575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

鳳仙花父にも恋の物語  遅足

2023年08月31日 | Weblog

鳳仙花という兼題で、奇しくもお父さんのことが二句詠まれました。

母よりなぜか父が出て来る不思議。まず遅足さんのこの句。「父にも恋の物語」というフレーズに魅かれました。

これが「母にも恋の物語」ならなんとなくなまめかしい感じがしますが、無骨な父にも若き日に恋があったのだと聞くとなぜかホッとするような。。。鳳仙花という兼題で父が出てくるところが斬新でした。

能登さん:父という字に恋の字は遠い存在だと、何となく思ってしまっていました。 しかし、自らに置き換えて見ると、そうでもない。  それぞれに、それぞれの人生がある。当たり前の気付きでした。

千香子さん:この父にも 炎を燃やす 恋があったのかと 思うだけでワクワクします 鳳仙花ではなく カサブランカ 、ブーゲンビリア 、マリーゴールド の方が良いのだろうか あるいは フジバカマ カラスウリ 紫式部の方が良いだろうかと あれこれ想像する きっかけを与えてくれました。

            ★★★

詳しい句の背景はわかりませんが、赤い鳳仙花と若き日の燃える恋との取り合わせは「季語が動かない」感じのような気がします。

 

     鳳仙花父似の声と言い合いを  晴代

こちらは父に似た声の存在。兄弟か、あるいは叔父さんか、はたまた全くの他人の声か。

私にはなんとなく兄弟のような気がしました。どんないさかいがあったのでしょうか?

鳳仙花がちょっと語気を荒くしてしていまったかも知れませんね。

泉さん:弾ける音が父似ということが興味深い。

 

言い合いになった光景からもう一句。

      売り言葉に買い言葉むなし鳳仙花  容子

これも親しい人との口喧嘩のような気がします。言ったあとの後悔が目に浮かびます。

千香子さん:売り言が買い言葉 。あるある と思い選びました。

ついつい 言わなくてもいいのにポンポンと種がはじけるように 言ってしまう。

             ★★★

       あんなこと言わねばよかった鳳仙花

と言った感じでしょうか?8月最後の日となりました。穏やかな一日でありますように。

                                麗子

 

コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

つま紅やおはじき弾く幼指  竹葉

2023年08月25日 | Weblog

「鳳仙花」の開花時期は7月から9月。暑さに強く育てやすい植物です。

花の赤いものは昔から女の子が爪を染めるのに使ったためツマクレナイ、ツマベニ(爪紅)の名があり、花のあと実が熟すと弾けてタネが飛び散るそうです。花言葉は「わたしに触れないで」なのだとか。 面白いですね。

いただいたコメントを紹介します。

 つま紅やおはじき弾く幼指  竹葉

麗子さん:「おはじき」という昭和の遊びに郷愁を感じました。今の子供たちはおはじきを知っているのでしょうか?8番の句と迷いましたが、かわいい指が鳳仙花で赤く染まっている情景が具体的に描写されていたのでこちらを選びました。

泉さん:鳳仙花の弾ける音とおはじきをはじく可愛いらしい指の取り合わせがよい。

赤く染まった爪先、おはじきは飛び散るタネを想像させます。 

 

 鳳仙花戦地の子等の爪染むや  能登

須美さん:戦地の子供達にも鳳仙花で爪を染めて遊んで欲しい。そんな素朴な遊びでもいいから。という気持ちが伝わる。

麗子さん:これは78年前の日本の子らのことを詠んだのかもしれませんが、ウクライナでは今なお戦争が続いているという情けなさ。おままごとで爪が赤く染まるのはいいけれど、幼き子らの爪に血がにじむことがないことを祈るだけです。

 

 ままごとの庭に赤散る鳳仙花  亜子

能登さん:赤い鳳仙花は、ままごとの舞台装置にぴったりです。

童子さん:今日の材料が鳳仙花だったんでしょうか。おままごとの後の庭に「赤」が効いてます。おままごとが出来ないくらいの暑い庭の描写かもしれません。こっちですね 笑

竹葉さん:私も「庭」を描こうかと思って「ゴムとび」とか思いついたのですが「ままごと」は幼い頃と分かりいいと思いました。

「赤散る」という表現が気に入り、私もいただきました。ほっこりのんびり平和な庭の様子が浮かんできます。ただ「赤」は血の色でもあります。

今も戦いが続いている地域の子どもたちを憂う須美さんや麗子さんのコメントを見たから思うのでしょうか。幼い子が真っ先に犠牲になる愚かな戦争は絶対にしてはいけません。

赤い花びらを血に染めない。これは、昭和を生きてきた私たち大人の責任です。

 

 鳳仙花昭和の花か今は見ず  佐保子

 

ままごと遊びに興じる子どもたちを鳳仙花の花のように見守りたいものです。  郁子  

 

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

垣根越し立ち話聞く鳳仙花  麗子

2023年08月24日 | Weblog

思いもかけず得票をいただきありがとうございました。

実は鳳仙花の花はあまり見たことがなくその種が飛ぶことも知りませんでした。

私の中ではかすかな記憶の中の花です。そんなことで庭に咲いている鳳仙花を想像して作りました。お隣の奥さんと垣根越しにご機嫌伺いの立ち話。我が家は通学路にあたるので鳳仙花が子供たちのにぎやかなおしゃべりにそっと耳を立てている姿を詠んでみました。

童子さん:この擬人化がたまりませんね。

昭和感溢れる句。最近は垣根も鳳仙花もあまり見かけません。

能登さん:その鳳仙花が、やがて種を飛ばして、噂が広がる・・・。軽いノリの展開など、想像が膨らみます。

郁子さん:ふだんの暮らしの中に溶け込んでいるやさしい鳳仙花が浮かぶ。気取らず他愛ないおしゃべりをきいている花。

須美さん:情景が浮かぶ。立ち話聞くが面白い。

        ★★★

朝の連続ドラマ「らんまん」の中で、知らない草花に「おまんは誰じゃ?」と問う牧野先生。私も最近見たことのない花を見ると口にしています。庭に今朝、朝顔が二つ咲きました。珍しく雨に濡れてほっとしている感じです。  麗子

 

 

コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

8月「鳳仙花」結果発表!!

2023年08月23日 | Weblog

2023年8月兼題「鳳仙花」

  1. 鳳仙花父にも恋の物語  (遅足)麗子 能登 千香子 佐保子
  2. 鳳仙花父似の声と言い合いを (晴代)泉
  3. 鳳仙花種飛ぶ時を心待ち (須美)晴代 千香子
  4. 昇降口子ら弾け散る鳳仙花 (郁子)竹葉 童子 須美 泉
  5. 鳳仙花パツンパツンとこぼれ落つ (泉)郁子
  6. 鳳仙花戦地の子等の爪染むや (能登)麗子 須美 亜子
  7. つま紅やおはじき弾く幼指 (竹葉)麗子 晴代 泉 容子
  8. ままごとの庭に赤散る鳳仙花 (亜子)竹葉 童子 能登 晴代 郁子
  9. 鳳仙花昭和の花か今は見ず  (佐保子)遅足 亜子
  10. 鳳仙花わたし白寿よ「お母さん」 (童子)容子
  11. 朝鮮国に彼の日抗日鳳仙花(千香子)竹葉 遅足 佐保子 亜子
  12. 売り言葉に買い言葉むなし鳳仙花 (容子)千香子
  13. 垣根越し立ち話聞く鳳仙花 (麗子)童子 能登 郁子 須美 遅足 佐保子 容子

 

自由題

  1. 新涼や白カーテンをふくらませ (佐保子)麗子 能登 須美 遅足 亜子
  2. 源流の水を掬えば秋の音 (麗子)童子 晴代 郁子 千香子 遅足 亜子 泉
  3. 秋出水家族旅行は空港で (須美)佐保子
  4. 八月や戦時の記憶語り継ぐ (亜子)千香子
  5. デジタルで横顔浮かぶ広島忌 (容子)竹葉 麗子
  6. 色写真原爆の子や叫喚す (竹葉)童子 須美 佐保子 泉
  7. 鎮魂の通奏低音蝉時雨 (能登)竹葉 郁子 千香子 亜子
  8. あぐらかく父のまねして南瓜の子 (遅足)童子 容子
  9. 夏休み母はレッスン子は絵本 (千香子)晴代
  10. 手つかずの庭に水撒くいのちかな (郁子)晴代 佐保子 泉 容子
  11. とつおいつゆうぐれてゆく冷奴 (晴代)竹葉 能登 須美 容子 遅足
  12. 炎天下草木も枯れて雨恋し (泉)
  13. じゃんけんで勝ってニンゲンに生まれたの(童子)麗子 能登 郁子 

 

いかがでしたか?

今月は兼題・自由題ともに 麗子さん がトップ賞でした

お見事です!おめでとうございました

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳳仙花句会の投句が揃いました。

2023年08月22日 | Weblog

残暑お見舞い申し上げます。まだまだ厳しい残暑です。俳句の世界は新涼の句が出て来ました。

兼題「鳳仙花」

①      鳳仙花父にも恋の物語  

②      鳳仙花父似の声と言い合いを 

③      鳳仙花種飛ぶ時を心待ち 

④      昇降口子ら弾け散る鳳仙花 

⑤      鳳仙花パツンパツンとこぼれ落つ 

⑥      鳳仙花戦地の子等の爪染むや 

⑦      つま紅やおはじき弾く幼指 

⑧      ままごとの庭に赤散る鳳仙花 

⑨      鳳仙花昭和の花か今は見ず  

⑩      鳳仙花わたし白寿よ「お母さん」 

⑪      朝鮮国に彼の日抗日鳳仙花 

⑫      売り言葉に買い言葉むなし鳳仙花 

⑬      垣根越し立ち話聞く鳳仙花 

 

 自由題

①      新涼や白カーテンをふくらませ 

②      源流の水を掬えば秋の音 

③      秋出水家族旅行は空港で 

④      八月や戦時の記憶語り継ぐ 

⑤      デジタルで横顔浮かぶ広島忌 

⑥      色写真原爆の子や叫喚す 

⑦      鎮魂の通奏低音蝉時雨 

⑧      あぐらかく父のまねして南瓜の子 

⑨      夏休み母はレッスン子は絵本 

⑩      手つかずの庭に水撒くいのちかな 

⑪      とつおいつゆうぐれてゆく冷奴 

⑫      炎天下草木も枯れて雨恋し 

⑬      じゃんけんで勝ってニンゲンに生まれたの 

 

コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あの夏よ坩堝の町の本屋消ゆ 容子

2023年08月18日 | Weblog

何十年も前のことになります。

会社の新人研修で「一日一回は本屋に行け」と言われました。「月に最低でも○冊は本を読むように」とも。世の流行や社会性を養うためにマスコミに在籍する限りは最低条件ということだったのでしょう。

今のようにインターネット検索が簡単にできない時代。本屋さんで新刊の雑誌や売れ筋の本など手に取って見ることで、育ててもらったように思います。世の流れか、お気に入りの本屋が消えていく寂しさ。郷愁とともに多くの方がこの句に票を入れました。

 

 須美さん: コロナ禍の事でしょうか?あの夏が効いていると思う。私もそんな本屋を知っている。

 能登さん: あの夏・・昭和20年夏のことでしょうか。近頃、町の本屋がドンドン閉店してさびしいかぎりですが、作者にとって

       大事な本屋が閉店してしまったのでしょうか。 すべて、過去のものになっていく・・・。

 晴代さん: 栄地下街の*鎌倉文庫*が消えていました。

 亜子さん: 「あの夏よ」という表現で印象的な夏を思い出している。「坩堝の町」が具体的にはしぼれないが安保時代のデモなのか

    はたまた、サンバのリズムあふれるカーニバルのようなお祭りなのか。。。作者もその坩堝の中にいたのかも知れない。

   青春時代の思い出とともに町の本屋さんがなくなっていることを淋しく思う。

 泉さん: 年々、本屋がなくなり 寂しい気持ちがわかる。

 

こちらは楽しい驚きの句

   目の合いしこだぬきまさか夏の庭  千香子

 

 童子さん: 夏の夢か、化かすのは狐かと思いきや子狸とは! 私もマンションのエレベーターで子狸と遭遇した経験があるので「まさか⁈」の気持ちがよくわかります。子狸の方がいいと思うの私だけかな。

 佐保子さん: 猫なら時々現れますが、こだぬきと目が合うなんてよかったですね。 

   

私もつい最近。そんな経験をしました。 

まだ夜の気配が抜けきらないほどの早朝、蒸し暑さに耐え切れず散歩に出た時です。遊歩道の植え込みから何やら生き物が。お互いにギョッとなった瞬間、一気に100㍍くらい先にとんでもない速さで逃げ去りました。シャープな顔立ちにピンとはった耳。何より太いしっぽ。

キツネ??・・半分眠っていたので化かされたかな。 郁子

 

コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

向日葵にチリンと合図ヘルメット  郁子

2023年08月17日 | Weblog

弁護士のバッジは向日葵の花がモチーフ。向日葵の花は太陽に向かって力強く咲くことから「自由と正義」を表しているそうです。そしてバッジの真ん中には、「天秤」が描かれ、これは重さを測る道具なので「公正と平等」を表しているそうです。

道路交通法が改正され、今年4月から自転車利用者にヘルメットの着用が努力義務となりました。作者の郁子さんはこの社会の変化をかわいい俳句にされました。ヘルメットをかぶって自転車に乗り向日葵に向かってチリンとベルを鳴らす。法を順守している誇らしげな感じがします。お天道様に顔向けできないことはしないという作者の心意気も伺えます。

句の背景にはこんな社会性がありましたが、やはりこの句のポイントはなんと言ってもかわいい「チリン」という音でしょう。

須美さん:はつらつとしていて元気が出る。チリンが好き。

千香子さん:チリンとヘルメットで 自転車に 乗っている人の様子がよくわかります。

亜子さん:◎の句。軽やかに日常の一コマを詠んでいる。よく目にする光景をだが、向日葵との取り合わせがよく明るい句。

泉さん:ヘルメット着用義務になってヘルメットをかぶってる人が多い夏です。

 

       まっさおな日傘をたたむ神(おとこ)かな  遅足

自由題でも日傘を詠まれた遅足さん。ちょっと抽象的な句ですが、なぜか心魅かれました。それは神(おとこ)という表現があるからでしょう。

詳しい句意はわかりませんが、佐保子さんは「真っ青だった空がみるみる曇ってがらがらと雷雨になる情景でしょうか?この神はやはり、男の神ですよね。女の神はせいぜい家のなかで喚き立てるくらいかしら?」というコメントを下さいました。

私も採らせていただきました。 「神(おとこ)」と仮名が降ってあるので、男性が傘をたたんだのかと思いましたが、この神は天の神様で、真っ青な青空の天空の大きな傘をたたんで梅雨空が広がっているという感じかな?と解釈しました。

 

      夏帽子孫の頭や我に似て  能登

こちらの句はほほえましいお孫さんのことを詠んだ句。一緒に甲子園にでもお出かけになったかも知れませんね。多くの方が4年ぶりにお孫さんと再会できた夏だったかも知れません。私の絶壁頭も亡き祖父に似ています(笑) 

台風の余波がなかなか収まりませんが夏休み後半は穏やかに楽しく過ごしたいですね。麗子        

 

 

コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

病む人のやや重たげな夏蒲団  麗子

2023年08月11日 | Weblog

酷暑の夏、作者は一人暮らしで体調をくずしたお姑さんをしばらく家に呼び看病されました。

和室に布団を敷き、夏布団とタオルケット両方を用意して時々ふすまをそっと開けて「大丈夫かな」と寝ている姿を確認する日が続いたようです。

その優しい思いはたくさんの方の共感を得ました。

 須美さん: やや重たげのややがよく効いている。

 容子さん: 「やや重たげ」が効いています。

 童子さん: あまり身動きされないのでしょうか。そのせいか薄い夏布団さえ負担に見える。病人を思いやる心がひしひしと伝わります。

 千香子さん: 母が 財布に小銭が入っていると 重い と 言っていたのが実感できる母の歳になりました。 重たげ という言葉に、病人の気持ちがわかる細かい気配りを感じました。

 晴代さん: *やや*という言葉で状況がわかる気がします。

 亜子さん: 夏蒲団は薄めの軽やかな印象を受けるが、病人のかぶった布団がやや重たげなのは病気の状態があまりよくないかも知れずせつない。

 郁子: 健康ならば、タオルケットも足で蹴飛ばすのでしょうが 病んでいる人は、夏の薄い布団にも重さを感じる。本当に重いのではなく気持ちの沈みがのって重いのでしょう。少々熱もあって汗をかき湿っているかもしれない。

 

こちらもお姑さんを思う句です。

  ほぼ白寿スイカ頼りの日々となり  須美

(あと半年で白寿を迎える姑は食欲が落ちてしまい水分をとるのもままならなくなりました。ただスイカは好んでいてスイカが頼りです )

 竹葉さん: 最初はよく分からなかったのですが、もう百歳近くなり食欲も気力もわかないけれど、スイカは大好きでそれを食べることで命を繋いでいるという句だと思いました。スイカの甘さ色水分が輝いてます。

 容子さん: スイカは偉大です。

 能登さん: 頑張って、夏を乗り越えられんことを。

 

  

お年寄りや、病気、介護を受ける方には、今年は特に厳しい毎日と思います。

身内を案じる思いとともに、大勢の方が故郷に帰省されるのでしょう。お盆ラッシュが始まりました。

暑さに加え、ガソリン価格や諸物価高騰の中での大移動。台風も接近中です。

大きな事故もなく無事に過ごされますよう祈らずにはいられません。  郁子

 

コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

来訪のわけにはふれず百合の蕊  晴代

2023年08月10日 | Weblog

自由題でトップ賞になった晴代さんの句です。蕊は「しべ」と読みます。雄しべと雌しべのこと。漢字を見ると心が三つもありますね。

どなたが、なぜ来たのか。。。通された客間で耳をひそめている百合の花でしょうか?何か訳ありの感じがしますが、想像が膨らむ句です。百合の雌しべの固い感じが緊張感を孕んでいる気もしました。雄しべの花粉を嫌う人もいます。

頂いたコメントをご紹介します。

能登さん:百合の蕊が生きていますね。

郁子さん:大人の句という風情が。百合の蕊に神秘的なイメージがある。何か気になる。

竹葉さん:百合は来訪者が持ってきたのでしょうね。きっと大きな花で雌しべからいい匂いが玄関いっぱいに広がってたのでしょう。「訳には触れず」だけれど百合こそが訳だと想像させてもらえる面白い句だと思います。

童子さん:百合の芯が、ただならぬ「わけ」を象徴しているようでとても魅きつけられました。

       ★★★

晴代さんは以前、

     屈託の顔の手土産さくらんぼ 

という句を作っておられます。2018年6月の句会でした。この時は訳ありの相談事と作者は感じたそうですが、はてさて、今回はどんな訪問だったのでしょうか?聞いて欲しいけど言えない悩みか、それともふらっと立ち寄ったのでしょうか?ちなみに百合の花言葉は

「純粋」「無垢」「威厳」です。どれがぴったり来るでしょうか?麗子

 

コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

灼熱や日傘の香り祖母の顔   泉

2023年08月05日 | Weblog

身の危険を感じるほどの熱波にさらされる毎日。

熱中症警戒アラートが連日発表されています.が皆さま、いかがおすごしでしょうか。

 

しばらく綾部に帰っていらしたという作者、あちらは昼間は名古屋と同じくらい暑いようですが夕方から涼しくなり

夜になると窓を閉めて寝られたということです。

陽が沈むと、山からひや~っとした風が降りてくる緑の多い自然環境はやはり住みやすいのでしょうね、

お隣のまち福知山では出生率が伸びていると聞きます。この句にある灼熱も都会で感じるようなものとは少し違う、健康的なものかもしれません。

コメントです。

 竹葉さん: 香りは不思議なものでそれに結びつく絵が浮かびますね。品のいいお祖母様の白い刺繍でもしてありそうな日傘が浮かびました。

 

 私も、日傘の香りというのに魅かれました。母が珍しくお出掛けするとき、薄っすらお化粧をしてレースの日傘を掲げます。

子ども心にも母が綺麗に見えた瞬間(笑) 日傘には淡いおしろいの匂いが重なるイメージです。

紫外線防御などと誰も言わなかった古き良き時代ですね。

 

  

覆面に黒ずくめといういで立ちも珍しくなくなりました。

UVカットの真っ白なお顔に「あら、お化粧仮面ですわね」と冷やかすと

「いいえ。私、歌舞伎役者でございます」とユーモアで返したご婦人がいらしたとか。。

最近大笑いのお話でした。   郁子

 

 

 

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

残されし日々の日傘を惜しみけり  亜子

2023年08月04日 | Weblog

この句に票をいれた晴代さんは、選んだもののいまひとつ読み切れないとコメントされました。確かに

何が「残されし」ものだったのかで、分かれるところかもしれません。

「残された日傘」と思うと、忘れもの?か形見の傘か?少々古びた年代ものかもしれない。

日傘から浮かぶ持ち主の人生や、愛しく思う気持ちを詠んだともとれます。

そこでこの句の背景を伺いました。

作者 亜子さんは、南山大チャペルでの朗読会におひとりで出かけました。初めて行く場所に加えその日は暑かった。途中で行き方を尋ねたりしながら、夢中で歩いてようやく行き着いたそうです。達成感はあったものの、来年も日傘をさして歩いて外出できるかわからないと思った感慨の句ということでした。

 (そうだったのですね。)

寄せられたコメントを紹介します。

童子さん: 誰かの残された日々か、自分に残された日々なのか。毎日を大切に過ごしたいと思わせてくれる句です。

千香子さん: この日傘もどれだけ使うのだろうか、 愛しくなる 、心残りに思うという気持ち に共感しました 

遅足さんもとられました。 日傘は自分の足で意志でしっかり大地を踏みしめる際の「相棒」なのだと気づかされました。

 

   

この朗読会は、石牟礼道子「苦界浄土」より「天の魚」。

私もご一緒したいと思いながら用事が入り叶わなかったものです。

暑いさなか、日傘をさして坂道を登る小柄な作者の姿が浮かびます。 

次回は必ず一緒に行きましょうね。ともに日傘をさして。  郁子

 

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

尾張野の空に日傘をひらきけり  遅足

2023年08月03日 | Weblog

朝から日傘が欠かせない日々が続きます。皆さまお元気でいらっしゃいますか?

大阪から名古屋に来た36年前。大阪より名古屋の夏の方が暑いことに気づきました。尾張野の空に日傘は必需品です。遅足さんのこの句。空に日傘を開く。なんだかダイナミックな感じがしました。

容子さん:「尾張野」という言葉と、傘をひらく瞬間の風情が良いです。

千香子さん:尾張野という言葉は あまりなじみがありませんでしたが

尾張野の四季とかいろいろ使われていると知りました。

亜子さん:尾張野は尾張平野のことだと思う。日傘との取り合わせがすばらしい。ドローンで上から見るように揖斐川や木曽川、山並みまでが見えるスケールの大きな句。

 

そして、こちらは私の句。

       武家屋敷静かに日傘進みけり  麗子

母の故郷大分県杵築市には坂のある武家屋敷が残っています。その坂を静かに進む着物姿の女性をイメージして作りました。亡き母の幻影だったかも知れません。

童子さん:日傘の人もこの句を詠った人も麗人に違いないw。静かに進みけりが武家屋敷の空気を一切乱していない感。今回一番惹かれた句です。

 

ありがとうございました。麗人ではありませんが麗子でした。

皆様今日も一日乗り越えましょう。

 

 

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする