Activated Sludge ブログ ~日々読学~

資料保存用書庫の状況やその他の情報を提供します。

●柳沢協二氏「日本は…食料やエネルギーなどを全て自給できず、海外とつながらなければ生きていけない。…戦争を得意とする国ではない」

2023年02月03日 00時00分07秒 | Weblog

[※《“人を殺すための道具”である武器。戦争が続く限り需要が無限に生まれる──。莫大な利益を生む国際武器取引を暴く、衝撃のドキュメンタリー!》『シャドー・ディール 武器ビジネスの闇』(https://unitedpeople.jp/shadow/)]


(2023年01月22日[日])
田岡俊次氏《戦争にはマインドコントロールが付きもので…》。
 防衛省による《国内世論を誘導する工作の研究》ってすっげぇなァ、アケスケ…《防衛省に有利な世論 特定国への敵対心 反戦・厭戦機運の払拭》。憲法の精神に反する防衛省のデタラメ世論《工作》。《戦争マインドを醸成》《ある種のマインドコントロールではないか》(日刊ゲンダイ)。自民党はヅボヅボ党だもんね。その〝下駄の雪〟党も似たようなもの。
 日刊ゲンダイのコラム【適菜収「それでもバカとは戦え」/昔も今も「世論工作」はわが国お馴染みの手口 プロパガンダが招いた日本の惨状を見よ】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/316042)によると、《こうした報道に対し、防衛省は「全くの事実誤認であり、防衛省として、国内世論を特定の方向に誘導することを目的とした取り組みを行うことはありえない」と否定したが、そりゃそうだよね。「これから国民の洗脳工作を行いますなどと言うわけがない。防衛省は「情報戦対応」も含めた体制整備を実施するとも述べていたので、これまでやってきた世論工作に積極的にAIの技術を活用するということだろう。例によってネトウヨ「論壇人」の類いが、この先、小遣いをもらえるとでも思っているのか、「共同通信による世論誘導だ」などと騒いでいたが、バカのふりをしているのか本物のバカなのか。》

   『●《国内世論を誘導する工作の研究》ってすっげぇなァ、アケスケ…
     《防衛省に有利な世論 特定国への敵対心 反戦・厭戦機運の払拭》
   『●琉球新報《防衛省…都合のいい情報が拡散され、国民が知らぬ間に世論
       操作される恐れがある。戦争中、大本営による世論操作を想起させる》
   『●アケスケなステマ的手法…《戦前の日本は大本営発表と言論統制によって
      戦争に突き進んでいった…またも戦争に駆り立てるプロパガンダで…》

 まさにステマ的手法…官房機密費《ヤミ金》の《それはメディアに登場する御用評論家や安倍応援団ジャーナリストなどへの支出だ》。

   『●《ヤミ金》を全廃せよ! アベ様らが官房機密費を
      《昨年…12億円》《6年間で…74億円にものぼる》異常さ
   『●《官房機密費…3つからなり、このうち「調査情報対策費」「活動
     関係費」は領収書が必要となる。問題は「政策推進費」》…〝ヤミ金〟

 田岡俊次氏による、AERAの記事【防衛費5年間で43兆円の財源捻出に政府が四苦八苦 その姿はまるで旧統一教会のよう?/田岡俊次】(https://dot.asahi.com/aera/2023011000053.html)によると、《日本政府が「防衛費をGDP(国内総生産)2%にすべし」との米国の意向に応じ、今後5年間で43兆円の財源の捻出に政府が四苦八苦するのを見て、旧統一教会が多額の寄付や霊感商法で日本人から巻き上げた金を韓国に送っていたのに似ている、と苦笑せざるをえない。政府は被害者救済のための新法で、寄付集めに信者に借金をさせたり、不動産を売らせたりすることを禁じる方針だが、防衛費急増のために国債の増発、国有地の処分、震災復興用の特別税の転用などを考えている。法人税の4、5%上乗せは設備投資、研究開発に響いて、子どもの教育費を旧統一教会に納めるような形になりかねない》。

 琉球新報のコラム【<金口木舌>隔世の感】(https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1645314.html)によると、《▼岸田文雄首相が経済3団体の新年祝賀会で賃上げを求めたと聞き、30年近く前の記憶が蘇(よみがえ)った。「インフレ率を超える賃上げを」と首相は言う。ストを知る身には隔世の感を拭えない ▼政府が後ろ盾の春闘とは、これほど頼もしい援護もないが、一方で防衛費増に伴う増税を臆面もなく持ち出すこの二律背反、同じ人の発言か ▼首相も自認の通り富裕層が富めば、おこぼれで貧困層も富むという富の再分配なかった。非正規雇用率も高まり、県内は最高の約45%とも。経済政策が成功したとは思っていまい。賃上げ要求で済む話とは言えない》。

   『●《下々のカネを、富める者と巨大資本にシフトさせたい本音があからさま》
        …《新しい資本主義》ならぬ、〝新しいトリクルダウン理論〟か?

 《まず弾よけ、いずれは鉄砲玉の運命》《安全保障というより、米国の覇権を維持…》(斎藤貴男さん)。
 室井佑月さんによる、【室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」/元防衛庁出身・柳沢協二氏の発言に納得…敵基地攻撃能力の前に、まず外交、最後まで外交努力】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/317143)によると、《ほんに、それです。戦争に向いてない国なんだから、敵基地攻撃能力とかいう前に、徹底的に戦争回避の方法について議論すべき。抑止をちょっとでも超えてしまったら大変なことになるのは、誰にでもわかることだろう。まず外交努力、最後まで外交努力。》

 (長周新聞)《実際にFMSで調達したF35戦闘機の価格変動は日本政府を侮蔑しきった米国側の対応を象徴的にあらわしている。…1機が78億円だった。つまり米国政府を通してロッキード・マーチンが日本にF35を売るとき、1機当り164億円ものマージンをつかみどりしていく構図である》、さらに、《そもそも際限なく国民の予算を米軍産複合体に垂れ流し、不必要な武器ばかり買い込んで配備し続けてきたことが、近隣諸国との軍事緊張を高めていく最大の要因である。このような血迷った権力者を即刻退陣させることが、日本やアジア諸国の平和や安全にとって真の日本国民の責任」といえる》。
 琉球新報のコラム【<金口木舌>軍拡競争で得をするのは誰か】によると、《得をしたのは誰か》《誰に利するのか》《いったい誰が得するのか》…《物価高などで国民が苦しむ中、増税してまで米国から兵器を買う算段だ》《軍拡競争で危険にさらされるのは私たち県民だ》。

   『●《大収奪が必至》な軍事費倍増…《大メディアが脅威を煽り「戦争増税
        必至」の流れ》《北朝鮮にも似た「先軍政治」と言うべきか。》
   『●《攻撃的兵器…他国領域も攻撃できると声高に宣言するような国を「平和
     国家」とはとても呼べない。戦後日本の平和を築いてきた先人への背信》
   『●増税して、軍事費倍増? 「平和主義」「財政民主主義」はどこに?
     自民党の〝下駄の雪〟が《雪崩を打つように崩壊》する「子育ての党」
   『●《専守防衛…「国土防衛に徹し、相手の本土に被害を与えるような脅威に
      ならないと伝え、相手に日本を攻撃する口実を与えない防衛戦略だ」》
   『●軍事費倍増、43兆円…バカげている ――― 中村哲さん「治安を良く
      するのは武力ではない」、《武器で平和つくれない》を思い出そう
   ●琉球新報《納税者のあずかり知らない防衛力強化を前提に、金額や財源を
     論じることは…許されない…生産力向上に寄与しない防衛費の負担増…》
   『●増税して軍事費倍増…《安全保障というより、米国の覇権を維持…。
      まず弾よけ、いずれは鉄砲玉の運命》(斎藤貴男さん)なニッポン
   『●キシダメ (当時) 外相、辺野古破壊を《クリントン国務長官 (当時) に
     事実上約束》、そして、今、軍事費倍増と《1兆円強を増税で賄う方針》
   『●増税してまで軍事費倍増 ――― 金子勝さん《まさに、議会政治、財政
     民主主義が崩壊した戦時体制に酷似した状況だ。…日本の敗戦は近い》
   『●《下々のカネを、富める者と巨大資本にシフトさせたい本音があからさま》
        …《新しい資本主義》ならぬ、〝新しいトリクルダウン理論〟か?
   『●閣議決定って何? アベ様が編み出した、なんでも内閣の一存でやれる
     システム? 自公お維コミに言わせれば、国会や選挙は不要ということか?
   『●《標的》となり、《鉄砲玉》となる愚…《ことさら攻撃能力について
     興奮して議論している様について、バカではあるまいか?》(狙撃兵)
   『●自公政権が続く限り、ヅボヅボ党の誰が首相になろうが地獄は続く。道は、
      政権交代しかない…《議会政治、財政民主主義が崩壊した戦時体制》
   『●《自民党タカ派…箕輪登…「戦争とは血を流す政治であります。外交とは
     血を流さない政治であります。日本は永久に血を流さない政治を…」》
   『●《自民党の独裁体制が根絶されない限り、いずれ軍拡の財源も消費税
       増税で賄われる》《騙されてはならない。騙されてはならないのだ》
   『●軍事費倍増や増税について「多くの国民の理解を得た」? 繰り返される
      ド「アホウ節」…いつまでヅボヅボ党・下駄の雪党の独裁が続くの?』
   『●《決して沖縄だけの問題ではない…「だからこそ自分たちのこととして、
     そもそも戦争を起こさせないための声を国に対して上げる必要がある」》
   『●《「大衆は『誰が、どうやって』に熱中し、『なぜ』という問いから目を
      そらされている。得をしたのは誰か」。関係者は背後関係を示唆…》

=====================================================
https://dot.asahi.com/aera/2023011000053.html

防衛費5年間で43兆円の財源捻出に政府が四苦八苦 その姿はまるで旧統一教会のよう?
2023/01/10 19:00
田岡俊次

     (対戦車ミサイル「ジャベリン」の実射訓練)

 国際情勢が緊迫化する中、政府は防衛費の増額にともない、増税を検討している。台湾有事への危機感が広まっているが、防衛費の増額は本当に必要なのか。AERA 2023年1月16日号の記事を紹介する。

*  *  *

 日本政府が「防衛費をGDP(国内総生産)2%にすべし」との米国の意向に応じ、今後5年間で43兆円の財源の捻出に政府が四苦八苦するのを見て、旧統一教会が多額の寄付や霊感商法で日本人から巻き上げた金を韓国に送っていたのに似ている、と苦笑せざるをえない

 政府は被害者救済のための新法で、寄付集めに信者に借金をさせたり、不動産を売らせたりすることを禁じる方針だが、防衛費急増のために国債の増発、国有地の処分、震災復興用の特別税の転用などを考えている。法人税の4、5%上乗せは設備投資、研究開発に響いて、子どもの教育費を旧統一教会に納めるような形になりかねない

 戦争にはマインドコントロールが付きもので、米国は2003年3月にイラクに侵攻した際「イラクが今なお大量破壊兵器(核、生物、化学兵器)を保有し、アルカイダなどテロ組織に渡す危険がある」と宣伝した。これに対しイラクは再査察を受け入れ、国連の査察国は3カ月間の徹底的な調査の後、安全保障理事会で「大量破壊兵器はなかった」と報告した。このため安保理は米国、英国が求めた武力行使容認決議を行わなかった。


■予算獲得のための危機

 国連憲章では武力行使が許されるのは、攻撃を受けた場合の自衛か安保理の承認を得た場合に限られるが、当時のブッシュ米大統領(子)は「米国が安全保障に必要な行動をとるのに国連の許可を得る必要はない」と国連無視の暴言を吐き、英国と共にイラクに攻め込んだ大量破壊兵器は発見できなかった。米軍は8年9カ月の苦戦の末に撤退したが、イラクは大混乱になって派閥間の闘争も起きイラク民間人の死者は11万人を超えた。米軍は4487人の死者、3万人以上の負傷者を出し、直接戦費だけでも8千億ドル(約106兆円)も費やした。

 当時米国では「9.11大規模テロの首謀者オサマ・ビン・ラディンとイラク大統領サダム・フセインは共謀している」との虚報が流布され、米国民の多くはイラク侵攻を支持した。集団的マインドコントロールの危険を示す例だ。

 21年3月、米国の前インド太平洋軍司令官P・デビッドソン海軍大将が上院で「中国は6年以内に台湾に侵攻する可能性がある」と述べたことから、日本でも「台湾有事が迫り、日本も中国の攻撃を受ける」との危機感が広まっている。だが、軍人は予算獲得のため危機を強調するのが通例だ。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次

※AERA 2023年1月16日号より抜粋
=====================================================

=====================================================
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/317143

室井佑月 作家
1970年、青森県生まれ。銀座ホステス、モデル、レースクイーンなどを経て97年に作家デビュー。TBS系「ひるおび!」木曜レギュラーほか各局の情報番組に出演中。著書に「ママの神様」(講談社)、「ラブ ファイアー」(集英社文庫)など。


室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」
元防衛庁出身・柳沢協二氏の発言に納得…敵基地攻撃能力の前に、まず外交、最後まで外交努力
公開日:2023/01/13 06:00 更新日:2023/01/13 06:00

     (柳沢協二氏(C)日刊ゲンダイ)

『敵基地攻撃能力を持って実際に戦争になれば、日本の国土にも確実にミサイルが撃たれる国民に都合の悪い事実を伝えていない』(柳沢協二・国際地政学研究所理事長・自衛隊を活かす会代表)

 これは去年の11月30日の『東京新聞』『「敵基地攻撃、際限のない撃ち合いに」柳沢協二・元官房副長官補が語る「国民に被害及ぶ恐れ伝える必要』という記事の中での柳沢さんの言葉だ。

 なんで、去年の柳沢さんの発言を引っ張り出してきたのかといえば、1月6日、新年一発目のレギュラーで出ているラジオに柳沢さんがゲストでいらしたからである。

 すんごい素敵だった。さすが元防衛庁出身、背筋がピンと伸びていて。照れくさそうに笑うところも、好き。ドンピシャのタイプです。

 ……ま、そんなことはどうでもいい。去年読んだ時も、日本が敵基地攻撃能力を持つことの危険性がわかる良い記事だと思っていたが、柳沢さんの肩書きまではきちんと読み込んでいなかった。

 そういう人が、冒頭の発言をしたのは大きい。

 敵基地攻撃能力を保有すれば敵も躊躇せず先制攻撃で日本を叩きやすくなる。やられる前にやっただけ、という口実が成り立つわけだもん。

 記事の中で、柳沢さんはこうもいっていた。

「日本は国土が狭く、食料やエネルギーなどを全て自給できず、海外とつながらなければ生きていけない。少子化も進み、戦争を得意とする国ではない武力強化ではなく、戦争を防ぐ新たな国際ルール作りに向け、もっと外交で汗をかかなければいけない

 ほんに、それです。戦争に向いてない国なんだから、敵基地攻撃能力とかいう前に、徹底的に戦争回避の方法について議論すべき。抑止をちょっとでも超えてしまったら大変なことになるのは、誰にでもわかることだろう。まず外交努力、最後まで外交努力
=====================================================

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●金平茂紀さん「僕らの国の司法にはかつて「予防拘禁」という仕組みが合法的制度として存在していた」

2017年04月13日 00時00分50秒 | Weblog

[※ 東京新聞(2017年3月8日)↑]



沖縄タイムスの金平茂紀さんのコラム『沖縄で進行する共謀罪的捜査 長期勾留と「予防拘禁」の類似性 【金平茂紀新・ワジワジー通信(24)】』(http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/91985)。
東京新聞御コラム【筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017040802000157.html)。

 《沖縄の米軍基地建設反対運動のリーダー的存在である山城博治氏の保釈と、そこで考えなければならないこの国の司法の「変質」についてである》
 《▼魚などいないのに「釣り厳禁」とは罪つくりな看板だが、国会で審議が本格化した「共謀罪」も、かなりうさんくさい看板だろう》。

   『●最「低」裁(鬼丸かおる裁判長)、
    沖縄に弁論もさせずに「政治判断」…「司法判断」出来ない死んだ司法
   『●最「低」裁による辺野古破壊訴訟のデタラメ:
      「国と地方は対等という地方自治の精神を踏みにじる判断」
   『●「菅官房長官は徹底抗戦の姿勢を崩さない
     翁長知事を念頭に、「わが国は法治国家だ」と牽制」だって!?
   『●「国際人権法」違反: 山城博治さん長期「拉致」という
          「独裁的な国家が反対派を黙らせる常とう手段」

 金平茂紀さんによると、《僕らの国の司法にはかつて「予防拘禁」という仕組みが合法的制度として存在していた》《戦前、あらゆる社会運動を弾圧する機能を果たした法律に治安維持法があった》。山城博治さんの拉致は「予防拘禁」だったようです。《沖縄ではプレ「共謀罪」捜査が先取りされている》そうです。酷い国…。
 「平成の治安維持法」を欲するデンデン王国「裸の王様」、そして、「忖度」する取り巻き連中。検察や裁判所までが「忖度」する世も末なニッポン。

   『●「平成の治安維持法」で、室井佑月さんや
       斎藤貴男さん「なんて、最初から一般人扱いされないだろうしな」
   『●「政治的修文」ではなく、法案の目的や「その他」に
        『平成の治安維持法』「内心処罰」という文言追加を
   『●当局の解釈次第で恣意的に内心を罰し、
     お互いを監視・密告しあう社会…「平成の治安維持法」の完成

 どんな「看板」を掲げても、所詮は「平成の治安維持法」。

 森達也さんの予言が次々に現実となっていて、イヤになります。「世界でも稀な自発的な独裁国家」完成間近、マジか…。

   『●森達也さん、「僕はもうあきらめた」
     「これから4年間でこの国がどう変わるのか、とてもとても楽しみだ」
    《つまり法案はさくさくとすべて通る。ねじれ解消良かったね。
     ならば二院制の意味は何だろうと思うけれど、もう言わない。
     だって将棋でいえば詰み。チェスならチェックメイト。臨界は超えた。
     もう制御はできない

==================================================================================
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/91985

沖縄で進行する共謀罪的捜査 長期勾留と「予防拘禁」の類似性 【金平茂紀の新・ワジワジー通信(24)】
2017年4月6日 12:00 金平茂紀 共謀罪 山城博治

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
金平 茂紀(かねひら しげのり)

TBS報道記者、キャスター、ディレクター
1953年北海道生まれ。TBS報道記者、キャスター、ディレクター。2004年ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に「ホワイトハウスから徒歩5分」ほか。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


 しばらくぶりの「ワジワジー通信」だ。けれどもこの間、沖縄をめぐる出来事はワジワジーすることがあまりにも多くて、それらを記すだけでも紙面を覆いつくしてしまいかねない分量になるので、今回は論点を絞ることにしよう。沖縄の米軍基地建設反対運動のリーダー的存在である山城博治氏の保釈と、そこで考えなければならないこの国の司法の「変質」についてである。

     (5カ月ぶりに保釈され支援者から祝福される山城博治議長
     (左から2人目)=3月18日午後8時すぎ、那覇市樋川・
     那覇拘置支所前)

 沖縄平和運動センター議長の山城氏は3月18日保釈された。初公判の翌日のことである。去年の10月、東村高江のヘリパッド建設反対の抗議行動のさなか、米軍北部訓練場内の有刺鉄線を切ったという器物損壊の容疑で逮捕されて以来、いくつもの罪状で再逮捕が繰り返され(公務執行妨害、傷害、威力業務妨害)、何と5カ月以上、152日という長期勾留の末に保釈されたのだった。

 那覇地検は最後の最後まで保釈に反対し続けた裁判所は長期にわたって家族も含めた接見禁止処分を認めていた。山城氏に対しては、靴下等の生活必需品の差し入れも2カ月以上禁じられ、さらには那覇地検は、国民の最低限度の権利である弁護士との接見にさえもさまざまな注文をつけ続けた。山城氏にあてられた励ましの手紙約400通も全く本人のもとに届かないようにされていた。逮捕・起訴された山城氏は、保釈に至るまでの長期間、そのような境遇に置かれていた。このこと自体がまず異常である。

 今年1月26日には、国際的人権団体アムネスティ・インターナショナルが、早期釈放と適切な医療措置等を求める異例の声明を出していた。山城氏は悪性リンパ腫を患って入院していた経緯がある。また複数の人権団体や刑事法学者、有識者からも、山城氏の長期勾留は、露骨な運動つぶしを企図した動きであって、司法の機能を逸脱しているとの訴えがなされていた。だがこの国の司法を担う裁判所や検察庁は、聴く耳を持たなかったようだ。

 山城氏が勾留中に〈現場〉では一体何が起きたか。東村高江では米軍用のヘリパッド建設が力づくで完了した。反対派市民を機動隊がごぼう抜きにして、工事車両を何台も走らせての、まさに突貫工事の果ての完成だった。いわゆる「辺野古訴訟」は県の敗訴が確定し(去年12月20日)、国・沖縄防衛局は、司法によって工事GOの「お墨付き」を得られたと主張して、まさにその通りにことが進められた。

 名護市辺野古では、海上埋め立て工事が再開され、巨大な作業船が海上に姿を現し、再び反対派の抗議船などの海域進入禁止を表示するオレンジ色の浮具(フロート)が大浦湾に張り巡らされた。海の機動隊=海上保安庁の警備艇も以前のように存分に力を行使し始めた。その傍らで、工事にともなう汚濁の防止膜を固定するためだというコンクリート・ブロックが次々に海中に投げ込まれていった(最終的には228個)。山城氏の勾留中に、国・防衛局はまさに思いのままにことを進めることができた。これが客観的な事実である。

 僕は、山城氏が勾留されていなかったら、これらのことは止まっていたかもしれない、などと空想的なことは言うつもりはさらさらない。国・防衛局の、政治的な、物理的な力はこの国においては圧倒的なのであって、アメリカ政府から「待て」と言われない限り、工事は進められただろう。ではなぜ山城氏はやられたのか。彼は非転向を貫く米軍基地建設反対運動の象徴的存在であって、まさにそのことが彼が長期勾留を課された理由なのである。それを裏付ける種々の事象がある。

 僕らの国の司法にはかつて「予防拘禁」という仕組みが合法的制度として存在していた。戦前、あらゆる社会運動を弾圧する機能を果たした法律に治安維持法があった。この法律に違反したとして摘発された受刑者のうち、非転向、あるいは転向が不十分だとみなされた者は、「再犯のおそれあり」として出獄を取り消し勾留し続けることができる制度が「予防拘禁」だった。

 僕は山城氏の尋常ではない長期勾留や接見禁止措置を考えた時に、この治安維持法下の「予防拘禁」のことをすぐに想起した。今、政権は「平成の治安維持法」と言われている共謀罪法案(彼らによる呼称はテロ等組織犯罪準備罪法案だが)を国会に上程し成立を急いでいる。この動きと山城氏逮捕・長期勾留の動きは連動したものと思わざるを得ないのだ。

 実は山城氏逮捕の捜査を顧みる時に見過ごせない司法警察・検察の動きがある。山城氏の逮捕・再逮捕と相前後して東京、神奈川など全国十数カ所で家宅捜索が行われ、主にパソコン、USBメモリーやハードディスクなどの記録媒体、携帯電話などを集中的に押収していった。パソコンの押収点数は計8台、記録媒体が15台、携帯電話も7台が押収された。

 捜査当局はこれらの押収物から、メールやラインなど会員制交流サイト(SNS)での通信記録を細かく掌握しチャートを作成していった。なぜそんなことをするのか。彼らは、米軍基地建設反対運動を、山城氏を「首謀者」とする壮大な犯罪組織に見立てようとしているのである。「一味」が事前に「共謀」してあのような大反対行動を企てているのだと。

 しかし僕は長年の記者取材経験からわかるのだが、公安警察や公安検察のなかには、想像力がとてつもない奇形的な膨張を遂げてしまった人々が存在していたりする。彼らの頭のなかには常に国策にまつろわぬ者=犯罪集団=取り締まり対象という図式が出来てしまっている恐れがある。そう、彼らの頭の中には戦前の治安維持法が生きているのである。だから、まるでアルカイダかイスラム国に対するような扱いがとられてしまいかねないのだ。

 山城氏の公判に証拠申請されている膨大なビデオ映像の記録(ブルーレイディスク数十枚)はどのようにして撮影されたかを想起してみるといい彼の行動の一挙手一投足をバーの先に取りつけた小型ビデオカメラ20台以上で、警察、防衛局等の「撮影班」がよってたかって撮影したものがそれである。そのこと自体が実は異常なのだ。それを異常と認識できないほどに僕らの感覚がすでに麻痺(まひ)してしまっているのかもしれない。

 沖縄ではプレ「共謀罪」捜査が先取りされている。これは憲法のもとにある民主主義国家においてあってはならない、司法の「変質」を象徴する動きである。

 (テレビ報道記者・キャスター)=随時掲載
==================================================================================

==================================================================================
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017040802000157.html

筆洗
2017年4月8日

 こういう笑い話がある。地主が自分の土地にある池で釣りをしている男を見つけて大声を出した。「そこの看板が見えないのか。<魚釣りを禁ず>と書いてあるだろ。罰金を払えっ」。すると男が逆に怒鳴り返した。「この嘘(うそ)つきめ! 何時間たっても一匹も釣れないぞ」▼魚などいないのに「釣り厳禁」とは罪つくりな看板だが、国会で審議が本格化した「共謀罪」も、かなりうさんくさい看板だろう▼魚釣りが法で禁じられた池で、腕試ししようと仲間と話し合う。釣り具を持って池まで足を運んだが、気がとがめてやめた。それでも、違法な釣りを仲間と計画したのだからと、罪に問うのが「共謀罪」だ▼こんな乱暴な話はないと反発されて、過去に三たび廃案になった。そこで政府が考えた策が、看板の付け替えだ。「共謀罪」を「テロ等準備罪」と変えたのだが、政府の当初案では条文に肝心の「テロ」の文言が一つもなかったのだから、ひどい看板もあったものだ▼東京五輪招致の際、安倍首相は(東京は)世界有数の安全な都市大きな看板を掲げてみせたのに、今は「(共謀罪など)法整備をできなければ東京五輪を開けないと言っても過言ではない」▼「テロ」の看板を掲げれば、皆ただ恐れをなし、「五輪」の看板を掲げれば、皆、賛成するだろう-とは、ずいぶん国民を見下した「看板政治」ではないか。
==================================================================================

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●望月衣塑子東京新聞記者、議論無く「「欧米列強に倣え、進め」と武器輸出推進の道に歩みを進めている」

2016年09月21日 00時00分59秒 | Weblog


LITERA 本と雑誌の知を再発見』(http://lite-ra.com/)の野尻民夫氏の記事【安倍政権の武器・技術輸出がなし崩し拡大! イスラエルと軍事研究画策、無人攻撃機でパレスチナの市民殺害も】(http://lite-ra.com/2016/09/post-2539.html)。

 《まるで日本を守るための予算ではなく、アメリカの軍需産業を守るための予算のような趣なのだ…》。

 オゾマシイ…。東京新聞の望月衣塑子記者によると、ニッポンは何の議論も無く「「欧米列強に倣え、進め」と武器輸出推進の道に歩みを進めている」そうだ。

 アベ様や「沖縄負担軽減担当相最低の官房長官らオトナが「大人買い」だそうだ。ニッポンには不要な戦争するためのオモチャ、「人殺し」を強いるオモチャが欲しくてたまらないご様子。自ら開発し、輸出したくてたまらないそうだ。ゲスすぎる。オゾマし過ぎる。
 最高学府が「軍事研究」の片棒を担ぎ、嬉々として研究費を確保するオゾマシさ。イスラエルと共にニッホン企業が無人殺人機を開発する…《パレスチナ空爆で罪のない一般市民の犠牲を多数出しているイスラエルとの軍事協力…。もし本当に、イスラエルと共同で無人機の研究開発を進めることになれば、この地区で日本の技術が市民の殺戮に使われる》。想像するだにオゾマし過ぎる。

   『●経団連は、「プルトニウムをつくる装置」再稼働を後押し。
              そして、国家戦略としての「武器輸出」を推進!
   『●平和憲法を壊憲し軍隊を持ち「戦争できる国」の時代に:
               「ネジレ」を取り戻し、「厭戦」の世に戻したい
   『●「人殺し」に行くのはアナタ、「自分は
     “お国のために死ぬのはゴメンだ”と」言うヒトを支持する人って?

==================================================================================
http://lite-ra.com/2016/09/post-2539.html

安倍政権の武器・技術輸出がなし崩し拡大! イスラエルと軍事研究画策、無人攻撃機でパレスチナの市民殺害も
大学 自衛隊 野尻民夫 2016.09.03

     (首相官邸ホームページより)

 安倍政権下で戦争のための防衛予算が増え続けている。今年3月に安保関連法が施行され米軍と一緒に戦争をする準備が整ったことを機に、防衛省による来年度の概算要求は史上初めて総額5兆円を突破した本年度予算をさらに上回る51685億円、過去最大の規模に達した。

 なかでも目立っているのが、いったい何のために必要なのかわからないアメリカからの高額武器購入だ。たとえば、最新鋭のステルス戦闘機F35を6機まとめて“大人買い”するため946億円もの費用が計上されている。だが、ステルス戦闘機はレーダーに察知されずに敵地の奥深くに入り込むための武器だ。専守防衛の日本では端から使い道がないと言ってもいい。

 あるいは、1機318億円もするボーイング社製の空中給油機KC46Aというのもある。自衛隊はKC767という優秀な空中給油機をすでに4機も購入していて、専門家の間からも必要性については甚だ疑問との声が上がっている。さらに、米軍が1機50億〜60億円で購入している輸送機オスプレイを防衛省は約100億円、倍の高値で買わされようとしていたり、まるで日本を守るための予算ではなくアメリカの軍需産業を守るための予算のような趣なのだ

 こうした米国製武器の購入とともにキナ臭いのが軍事研究の助成費が大幅にアップされた事実である。「安全保障技術研究推進制度」の予算を今年度の6億円から一気に18110億円にまで膨らませようとしている。軍事への応用が期待できる基礎研究を行う大学や企業への研究費助成を強化するというのである。この意味について防衛省担当記者が解説する。

   「狙いはズバリ、日本の武器産業の国際競争力を高めることです。
    安倍政権は2年前、武器輸出を原則禁止する『武器輸出3原則』を
    撤廃し、世界中に武器を売りまくろうと画策している。そのためには、
    大学や企業の研究協力が欠かせないというわけです」

 安倍政権は2014年4月、戦後の平和国家日本が堅持してきた「武器輸出3原則」を47年ぶりに全面的に見直しした「防衛装備移転3原則」を閣議決定した。「武器」を「防衛装備」と言い換え「輸出」を「移転」と言い張ることで、それまで原則禁止していた武器輸出を、原則オッケーにしてしまったのだ。十分な議論もなく、言葉の言い換えや解釈変更を閣議決定するだけで重大な政策転換をするのは、安倍政権お得意のやり口だ

 あれから2年、実は日本は国民がほとんど知らないところで恐ろしい「武器大国」になろうとしている。その状況をつぶさにリポートしているのが、いま話題の『武器輸出と日本企業』(角川新書)だ。著者の望月衣塑子氏は東京新聞記者である。同書を読むと、事態はこれほど進んでしまっているのかと驚愕する。

 閣議決定後の2015年10月には防衛省の外局として「防衛装備庁」が発足する。武器輸出の旗振り役だ。以後、潜水艦の輸出計画、戦闘機の独自開発、軍学の共同研究……などが矢継ぎ早に活発化する。望月氏が同書で一貫して問題視しているのが、こうした動きが国民の目の届かないところで、たいした議論もなく、なし崩し的に進められているという点だ。人を殺傷する武器の輸出とは一線を引くという、戦後日本の矜持が、こんなに簡単に変貌していいものなのか

 たとえば、武器輸出を解禁するということは、日本が世界の紛争当事国となるリスクが避けられない。欧米の軍需産業のトップは常にアルカイダの暗殺者リストに載っていて、海外に行くときはいつも警護要員をつけるという。社員も、そういう会社であることをわかって入社してくる。だが、日本の三菱重工やNEC、東芝……といった企業のトップや従業員にそんな(戦争に加担しているという)覚悟があるだろうか。ましてやその家族には、という話だ。

 取材中、望月氏は欧米系の軍事企業幹部からこう問われる。

   「そもそも(日本は)どういう国になりたいのですか? (中略)武器輸出
    以前に、日本はその上にある『国家をどうするか』ということが
    整理されていないのではないでしょうか。その議論を経ないまま、
    手法論に入ってしまっている」

 これを受けて望月氏は、〈日本の国家、国民がどうあるべきかということを一番に考えるべき私たち日本人が、なぜかその話題を避け、「欧米列強に倣え、進め」と武器輸出推進の道に歩みを進めている。彼の指摘は、私の胸に何度もこだました〉と書いている。

 安倍政権下で日本が「武器輸出国」としてどこまで足を踏み入れてしまっているか、詳細は同書を読んでもらうとして、象徴的な話を2つだけ紹介しておこう。まず、日本の最高学府である東大がそれまで禁じていた軍事研究を解禁したことだ。これが、どれくらい衝撃的なことか。

 東大は真珠湾攻撃からわずか4カ月後の1942年4月に軍の要請に基づき兵器開発のために工学部の定員を倍増させ、現在の千葉大学の敷地に第二工学部を新設させられた。そこで、軍からの有無をいわせぬ武器研究と開発を強いられた。戦後、東大は学問が戦争に利用されたという深い反省から、次の3原則を表明した。

   (1)軍事研究はもちろん、軍事研究として疑われる恐れのあるものも
      一切行わない

   (2)外国を含めて軍事関係から研究援助は受けない


   (3)軍関係との共同研究は行わない、大学の施設を軍関係に貸さない、
      軍の施設を借りたりしない、軍の研究指導をしない

 2011年に作成された研究ガイドラインでも「一切の例外なく軍事研究を禁止している」としていたが、先の安倍政権の閣議決定をきっかけに、2014年12月に情報理工学系研究科の「科学研究ガイドライン」が改定され、条件付きだが軍事研究解禁となった。翌2015年1月16日付の産経新聞がスクープしたものだ。戦後、半世紀以上にわたって先人たちが守り続けた「軍事研究禁止」の大原則が、アッサリ転換させられてしまっていたのだ。恐ろしい話である。

 しかし、さらに恐ろしいのが同書の最終章に書かれた「進む無人機の開発」という話だ。

 いま、世界の軍隊では無人機導入が急速に進んでいる。自国の兵士の“安全確保”のためというのがその理由だが、一方で無人攻撃機によって多数の一般市民が犠牲となっているというから、なんともブラックな話である。無人攻撃機は兵士が安全施設にいながら相手を殺せる非常に恐ろしい兵器だ。当然、これまで日本の企業はそんな恐ろしい兵器の開発に手を染めていなかった。しかし、武器輸出に舵を切ったいま、逆に言うと、開発に遅れをとっているということになる。そこで、防衛省はいま、国民の知らない水面下で、あのイスラエルとの共同研究・開発を進めようとしているというのだ

 イスラエル国防軍は世界でも有数の無人攻撃機保有を誇っている。隣接するパレスチナ地区への空爆も、最近はほとんどがこの無人攻撃機によるものだといわれている。そのため、技術力もアメリカに次ぐ高度なものを保有し、海外輸出も積極的に行っている。

 2014年6月にフランスのパリで開かれた国際武器見本市「ユーロサトリ」で、初代防衛装備庁装備政策部長であり、当時防衛省装備政策課長だった堀地徹氏がイスラエル企業のブースに立ち寄り、「イスラエルが開発する無人攻撃機『ヘロン』に関心があると伝え、密談に及んだという。同じ月、安倍晋三首相がイスラエルのネタニヤフ首相と新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明を発表、防衛協力の重要性を確認し、閣僚級を含む両国の防衛当局間の交流拡大で一致した。

 そして2016年8月31日には、防衛省が将来無人装備に関する研究開発ビジョン〜航空無人機を中心に〜を発表し、日本が無人機開発に積極的に乗り出すことを表明した。このなかでは、たとえば〈諸外国の研究開発動向から、将来、航空機同士の戦闘において、作戦行動を支援する、あるいは直接戦闘行為を行う無人機の出現が予測されるが、そういった将来の質的環境変化に対応するためにも、技術的優越を確保していく必要がある〉と記すように、将来的な無人兵器による「直接戦闘行為」=戦争における殺害行為が前提とされている。

 イスラエルが欲しいのは日本の先端技術だ。パレスチナ空爆で罪のない一般市民の犠牲を多数出しているイスラエルとの軍事協力については自民党内でも異論があるというが、安倍政権はおかまいなしに前のめりだ。もし本当に、イスラエルと共同で無人機の研究開発を進めることになれば、この地区で日本の技術が市民の殺戮に使われることになるのである。

 日本人にその覚悟はあるのだろうか先人たちが築き上げた「戦争には加担しない」という矜持を一政権がアッサリ捨て去っていいものなのか。望月氏は、最後にこの本をこう締めくくる。

   〈2005年以降から膨張する世界の軍事費や武器輸出の状況を見れば、
    軍備の拡大が、世界の平和や安定とは懸け離れ、世界各地で勃発する
    紛争の火種になっていることは一目瞭然だ。それでも日本は欧米列強に
    続けと、武器輸出へ踏み込んだ。

     戦後70年、日本は憲法九条を国是とし、武力放棄、交戦権の否認を
    掲げた。それら捨て、これからを担う子どもにとって戦争や武器を身近で
    ありふれたものにしようとしている。この状況を黙って見過ごすわけには
    いかない〉

(野尻民夫)
==================================================================================

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●異常過ぎる非情な自己責任論者達…安田純平さんの「罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したこと」?

2016年06月05日 00時00分45秒 | Weblog


※CMLにオンライン署名についての記事が出ていました。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
■『[CML 043630] 6/6(月)安田純平さんを救おう!6・6官邸前緊急市民行動/
  【安田純平さんを救おう!】オンライン署名』(http://list.jca.apc.org/public/cml/2016-June/043733.html
    「また安田純平さん救出のオンライン署名サイトが立ち上がりました。
     この緊急署名の拡散もお願いします。
     https://goo.gl/ohjc0e
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


LITERA 本と雑誌の知を再発見』(http://lite-ra.com/)の水井多賀子氏による記事【安田純平氏の新画像公開でまた「自己責任論」が…欧米メディアが一斉に指摘する日本の“お上”意識の異常性】(http://lite-ra.com/2016/05/post-2295.html)。

 《これに対し、菅義偉官房長官は30日の会見で「さまざまな情報網を駆使して全力で対応している」と強調したが、はたしてこれは本当なのか。…官邸幹部も朝日新聞の取材に「向こうの要求に乗るようなことはないと言い放っている。昨年の後藤健二さん、湯川遥菜さんの事件の際に日本政府が何ら策を講じなかったことを考えると、安田氏を助けだそうと積極的に尽力しているとは、とても思えない》。
 《だが、日本はどうだろう。既報の通り、04年の人質事件で自己責任論をふりかざした急先鋒は当時の自民党幹事長、安倍晋三氏である》。

 なぜ尽力してくれないのか…。非情な「自己責任」論者アベ様、そしてその取り巻き達、支持者達。《自分もまた人質の見殺しに加担していること》に気付けない、あまりの非情さ。《冷酷な社会》《残酷な国》。本当に自己責任であり、「公共の迷惑」なのか? 青木理さんは「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」と仰っている。どちらが常識なの? 「日本の“お上”意識」はマトモなの? 

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……
   『●安田純平さんの無事な解放を祈る… 
     「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?
   『●自己責任であり、「公共の迷惑」なのか?:
      青木理さん「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」

==================================================================================
http://lite-ra.com/2016/05/post-2295.html

安田純平氏の新画像公開でまた「自己責任論」が…欧米メディアが一斉に指摘する日本の“お上”意識の異常性
2016.05.31

 昨年6月から消息がわからなくなっているジャーナリスト・安田純平氏の画像が、5月29日夜、新たに公開された。現在、安田氏はアルカイダ系の武装組織「ヌスラ戦線」に拘束されていると見られているが、今回の画像ではオレンジ色の服を着た安田氏が険しい顔で「助けてください。これが最後のチャンスです」と書かれた紙を持つ様子が写されている。

 これに対し、菅義偉官房長官は30日の会見で「さまざまな情報網を駆使して全力で対応している」と強調したが、はたしてこれは本当なのか。菅官房長官は今年3月に安田氏の動画が公開されたあとも「安田氏本人と思われますが、それ以上の答えは控えたい」と言い、他方、官邸幹部も朝日新聞の取材に向こうの要求に乗るようなことはないと言い放っている昨年の後藤健二さん、湯川遥菜さんの事件の際に日本政府が何ら策を講じなかったことを考えると、安田氏を助けだそうと積極的に尽力しているとは、とても思えない

 だが、日本政府の対応への疑問もさることながら、またかとうんざりさせられるのは、今回の事件に対するネット上の反応。そう、お決まりの「自己責任」という声が、またも噴出しているのだ。

   「自己責任だから助ける必要なし」「国に迷惑をかけちゃダメ」
   「自己責任で何とかしろや」「助かったらまた行くでしょ?」

 緊迫した状況であることを伝える画像が公開されてもなぜこんなに非情でいられるのかと暗澹とした気持ちにさせられるが、さらに、安田氏が昨年4月にツイートした〈戦場に勝手に行ったのだから自己責任、と言うからにはパスポート没収とか家族や職場に嫌がらせしたりとかで行かせないようにする日本政府を「自己責任なのだから口や手を出すな」と徹底批判しないといかん。〉という投稿をあげ、「本人が口も手も出すなって言ってたんだから自己責任でしょ」とあげつらう者も続出している。

 一体、どこをどう読んだら、そんな話になるのか。この安田氏の投稿は、“ジャーナリストに自己責任を押し付ける政府にはジャーナリストに足枷をはめる権利はない”と政府による報道規制を非難しているのであって、政府が安田氏を助けなくていい理由になどまったくならない。しかしこの国では、あたかも国の命令に逆らう者を救出する必要などないと考える人が恐ろしく多い

 だが、そんな考え方は、決して当然のものではない。むしろ、人質事件が起こると日本に沸き返る「自己責任論」を、海外のメディアは日本の異常な状況だと見ている。

 たとえば、2004年に発生したイラクでの邦人3名の人質事件の際、日本では自己責任論が噴出。とくに現地でボランティア活動を行っていた高遠菜穂子さんが解放後、「今後も活動を続けたい」と語ったことに対し、当時の小泉純一郎首相は「寝食忘れて救出に尽くしたのに、よくもそんなことが言えるな」と激昂した。

 しかし、海外の反応はこれとまったく違った。アメリカのパウエル国務長官が「ラクの人々のために、危険を冒して現地入りをする市民がいることを、日本は誇りに思うべきだ」と発言したことは有名だが、フランスの高級紙ル・モンドも、外国まで人助けに行こうとする世代が日本に育っていることを示したと高遠さんらの活動を評価。逆に、日本に広がっていた人質への自己責任論については、〈人道的価値観に駆り立てられた若者たちが、死刑制度や厳しい難民認定など(国際社会で)決して良くない日本のイメージを高めたことを誇るべきなのに、政治家や保守系メディアは逆にこきおろしている〉と強く批判している。さらに、〈社会秩序を乱した者は後悔の念を示さなければならないのが日本の習慣〉と、その特異性をも伝えていた。

 アメリカのニューヨーク・タイムズも同様だ。〈イラクで人質になった日本の若い民間人は、黄色いリボンではなく、非難に満ちた、国をあげての冷たい視線のもと、今週、故国に戻った〉と日本国内の異常さを表現し、帰国後も自己責任だと人質を追い詰める日本政府の態度を凶暴な反応を示したと非難〈(人質である)彼らの罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したことだと皮肉を込めて論及している。

 また、昨年の後藤さん、湯川さんの事件が発生したときも、イギリスのロイターは〈日本では、イスラム国人質事件の被害者を攻撃する者がいる〉という見出しの記事を掲載。〈日本政府の対応と同胞である日本市民たちの態度は、西欧諸国のスタンダードな対応とはまったくちがうものだった〉と日本における人質への冷酷な受け止め方を紹介。アメリカのワシントン・ポストも、04年の邦人人質事件で起こった自己責任論に再び言及している。

 もちろん、海外でも、保守系政治家が自国の人質に対して自己責任をぶつことがないわけではない。たとえばフランスでは09年にジャーナリスト2名がテロ組織に拘束され、当時のサルコジ大統領は2人のことを「無謀」と非難。しかし、市民はこうした政府の姿勢に反発し、2人の救出を求める署名活動やコンサートが企画されるなど、国に対して積極的な対応を求めた。こうした世論がフランス政府を後押しし、結果、2名のジャーナリストは無事、解放されるにいたったのだ。

 だが、日本はどうだろう。既報の通り、04年の人質事件で自己責任論をふりかざした急先鋒は当時の自民党幹事長安倍晋三氏である。とくに、人質が解放された翌日の会見では、「山の遭難では救出費用を遭難者に請求することもある」と発言、政府に救出費用の請求を検させる姿勢さえ見せたほどだった。この安倍氏をはじめとする政治家たちの新自由主義的な自己責任の大合唱が国民に浸透し、いまではすっかり根付いてしまった。


 そして、その自己責任論者の安倍氏が総理大臣となり、「国が助ける必要はないなどという意見が、さも当然のようにまかり通っている。いや、人質問題だけではない。いまや保育園に入れないと現状の不備を訴えただけでも「子どもをつくった人の自己責任」と跳ね返す者が現れるような、冷淡な社会になっていってしまっている。

 だからこそ、いま一度、繰り返しておきたい。国が国民を助けることこそ当然の話であって、国の言う自己責任論に国民が乗っかってしまえば当然の義務を果たさない政府を容認することになる。ましてや、安田氏は自分勝手でもわがままを通した人でもまったくない。国内の大手メディアが報じない戦場やテロリスト組織の実態をあきらかにするために、つまり国民の知る権利を守るために身体を張ってシリアへ渡ったのだそうした人物を見殺しにするような、そんな残酷な国ではたしていいのか


 いま、わたしたちが発するべきは、何もしない国にお墨付きを与える自己責任論ではなく、「I AM JYUNPEI」という安田氏の救出を求める声であるべきだ。そして、「自己責任でなんとかしろ」と無責任に主張するネット民は自分もまた人質の見殺しに加担していることを肝に銘じるべきだろう。

水井多賀子
==================================================================================

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●自己責任であり、「公共の迷惑」なのか?: 青木理さん「「知る権利」を保障し、「公共の利益」である」

2016年03月22日 00時00分26秒 | Weblog


zasshi.news.yahoo.co.jpの記事【安田純平さんの安否は今どうなっているのか】(http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160309-00010000-tsukuru-soci&p=1)。

   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……
   『●安田純平さんの無事な解放を祈る…
     「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?

 色々な意味での安田純平さんの状況について、以下の綿井健陽さんの「つぶやき」で知りました。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
WATAI Takeharu/綿井健陽 ‎@wataitakeharu
安田純平さん拘束のこれまでの経緯や周りの対応については、今年1月中旬にシンポジウムで詳しく報告された高世仁氏(ジンネット代表)の以下記事をぜひ読んで下さい(2月上旬に発売された月刊「創」3月号掲載)→ http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160309-00010000-tsukuru-soci&p=1
2016年3月18日 00:49
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


 いま、ネット上で酷い言葉が飛び交っています。以下の青木理さんの印象に残る言葉のみ、メモ代わりに。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
■(サンデーモーニング、2016年3月20日)青木理さん: 「自己責任や、「公共の迷惑」か? 安田さんのような活動が無いと、戦場で何が起きているかの知りようがない。紛争は究極の人権侵害が起こる場所。そこで何が起きているのか、女性や子供といった弱者がどうなっているのか、我々は何も知り得なくなる。こういうジャーナリストの活動が知る権利、「公共の利益」を代表している」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

=====================================================
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160309-00010000-tsukuru-soci&p=1

安田純平さんの安否は今どうなっているのか
創 3月9日(水)17時26分配信


昨年6月、シリアに入った直後に拘束

 私はテレビの制作会社をやっておりまして、報道番組やドキュメンタリー番組を作っています。時々フリーランスのジャーナリストから依頼されて、企画をプロデュースしてテレビ局へ売り込むということもやっている。安田純平さんもそのフリーランスの一人でした。
 安田さんは、もともと信濃毎日新聞の記者で、フリーになって、2004年にイラクで拘束されています。あの時は高遠菜穂子さんたち三人が拘束された後に、安田さんと他にもう一人拘束されました。だから安田さんは今回二回目の拘束ということで、心配なのは「一回拘束されたのにまたやったのか」というバッシングにあいやすい状況にいることです。
 彼は、新聞記者出身ですので、もともとはペンと写真の人です。2012年にシリア内戦で自由シリア軍に従軍して、その時初めてビデオカメラを回したのですが、それが素晴らしい出来でした。今後これを超える戦場ルポが果たして出るのかなというくらい素晴らしかった。それはTBSの「報道特集」で放送されました。
 今回、安田さんは昨年の5月23日にトルコに入ってから、私に連絡してきて、どういう取材をしたらいいのかアドバイスを求められました。シリアに入るのは非常に難しくて、他のジャーナリスト仲間も、国境を超える時にトルコ側の国境警備隊から銃で撃たれたりしている。今回は今まで以上に厳しそうだと言っていました。
 でも彼はトルコ南部、シリアとの国境付近ですごくいい取材をしていたんです。それだけで番組ができるような取材でしたから、私はそれで取材を終えて帰ってくるかなと思っていたんです。
 そしたら、6月20日になって「シリアに入れる」という連絡が来た。その後22日に、共同通信の原田浩司さんに「これからシリアに入る」、23日にフリーのジャーナリスト常岡浩介さんに「どうももうシリアに入ってしまったらしい。ヘトヘトだ」というメッセージが入りました。そして、その直後に拘束されたようです。
 その後7月3日に、現地の人から「安田さんと連絡がつかない」と連絡があり、4日には拘束されていることがわかりました。


情報を伏せてメディアに出さないことにした

 常岡さんは安田さんの長年の友人ですが、彼と相談してこれからやることは二つということにしました。一つは、情報をそっと探ること。もう一つは、メディアに出さないことです
 なぜなら、拘束したグループから何のメッセージもなく、何のために拘束しているのかわからない。騒ぐことでこちらが有利になるのか不利になるのかわからない状況です。だからとにかく、そっとやろうね、と決めました。
 その後、7月12日に、常岡さんがトルコに行きました。その時私たちが考えていたのは「もしかしたらスパイ容疑をかけられているんじゃないか」ということでした。あくまでも推測ですが。
 安田さんが消息を絶ったところは、ヌスラ戦線というアルカイダ系の組織が強い影響力を持っている場所だったので、我々はてっきりヌスラ戦線が拘束したと思っていました。そこで、そのスパイ容疑を晴らすために安田さんが書いた本とか、記事とかテレビ出演している映像とかをヌスラ戦線に見せて、ちゃんとしたジャーナリストだよとアピールしようと思ったのです。
 でも、事前にこのミッションは失敗が見えていました。というのも、5月の段階で、それまでシリア取材を熱心にやっていた日本人ジャーナリストが、トルコの空港についた時点で次々に入国禁止になって強制送還されていたからです。例えば、若い女性ジャーナリストの鈴木美優さん、『ジャーナリストはなぜ「戦場に行くのか」』(集英社新書)の執筆者でもある横田徹さんなどが立て続けに強制送還されました。
 ましてや常岡さんは「イスラム国」を取材した数少ないジャーナリストで、2014年に日本で私戦予備陰謀というとんでもない容疑でパスポートから何から取り上げられて家宅捜索されたことのある人だから入国は絶対無理だと思いました。私は「まあダメもとで行ってらっしゃい、旅費は半分カンパするよ」と言って送り出したんです。
 そしたら案の定、トルコには入れずにすぐに帰されて来ました。ここで問題なのは、トルコに入国できないこの3人というのが、いずれもヌスラ戦線と連絡を取れて土地勘のある人たちなんですよ。しかもみな安田さんの友人。安田さん救出に最も力になれそうな人たちが、ことごとく現地に近づけなくなっているんです。

 これはあくまで推測ですが、日本政府が、そうしているんじゃないかなと私は思っています。というのも、安田さんが以前イラクでとらわれた後、日本政府が「安田純平にはビザを出すな」とイラク政府に要請したんです。だから安田さんはまともな方法ではイラクに入れなくなったので、コック(料理人)になってイラクの軍の基地でシェフとして働いた。その状況を書いた本が『ルポ 戦場出稼ぎ労働者』(集英社新書)というのですが、これは戦場取材に新たな手法を持ち込んだ名著だと私は思っています。

 彼は基地から出られないのでずっと厨房にいる。この本には「厨房から見た戦争」が描かれている。イラク社会ってどんなものかとか、戦争が民営化されていることもよく分かる。世界中からイラクに出稼ぎに来ていて、格差と戦争とか、大事なことがたくさん書いてあるすごく面白い本です。


幾つものグループが救出へ向けて動いた

 さて、7月以降、安田さんの友達などを含めて、民間で幾つものグループが救出に動き出します。そして、それぞれ間接的・直接的に拘束者との接触に成功しています。日本にこういう人材がいるのかと私は驚きましたね。
 そのうちの一つがヌスラ戦線に「日本人が捕まっているだろ?」と問い合わせたら、ヌスラ戦線の方が「知らない」と言うのです。実は現地はヌスラ戦線の影響力が強いところですが、最初に安田さんを拘束したのはヌスラ戦線じゃなかった。実は現地には他にもいろんな武装グループがあって、その中にはヌスラ戦線と付かず離れずで、密貿易などをやっている「ならず者集団」もいます。最初に安田さんを拘束したのはそういうグループだったのです。
 それで、ヌスラ戦線が日本からの通報を受けて調べたら、その「ならず者集団」が拘束していたので「我々のテリトリーで勝手なことするな」と怒って、ヌスラ戦線の部隊がそのグループを攻撃しました。これは死者が出るくらいの戦闘で、結果、ヌスラ戦線が安田さんの身柄を引き取りました
 今日の話は、どこから聞いたとか一切言えないですけど、今、ヌスラ戦線に安田さんは捕まっていて、12月10日段階で、安田さんが生きていることは確実になっています。
 問題はヌスラ戦線がどんな組織かということですが、もともとはイスラム国と同根のアルカイダ系組織で、途中からイスラム国と分かれます。今はイスラム国と最も激しく戦っている武装勢力です。今まで何人もジャーナリストを捕まえていますが、まだ殺していません。2012年にはスペイン人のジャーナリスト3人を身代金も何も取らずに帰しています。この時はクゥエート政府が仲立ちしたと言われています。
 だから我々もなんとか静かに交渉がやれればと思っていたら、とんでも無いことが起こりました。昨年12月23日に「国境なき記者団」が「安田さんの拘束者が身代金要求をしている。期限内に金を払わないと、殺すか、他の組織に売ると言っている」と声明で発表した。これがドカーンと報道されて、日本人のほとんどがこの事件を知ることになりました。それまでは、常岡さんたちが、日本のメディアに「慎重にして」とお願いしていた。一時期「これは安倍政権がメディアに圧力をかけて黙らせている」というツイッターかなんかがあったけど、逆だったのです
 そんな中、国境なき記者団の声明発言で安田さん拘束が報道された。これが非常に問題だったのは、そもそも安田さんの家族にも、外務省にも身代金の要求は来ていない、つまり根本的に間違った情報だったのです。そこでおかしいじゃないかと問い合わせたら、国境なき記者団は29日に発言を撤回するんです。


5000万円で解決」と持ちかけた人物も

 どうしてこんなことが起きたのか。私が知っている安田さんを助けようとしている民間のルートの一つにスエーデン人のNさんというのがいて、この人が外務省に「5000万円で私が解決してあげる」と持ちかけていたんです。外務省は相手にしなかった。で、Nさんは、自分の出番を作るために国境なき記者団を使って演出したんだと私は思っています。
 Nさんがヌスラ戦線にどんな取引を持ちかけているか分かりませんが、もし身代金での交渉ということになると、大変なことになります。
 ご存知のように日本政府は、テロリストとは交渉も接触もしません。身代金も払いません。安田さんのご家族も巨額のお金を払えるわけがない。日本には身代金を払う人がいない。ですから、身代金での交渉となると、安田さんの身柄は非常に危険なことになってしまう。我々は、今一生懸命情報を探っている段階ですけど、Nさんのおかげで非常に難しい状況に立たされています。


1210日の時点では大丈夫だと確信

 こういう混乱が起きる背景の一つには、日本政府の「関与せず」というスタンスがある。政府に頼れないから、民間の人たちがこういうふうに一生懸命やるわけです。それぞれのルートがトルコまで行って独自に調査をやっています。
 そして、私が知っている3人のヌスラ戦線と話が付けられるジャーナリストの動きは封じられています。
 もし、トルコへの入国禁止を日本政府が要請しているとすれば、「関与せず」だけではなくて救出活動を邪魔することになっている。そもそもジャーナリストが武装集団に拉致された場合、どこの国もなんらかの形で政府が乗り出すものなんです。ところが、日本はそうなっていない。それどころか政府は、危ないところにいくジャーナリストは「蛮勇だ」などと言ってバッシングに加担する。このような日本特有の事情要因があって、今回の状況は起きているんだと思います。
 とはいえ、日本政府が出て来ればかえって話がごちゃごちゃになるかもしれない。それが1年前の後藤健二さんの時の教訓でもありますので、私たちとしても動きがとれません。今はとにかく情報を集めようとしている状況です。
 ただ12月10日の段階では少なくとも安田さんはまだ大丈夫だということがわかっています。これから、新たな段階でみなさんにご協力をお願いすることがあるかもしれない。その時はよろしくお願いします。
 最後に、なぜ戦場に行かなければならないのかというきょうのシンポのテーマについて安田さんは先ほど紹介した本にこう書いています。「戦後60年が過ぎ、戦争を知っている日本人が年々減っていく中で、現場を知る人間が増えることは、空論に踊らないためにも、社会にとって有意義だ」。つまり、戦争のリアリティーを知る人が少なくなる中で、戦争のリアルを知っている人間がいるっていうことは、戦争が空論として論じられないためにもいいんじゃないかというのです。今の日本の状況にぴったりの言葉だと思います。
 安田さんは非常に志のある有能な人だし、イラクでコックをやりながらアラビア語をマスターしていたので、拘束者との間に変な誤解が生じることはないと思います。必ず、無事で帰ってくると信じています。

(1月15日に都内で行われたシンポジウム「ジャーナリストはなぜ戦場へ行くのか」での発言を収録)

高世 仁[ジン・ネット代表]



安田純平さんが本誌に書いていた手記――新聞社を辞めて 戦場に行った理由

●編集部より

 ここに紹介するのは安田純平さんが本誌2003年8月号に書いた手記の一部だ。なぜこの手記の再録を考えたかというと、ちょうど今、マスコミ就活が始まっており、新聞記者を志望する学生が本誌を読む機会が多いからだ。
 安田さんは、信濃毎日新聞社に入社して記者として仕事をしていたが、イラク戦争を現場で取材したいという希望を拒否されたために、会社を辞めて戦場に足を運んだ。その時の経緯を書いたのがこの手記だ。
 今回、戦場で消息を絶ったことともそれは関わっているのだが、なぜ彼はそこまでして戦場に行きたいと考えたのか。また新聞社という組織ジャーナリズムとフリーランスの記者との違いは何なのか。

そうしたことをマスコミをめざす若い人たちにぜひ考えてほしい。それは同時に安田さんの今回の問題を考えることにもなる。
 ちょうど1年前、本誌の「後藤健二さんの死を悼み、戦争と報道について考える」というシンポジウム(2015年4月号に収録)で安田さんは、戦場取材の意味や危険性について語っていた。本誌は安田さんが一刻も早く無事に帰還することを祈るとともに、今回の事件を通して改めて、ジャーナリストが戦場に行くことの意味を考えてみたいと思う。
 そのためにかつての安田さんの手記を、編集部の判断で再録することにした。


なぜ信濃毎日新聞社を辞めたのか

   「イラクの戦争など長野県と関係ない。取り上げる必要もない。
    そうした取材はもういっさいさせない。休みで海外に行って
    記事を書く記者が多いが、今後は書かせない方針を決めた」

 2003年1月初め、ある編集幹部に「社としての方針」としてこう聞かされ、「もう辞めるしかないか」と心が動いた。
 私は2002年12月、先延ばしにしていた夏休みを使って約10日間、イラクを訪れていた。市民グループ「イラク国際市民調査団」に参加し、バグダッドや南部のバスラをまわり、91年の湾岸戦争以降も米軍が続けてきた空爆の被害者や、劣化ウラン弾の影響とみられるがん患者を取材。活気のある街の風景や、貧しいながらも元気よく生きるイラク人の表情、米国のイラク攻撃に反対する日本の若者の活動をカメラに収めた。帰国後、これについての記事を書こうとした矢先、強硬なストップがかかったのだ。
 米英両国が国連安全保障理事会に提出したイラク大量破壊兵器査察・廃棄決議案が11月初めに採択され、すでに査察が始まっていたが、このころの新聞やテレビは、いずれも査察の状況や各国の外交について述べるばかり。戦争が迫っている国の人々の表情などは、ほとんど見えてこない状態だった。
 大手メディアもイラクに入国できる人数が限られ、「本筋」の査察取材で手一杯。調査団は、参加者20人余のうち半数は全国紙やテレビ局などメディア関係者という奇妙な市民グループだったが、それは、なかなか見えてこないイラク市民の様子を伝える格好のチャンスだったからだ。
 私は、戦争が近づいているといわれている国の人々がどのような表情をして暮らしているのか、そうした場所にいるということがどういった心境なのかを知りたいと思った。また、そうした人々の声を伝えるのが記者の役割だと考えていた。91年の湾岸戦争のとき、高校生だった私は、テレビゲームのようだったバグダッドの映像を見て「あの下にも人が住んでいるのだな。それはどのような心境なのだろうか」と感じていた。それは、さまざまな人々の境遇に触れる事のできる記者を志した原点の一つでもあった。

帰国後の報告会もとがめられた

 戦争の機運が高まり、世界的に反戦世論が広がってきていたにもかかわらず、日本国内は動きが鈍く、新聞やテレビで扱われることはほとんどなかった。長野県内にはそういった動きがなく、イラクにゆかりのある人も見当たらなかったため、地方紙に必須の「県内とからめた」イラク関連の記事を書くのが困難だった。イラク行きを決めたのは、「それなら自分が行くことで関連づけてしまえ」と“安易な方向”に走った面もあった。県内関係者が行くのを待ち、土産話を取材する機会を捜すという方法をとれないほど好奇心が勝っていた。
 記事には出来なかったが、共感してくれた県内有志が帰国後に報告会を開いてくれた。「長野県に住む自分たちとは関係ない」などと思っていない県民がこの時期からたくさんいた。身近な人を取り上げることで読者が親近感を持つという地方紙としての考え方はあってもいいし、逆に、記者が自ら体験しても親近感を持ってくれるものだという側面も感じた。
 しかし、これもとがめられた。あくまで個人的に話をしたのだが、就業規則に引っかかるらしく、「会社の名を語った」とされた。見てきたものを伝える、その方法をことごとく封じられた。
 なぜ会社がそこまで強硬だったのかは分らない。ただ、12月に行く前に「取材で行きたい」と申請したが「危険だからだめ」とにべもなく却下されていた。さらに、「休みであっても何かあれば会社の名前が出る。休みは強制できないが、行かないでほしい」という会社側の意向に辟易し、強行したことが溝をつくってしまったかもしれない。


イラク市民の側の現場に身を置くしかない

 私は2002年3月、やはり休暇を使ってアフガニスタンを取材した。「9・11」のテロ事件から始まった米国の「対テロ戦争」と、追随する日本政府の方針に疑問を感じていたからだ。同時に、それまで知らなかったアフガン民衆の困窮も知った。アフガン攻撃をきっかけに、経済のグローバル化による貧富の差の拡大が広く認識されるようになったが、「貧」の側にいる人々の存在と、「富」の側にある日本の中で比較的「貧」である地方の暮らしを考えることは、自分の中で新しい視点につながっていくのではないかと思った。地方で記者をしながら、休みを使って紛争地帯・貧困地域に行こうと考えたのはそのためだ。しかし、そもそも大した日数はつぎ込めないのに記事を書けないのならば、その意味は半減する。
 編集幹部は「イラクの話などに力を入れては読者にしかられてしまう」と言った。しかし、戦争が始まれば、紙面は戦争の記事で埋まることは分かっていた。帰国後に読んでみると、県内の市民数人に意見を聞き、攻撃反対の世論があることを紹介する記事が書かれ、各地で始まったデモや集会の紹介も手厚くなっていた。通信社からの配信を多数使い、米英側、イラク側の発表を織り交ぜていた。バグダッドにいた日本人に電話取材もしていた。識者へのインタビューも頻繁に行っている。朝日新聞なども似た内容だ。
 せめて戦争が始まる前に、この程度でも力を入れることはできないものかと思う。後から検証することは大事だが、始まってしまえば人々が傷つき殺される。この段階で反戦の論調を打ち出しても基本的に手遅れである。
 また、月並みな感想だが、どのメディアも、イラク市民の様子はいまいち伝わってこない。息遣いや生生しさを感じない。爆撃に対する恐怖も覚えない。戦況を伝えることは重要だが、あくまで基礎情報であって、それによって市民に何が起こっているのかを伝えるのが報道の使命のはずだ。そのためにはイラク市民の側の現場に身を置くしかない。
 1月の段階で、メディア情報にはこうした最も重要なはずの部分が欠落することは予想がついていて、歯がゆい気持ちで日本でそれを見ることになるのはつらいと思った。アフガン攻撃でも、現場がどうなっているのかが見えてこず、焦燥感でいっぱいだったからだ。戦前にイラクに行っていながら記事にすることができなかった苛立ちと失望の中で、そうした情報に晒されるのは我慢できないだろうと思い至った。
 戦争中に私がバグダットなどで訪れた病院は、血と膿と消毒液の混ざった生臭いにおいが充満し、路上に放置された民間人の遺体は強烈な腐臭を放っていた。空爆跡地は血だまりも残り、騒然とした空気が漂っていた。人々が発する怒りや嘆きも感じた。一方で、戦争のさなかにも人々は笑い、何気ない暮しをしていた。そうしたメディアからでは得られないものを全身で感じ、戦争とは何かを叩き込みたかったがため、私は現場へ向かうことを選んだ。そして、もちろん現場で取材できることの限界にもぶつかった。それらはフリーにならなければできないことだった。


組織ジャーナリストとフリーランスの違い

 それにしても、膨大な情報の中から取捨選択して新聞を作っていることは周知の事実なのに、多くのメディアが「公明正大」「客観」と言う言葉を未だに使いたがるのはこっけいだ。組織ジャーナリズムの中にいるかぎり、記者は取捨選択に組み込まれる。バグダット陥落後に入って来たある全国紙の記者は、悔しそうにしながら「会社の論調に合わない記事はボツになる。悩んでいる同僚は多い」と話していた。記者たちがそうした悩みを抱えながら取材をしていることを、読む側も知っていてもいいと思う。
 自分自身の状況判断と責任で行動を取れるかどうかが、組織ジャーナリストとの違いだ。フリーになって初仕事という意味では、開戦前後の葛藤はイラク戦争取材の中でも充実感の残った部分だ。組織の命令で動くならば、諦めもつくし、文句を言って気を紛らわすことも出来る。理不尽であると同時に、気楽な面もあったのだなと感じた。
 組織から「危険だから行ってはいけない」という指示を受けることがあることは、私も何度も経験している。それが記者の声明を心配してのことと言うよりも、家族からの賠償請求など会社の責任を気にしてのことだということもよく言われる。しかし、私は「休みで行くので自己責任だ」と主張したが、会社は納得しなかった。あるブロック紙のカメラマンは、「家族が賠償を請求しないという文書を出すからイラクに行かせてほしい」と会社と交渉したが受け入れられなかったという。「何かあったら会社の名前に傷がつく」ことを恐れているようだ。私などは「紛争地がらみで会社名が出ればハクがつくだろうに」と思ったものだが、そう簡単なものではないらしい。
 戦争中の3月末、通信施設が壊滅して連絡手段がいっさい途絶え、私を含む日本人の安否確認ができなくなり、ある通信社は死亡記事を用意していたらしい。私の記事を作るうえで、信濃毎日新聞のある幹部に取材をしたようだが、その幹部は私の行動で会社が取材されたことに激怒していた、という話を耳にした。何も迷惑をかけたつもりはないが、何かあれば当然、経歴とともにマスコミに出ることになるだろうし、あることないこと書くところも出てくるだろう。「何も起こらないのが一番」と考えるのも無理はない。恐らくどんな会社にいてもそうした反応をするはずだ。しかし、それが取材活動を制限することになるならば、その守りたい「名」とは何かと思わざるを得ない

安田純平『創』2003年8月号)
=====================================================

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●安田純平さんの無事な解放を祈る…「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか」?

2016年03月18日 00時00分34秒 | Weblog


THE HUFFINGTON POSTの記事【安田純平さん名乗る男性の動画を公開 ヌスラ戦線が拘束か(発言全文)】(http://www.huffingtonpost.jp/2016/03/16/junpei-yasuda-movie_n_9482008.html?ncid=tweetlnkjphpmg00000001)。

 《安田純平さん(42)と名乗る男性の動画が3月16日、Facebook上に投稿された》。

 とにかく、安田純平さんの無事な解放を祈っている。少なくとも昨年の12月22日以降、アベ様ら、あるいは、政府は何らかの手を打って下さっているものと強く信じる。《政府にとって日本人の安全確保は重大な責務》。

   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(2/2)
   『●「自己責任」を叫ばれた人の立場

   『●「自己責任」バッシングと
     映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』
   『●「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。
                     伝えようとした人が現場にいたからです」

     《イラクでは2004年4月にボランティア活動家の高遠菜穂子さんら
      3人と、取材中だったフリージャーナリストの安田純平さんら2人が
      相次いで誘拐された事件が起きている。高遠さんらを誘拐した
      犯人グループは自衛隊のイラクからの撤退を要求した。政府は
      応じなかったが、5人とも4月中に解放された》
     《2012年、シリアで内戦を取材中に銃撃戦に巻き込まれて
      亡くなったジャーナリストの山本美香さん(当時45)のパートナー。
      後藤さんと面識はないが、撮影した映像を見たことがある。
      紛争の最前線から一歩引いたところで、市民、特に子どもたちが
      置かれた状況を淡々と取材する姿勢が伝わってきた。
      「強い意志を持って、何かを伝えようという気概に敬服する」》
     《独立系通信社ジャパンプレスの代表を務め、山本さんを失った後も
      アフガニスタンなどの取材を続けている。「なんであんな危険な場所に
      行くのか」と問われる。今回の事件でもインターネット上などでは
      自己責任論が飛び交う。「ではなぜ読者や視聴者はシリアが
      危険だと知っているのか。伝えようとした人が現場にいたからです」》
     《危険な思いをしても戦地に行くのはなぜか。原点はアフガニスタンでの
      体験だという。「血も涙もない集団」と報じられていた反政府勢力
      タリバーンだったが、支配下の街は平穏だった。「イスラム国」でも、
      宗教指導者は温厚な人柄で「空腹ではないか」などと気遣ってくれた。
      「ネットで得た情報ではなく、
      自分で話をして、身を置かないとわからない」という》

 過去に「拘束」された経験があるから何だというのでしょうか? 優れたジャーナリストが細心の注意を払っても、拉致される現地の酷い状況、その証左だ。松沢呉一さんに言わせれば、「こういう人たちに「自業自得」なんて言葉を投げつけるのなら、命がけでビデオを回し、写真を撮り、記事を書いている人たちに失礼だから、二度とニュースや雑誌を見なさんな」だ。
 自己責任論者・自業自得論者が何を言おうとも、ブログ主は、安田純平さんの仕事を高く評価している。


   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
   『●「18歳選挙権」にさえ無関心?: 
       血税と赤紙と、そして、(経済的)徴兵制への第一歩か?
   『●安田純平さんの安否が大変に心配: 
     官邸は一体何をしているのか? 後藤健二さんの対応と同じ過ち・・・
   『●[声明が撤回されました]「国境なき記者団」が
       安田純平さんについての記事・声明を公開……

 天木直人氏のブログの記事【安倍政権がその気になれば安田純平さんは救える】(http://xn--gmq27weklgmp.com/2016/03/17/post-4127/)によると…、

   「間違いなく安田純平さんだ。生存していたのだ。
    そしてもはや生きて帰れない状況で拘束されている事を
    ほのめかすメッセージをしゃべらされていた。衝撃的な動画だ。
    これまでひた隠しにしてきた安倍政権も、これで再びテロと
    向き合わなくてはならなくなった。…すべては交渉次第だ。
    …民間人の協力も得て、あらゆる手段を尽くすことだ
    ただでさえまともな外交が出来ていない安倍政権と外務省だ。
    それぐらいは知恵をだせという話だ。安倍政権と外務省は、
    国民監視に中で、大きな試練に立たせられたのである」


=====================================================
http://www.huffingtonpost.jp/2016/03/16/junpei-yasuda-movie_n_9482008.html?ncid=tweetlnkjphpmg00000001

安田純平さん名乗る男性の動画を公開 ヌスラ戦線が拘束か(発言全文)
The Huffington Post  |  執筆者: HuffPost Newsroom
投稿日: 2016年03月17日 08時02分 JST 更新: 1時間前

2015年6月に内戦下のシリアに入国した後、行方不明になったとみられるフリージャーナリストの安田純平さん(42)と名乗る男性の動画が3月16日、Facebook上に投稿された。男性は、家族への思いを語った後、日本政府を念頭に対応を求めるような発言をした。毎日新聞などが報じた。

男性は「Hello, I am Junpei Yasuda.(こんにちは、私は安田純平です)」と名乗った上で、英語で「今日は3月16日は私の誕生日で、彼らから『メッセージを送っていい』と言われた」などと語った。確認できた映像の長さは約1分7秒の長さで、男性は、机の上に置いた紙を見ながら、紙に書かれているとみられる文章を読む形で話している。

男性が語った内容の日本語訳は以下の通り。


----

こんにちは。私はジュンペイ・ヤスダです。そして、今日は私の誕生日、3月16日です。

彼ら(拘束しているグループとみられる)が、話したいと思うことを話していいと言い、これ(映像)を通して、誰にでもメッセージを送れると言いました。

私の妻、父、母、兄弟、愛しています。いつもあなたたちのことを考えています。あなたたちとハグし、話したいです。でも、もうできません。ただ、気をつけてと言うしかできません。

私の42年の人生はおおむね良いものでした。とくに、この8年間はとても楽しかったです。

私の国に何かを言わなければなりません。痛みで苦しみながら暗い部屋に座っている間、誰も反応しない。誰も気にとめていない。気づかれもしない。存在せず、誰も世話をしない。

----


■ヌスラ戦線が拘束か

NHKニュースによると、映像を公開したシリア人の男性は「安田さんはアルカイダ系の武装組織ヌスラ戦線に拘束されており、映像は解放に向けた仲介役を務めている人物から16日に入手した」と話したうえで、映像がどこでどのような状況で撮影されたのかについては「分からない」と語ったという。共同通信によると、ヌスラ戦線は日本側に身代金を要求する姿勢だという。

岸田文雄・外務大臣は午前7時ごろ外務省で記者団に対し、「映像は承知しており、その映像の分析を行っているところだ。政府にとって日本人の安全確保は重大な責務であり、情報網を駆使して対応している」とコメントした。


■ フリージャーナリスト・安田純平さん

安田さんは埼玉県出身、一橋大学卒。1997年に信濃毎日新聞記者となり、2003年1月に退職してフリージャーナリストに転身した。2004年、外務省の退避勧告が出ているイラクで取材中に武装勢力に拘束され、3日後に解放された。その際には「自己責任」と批判的な声も出たが、その後も何度もイラクやシリアを取材してきた。著書に「囚われのイラク」(現代人文社)などがある。

安田さんは2015年6月、シリア内戦を取材するためトルコからシリア北西部に越境。しかし、予定していた7月を過ぎても帰国していなかった。

国境なき記者団が12月に得た情報によると、安田さんは7月前半にシリア入国直後、国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」支配地域で拉致され、現在も拘束されているという。過激派組織IS(イスラム国)に殺害映像が公開された国際ジャーナリストの後藤健二さんに関する取材などが目的だったとみられるという。
=====================================================
 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●憎悪の連鎖を怖れる: イラク侵略と人質事件と自己責任バッシングと

2015年02月02日 00時00分58秒 | Weblog


マガジン9』の記事【雨宮処凛がゆく!: イスラム国による人質事件。の巻】(http://www.magazine9.jp/article/amamiya/17472/)。

 「ただただ、言葉を失っている。そうして、11年前を思い出している。2004年4月、高遠菜穂子さんたち3人が拘束され、自衛隊が撤退しなければ「生きたまま焼き殺す」と警告された時のこと。あの時、日本中を包んだ自己責任バッシング・・・・・・しかし、「なぜイスラム国が台頭したのか」を考えていくと、イラク戦争にぶち当たる」。

 今回も一部で、再びの「自己責任バッシングのようだ。「「薄っぺらで反知性的なタカ派が増殖している」・・・・・・アベ様達からして」ネッ。
 一方、あるイラク人女性は「自衛隊を派遣した日本にも、(この事態を引き起こした)責任がある」と言っており、今回の件にも繋がっている。「憎悪が連鎖」することを怖れる。そして、アベ様が「ケンカを売り」、そこに「火に油を注ぎ」込んでしまいました。今は、燃え盛る火の中、後藤健二さんの無事を祈ることしかできません。・・・・・・しかしながら、最悪の結果となってしまったようだ。残念だ。

   ●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(2/2)
     「しかし、彼女ら (郡山さんと今井さん) の予想は全く裏切られ、
      「自己責任とばか騒ぎし、醜悪なバッシングの嵐。解放後、
      「生まれ故郷に帰るのに「覚悟」が必要」(p.141) な国って、
      いったい何?? 解放後の「新たな不安と恐怖」(p.147) は、
      拘束時以上だったのではないだろうか・・・。」

   ●イラク人女性:
      「自衛隊を派遣した日本にも、(この事態を引き起こした)責任がある」

   『●「自己責任」バッシングと映画
        『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』

   『●「赤紙」の来る時代・・・綿井健陽さんの
         「“平和”のありがたさをしみじみとかみしめたくなる映画」

   『●「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。
                    伝えようとした人が現場にいたからです」

   『●「死の商人」外交: アベ様がケンカを売った代償、
               火に油を注いだ代償はあまりに大きすぎる


==============================================================================
http://www.magazine9.jp/article/amamiya/17472/

2015年1月28日up
雨宮処凛がゆく!
第324回 
イスラム国による人質事件。の巻

 イスラム国によって、湯川遥菜さんが殺害されたと見られている。

 ただただ、言葉を失っている。

 そうして、11年前を思い出している。

 2004年4月、高遠菜穂子さんたち3人が拘束され、自衛隊が撤退しなければ「生きたまま焼き殺す」と警告された時のこと。あの時、日本中を包んだ自己責任バッシング

 幸い3人は解放されたものの、それから半年後の04年10月、香田証生さんが拘束された。彼を人質にしたのは「イスラム国」の前身であるイラクアルカイダ。彼の遺体は、アメリカ国旗に載せられた状態でバグダッドの路上で発見された。

 なぜ、高遠さんたちは助かり、香田さんは殺害されたのか。

 高遠さんたちを拘束したのは「地元のレジスタンス」的な存在と言われている。自らの家族が米軍に殺され、或いは自らが拷問を受けたような人々。そんな彼らとは、「自分はスパイじゃない」などと交渉ができたという。しかし、イスラム国前身のイラクアルカイダは、そのような交渉ができる相手ではなかったという。

 現在、この国のメディアは連日イスラム国の残虐性を非難している。

 もちろん、私も残虐だと思う。ひどいと思う。そこはまったく同感だ。

 しかし、「なぜイスラム国が台頭したのか」を考えていくと、イラク戦争にぶち当たる

 「大量破壊兵器」という存在しなかったもののために始められた戦争。それを真っ先に支持したのは日本政府だ

 昨年末、一人のイラク帰還兵のアメリカ人男性が来日した。

 彼の名前は、ロス・カプーティさん。

 「イラク戦争、集団的自衛権行使を問う」スピーキングツアーのために来日した彼の話を聞くため、私は2度、集会に行った。

 そこで突きつけられたのは、「知らないということの怖さだった。

 高校を卒業して軍隊に入った彼は、イラクに派遣されるものの、「自分の国がやっている戦争について、何も知らなかった」と語った。

 そんな彼が派遣されたのは、アメリカに対する抵抗運動がもっとも激しかったファルージャ。彼が派遣される3カ月前には4人のアメリカ人傭兵が殺害され、遺体が焼かれて橋に吊るされるという事件も起きていた。また、アブグレイブ刑務所での米軍兵士によるイラク人への拷問や虐待の写真が公開され、反米感情はこれまでにないほど高まっていた。しかし、そんなことも彼は知らされていなかったという。当時の彼は、「頭にスカーフを巻いて私たちを攻撃してくるイラク人たちはみんな悪い宗教に洗脳されていて、アメリカ人と見れば理由もなく殺そうとしてくるのだと思っていた」と語った。

 しかし、そんなファルージャでの任務を経験する中で、彼はイラクの人々がなぜ抵抗しているのかがわかっていく。なんの令状もなく、イラク人の頭に袋をかぶせて拘置所に連行してもお咎めなしの自分たちと、連行されてしまったが最後、どうなるかわからないイラク人。そんな彼は、「米軍によるイラクでの最悪の虐待」と言われる第二次ファルージャ総攻撃に参加。この攻撃の中で4000〜6000人の民間人が殺され、20万人が避難民となり、ファルージャの3分の2が瓦礫と化したという。

 帰国後、彼は壮絶な罪悪感との闘いに苦しみ、現在はイラク戦争犠牲者への「償いプロジェクト」を設立。同時に反戦運動を展開している。

 PTSDに苦しむ元兵士が多くいるアメリカと違って、この国の多くの人は、イラク戦争のことなどすっかり忘れているように見える。その影でイラクに派遣された自衛隊員からは28人の自殺者が出ているものの、そのことについてはなんの検証もされていない。

 その上、「その後のイラクの状況」には絶望的なほど、無関心だ。恥ずかしながら、私自身も昨年ロスさんの話を聞くまで、「現在のイラク」について、知らないことばかりだった。

 12年11月、「イラクの春」と言われるデモが始まったことも知らなかったし、その後のイラク政府軍によるデモ鎮圧や空爆についても、あまりにも無知だった。知っていたことはと言えば、米国主導で対イスラム国の空爆が昨年8月に始まったこと。しかし、それ以前からイラクは、イラク政府軍、シーア派民兵、そして地元の部族のグループなどが入り乱れ、そんな混乱の中にイスラム国がやってきてあちこちを制圧と、文字通り泥沼の状況だったのだという。

 知らないことは、時に罪だ。少なくとも、イラク戦争を真っ先に支持した日本に住む私たちは、決して無辜ではないと思う。

 一方、今回の人質事件では、「知らなかった」では済まされなかった事実がもうひとつ、ある。それは湯川さん、後藤さんが拘束されていることを政府は以前から把握していなかったはずはないということだ。それなのに放置した挙げ句、安倍首相はエジプトで「イスラム国」への対応として難民支援などに2億ドル拠出すると述べ、イスラエルでは「テロ対策で連携する」と発言した。

 ロスさんが来日した時のイベントで、高遠菜穂子さんが言っていた言葉を思い出した。彼女は「安倍さんが今後何を言うかに、ものすごく戦々恐々としている」と語っていた。なぜなら、イギリスの首相が「アメリカの軍事行動を支持する」と言えばイギリス人の人質がイスラム国に殺される、という現実が既に昨年起きていたからだ。安倍首相はそんな現実について、どう思っていたのだろう。「知らないでは済まされない

 戦争は、憎しみの連鎖を生む

 フランスの「シャルリエブド」社が襲撃された事件にも、イラク戦争が暗い影を落としている。容疑者の一人が活動に参加した動機は、「イラクのアブグレイブ刑務所での捕虜虐待の写真を見て義憤に駆られた」ことだという。

 私はシリアに行ったことはないけれど、イラクには2度行ったことがある。

 1999年と2003年、まだイラク戦争前のことだ。

 その時のイラクは、こっちが戸惑うほどの親日っぷりの人ばかりで、やたらと「ヒロシマ!」「ナガサキ!」と声をかけられた。

 そんな空気は、今はもうないのだろうか。

 とにかく、後藤さんが、無事帰国しますように。

 今はただ、それを祈ることしかできない
==============================================================================

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。伝えようとした人が現場にいたからです」

2015年01月25日 00時00分20秒 | Weblog


asahi.comの記事【「解放諦めないで」 紛争地知るジャーナリストの祈り】(http://www.asahi.com/articles/ASH1R5T51H1RUTIL04Z.html?iref=comtop_pickup_02)、
東京新聞の社説【日本人人質 救出へ向けて粘り強く】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015012402000168.html)。

 まずは、無事に解放されることを祈念しています。

 「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。伝えようとした人が現場にいたからです」・・・・・・「人質の後藤健二さんは紛争地で女性や子どもたちの取材を続け、その体験を学校の特別授業などで語っていた。日本にイスラムへの理解を深めてもらおうとしていた後藤さんの思いも、中東諸国の人たちに広く伝えたい」・・・・・・。
 またしてもアホな「自己責任」「自業自得」論をまき散らしている方がいるようです。

   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
     「「まさに高遠さんは危険を承知しながらイラクに行かないでは
      いられない立場にあった人でしょ。彼女を救出するために、
      イラクの人たちまでがビラ配りをやり、「彼女の身代わりになる」
      と少年が言うくらいに信頼関係があったわけです。
      ・・・「危険があるからこそ」、いてもたってもいられずに出かけて
      行かないではいられない人がいることくらいどうしてわからんかな」
     「「自業自得」なんて言っている人々が屁をこきながらテレビで観ている
      ニュース映像はいったい誰が撮り、雑誌の記事は誰が書いている
      と思っているわけ?」

   『●「自己責任」バッシングと
       映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』


==============================================================================
http://www.asahi.com/articles/ASH1R5T51H1RUTIL04Z.html?iref=comtop_pickup_02

「解放諦めないで」 紛争地知るジャーナリストの祈り
清水大輔、高橋友佳理 2015年1月24日05時32分

     (「イスラム国」が首都だ、としているシリア北部のラッカ。
      手前の男性は戦闘員で腹に自爆ベルトを巻き付けていた
      =2014年3月、横田徹さん撮影

 「72時間」が過ぎた。だが、「イスラム国」の人質となっている後藤健二さん(47)と湯川遥菜(はるな)さん(42)の消息はつかめない。2人の知り合いや家族は、無事を願い続けた。後藤さんと同じく、紛争地の声を伝えようと飛び込むジャーナリストの仲間たちも帰還を祈る。

 ひざまずかされ、ナイフをちらつかされる後藤さんの映像に、ジャーナリストの佐藤和孝さん(58)は胸が潰れる思いがした。

 2012年、シリアで内戦を取材中に銃撃戦に巻き込まれて亡くなったジャーナリストの山本美香さん(当時45)のパートナー。後藤さんと面識はないが、撮影した映像を見たことがある。紛争の最前線から一歩引いたところで、市民、特に子どもたちが置かれた状況を淡々と取材する姿勢が伝わってきた。「強い意志を持って、何かを伝えようという気概に敬服する」

 山本さんが亡くなった後、自らの仕事を見つめ直そうと、同じように紛争地帯で仲間を失ったり、けがを負ったりした欧米のジャーナリストたちに会いに行った。「同じ時間に生きているのに、伝える言葉や手段を持たない抑圧された人たちがいる」「独裁国家で不条理に苦しむ人たちは『目撃者を求めているんだ」。みんな、自分や美香と同じことを考えているんだな、と感じた。

 独立系通信社ジャパンプレスの代表を務め、山本さんを失った後もアフガニスタンなどの取材を続けている。「なんであんな危険な場所に行くのか」と問われる。今回の事件でもインターネット上などでは自己責任論が飛び交う。「ではなぜ読者や視聴者はシリアが危険だと知っているのか。伝えようとした人が現場にいたからです

 どんな強大な力を持った存在であっても、きっと誰かが立ち向かっていくだろう――。山本さんが著書に記した言葉だ。「後藤さんも志は同じはず」。無事を祈っている。

 報道カメラマンの横田徹さん(43)は13年9月、シリア北部で取材中、「イスラム国」の前身組織に出頭を命じられた。「帰れないかもしれない」。しかし、逃げて捕まるよりは、と別の日本人ジャーナリスト、ガイドと出向いた。

 8畳ほどの部屋。全身黒ずくめの男8人が入ってきた。腰には銃やナイフ。熟練した戦闘員の雰囲気を感じた。黙っていてはいけないと直感し、満面の笑みで質問を投げかけた。「お名前は」「あなた方の目的は」。会話の後、男たちはガイドとしばらくアラビア語で話していた。「すぐにシリアから出て行け」。そう命じられ、その日のうちに飛び出した。

 後にガイドから「あの時、男に『2千ドルで日本人2人を売らないか』と持ちかけられた」と聞かされた。背筋が凍った。「ただ運が良かっただけだ」

 危険な思いをしても戦地に行くのはなぜか。原点はアフガニスタンでの体験だという。「血も涙もない集団」と報じられていた反政府勢力タリバーンだったが、支配下の街は平穏だった。「イスラム国」でも、宗教指導者は温厚な人柄で「空腹ではないか」などと気遣ってくれた。「ネットで得た情報ではなく、自分で話をして、身を置かないとわからない」という。

 後藤さんの人柄を現地ガイドから聞き、コミュニケーション能力が高い人だと感じた。「状況は良くないと思うが、最後は人間同士の信頼関係が物事を決める。絶対に諦めないで欲しい」(清水大輔、高橋友佳理)


■決着に時間要した例も

 海外でこれまでに日本人が拘束された事件の展開はさまざまだ。無事の解放につながった事件では、身代金が支払われたとされる例もある。決着までに長い月日がかかることもある。

 イラクでは2004年4月にボランティア活動家の高遠菜穂子さんら3人と、取材中だったフリージャーナリストの安田純平さんら2人が相次いで誘拐された事件が起きている。高遠さんらを誘拐した犯人グループは自衛隊のイラクからの撤退を要求した。政府は応じなかったが、5人とも4月中に解放された。

 だが、同年10月にはイラクを旅行中の香田証生さんが拉致され、犯人グループの「イラク・アルカイダ機構」は自衛隊撤退を要求。香田さんは同月末にバグダッド市内で、遺体で発見された。後藤さんらを拘束している「イスラム国」は、このグループの流れをくむとされる。
==============================================================================

==============================================================================
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015012402000168.html

【社説】
日本人人質 救出へ向けて粘り強く
2015年1月24日

 過激派「イスラム国」とみられるグループが日本人人質二人の殺害を警告した事件で、身代金の支払期限とされた七十二時間が過ぎた。粘り強い交渉を続け、救出に全力を挙げたい。

 政府は関係各国に協力を求める一方、ヨルダンのアンマンに現地対策本部を設け、周辺国に働き掛けている。

 グループは二十日に公開した声明で、日本が「イスラム国」対策で供与を表明したのと同額の二億ドル(約二百三十五億円)の身代金を、七十二時間以内に支払うよう要求。日本の供与内訳は「女性や子どもを殺害し、イスラム教徒の家を破壊するのに一億ドル」「イスラム戦士と戦う背教者を養成するのに一億ドル」などとして批判した。

 この主張はまったく理不尽だ。日本の供与はイラクやシリアの難民支援やインフラ整備などの人道目的だ。日本は米国主導の空爆にも参加していない。戦後、戦闘には参加せず、国際貢献は非軍事分野に限ってきた。平和国家としての姿勢をイスラム世界に丁寧に説明し続け、人質解放に向けた環境づくりを進めたい。

 人質の後藤健二さんは紛争地で女性や子どもたちの取材を続け、その体験を学校の特別授業などで語っていた。日本にイスラムへの理解を深めてもらおうとしていた後藤さんの思いも、中東諸国の人たちに広く伝えたい。

 危険な場所に取材に入るジャーナリストには覚悟が求められる。後藤さんは「イスラム国」支配地域に入る直前に撮影したビデオ映像で「非常に危険だが、何があっても責任は私にある。必ず生きて戻る」と語っていた。

 イラクでは二〇〇四年、計六人の日本人が人質となったが、五人がイスラム聖職者協会の仲介で解放された。この時の経験も生かし仲介を探る努力を続けたい。

 「イスラム国」とみられるグループによる人質事件では米英人らが殺害される一方で、フランス、スペイン、スウェーデンなどの人質は解放されている。トルコは総領事ら四十九人の人質解放に成功した。身代金は支払わず、米国に非協力的であることが解放条件だったとの見方もある。これらのケースも参考にしたい。

 パリの連続テロに続く邦人人質事件。テロの広がりに、日本も“対岸の火事”ではいられなくなった。背景に疎外感から過激主義に走る若者の増加も指摘される。その病根を断つことも考えたい。
==============================================================================

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●作家としての能力と政治センス、そして人間性

2012年12月06日 00時00分47秒 | Weblog


東京新聞の二つのコラム(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2012112902000093.htmlhttp://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2012112802000129.html)。

 さて、どんな結果が待っているのか? 5回目の失望か、新たな希望か?
 「来る総選挙で「時計の針」を戻すか、否か。いっそのことリセットすべきか。脱原発、改憲、消費税増税、金融政策…。どの候補者が信用でき、どの政党なら国民の安全を脅かさないか。民意は移ろいやすいが、賢明な判断を下すと信じたい」・・・私もそう信じたい。

   『●田中優子さん「誰の名前を書くのか、その人の品格が問われている」

================================================================================
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2012112902000093.html

【コラム】
筆洗
2012年11月29日

 映画館で近く上映される作品の予告編を長々と見せられるのは苦痛だ。騒々しい映像が続くと、本編が始まる前に疲れてしまう。ただ、中にはこれは見逃せないと思わせる作品もある▼山梨県の青木ケ原樹海を舞台に、男女の愛を描いた「青木ケ原」もそうだった。ミステリアスな展開を示唆する予告編の映像に引き込まれそうになったが、一瞬だけ映った人物が気になった▼東京都知事の座を投げ出し、日本維新の会の代表に納まった石原慎太郎さんではないか。原作は石原さんの小説。製作の総指揮を執り、脚本も書いた。都知事役として出演もしている▼知事室の執務も、最後には週一日か二日、それもわずかな時間しか登庁しなかった人だ。その分、映画製作に時間を割いていたのだから、さぞかし見応えのある映画に仕上がっているだろう。公開が待ち遠しい▼その石原さんの辞任に伴う都知事選はきょう、告示される。衆院選より一足先に本格的な舌戦がスタートする。きのうは猪瀬直樹副知事、宇都宮健児日弁連会長、笹川尭元衆院議員、松沢成文前神奈川県知事の四氏が、日本記者クラブ主催の共同記者会見で主張をぶつけた▼衆院選をめぐる合従連衡の報道に埋もれがちだが、「首都の顔」を選ぶ極めて大事な選挙だ。電力の最大消費地に暮らす有権者の責任として各候補のエネルギー政策を吟味したい。
================================================================================

================================================================================
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2012112802000129.html

【私説・論説室から】
もう一つの3・11
2012年11月28日

 総選挙が近い。世論調査は政権交代の可能性を示すが、ふたを開けるまで何が起こるか分からない。そんな劇的な体験を思い出す。
 二〇〇四年三月十一日。スペインの首都マドリード。朝の通勤電車で列車爆破テロが起き、約二百人が犠牲になった。駐在先のパリから急ぎ現地に入った。なぜか当時のアスナール首相はテロ発生直後から、「バスク祖国と自由(ETA)」という分離独立を唱える国内武装組織による犯行との情報を流していた。
 スペインはテロの三日後に総選挙を控えていた。直前までのいずれの世論調査も、国内経済の好調を反映して与党の勝利を示していた。しかし、投票日のまさに前日、事態は一変する。国際テロ組織アルカイダ系の犯行声明が明るみに出たためだ。
 首相は前年のイラク戦争開戦で米英を支持し、派兵。その米国追従政策が報復テロを誘発した。首相はそれが明らかになれば窮地に陥るため、ETA犯行説をでっち上げたのだった。民意は雪崩を打って野党に流れ、“一夜”にして大どんでん返しが起きた。
 民意を侮ってはいけないということだ。来る総選挙で「時計の針を戻すか、否か。いっそのことリセットすべきか。脱原発改憲消費税増税、金融政策…。どの候補者が信用でき、どの政党なら国民の安全を脅かさないか。民意は移ろいやすいが、賢明な判断を下すと信じたい。 (久原穏)
================================================================================

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●ビンラディン暗殺・私刑に喝さいを叫ぶ国民

2011年07月13日 00時41分33秒 | Weblog


綿井健陽さんのWP『逆視逆考PRESS』(http://watai.blog.so-net.ne.jp/)の5月4日の記事(http://watai.blog.so-net.ne.jp/2011-05-04)。

 もう忘れ去られたニュース。批判的な視点など、日本では皆無。
 アメリカの叫ぶ正義は唾棄すべきもの。マイケル・ムーア監督は「処刑だ」と批判し、死を祝福する風潮を強く批判したという。

==========================================
http://watai.blog.so-net.ne.jp/2011-05-04

それは正義なのか? OKなのか?

あのビン・ラディンが米国大統領の命令によって、米軍の軍事作戦で殺害されたという。オバマ大統領は演説で、「ビンラディン容疑者が『数千人の無実の男女や子どもを殺害した責任を負う』」「正義はなされた」と述べたようだ。

http://www.asahi.com/international/update/0502/TKY201105020162.html?ref=reca 

喜んでいるアメリカ人に対して聞いてみたいが、この
正義が「OK」「素晴らしい」「よくやった」とすれば、では次のような正義が起きた場合はどう解釈すればいいのだろうか? 子供たちから質問されたときはどう返答すればいいだろうか?

あるアフガニスタン人が、もしくはあるイラク人が、ブッシュ元大統領自宅を急襲して殺害した場合
あるパレスチナ人が、イスラエル首相の自宅を急襲して殺害した場合

どちらの大統領も首相も、イラクやアフガンやパレスチナで、「数千人(実際にはそれ以上)の無実の男女や子どもを殺害」してきた首謀者であるから、彼らを殺害することも正義であり、これも「OK」「素晴らしい」「よくやった」とみなされるのか。

アメリカで暮らす人たちが多数殺害された場合は、国際法も何もかも無視して、米国大統領の命令でいつでもどこでも、その首謀者を殺害できるのか。そんな権限は米国だけにあって、ほかの国には無いのか。ほかの国やどこかの組織が同じようなことを行うと「テロ」となって、米国がそれをすると「軍事作戦」となるのか。

ビンラディンが殺害されたことで、「報復テロを警戒」と報じられていたが、これまですでに米国は9・11同時多発テロ事件の後に、アフガンを「報復攻撃」したではないか。大量破壊兵器の因縁を作り上げてまでイラクに侵攻したではないか。

米国だけは誰でもどこの国にでも「報復」できる権利があって、「ミサイルを撃ち込む」こともOKなのか。オバマが大統領に就任したときの演説に感動・拍手・喝采した人たちは、ビンラディンへの軍事作戦にも感動・拍手・喝采しているのだろうか

ビンラディンを殺害すればもうテロは起きないとでもいうのか。9・11同時多発テロ事件の真相も、アルカイダの内実も、これまで世界で起きてきたテロの背景も、この処刑によって知る機会を失った。そしてさらに、またどこかで、その呼び方は「テロ」か「報復」か「軍事作戦」か「聖戦」かは変わっても、正義の名の下でまた人が殺されて連鎖していくのだろう。ビン・ラディンは死んだのかもしれないが、アメリカの思想や行動が絶対正義である限り、ビン・ラディン的な思想や行動を取る人は今後も世界に現れるだろう。

そんな絶対正義には、今こそ「NO!」と言わなければならない。

…………………………………………………
綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [
綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち
公式HP http://www.tongpoo-films.jp/littlebirds/
DVD発売中

月刊「創」『逆視逆考』
http://www.tsukuru.co.jp/
…………………………………………………

==========================================


関連して、「ベイエリア在住 町山智浩アメリカ日記」(http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20110701)から、FOXテレビが果たした役割についての記事(http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20110701)。

==========================================
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20110701

2011-07-01  FOXニュースはいかにアメリカ国民をイラク戦争へと誘導したか

毎週金曜日夜11時半からトーキョーMXテレビで再放送中の『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』、本日と来週の二回に分けて「アウトフォックスト」を放送します。

これはアメリカで一番人気のニュース専門ケーブルTV局「FOXニュース・チャンネル」が間違った報道によって911テロの犯人はイラクであると国民に信じ込ませ、ブッシュのイラク攻撃への世論を形成していったかを検証したドキュメンタリーです。

圧巻は、911テロの犠牲者の息子がFOXニュースに生出演して「911テロとイラクは無関係だ。僕の父の死を利用して戦争をデッチあげないでほしい」と発言したところ、FOX最高の人気司会者ビル・オレイリーが「黙れ!黙れ!」と怒鳴りつけて彼をスタジオから追い出す場面です。
==========================================

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●『松嶋×町山 未公開映画を見る本』読了

2011年02月12日 00時06分22秒 | Weblog

『松嶋×町山 未公開映画を見る本』読了、1月に読了。松嶋尚美・町山智浩著。集英社、2010年11月第1刷発行。

 きらきらアフロ並みの松嶋氏の合いの手が笑える。
 『ビン・ラディンを探せ! ~スパーロックがテロ最前線に突撃!~』(Where in the World is Osama Bin Laden?)、「松嶋 ・・・『スーパーサイズ・ミー』で30日間・・・。/町山 そう! 観ました?/松嶋 観てないよ(きっぱり)。/町山 観てないかー(笑)。・・・。・・・ビン・ラディンは俺が見つけてやる!って言ってるんです。/松嶋 見つかるわけないやん! ・・・。見る前にわかるやん」(p.31)。
 いまニュースの中心、エジプトのムバラク大統領。「町山 ・・・宗教じゃなくて、貧乏のせいです。・・・そういう不条理な状況を許しているのはいったい何かというと、独裁政権・・・。そんな独裁政権を守っているのはアメリカなんですね。/・・・。/松嶋 30年間も同じ大統領?/町山 ・・・。そんなヤツにアメリカは大量に武器を与えたり、支援し続けてる。だからエジプト国民は、「アメリカがヤツをのさばらせてるんだ」って怒ってる。だから、みんなアメリカが大嫌いになっちゃう。/松嶋 よー嫌われてるよね、アメリカ」(p.32)。爆笑!!

 新自由主義経済への鋭い批判(p.7、65、107、111、116、165、173、222)。それを通しての(内部からの)アメリカ批判。「・・・ブッシュは、80年代のレーガン政権から続いた新自由主義経済と宗教保守の連合の暗黒面を一気に加速させました」(p.7)。

 キリスト教原理主義の行きつく先。『ジーザス・キャンプ ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~』(jesus camp)。「・・・説教に笑い、陶酔し、涙する子供たち。彼らは、「神の名の下に国を統一した大統領」であるブッシュを祝福し、・・・。・・・そんな子供たちのひとりだ。親の方針で学校には通わず、自宅学習する彼は、『物理学から見た天地創造』を学び、進化論を否定する」(p.11)。
 イワシの頭。「町山 ブッシュ大統領って、イラク戦争という、する必要の無い戦争をでっちあげて・・・。/・・・。/松嶋 すごいって言えば、すごいブッシュ(がキャンプに)出てきたね。/町山 等身大の書割ブッシュ(笑)。/松嶋 ペッラペラのブッシュやで。/町山 ペラペラブッシュを本気で拝んでんの、みんなで」(p.17)。
 相対的には低下。「福音派はブッシュの失政とともに政治から手を引いたかに見えたが、オバマ政権の支持率低下とともに再び勢力を取り戻しつつある。/・・・サラ・ペイリンはペンテコステ派で、進化論と人工中絶を拒否し、福音派から圧倒的な支持を集めている。聖書根本主義的な発言も多く、・・・。/とはいえ、福音派の人口比率は減りつつある。主な原因はアジア系やヒスパニック人口の増加だ。福音派の過激な政治参加は、支配者の座を追われるWASP・・・の最後の叫びなのかもしれない」(p.20)。

 意外。『ザカリーに捧ぐ』(Dear Zachary)。「町山 意外ですが、無理心中って、けっこうカナダやアメリカでは多いんです。なんかイメージ的には、日本の方が多い感じがするじゃないですか。/町山 私が死んでこの子が苦労するくらいやったら・・・とか。/町山 そう、そう。それって日本的な考え方だと思うじゃないですか。でも実はアメリカに多いんです、無理心中事件って」(p.27)。

 マッチ・ポンプが火に油? 負の連鎖の代償、因果応報。テロの本質とは。「町山 ・・・中東は貧富の差が信じられないくらい激しいんですよ。・・・一般の国民はめちゃくちゃ貧しい。・・・そんなひどい政府をアメリカは、石油のために支援している。・・・。だって自爆テロするとお金がもらえるんですよ。/・・・。/町山 アルカイダとかのテロリストグループから。・・・じゃあ、そのお金はどこから出ているのかというと、石油の利益が裏の裏で回ってくるんです。つまり、人々を搾取して儲けた金がテロの資金に回って自爆テロの代金になる。でも、もとをただすと、そんな石油資本を支えてるのはアメリカなんです。/松嶋 ひどいなー。/・・・。/町山 ・・・タリバンもアメリカが育てたんです。アフガンにソ連が攻め込んだときに、ソ連を撃退するためにムジャヒディーン(イスラム教徒のゲリラ)にアメリカが武器などを援助した」(pp.37-38)。

 「松嶋 へー。イコールだと思ってた」(p.45)。カソリックとプロテスタントの違い。『フロム・イーブル ~バチカンを震撼させた悪魔の神父~』(Deliver Us from Evil)。「町山 ・・・その法王までもが性的虐待をする神父たちの存在を実は隠していた」(p.44)。「・・・ローマカソリックの根幹にかかわることにまで疑問が投げかけられている。/・・・。/・・・40歳を過ぎても結婚しない一人娘が、30年以上前にオグレディ神父に犯された事実を知って泣き崩れる。/「私はもう神を信じない!」/そう、彼らはもう、神にすがることすらできないのだ」(p.51)。

 基本的人権としての「水」・「水へのアクセス」。『フロウ ~水が大企業に独占される!~』(Flow: For Love of Water)。「世界銀行は大規模なダム建設に年間200億ドルを投資。ボトル水の大手メーカー、ネスレ社は、全米中に取水工場を拡大している。だが、これらの事業によって潤うのは企業のみで、本当に水を必要とする貧困層は、しわ寄せを受けているのが現状だ。・・・そもそも水は自然の恵みであり、公のものではないか?」(p.63)。
 「水不足につけ込んで商売する」「水男爵」(p.64)。ウォーターバロン。「水道事業はどんどん民営化され」「特に貧しい国でそれをやっている」(p.64)。
 ブルー・ゴールド。世銀の構造改革要求と云うお決まりのパターン。「町山 絶対に営利団体の商売の道具にさせちゃいけないの。/松嶋 じゃあ、なんでボリビアは水道をアメリカの会社に任せたの?/町山 ボリビアは貧乏だから、世界銀行からお金を借りてるの。・・・ところが、世界銀行はボリビアに、水道を民間企業に任せなければ金を貸さないぞと言ったんです。/松嶋 何それ?/町山 世界銀行は、水道に関しては、世界水会議の方針に従ってる。・・・その水会議の役員は、さっき言った水男爵たちに占められてるんです。/松嶋 グルやー。/町山 グルですよ。世界銀行で日本やアメリカから集めた大金は、貧しい国が水道をつくるために貸し出されるけど、その水道をやってるのは先進国の水男爵。お金は彼らのところに入るだけ」(pp.66-67)。
 サッチャー元首相による新自由主義経済の下、ロンドンの水道がテムズウォーター(ドイツRWEに吸収)によって民営化。ところが、漏水防止のために水圧を低下。「下水処理場も、潰して土地を売っちゃった。金儲けのためにね」(p.68)。この辺の話は以前紹介した町山さんのブログに貼りつけてあるBSドキュメンタリーに詳しい。「町山 国民の最低限健康な生活を保障することが国家の義務なんだから、採算を度外視して水だけは守ってくれないと。「水は民営ですよ」というなら、国家の役割を果たしていない。ましてや外国企業に任せちゃ絶対にダメ。アメリカでもジョージア州が1990年代に水道をフランスの水男爵スエズに民営化したら、やっぱりすぐに水圧を下げましたもんね。浄水に汚水が混じったり」(p.68)。アメリカのボトル水の25%は水道水をろ過しただけで、しかも、水道水の100倍の値段で売ってる(p.69)。
 「町山 本当は小さな貯水池をいっぱいつくればいいんです。・・・。/・・・。/町山 でもそれでは儲からないんだ。大きなダムをつくれば、世界銀行とかがお金を出して・・・。だからダム、ダム、ダム!っていう方向に行く。・・・とにかく水は空気と同じで、人間が独占したり、水源を押さえたり、金儲けに使ってはいけないんですよ」(p.70)。
 「ボリビアでは国民が2000年に蜂起し、死者9名を出す大暴動の果てにベクテル社を追い出した。水道はまた国家管理に戻ったが、ベクテル社はボリビア政府に対して多額の賠償金を求めている。・・・。/・・・日本は・・・、水道が公営事業として続いている国だったが、2001年には世界の規制緩和への動きを反映して水道法が改正され、民営化が可能になった」(p.72)。

 唯一神教の偏狭さ。『レリジュラス ~世界宗教おちょくりツアー~』(Religulous)。「町山 ・・・そういう土着の神様達を、ユダヤやキリストやイスラム教は「みんな迷信」と言ったり、「悪魔だ」と言って蹴散らしてきた。だから唯一神教は強くなって、世界的に信者を増やしていた。そのいっぽうで、ほかの宗教への不寛容がひどい。自分の宗教以外は間違ってて、自分たち以外は救われない、と考えるから。/・・・。/松嶋 ああ、ビル・マーがすごい博物館を訪問してたね。/町山 ダーウィンの進化論を否定する創造説博物館ね」(pp.110-111)。
 「アメリカ南部の各州ではずっと学校で進化論を教えることが違法とされていた」(p.116)。

 マルコムX(p.131)。

 お笑いテロリスト。『イエスメン ~大資本と戦うお笑いテロリスト~』(The Yes Men)。以前、町山さんのブログを紹介。「町山 イエスメンっていう名前はね、彼らが敵とする大企業や政治家に対して、NO!と抗議するんじゃなくて、YES!って賛成して、その企業や政府の人になりすまして嫌がらせするの」(p.157)。
 市場原理主義・新自由主義経済信奉者への嫌がらせ! 『イエスメン2 ~今度は戦争だ!~』(The Yes Men: Fix The World)。(ミルトン・)フリードマン教の信者たち。

 サンタクロースは「コカ・コーラカラー」(p.203)。『イエスのショッピング ~買い物やめろ教会の伝道~』(What Would Jesus Buy?)。「神の名のもとに商売しているクリスマス商戦は、キリストが一番怒りそうなことなんですよ」(p.203)。

 イラク戦争推進プロパガンダ。『アウトフォックス ~イラク戦争を導いたプロパガンダTV~』(Outfoxed)。「・・・FOXニュースの顔みたいなニュース番組の司会者で、イラク戦争がはじまったとき、カメラを睨んで「反対する人は非国民ですって脅してた」(p.220)。

 どこ彼処にも。『クローゼット ~ゲイ叩き政治家のゲイを暴け!~』(Outrage)。「町山 ・・・アメリカの場合、同性愛に政治が介入しようとするから。例えばブッシュ。/松嶋 またかー!」(p.264)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●『首都圏生きもの記』読了(2/2)

2010年04月25日 04時46分20秒 | Weblog

森達也著、『首都圏生きもの記』】

 『アヒルはカモ、ガチョウはガン』。「結局のところフセイン政権とアルカイダには関係などまったくなかったし・・・大量破壊兵器も見つからなかった。・・・ブッシュ・・・、この国は国際社会に先駆けて従属した。支援した。・・・。/つまり今のイラクの混迷の責任の一端はこの国にもある。当然ながら米軍の空爆で(あるいはその後のテロで)死んでいった多くのイラク市民に対して、この国は絶対に無関係ではない」(pp.132-133)。

 『史上最悪の苦手な生きもの』。「つまりムカデ・・・。スズメバチなど・・・同様にアナフィラキシー・ショックで重篤な状態になる場合がある」(p.141)。
 『セキュリティー意識の高揚とアシナガバチ』。「・・・アナフィラキシー・ショック・・・。・・・アシナガバチも同様だ」(p.177)。「安倍晋三元首相が「美しい時代」と形容した「三丁目の夕日」の時代の少し前である一九五四年、この国の治安は最悪だった。殺人事件の認知件数は・・・二〇〇九年は・・・。戦後最小だ。ここ十数年は毎年のように戦後最小を更新している。・・・彼らの天下り先を保障しなければならない。治安セキュリティーの業界が冷え込んだら困るのだ。/こうして危機管理意識が上昇するばかりの東京。いいよ。どんどんあがれ。僕は東京には住まないから」(p.173)。

 『首都圏生きもの記韓国篇』。「「ハトを現場に持って行ったらしいよ」/つい先日、旧知の新聞記者はそう言った。/「ハト?」/「そう、伝書バト」/・・・/「戦後だよ。だってメールどころかFAXもないのだから・・・」・・・/中には周囲の動きに同調してしまうハトもいるらしい。つまり「空気を読みすぎる」ハト。だから時おり読売のハトが朝日のハトの動きにつられたり、あるいは毎日のハトが共同通信のハトを誘導してしまったりすることも、少なからずあるようだ。そうなると抜かれる。大事な記事を落とす。だから優秀なハトを育成することは、当時の新聞社にとって死活問題だったという」(pp.148-149)。

 
『ヒキガエルの国へのご招待』。「ヒキガエルを好んで捕食するヤマカガシは、・・・ヒキガエルの毒を体内に貯めて、頸部から分泌される毒として再利用・・・」(p.159)。UMA(p.166)。

 『外国産バイキングに舌鼓のサギ』。「確かに国産のメダカやタニシ、ザリガニなどは、絶滅危惧種かそれに近い状態だ。外来がいないことにはサギたちの生活は成り立たない。何となく食料自給率が極度に低いこの国の人間社会と重複する。かつて・・・彼らのえさは国産のカエルやドジョウやザリガニだったはずだ。でももう国産はほとんどいない」(pp.216-217)。サギが希少種あるいは絶滅危惧種だったらというおとぎ話(p.219)。マスコミや国家のバカ騒ぎ・から騒ぎ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●9・11陰謀論と藤田議員

2010年03月12日 04時59分37秒 | Weblog

分解『911ボーイングを捜せ』」のペ-ジ(http://www.nbbk.sakura.ne.jp/911/index2.html)で知りました。以下の記事は、asahi.comから。9・11陰謀論を吹聴する藤田議員は「酷評」されて当然でしょう。国内でも酷評されてることに、いい加減に気づくべき。氏を持ち上げているきくちゆみ氏らも本当に罪深いな。そんな与太話を「一議員としての考えを話」されては困るし、「社説は私の肩書を含めて間違った記述も」あったからといって何なのでしょう、9・11陰謀論は完全に間違っていることに気づけない時点でアウトです。「信じることが目的」となってしまった悲しい議員。

=======================================
【http://www.asahi.com/politics/
     update/0309/TKY201003090110.html】
Wポスト紙、民主・藤田議員を酷評 同時多発テロ発言で (2010391255分)

 【ワシントン=伊藤宏】米紙ワシントン・ポストは8日付の社説で、民主党の藤田幸久国際局長(参院議員)が同紙に対し、2001年9月11日の米同時多発テロの犯人像に疑問を挟む発言などをしたとして「突拍子もなく、いい加減で、偽りがあり、まじめな議論に値しない」と酷評した。鳩山由紀夫首相が容認すれば、日米関係に影響するとも警告した。
 同紙は、藤田氏が最近の同紙による取材に対し、▽テロリストの犯行かどうかに疑問を挟んだ▽世界貿易センタービルの倒壊が(飛行機の衝突による)火災ではなく、起爆装置で起きた可能性があると示唆した、と紹介。そのうえで、こうした「幻想」は鳩山政権の「反米傾向」を反映していると指摘した。
 さらに「藤田氏のような無謀で事実に反した考え方を鳩山氏が容認するなら、日米関係が厳しく問われることになるだろう」と断じた。
 藤田氏は、野党時代の08年4月の参院外交防衛委員会で、国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者の関与に疑問を挟む内容の質問をした。今年1月発売の週刊朝日でも、米国は犯人を特定しておらず、ビル倒壊の原因も再調査すべきだとの持論を展開。こうした発言はこれまでも米国の対日専門家らに批判されており、日米間の新たな問題に発展する可能性もある。

 藤田氏は9日、朝日新聞の取材に「インタビュー後の懇談で、一議員としての考えを話したもので、社説は私の肩書を含めて間違った記述もある」と、党や鳩山政権の考えではないことを強調した。
=======================================
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●『創 2008年4月号』読了(3/4)

2008年04月20日 11時45分02秒 | Weblog

佐藤優・森達也・鈴木邦夫さん対談『死刑制度を強化する国家の内実』。たまたまテレビで、アムネスティインターナショナルによると、2007年の死刑執行者数が世界で1242人・・・、中国470人、イラン317人、サウジアラビア143人、パキスタン135人、アメリカ42人、・・・リビアとならんで日本は9人で10番目とのこと。アルカイダの友人の友人らしい、現在のアホ大臣になって、特に酷い。これも偶々。先程見た映画も死刑絡み、「The Life of David GALE」(2003年)。Kevin Spacey、Kate Winslet、ローラ=リニー。最初、"報酬"の意味が分らなかったけど・・・。

長岡義幸さん『マンガ「弁護士のくず」をめぐる著作権論争』。注目の書き手、井浦秀夫さん。第1話から注目して読み続けてきたので、ちょっとショック。どちらの言い分もわかって、判断できず。井浦さんも、痛いミスかな・・・。単行本ならまだしも、マンガに参考文献を付けるのはどうなのかな。著作権のこともあるので、マンガとは言え必要な場合もあるだろうし。単行本第7巻以降は出版されるのか?
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする