575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

「恋は瞬時の愚かなり」

2020年12月20日 | Weblog



冨士眞奈美<ふじまなみ>1938年 静岡県の生まれで女優
の前田美波里や岸恵子は遠戚となります。静岡県三島北
高校を卒業し上京。俳優座の養成所に入ります。1957年
NHKのテレビドラマ「輪唱」の三姉妹役でデビュー。こ
の時に共演した馬渕晴子、小林千登勢と共にNHK三人娘
と呼ばれ人気を博します。1960年にスタートしたバラエ
ティ番組「東は東」の司会を務めるなどタレントとしても
活躍。近年はTBS系列の人気番組「ぴったんこカンカン」
俳句の旅コーナーの女優二人組として有名。

「流れ星 恋は瞬時の 愚なりけり」<衾去>

1970年「細うで繁盛記」で意地悪な小姑役を演じ、清純
派からの脱却に成功します。1974年 脚本家の林秀彦と結
婚。10年後の離婚を機に女優と執筆を再開します。現在も
俳句に関する講演や句会の選考委員などを務め、特に京都
教育大学の名誉教授。正岡子規や夏目漱石の研究で知られ
る坪内稔典は、眞奈美の幅広い知識より生まれる俳句を高
く評価しています。

「なにほどの 男かおのれ 蜆汁」<衾去>

「おんなふたり 奥の細道 迷い道」は吉行和子との共著で、
芭蕉の奥の細道をなぞるユーモラスな対談集です。俳句を
基調としていますが、話は芸能界の話にまで拡がり、時を
忘れ完読してしまいます。ちなみに、冨士眞奈美の俳号は
衾去<きんきょ> 吉行和子の俳号は窓烏<まどからす>

「海底のやうに 昏れゆき 梅雨の月」<衾去>

「噛みしめる ごまめよ 海は広かった」<衾去>

「白桃や 優柔不断も やさしさか」<窓烏>

「恋心 消えれば他人 夾竹桃」<窓烏>

眞奈美の句集「瀧の裏」のあとがきには「句友とは言葉を
仲立ちに感性を同じにして遊ぶ仲間」と記してあります。
冨士眞奈美。テレビの創成期より活躍する女優。そして俳
歴30年以上のベテラン俳人。寝間を去るという意味深な俳
号を持つ衾去<きんきょ>。現在82歳。

「逃げ水の 向かふは絶壁 かもしれず」<衾去>


写真と文<殿>
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「はやぶさや 星屑あふれ 冬銀河」<殿>

2020年12月20日 | Weblog


習作のため諸氏の句を詠み研鑽しています。

母夜勤 姉のあたたむ おでん鍋 
「おでん鍋 夜勤の母に 届けたし」

頼もしき 大鍋おでん 共稼ぎ
「共稼ぎ 輪となり囲む おでん鍋」

まず玉子 おでん食べる子 父に似て
「父に似て 箸出す卵 おでん鍋」

婿殿(ムコドノ)と偶(タマ)に地(ジ)具のみそおでん
「江戸っ子は 関東煮といふ 婿きたり」

くたくたの おでん大根 我のごと
「我のごと 煮しめ大根 角丸く」

大根の しみゆく時間 冬時間
「大根煮 溶けゆくごとき 人の生<しょう>」

三時より ことことことと 煮るおでん
「暮れ六つに コトコトコトと おでん鍋」

煮大根 すっと切る箸 出汁纏い
「煮大根 突き刺す箸の 旨味かな」

生かされて 生きておでんの 民主主義
「おでん煮て 灰汁<あく>あふれ満つ デモクラシー」

銅鍋に 理路整然と おでん種
「銅鍋に チームとなりて おでん種」

おでん酒 酌み交わす友 遠くなり
「酔鯨の 友の声なく いま何処」

おでんの串 十六本を 数えけり
「おでん串 十二本まで 数えけり」

餅巾着 歯医者よぎって 箸よける
「餅巾着 歯医者よぎりて 箸迷う」

竹輪麩が 好きやと照れる 浪速っ子
「好きやねん 竹輪麩つまむ 浪速っ子」

老いたれば おでんの種も てんでんこ 
「年波に おでんの種も てんでんこ」


ちなみに、自由題の「玉手箱 舞い降りて 冬銀河かな」
小惑星探査機<はやぶさ>の意とわからず選外としました。

「はやぶさや 星屑あふれ 冬銀河」
注釈、はやぶさが持ち帰れなかった星屑。あふれた冬の銀河
がまたたきます。


写真と文<殿>
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