5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

不自由な箍

2019-09-30 21:45:51 |  文化・芸術

あいちトリエンナーレの話題が続いている。

慰安婦を象徴するという少女像が展示されたというのが発端で、芸術家たちが脅されるなど騒ぎに火が付き、安全性を危惧するという主催者側の自粛で中止となったトリエンナーレの企画展のひとつ「表現の不自由展」。

お役所側が指導という名目で圧力をかけてそれを拒否するのは、文化芸術の自由な表現を阻害するものだという多方面からの展示再会の希望も寄せられ、話し合いを続けて再開の方向で意見がまとまりつつあった矢先、今度は、文化庁(新しい文科大臣)からチャチャが入って「手続き上の不当行為」を理由にトリエンナーレへの国の補助金交付を中止したと突然の発表。

主催者側トップの愛知県知事は裁判で決着をと意気込み、今日は国に逆らう姿勢を見せたように「表現の不自由テーマのコーナー」を条件付きで来月6日から再開したいと一般に発表した。知事とは仲の悪い名古屋市長は俺は聞いとらんぞと怒る。国と県と市がそれぞれに違った政治的判断でものごとを進めているように一庶民には見えるが、今後どうなっていくのだろう。

芸術表現を護るのが文化庁の役目のはずだが、それが逆に補助金を盾にして箍をはめて萎縮させるというのは、大いに政治的な牽制の動きだというしかなかろう。これが政府側の前例となってしまうというのは、文化・芸術全般からして困ったことだと思う。そう考えたのは、今日のNHK津局のニュース「アイヌ新交付金 松阪にも」を読んだからだ。

日本の少数民族「アイヌ」を法律で初めて「先住民族」と明記したアイヌ施策推進法が5月に施行され、アイヌ文化を生かした地域振興策を計画する自治体への交付金制度が創設されて、今日はその第1回目の交付(6億6千万円)を決定したというニュースだ。対象は北海道の12市町に加えて松阪市にも交付される。

札幌市、登別市によるアイヌ文化の発信のために行う観光・産業振興事業には4億7千万円が、新ひだか町の古式舞踊映像をデジタル保存する事業には約2千万円が割り当てられた。他の自治体にもそれぞれ2千万円弱が与えられる計算になる。

幕末の探検家で「北海道」の名付け親、松浦武四郎を出した松阪市だけが道外の自治体だが、武四郎の功績を称えた「武四郎まつり」でアイヌ舞踊を披露する費用として300万円が交付されるのだという。

第1回目の交付だからか結構な大盤振る舞いのように見える。これが第2回、第3回と続いていけばまことに結構だろうが、先はどうなるのだろう。

少数民族の宿命として滅びがある。特に彼らのつかうアイヌ語は、急速に話し手を失いつつある。しかも国の教育行政によって日本語が最優先、次に来るのは英語だとなるのだから、完全に絶滅危惧種だといえるだろう。

せっかくのアイヌ補助金が、彼らの「不自由な」箍になるようなことのないようにと願っている。



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