575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

大吉と嘘つくルージュ除夜の鐘  殿

2020年12月29日 | Weblog
選句された方のコメントです。

千香子さん「ルージュという語が私には、とてもインパクトがありました。
ムーランルージュ、松任谷由美の「ルージュの伝言」など。  
せめておみくじくらいは吉であってほしい。嫌なことの多かった今年を忘れるために、と思って引いたおみくじが予想に反した。赤い唇から思わず嘘が出た。
 強い言葉が並んでいるけどバランスがとれていて、不思議な、謎めいた句だと感じました。」

等さん「 “大晦日に若い二人が寺へお参りに行き、おみくじを引いた。出たのは良い結果ではなかったが、
おめかしをして行った娘さんは、これがこの後悪い結果にならないようにと嘘をついた。お寺の鐘もゴーンと鳴った“
これだけの内容を17文字で表現したのです。これが俳句の面白さだと思います。」

紅さん「ルージュが嘘をつく。粋な句ですね。」

ドラマのような想像力たっぷりの俳句です。私の妄想は、カップルが年越しで初詣。赤いルージュの彼女はプロポーズを期待してる。そんな状況が目に浮かびました。ロマンティックな俳句ですね。

さて、来年の初詣は三密を回避し年末に前倒しして行うところもあるようです。すべてが違ってしまった今年の年末年始。静かに過ごすことが前提にあります。でも、もしかしたらことさら騒ぐのではない心静かに新年を迎えるのもいいのかも知れません。ただ、家族が集えず小声で話すというのはやはり辛いですね。
新型コロナウイルスに翻弄されこの575の会も句会が開催できず2月からメール句会となってしまいました。
その間、闘病、別れなど悲しい出来事もありましたがなんとかブログも続けて来られました。
来る2021年が明るく穏やかであることを願っています。それでは皆様よいお年をお迎えください。麗子

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木の葉舞う日運転免許返納す  等

2020年12月28日 | Weblog

「高齢運転者」と呼ばれる年齢に達すると「免許返納」という言葉が
ちらつき始めます。家族の心配そうな瞳は無言の圧力になるし、
警察庁の調べで75歳以上の死亡事故は二倍以上になる!
などという数字をつきつけられるとなおさらです。
そこで作者は英断しました。
その日は、はらはらと木の葉の舞う日。
季節は冬の到来の近いことを告げています。

作者は「木枯らしの日」としたかったそうですが
木枯らしは吹きませんでしたとおっしゃっています。
私は「木の葉舞う」が断然良いと思います。木枯らしでは
悲壮感がただよってしまいます。(笑)

車とともに過ごした時間は、まさに木の葉のごとく、
ドキドキの初心者若葉に始まり、颯爽とハンドルをきる青葉へ。
真夏の太陽の光を十分に浴びた後色づき、やがて満足げに枝を離れていきます。
高齢者運転マークとして「もみじステッカー」を貼るのもうなずけます。
あれを枯れ葉と呼ばないでください。(よつばのクローバータイプのものもあります)

はらはらと舞う木の葉には、人生のいろんなシーンが投影されたかもしれません。
自分だけでなく、家族の成長や行事の思い出など数えきれないほどでしょう。
ただ、それもひとつの区切りに過ぎません。この一日もひとつの思い出として
刻まれて、新しい時間を作っていくのですね。
この句からは、多少の寂しさはあるものの
作者の満ち足りた静かな思いとともに、小春日の
穏やかな日射しが感じられますがいかがでしょうか。

私も、高齢ドライバーの仲間入りをする日が遠からずやってきますが、
免許返納時までに自動運転の車が手の届くところに来ますようにと
切望しております。
明るい未来を願って、皆さま良い年をお迎えください。郁子

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「シャワー浴ぶ くちびる汚れたる 昼は」

2020年12月27日 | Weblog



櫂未知子<かいみちこ>1960年 北海道余市の生まれ。小
樽潮陵高校在学中より詩作を始めます。1987年青山学院
大学文学研究課程で日本文学を専攻し博士号を取得。武川
忠一が主宰する短歌会「音」に入会。塚本邦雄「玲瓏」に
も在籍します。しかし「音」の編集委員の代表を務める玉
井清弘の勧めにより俳句に転向。

「春は曙 そろそろ帰つて くれないか」<未知子>

1992年 俳誌「港」の新人賞、同人賞、評論賞などを受賞。
1993年より英国に滞在し、1996年に初めての句集「貴族」
を出版します。1997年には日本芸術院会員の国文学者、佐
々木幸綱が主宰する歌誌「心の花」に入会するなど、幅広
い知識を活かし多岐にわたり活躍します。

「雪まみれ にもなる笑つて くれるなら」<未知子>

第一句集「蒙古斑」は角川書店より2000年に出版。第三
集の句集となる「カムイ」はふらんす堂より2017年に発
刊。さらに、2017年にNHK俳句の選者を務めたことから
「言葉の歳時記」「俳句力上達までの最短コースなど」な
どハウツー本の著者としても知られています。

「経験の 多そうな 白靴だこと」<未知子>

ところで、2002年「俳句研究」の奥坂まやが、未知子の
蒙古斑に収録されていた句に近似した句を発表。未知子は
「俳句のオリジナリティとは」とやんわり反論しています。
結果としては奥坂まやが謝罪文を掲載することに至ります。
季語を使い17文字で表現する俳句。古今の類似した句を調
べ避けることの難しさを痛感します。 

「いきいきと 死んでゐるなり 水中花」<未知子>  

「いきいきと 死んでをるなり 兜虫」<奥坂まや>

未知子は、何気ない生活を口語で表現しています。そのた
め、花鳥風月を主題とするオーソドックスな俳句とはかけ
離れた印象があります。しかし、若年層に人気があるのは
事実。若い感性の琴線に触れる未知子の俳句。その是非は
別にして俳句の未来のカタチなのかもしれません。                

櫂未知子。現在60歳。「群青」「銀化」の同人。俳人協会
理事。国際俳句研究協会と日本芸術家協会の会員と華々しい
経歴を持つ女流俳人。

「少女まづ 瞳の老いて 雪まつり」<未知子>

今年、最後の拙文となりました。この場をお借りして句会の
みなさまに年末のご挨拶を申し上げます。良い年をお迎えく
ださい。


写真と文<殿>
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「芭蕉の愛した尼僧」

2020年12月26日 | Weblog



河合智月<かわいちげつ>1633年 京都の生まれ。大津の
伝馬役と問屋を営む裕福な河合家に嫁ぎます。53歳の時
に夫が死去したのを機に俗世を捨て尼僧となります。

「雲の間の 星見てゐるよ ほととぎす」<智月>

尼となった智月は松尾芭蕉に心酔。松尾芭蕉に文を送り
親交を深めていきます。文献を調べていくと芭蕉は近江
に度々出掛けています。近江での芭蕉はいつも微笑をた
たえ門人と接していたといわれています。智月や近江芭
門の、暖かいもてなしが芭蕉には心地よかったのかもし
れません。

「やまつゝじ 海に見よとや 夕日影」<智月>

近江芭門のひとりであり、芭門十哲に数えられる森川許
六は智月の句を「五色の内、ただ一色を染め出だせり」
と深みの無さを指摘しています。しかし、許六は芭蕉の
愛した桜で芭蕉の木像を作り智月に贈っています。作句
に物足りなさを感じつつ、智月の人間性は芭蕉やその門
人たちに愛されていたようです。

「有ると無きと 二本さしけり けしの花」<智月>

1691年 智月は芭蕉に句を請います。芭蕉は自らの年齢
から考え形見の句になるとわかっていたのでしょう。苦
笑しながら芭蕉俳文の傑作といわれる「幻住庵記」を智
月に惜しげもなく与えます。ちなみに、幻住庵とは近江
で芭蕉が仮の宿とした庵。庵といっても雨が漏り板敷だ
けの侘び住まい。しかし「いずれかは 幻の栖<すみか>
ならずや おもひ捨ててふしぬ」と芭蕉はきっぱり詠んで
います。

「行く春を 近江の人と 惜しみける」<芭蕉>

その年の秋、芭蕉は急逝します。智月は芭蕉の浄着を縫
い死出の旅路を見送ったと伝えられています。それから
24年後の春、智月も鬼籍の人となります。

「わが年の よるともしらず 花さかり」<智月>

河合智月。享年85歳。芭蕉の愛した尼僧。別名 智月尼。


写真と文<殿>
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竹輪麩が好きやと照れる浪速っ子 紅

2020年12月25日 | Weblog
関東のおでんにかかせない竹輪麩。神奈川の途中、かまぼこで有名な小田原の手前が竹輪麩がおでんに入るか否かの境界線という説もあるようです。

選句された方のコメントです。

郁子さん「ちくわぶは東京、関西の男の子の告白。中七関西弁のとりこみが良い。」
殿さま「竹輪麩は関東の産。しかし浪速っ子が好き。中七の関西弁も効果的。」
等さん「朝ドラの「おちょやん」の浪速が、“竹輪麩が好きや”という一言で、上手く表現されています。」

関西出身の私。実はまだ竹輪麩を食べたことがありません。
この句では浪速っ子が竹輪麩を食べて「好きや」と関西弁で言ったところがポイント。方言が効いています。
この浪速っ子は何歳くらいでしょうか?大学で関東に出てきた浪速っ子でしょうか?色々と想像が膨らむ一句です。
これが名古屋弁だと「竹輪麩が好きだがやと名古屋っ子」となるのでしょうか?(笑)麗子



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2020・575の会 ②

2020年12月24日 | Weblog
575の会では、毎月、兼題と自由題の2句を送っていただいています。
自由題の中にも心に残る素晴らしい句があります。
すべて載せられないのは残念ですが、
その月に一番票を集めた句を掲載します。

1月
 束ねられ枯菊淡く色のあり  (晴代)
2月
 冴え返る雑事をはなれ花鋏  (晴代)
 さそひたる夫も木莵(みみずく)しかと見る  (佐保子)
 半跏して思惟の指先冴え返る  (狗子)
 スキップの児の走りゆく畦青む  (能登)
3月
 草萌えや転び上手の襁褓(むつき)の子 (亜子)
4月
 対角線切るや燕(ツバクロ)胸白し (竹葉)
5月
 白牡丹はらりと落ちて母の逝く (麗子)
6月
 父の日や手巻き時計は抽斗に (等)
7月
 横断を急かす点滅油照り (亜子)
8月
 滝しぶき苔皆立ちて踊りたる (竹葉)
 盆支度母の残した料理帳 (麗子)
9月「桔梗」
 高原の風の入り口桔梗咲く (麗子)
10月
 売り家の影に置き去り秋あざみ (紅)
11月
 立冬や迎え撃つ気の近江富士 (麗子)
12月
 玉手箱舞い降りて冬銀河かな (麗子)

いかがでしょうか。この一年振り返ってみました。
いろいろ大変な年でしたね。
折につけ思い出すのは、宗匠遅足さんの言葉、
「辛いときこそ良い句ができる」
来年も日々の暮らしの中から、気づきや感動を丁寧に拾っていきたいと思います。
私のSDGsです。

※そして発表です!!!
自由題、トップ賞はダントツで麗子さん。
兼題も含めて、年間最優秀賞は「麗子さん」と独断で決めさせていただきます。
メール句会の連絡やまとめもしてくださいました。
本当にありがとうございます。 郁子
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2020年・575の会 ①

2020年12月23日 | Weblog

今年はコロナウィルス感染拡大の脅威のため
2月からメール句会となり、今に続いています。
前のように集まることは叶わなくでも、575の会が月いちの句会を
続けてこられたことに感謝しています。
今年、どんな兼題が選ばれどのような秀句があったか
振り返りたいと思います。


1月 「寒夜」
 車椅子毛布に巻かれゆく寒夜 (等)
 雨戸繰る音八方へ寒夜かな (静荷)
 足裏に老いしのびよる寒夜かな (亜子)
2月 「春隣」
 春隣り仔象は母に鼻こする (等)
3月 「摘草」
 摘草や大地に還る友ありて (殿)
4月 「風光る」
 風光る新(さら)の自転車新のベル (郁子)
5月 「卯の花」
 卯の花の白の透けゆく獏の夢 (遅足)
6月 「かたつむり」
 うずまきはねむりのかたちかたつむり (遅足)
7月 「冷麦」
 話題尽きひとすじ残る冷し麦 (殿)
8月 「空蝉」
  空蝉の飴色加賀の飴の色 (晴代)
  空蝉にいのちの余韻ありにけり (亜子)
9月 「蓮の実」 
  行く人を惜しみ実の飛ぶ蓮(はちす)かな (亜子)
10月 「小鳥来る」
  小鳥来る異国の言葉いくつ知る (結宇)
11月 「新蕎麦」
  新蕎麦や野武士のごとき指が打つ (遅足)
12月 「おでん」
  大根のしみゆく時間冬時間 (麗子)

兼題の最多トップ賞は同数で遅足さんと亜子さんでした。
おめでとうございます!郁子

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母夜勤姉のあたたむおでん鍋  千香子

2020年12月22日 | Weblog
思い出の一句でしょうか?お母さまが夜勤。仕事に入る前に作り置きしてくれたおでんをお姉さんが温めてくれます。
選句された能登さんも「母のいない心細い夜、温かいおでん、良い句ですね」とのコメント。
等さん「この一家の母と子の頑張りと絆の強さが、この暖かいおでん鍋で想像できる良い句です。」
私もいただきました。現代の看護師さんの姿も目に浮かびました。コロナ禍で働く夜勤のお母さんも多いことでしょう。

同じように働くお母さんのおでんを詠んだ句もありました。

     頼もしき大鍋おでん共稼ぎ  佐保子

最近は「共稼ぎ」という言葉を聞かなくなりましたが、仕事を持つ女性の毎日の食事作りはやはり大変です。
困った時の鍋料理。しかもおでんは温め直して食べられる頼もしい存在です。
選句された泉さん。「忙しい師走、料理に費やす時間を少なくするのに おでんは共働きにとって助かる」とのこと。
作者もきっと何度もおでんを作りいろんな波を乗り越えて来られたと思います。

懐かしくちょっとほろりと来る働き者のお母さんの姿が見える二句でした。 麗子
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まず玉子おでん食べる子父に似て  等

2020年12月21日 | Weblog

親子のつながりが、おでんを通して色濃く感じられる句です。
熱々の出来立てのおでんを前に
この親子はまず最初に玉子をとりました。
大根でもこんにゃくでもなく玉子。
好物であったのか習慣なのか
譲れぬルーティンのためか、はたまたDNAのなせるわざか。
箸をのばしてふと目があったかもしれません。
子どもが反抗期ならば、ばつの悪さから迷い箸・・
しかも親子で猫舌。「熱つッ!」なんて食べる様子まで
浮かんでしまいました。 (笑)

自粛期間に、家族で食事をとる機会が増えています。
外食や孤食に慣れた家族が久しぶりにそろって食事をすると
それぞれの好物や癖、食べ方など再確認してほっとしませんか。
家族が常に一緒ということは、プラスマイナス両局面あるかとは思いますが
こと食事に関しては、ともに過ごす時間の積み重ねが大切だと再確認しました。
我が家流などというのも同じ食卓を囲んでこそできあがるものですね。
等さん宅のおでんはきっと玉子を多めに仕込んでいるのでしょう。
父と子を見守る温かい眼差しも見えてきました。郁子


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「恋は瞬時の愚かなり」

2020年12月20日 | Weblog



冨士眞奈美<ふじまなみ>1938年 静岡県の生まれで女優
の前田美波里や岸恵子は遠戚となります。静岡県三島北
高校を卒業し上京。俳優座の養成所に入ります。1957年
NHKのテレビドラマ「輪唱」の三姉妹役でデビュー。こ
の時に共演した馬渕晴子、小林千登勢と共にNHK三人娘
と呼ばれ人気を博します。1960年にスタートしたバラエ
ティ番組「東は東」の司会を務めるなどタレントとしても
活躍。近年はTBS系列の人気番組「ぴったんこカンカン」
俳句の旅コーナーの女優二人組として有名。

「流れ星 恋は瞬時の 愚なりけり」<衾去>

1970年「細うで繁盛記」で意地悪な小姑役を演じ、清純
派からの脱却に成功します。1974年 脚本家の林秀彦と結
婚。10年後の離婚を機に女優と執筆を再開します。現在も
俳句に関する講演や句会の選考委員などを務め、特に京都
教育大学の名誉教授。正岡子規や夏目漱石の研究で知られ
る坪内稔典は、眞奈美の幅広い知識より生まれる俳句を高
く評価しています。

「なにほどの 男かおのれ 蜆汁」<衾去>

「おんなふたり 奥の細道 迷い道」は吉行和子との共著で、
芭蕉の奥の細道をなぞるユーモラスな対談集です。俳句を
基調としていますが、話は芸能界の話にまで拡がり、時を
忘れ完読してしまいます。ちなみに、冨士眞奈美の俳号は
衾去<きんきょ> 吉行和子の俳号は窓烏<まどからす>

「海底のやうに 昏れゆき 梅雨の月」<衾去>

「噛みしめる ごまめよ 海は広かった」<衾去>

「白桃や 優柔不断も やさしさか」<窓烏>

「恋心 消えれば他人 夾竹桃」<窓烏>

眞奈美の句集「瀧の裏」のあとがきには「句友とは言葉を
仲立ちに感性を同じにして遊ぶ仲間」と記してあります。
冨士眞奈美。テレビの創成期より活躍する女優。そして俳
歴30年以上のベテラン俳人。寝間を去るという意味深な俳
号を持つ衾去<きんきょ>。現在82歳。

「逃げ水の 向かふは絶壁 かもしれず」<衾去>


写真と文<殿>
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「はやぶさや 星屑あふれ 冬銀河」<殿>

2020年12月20日 | Weblog


習作のため諸氏の句を詠み研鑽しています。

母夜勤 姉のあたたむ おでん鍋 
「おでん鍋 夜勤の母に 届けたし」

頼もしき 大鍋おでん 共稼ぎ
「共稼ぎ 輪となり囲む おでん鍋」

まず玉子 おでん食べる子 父に似て
「父に似て 箸出す卵 おでん鍋」

婿殿(ムコドノ)と偶(タマ)に地(ジ)具のみそおでん
「江戸っ子は 関東煮といふ 婿きたり」

くたくたの おでん大根 我のごと
「我のごと 煮しめ大根 角丸く」

大根の しみゆく時間 冬時間
「大根煮 溶けゆくごとき 人の生<しょう>」

三時より ことことことと 煮るおでん
「暮れ六つに コトコトコトと おでん鍋」

煮大根 すっと切る箸 出汁纏い
「煮大根 突き刺す箸の 旨味かな」

生かされて 生きておでんの 民主主義
「おでん煮て 灰汁<あく>あふれ満つ デモクラシー」

銅鍋に 理路整然と おでん種
「銅鍋に チームとなりて おでん種」

おでん酒 酌み交わす友 遠くなり
「酔鯨の 友の声なく いま何処」

おでんの串 十六本を 数えけり
「おでん串 十二本まで 数えけり」

餅巾着 歯医者よぎって 箸よける
「餅巾着 歯医者よぎりて 箸迷う」

竹輪麩が 好きやと照れる 浪速っ子
「好きやねん 竹輪麩つまむ 浪速っ子」

老いたれば おでんの種も てんでんこ 
「年波に おでんの種も てんでんこ」


ちなみに、自由題の「玉手箱 舞い降りて 冬銀河かな」
小惑星探査機<はやぶさ>の意とわからず選外としました。

「はやぶさや 星屑あふれ 冬銀河」
注釈、はやぶさが持ち帰れなかった星屑。あふれた冬の銀河
がまたたきます。


写真と文<殿>
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「まゆ玉の恋」

2020年12月19日 | Weblog


稲垣きくの<いながききくの>1906年 神奈川県の厚木
に生まれます。大正初年に横浜に転居。現在の中央大
学横浜山手高校に入学しますが関東大震災で罹災。都
内神田の正則高校に転校します。当時は弁士が語る無
声映画の全盛期。きくのは、岡田嘉子の劇団「同志座」
の門を叩き研究生になります。

「まゆ玉に をんな捨て身の 恋と知れ」<きくの>

きくのは、劇団が提携していた東亜キネマ甲陽撮影所
に入社。露原桔梗という芸名で映画デビューを果たし
ます。やがて、松竹蒲田の撮影所に移籍。無声映画の
脇役として欠かせない存在になりますが、トーキーの
時代となり松竹も大船に撮影所を移転。しばらく、現
代劇で活躍しますが、結婚を理由に退社します。実は、
きくのにとって2度目の結婚。しかし、結婚には至らな
かったようです。

「古日傘 われから人を 捨てしかな」<きくの>

本題に入ります。きくのは、女優時代に神田のYWCA
に通い文学を熱心に学びました。そして、毎日新聞の
俳句欄に初めて応募。選者である長谷川かな女が大絶
賛しました。こうしたいきさつにより、大場白水郎が
主宰する「春蘭」の同人となり鈴木真砂女や岡田八千
代と交流します。

「春眠の あざやかすぎし ゆめの彩」<きくの>

きくのは、恋愛の情念を激しく詠む句が多く、華やか
な女優らしい句風が特徴とされています。しかし、花
鳥風月を詠んだ句も多く、さらに、随筆に至っては視
点が広やかで諧謔性に富んでいます。特に映画や演劇
の論点の鋭さは当然のことながら卓越した印象があり
ます。

「目刺しやく 恋のねた刃を 胸に研ぎ」<きくの>

戦後は、藤沢の鵠沼海岸に居宅を設け、茶道を教える
ことで生計を立てます。久保田万太郎の「春燈」に入
会。やがて、初めての句集となる「榧<かや>の実」を
出版。1966年の句集「冬濤<ふゆなみ>」で俳人協会
賞を受賞しています。1970年には三番目の句集となる
「冬濤以降」を出版しています。

「バレンタインデーか 中年は 傷だらけ」<きくの>

きくのは、夏目雅子や吉行和子に続く女優&俳人の先駆
者といえるでしょう。晩年は姪と千駄ヶ谷のマンション
で穏やかな老後を過ごしたようです。稲垣きくの。享年
82歳。

「夏痩せて ひとりは覚悟 死ぬ日にも 」<きくの>


写真と文<殿>


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銅鍋に理路整然とおでん種 須美

2020年12月18日 | Weblog
この句を選んだ方のコメントです。
「おでんやさんでしょうか、家庭では沢山の具を揃えるのは大変ですが、いいですね」(能登)
「コンビニおでんを連想されたようです。」(亜子)
「ず~っと昔「お多幸」という店で見たおでん鍋がよみがえりました。」(晴代)

 家庭でつくったというよりは
 理路整然(面白い表現です)とおでん種が並んでいるのですから、
 たぶん売り物。お店のおでんでしょうね。
 何にしようかな~と眺めて選ぶのもご馳走のうちです。

 コロナ感染拡大を防ぐため、お店屋さんは時短営業を迫られ、
 ガード下や屋台のおでん屋さん、深夜の居酒屋さんなど、さぞかし厳しいことでしょう。
 おでんだけは、デリバリーやレトルトでは埋められない味わいがあります。


◇おでん酒酌み交わす友遠くなり 泉 

「さりげなくコロナ禍を読み込んだのでは」(亜子)
「年をとると、思い出だけが残っていき、おでんを食べるたび、昔を思い出してしまう。少し寂しい句です。」(千香子)

肩寄せて、一杯やるのが叶わなくなる時代がくるのでしょうか。
湯気の中でこそ語り合える話もあるとおもうのですが。

提灯の三つに一字づづおでん  下田実花

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大根のしみゆく時間冬時間  麗子

2020年12月17日 | Weblog
おでんの具の中で一番好きなのは大根です。今回の句会でも大根を詠んだ句が三句ありました。
大根の中まで出汁が染み込むまでの時間。一度火を止めてまた煮返す、おでんが出来上がるまでのそんな待つ時間を「冬時間」としてみました。一日目よりやはり二日目の方が中までしっかり味がしみてきます。

竹葉さんの「煮大根すっと切る箸出汁纏い」
中までしっかり煮えてすっとお箸で切れる、まさにそんな感じです。

でも3日目を過ぎると、大根の角もとれ、やわらかくなって亜子さんの句のように「くたくたのおでん大根我のごと」といったちょっとくたびれた感じになってしまいます。

そして晴代さんの「三時よりことことことと煮るおでん」
この句は時間というものを具体的に表現されました。
おでんを作る日、確かに三時くらいからとりかかります。「ことこと」ではなく「ことことことと」と三回リフレインしたところにも魅かれました。

いずれにしてもおでんを作るには時間がかかりますね。
ちなみに私がこの575の会に参加したのは1995年11月のことです。
遅足さんに誘われて初めて作った俳句がなんとおでんの句でした。

       おでん種積み木のように見えもする

見たままの俳句ですね(笑)いつの間にか25年もの時間が経過していました。 麗子
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おでん句会の結果です。

2020年12月16日 | Weblog
今季一番の寒波襲来です。今週はまさにおでんの出番ですね。
大鍋に時間をかけて作られるおでん。誰と食べ、何を思うか、おでんから色々な感情が味わえました。
今年の句会はコロナ禍で開催できませんが、皆様のご協力でメール句会という形で続けて来られました。遅足主宰の一日も早いご快癒を願っています。

おでん句会  2020.12月
① 母夜勤姉のあたたむおでん鍋 (千香子)竹葉 等 麗子 晴代 能登
② 頼もしき大鍋おでん共稼ぎ (佐保子) 智恵 泉
③ まず玉子おでん食べる子父に似て (等) 郁子 遅足
④ 婿殿(ムコドノ)と偶(タマ)に地(ジ)具のみそおでん (結宇)
⑤ くたくたのおでん大根我のごと (亜子)等 千香子 能登
⑥ 大根のしみゆく時間冬時間 (麗子)竹葉 結宇 須美 智恵 遅足 泉 
⑦ 三時よりことことことと煮るおでん (晴代)麗子 郁子 亜子 
⑧ 煮大根すっと切る箸出汁纏い (竹葉)佐保子
⑨ 生かされて生きておでんの民主主義 (郁子)須美 千香子 佐保子
⑩ 銅鍋に理路整然とおでん種 (須美) 晴代 遅足 亜子 能登
⑪ まどろみて 猫とおしゃべり おでん酒 (殿)竹葉 結宇 紅 泉
⑫ おでん酒酌み交わす友遠くなり (泉)晴代 智恵 千香子 亜子
⑬ おでんの串十六本を数えけり (遅足)殿
⑭ 餅巾着歯医者よぎって箸よける (智恵) 紅
⑮ 竹輪麩が 好きやと照れる 浪速っ子 (紅)殿 等 麗子 郁子
⑯ 老いたればおでんの種もてんでんこ (能登)殿 結宇 須美 佐保子 紅

自由題
① 渋色の着物の乙女照紅葉 (千香子)紅
② 木の葉舞ふ日運転免許返納す (等) 麗子 遅足 佐保子
③ 薬師寺に風鐸(フウタク)連弾秋過ぎる (結宇)殿 智恵 佐保子
④ 里山に埋もれし木の実親子熊 (泉)竹葉 等 遅足 亜子 
⑤ 病む夫に小春日和の贈り物(ギフト)かな (亜子)結宇 麗子 須美 智恵
⑥ 玉手箱舞い降りて冬銀河かな (麗子)竹葉 結宇 晴代 智恵 郁子 佐保子 亜子 泉 能登
⑦ 侘助やひとり遊びの祖母の庭 (郁子)等 晴代
⑧ 大吉と 嘘つくルージュ 除夜の鐘 (殿)等 千香子 遅足 紅
⑨ 父の死後母に死後あり枇杷の花 (遅足) 須美 千香子 能登
⑩ このはずく帰り来たれりわが森に (佐保子) 千香子
⑪ 手抜き化粧マスクがもたらす肌の艶 (智恵)能登
⑫ パソコンに触れず勤労感謝の日 (晴代) 麗子 須美
⑬ 合鍵を 小箱に秘める クリスマス (紅)殿 結宇 亜子
⑭ 落葉盛るじゃれあう子らの日短し (須美)郁子 泉
⑮ 短日の人無き街や鐘の染む (竹葉)晴代 郁子 紅
⑯ 冬ざるる山道にうずくまる孤独 (能登)竹葉 泉
コメント
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