つぶやき、或は三文小説のやうな。

自由律俳句になりそうな、ならなそうな何かを綴ってみる。物置のような実験室。

彷徨

2017-01-15 05:45:47 | 文もどき
袖振り合うも多生の縁。
運命の人とは、赤い糸で結ばれている。

えにし、と言う文字には糸がついていて、その糸はしは釣瓶からしたたる雫なのだそうだ。
すれ違うたびに糸端は誰かを絡め取りながらながくながく延びて行く。道ゆけば、誰かのゆるく張った糸に絡め取られて行く。それはもう蜘蛛の巣なんて凌駕する、大きくて緻密なネットワーク。
見えないものの存在を、かつて誰もが認識していて、その息遣いすら身近に感じていた頃。きっとこのネットは確かに在って、誰もが感じていたのだろう。
いつの間に、失ってしまったのだろう。
こんなにも美しく完璧なセーフティネットを織り上げたのは確かに私たちのはずなのに。