消できないほど劣化したのなら悲しい。
 不毛な政争を脱し、活発な議論を経て結論を出す国会へ-。小沢氏の無罪判決がそのきっかけになるのなら、まだ救いがある。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012042702000135.html

【社説】
小沢元代表無罪 許せぬ検察の市民誤導
2012年4月27日

 政治資金規正法違反に問われた民主党元代表小沢一郎被告は無罪だった。元秘書らとの共謀を示す調書などが排斥されたからだ。市民による検察審査会の判断を誤らせた検察の捜査こそ問題だ。
 「事実に反する内容の捜査報告書を作成した上で、検察審査会に送付することがあってはならない」と裁判長は述べた。
 小沢元代表の裁判は、新しい検察審制度に基づき、市民による起訴議決を経て、強制起訴されたものだった。
 つまり、市民が判断の中核としたとみられる検察側の書類そのものが虚偽だった点を、裁判所が糾弾したわけだ。
 問題の報告書は元秘書の石川知裕衆院議員が小沢氏の関与を認めた理由の部分だ。「検事から『親分を守るためにうそをつけば選挙民を裏切ることになる』と言われたのが効いた」と石川議員は述べたという。だが、実際にはそのようなやりとりがないことが、録音記録で明らかになった。
 検察が虚偽の文書を用いて、市民を誤導したと指弾されてもやむを得まい。石川議員の供述調書も、検事の違法な威迫、誘導があり、裁判で証拠採用されなかった。取り調べ過程の全面録画(可視化)の議論は加速しよう。
 そもそも、巨額なカネはゼネコンから小沢元代表側へと渡ったという見立てで、捜査は始まった。上司から「特捜部と小沢の全面戦争だ」とハッパをかけられたという元検事の証言も法廷で出た。今回の判決でも「検事は見立てに沿う供述を得ることに力を注いでいた」と厳しく批判された。予断となった特捜検察の手法をあらためて見直さざるを得まい。
 検察審の在り方も論議を呼びそうだ。検察の大きな裁量を見直し、市民に事実上の起訴権限が与えられた新制度は評価できる。その特徴は黒白を法廷決着させたい意思だろう。一方で、強制起訴の乱用を懸念する声もある。
 今回の裁判でも、弁護側は「検察が意図的に検察審に誤った判断をさせた」と主張していた。これは検察審の悪用であり、事実なら言語道断である。市民の議論をサポートする弁護士を複数制にしたり、容疑者に弁明機会を与えるなど、改善点を模索したい。
 小沢元代表は法廷で「関心は天下国家の話。収支報告書を見たことすらない」とも語った。政治資金制度の根幹部分を改正することも急務といえよう。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2012042702000081.html

【コラム】
筆洗
2012年4月27日

 「江戸の敵を長崎で討つ」。検察審査会に提出した捜査報告書が偽造されていた驚くべき事実に、こんな言葉が浮かぶ。検察審査会を利用し、自らは起訴を断念した政治家の命脈を絶とうとしたのではないか。そう疑われても仕方のない捜査だった▼民主党の小沢一郎元代表にきのう、無罪判決が下された。小沢氏に道義的な責任は残るが、この裁判の敗者は誰かと考えてみた。強制起訴した検察審査会や指定弁護人ではない。法廷には姿がなかった検察組織である▼ロッキード、リクルート事件など、政治家や高級官僚を立件した輝かしい歴史がある特捜検察も、有罪立証には綱渡りの場面があった。負の遺産は継承されず、残ったのは尊大な世直し意識だった。その姿は無謀な戦争に突き進んだ昭和の軍官僚たちの姿と重なる▼日露戦争は革命思想が浸透したロシア国内の混乱の要因もあり、薄氷を踏む勝利だった。陸軍参謀本部が残したのは、司馬遼太郎さんが「明治後日本で発行された最大の愚書」と憤るほど都合の悪い事実を隠蔽(いんぺい)した戦史だ▼実戦の経験のない若手将校には完勝したイメージだけが残り、その慢心は昭和の戦争で日本を破滅に導いた。二つの戦争で旗を振り続けたのは新聞だった▼筆者は長く検察を取材してきた。特捜検察をおごり高ぶらせた責任を顧みなければならない、と自省を込めて書く
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●『創(2009年12月号)』読了(2/2)

2009年12月08日 07時46分52秒 | Weblog


『創(2009年12月号)
 森達也さん「極私的メディア論 第48回/リスクとハザード」(pp.80-83)。「マムシのハザード(毒性)は高い。でもリスク(危険度)は低い」。「リスクとハザードの混濁」。

 中山千夏さん「母娘問題をひとびとはどう受け止めたのか/『幸子さんと私』への反響を考える」(pp.114-119)。

 「永六輔[放送タレント]×矢崎泰久[元『話の特集編集長]ぢぢ放談/第7回 国家なんて知らない」(p.120-127)。「「戦略」の上に「国家」をつける感覚」。「司馬遼太郎の歴史観をうのみにしてよいのか?」。

 雨宮処凛さん「ドキュメント雨宮革命/第24回 湯浅さんが「国家戦略室」政策参与に」(pp.132-135)。組織のその名称はさておき、湯浅誠さんには期待。

 山口正紀さん
「「反論」に名を借りた新たな人権侵害」(pp.142-144)。「文春記事は、「ロス疑惑」報道以来、人権侵害を繰り返してきた「伝聞による疑惑報道」の典型であり、かつ「ロス疑惑」報道を真っ先に批判した浅野教授への敵意に根差している」。8月号に掲載された山口さんの報道に対する「反論」掲載について、篠田博之編集長も平謝り。

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