つぶやき、或は三文小説のやうな。

自由律俳句になりそうな、ならなそうな何かを綴ってみる。物置のような実験室。

読書の風景

2019-04-15 12:38:10 | 文もどき
頁をめくるたび、ああ、始まってしまう。と思う。
見開きの右側に重みが乗ってくると、ああ、終わってしまう。と思う。
単語をひとつ、どこで見たのだっけと戻っていき、そこからまた頁をめくり始める。見開きの左側が頼もしく指を押してくれて、私はなんだか安心する。
降りる駅を乗りすごし、少しだけ肩をそびやかし、章末で本を閉じる。
人気のないプラットフォームを横切っていくとき、私の手の中には未練たらしく本がある。すきあらば、頁をめくれるように。