つぶやき、或は三文小説のやうな。

自由律俳句になりそうな、ならなそうな何かを綴ってみる。物置のような実験室。

2015-10-28 08:17:49 | 文もどき
髭というものは、どこに生えるものを指して呼ぶのか。
その毛はあきらかに一週間は彼の顎骨の近く首のあたりに鎮座しているはずだ。摩擦によって先端が痩せ、いかにも伸びている風情である。
しかも、剃り跡の群れからは一センチほど外れていて、そよぐには短く、重力の影響を受けるほどには長くない。首のしわに追従するようにひょう、としている。
さて、彼はこれを髭とは区別していて、独自の発展を認めているものか。電気シェーバーの通り道に当たらないだけで、髭として認知すらしていないのか。
青々とした剃り跡は新しく、清潔な身なりと相俟って企業人たるに相応しい容貌の横顔にのぞく一本の毛。さて、それをなんと呼ぼうか。