左腕坊主

ハンドボール選手、櫛田亮介の2006年4月~2008年4月までを綴ったブログ

一期一会

2008年01月05日 | 左膝脱臼回復記録
おかげさまで引きこもりな生活からは脱出しました。

昨日はカールハインツと食料調達の買物に行ってきました。

先日の手術後、再度左足はサポーターでがっちり固められているので、車の運転ができません。

自分一人では買物すら行けません。




昨日の買い物中の二人の会話の一部です。

僕『今日はロージー(奥さん)何してんの???仕事???』

カレ『ああ、家でズボンにアイロンかけとるわい』

僕『何で???パーティーでもあるんか???笑』

カールハインツ極上の笑顔『明日なクシが来るんじゃーー』

二人で大爆笑。

多分カールハインツは僕を呼ぶって事を決めていたわけではなく、話の流れでアドリブ的にこうなってしまったのがカールハインツ自身、自分で面白かったらしく買い物中ずっと笑っていました。

それにしてもなんちゅう男前なアドリブ&誘い方なんでしょうか。




と言うわけで今日は昼過ぎから、カールハインツの家に行ってきました。

僕がカールハインツの家に着くと奥さんのロージが玄関に迎えに来てくれました。

ロージーは『足はどう???』といつも体をなでなでしてくれます。

カールハインツはスキーのジャンプ競技をテレビで観ていました。ちょうど日本人トップジャンパーの葛西選手がジャンプしていました。

カールハインツが穿いていたのはジャージでした。アイロンがけされたズボンではありませんでした。『今日絶対にこの事突っ込んだろうっと』この時は密かに思いました。

僕が着いてから、しばらくしてカールハインツ夫婦の友人夫婦かご近所さんか分かりませんが老夫婦も訪ねてきました。

カールハインツ夫婦、老夫婦、僕の5人でのカフェタイム。

老夫婦とはもちろん初対面です。

こういうごく普通の週末の自分達のプライベートなカフェタイムにこれまた普通に僕を呼んでくれて嬉しく思いました。

老夫婦のご主人は体が少し不自由なのか、奥さんがケーキを切ってあげたり、コーヒーカップを持たせてあげたりご主人を優しく気遣っていました。

初対面の方には大体『何故、怪我したの????』『何故、ドイツに来たの???』『ドイツに来て何年???』『ドイツの事好き???』『日本では何していたの???』『日本ではどこに住んでいたの???』なんて事を聞かれます。

たどたどしいドイツ語で答えながら徐々に打ち解けていきます。

そんな感じで、ゆったりとした時間を過ごしました。

今日は正真正銘ののんびりタイムでした。笑





ご主人がトイレに行った時に奥さんがそっと教えてくれました。

『主人はアルツハイマーなの、だから記憶が無くなっていくの』

医学的に厳密に言うとアルツハイマーはこんな簡単なものではないと思いますが、奥さんが説明してくれた言葉の中のアルツハイマーと記憶が無くなっていくと言う事だけははっきりと聞き取れました。

カールハインツ夫婦もこのご主人のアルツハイマーの事は言うまでも無く知っています。





日も暮れて5人で夕食の時間になり、カールハインツ夫婦の手料理をいただきました。牛タンをブイヨンやら塩コショウやらで長時間煮込んだ料理はほんまにおいしかったです。カールハインツは料理のできるおっちゃんなのです。カールハインツも僕が食べるのも料理するのも好きな事を知っています。だから気が合うって部分は大きいと思います。ばっちり牛タンレシピを聞いときました。

夕食後、リビングに席を移し5人でハンドボールのドイツ対モンテネグロの試合をテレビ観戦しました。ドイツではこうやってごく当たり前のようにハンドボールがテレビで楽しめます。

ドイツがDFシステムを5:1DFに変えた時でした。

カールハインツがテレビを指差して『クシは5:1DFのトップに出て守るのが得意なんだ。また観たいなぁ』と老夫婦に説明していました。

こんな会話日本ではなかなか聞けないなぁとしみじみ感じました。

67歳のどこにでもいるおじさんが食後にハンドボール観ながら5:1DFとかあんまり言わないですよね。笑

そして、ハンドボールをテレビ観戦し終わってさっき帰ってきたところです。

ちなみに、カールハインツにアイロンがけのズボン穿いてない事突っ込み忘れてきました。




当たり前のように家に呼んでくれるカールハインツ夫婦ですが、僕はこの二人の優しさを当たり前に感じずに感謝したいと思います。

怪我を治してもう一度コートに立つという目標に加えて、この二人にもう一度僕がハンドボールをしているところを観て貰いたいという新しいモチベーションが生まれてきました。




アルツハイマーをわずらうご主人は今日の事を忘れてしまうかもしれません。

僕もズボンの事突っ込み忘れるかもしれません。いやいや、実際突っ込み忘れてしまいました。

けれども別れ際、そのご主人に痛いくらいに手を握られた事、新しいモチベーションを持たせてくれた事、そんなごくありふれた週末の事は僕は忘れません。



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