ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「古木巡礼」(倉本聰著;文藝春秋社)~痛快な古木たちのモノローグ~

2022-04-08 16:28:27 | 読む


本書は、あの「北の国から」の脚本を書いたことで有名な倉本聰氏が著した書である。
初版が、2021年4月15日となっているから、結構新しい本である。
新しいがゆえに、なかには、新型コロナウイルス感染症についてのことも出てきたりする。

書名は、「古木巡礼」となっているので、最初は全国の古木を訪ねて回ったような内容かと思っていたが、そうではなかった。
「全国の古木」を題材にしているのは間違いない。
だが、内容は、話者を各地の古木としてそのモノローグとして綴られている。
そのモノローグは、何編かの詩の形にして表現されている。

さらに、点描で描かれた大きな古木のイラストがその合間にいくつも出てくる。
それらの絵は、倉本氏自身が描いたものだそうだ。

非常に上手に表現されているので感心してしまう。

さて、詩の形で表現された古木たちの語りは、心にビンビンと響いてくるものがある。
最初の「戦争好きの人類へ」では、こんな部分がある。

トランプ プーチン 習近平 安倍晋三
愚か者たちが わずか数十万年前
この世に誕生した人類という種が
地球のトップ 支配者だという
愚かな錯覚と勘違いに陥り
地球そのものを こわそうとしている
自然を敵に廻そうとしている
愚かなことだ
愚かすぎる


大国や日本のリーダーの愚行を、古木の言を借りて痛烈に批判している。

この後、本書では、日本各地の古木が登場する。
長崎山王神社のクスノキ、京都建仁寺の松、磐田駅前のクスノキ、世田谷区九品仏のカヤノキ、福島の桜、鳥海のブナ林、その他いろいろ…。
そして、彼らの語りには、戦国時代の武将や、江戸時代の家光、幕末に生きた人たち(…例えば沖田総司)、太平洋戦争の頃の暮らしや原爆、現代の人間の滑稽な生活ぶりなどが登場する。
古木たちは、日本を中心とした歴史に触れながら、経済活動を優先させて、自然破壊・環境破壊の道を進んできた人間に対する警告や批判を繰り広げている。

「萬葉の言の葉」では、COVID-19感染症のことを中心に語っている。

今年は地上でコロナが暴れた
人間は初めてコロナウイルスに出逢うて
右往左往の大さわぎをした
大さわぎをしたのは良いことだ
あれは自然のいたずらだよ
復讐なんて云わん 一寸したいたずらよ
人間が一寸調子にのりすぎて
あんまり自然を馬鹿にするからな
あんたらはそれ程賢くなんかない
ほんの一瞬地上に現われて
科学やら経済やらつまらんもの覚えて
まるで宇宙を征服したかのように
錯覚と勘違いで増長しとるから
少しそこんとこに気づかしてやろうと
小さないたずらをしかけとるのよ
それがいたずらだと人が気づくように
時々笑って種明かししとるのに
それにも全く気づこうとせん
予想以上に賢くないな人は


読んでいて、古木の語り口が痛快だ。
愚かな人類に対する危機感を感じる。
まして、COVID-19感染症のパンデミックのなか、ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイルなど、とんでもないことが頻発している現在だから、なおさらだ。
古木の語りから伝わる怒りと呆れは、大きい。

題名から連想した内容は全く違っていたが、まさに今の時代に警告を与える、良書だ。
 
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