異例520人体制…120カ所を強制捜査 耐震偽装 ZAKZAK 2005/12/20
耐震強度偽装事件でついに入った捜査のメス。警視庁などの合同捜査本部は520人の捜査員を投入し、約120カ所に及ぶ空前の大捜索で最大の闇である「責任の所在」をあぶり出す。姉歯秀次元1級建築士(48)の暴走か、業界に蔓延する大掛かりな組織ぐるみの犯行か-。専門的な知識を要する建築設計に捜査本部は発覚当初から情報収集に乗り出しており、真相解明を急ぐ方針だ。
【異例の大捜査網】
20日午前、家宅捜索が入ったのは姉歯事務所やヒューザー、木村建設といった殺人マンションの直接的な関係先のほか、ホテル建設で木村建設を経営指導した総合経営研究所や総研幹部宅、建築確認でインチキを見逃した民間確認検査機関のイーホームズ(新宿区)、日本ERI(港区)など-。
これらの関係先は、国土交通省に刑事告発された4物件に関係するありとあらゆる企業や個人宅で約120カ所におよぶ。「名前が挙がったものは全部やる」(警視庁幹部)という異例の広大な捜査網は、姉歯氏の建築基準法違反容疑を裏付ける以上に、「共犯」の存在を探る目的が大きい。
【罪のなすりつけ】
すでに衆院国土交通委員会の証人喚問で姉歯氏は、施工者木村建設の篠塚明元東京支店長を名指しして「コスト削減のため鉄筋を減らすようにプレッシャーをかけられた」と主張。これに対し篠塚氏は「減らせと言ったが法令の範囲内という認識」と反論し、議論は平行線をたどった。
このほか、姉歯氏は建築主のヒューザーについて「直接的な圧力はないが、坪単価は決まっていた」とし、間接的な圧力があったと主張。木村建設の木村盛好社長(73)は姉歯氏が設計を下請けした子会社の平成設計が「総研の指示で動いていた」と証言するなど、偽装には微妙なパワーバランスが見え隠れする。
【複雑な背後関係】
しかし、現在のところ正直に罪を認めているのは姉歯氏のみで、それ以外はさまざまな理由を付けて“シロ”を主張。捜査本部は大規模な捜索で、複雑な背後関係の解明を目指す。
また、イーホームズの藤田東吾社長(44)は問題公表前の10月27日、小嶋社長から「『公表して何の意味がある。公表するなら徹底的にたたく』といわれた」と主張。昨年4月にもアトラス設計(渋谷区)が「姉歯物件」の異常性を指摘したものの、日本ERIが黙殺するなど、捜査本部は組織的な隠蔽(いんぺい)の疑いにも注目している。
【捜査の壁】
捜査の壁となるのが建築設計の専門性。マンションの構造計算書はA4判で約300ページにもおよぶ。その1枚1枚に「素人では数字の意味が分からない」(専門家)という数字や記号の羅列で、押収された捜査資料を読み解くのに「数カ月はかかる」(捜査関係者)ほどだという。
捜査本部は告発前に国土交通省から計算書のコピーを入手し、同省職員から数字の意味やプログラムの使用方法の説明を受け、偽装の実態を裏付ける方針。
また、捜査対象が巨大な建築物であることも異例中の異例。マンションやホテルが実際に耐震強度が不足していることを立証する必要もある。
立証には高度な専門性が不可欠で、捜査本部は場合によっては外部の公的機関に捜査協力を依頼。超音波装置やエックス線装置などを使った「非破壊検査」で柱や梁(はり)の太さ、鉄筋の本数などを調べるが、取り壊しが決まった建物は、捜査員が解体現場に足を運び、検証することになりそうだ
遂に、耐震偽装問題で関係機関に強制捜査が行われたという感じですが、その責任の所在は明確にしていただきたいと思います。
それと共に、耐震偽装マンションを購入された被害者の方の完璧な救済措置も、お正月を前に提示をすることが急務でもあります。
何を信用して、一生に一度の買い物をすればいいのかわからなくなってしまった事件です。