昨日はアウェーでの『HSG Neudorf/Döbeln』戦だった。
『HSG Neudorf/Döbeln』は現在3位。試合前から厳しい試合になる事は容易に想像できた。
選手、スタッフ、スポンサーそしてサポーター。ピルナに関わる全ての人間が昨日のアウェー戦の大切さを知っていた。事実ピルナバス同乗のサポーター数はいつものアウェー戦より倍くらいだった。
当初試合開始予定時刻は17:00からだったのだが、どういうわけか何度かの調整を経て14:30に変更されていた。この理由は試合後に知る事となる・・・
前回の対戦でお互いの事を覚えていたので試合会場に到着して相手チームの選手と軽く挨拶を交わした。黄色の靴のエースがその相手。
試合前のミーティングで『DFは6:0DFでスタートするけど、クシが45度のDFに入って牽制入れながら守ってくれ』とマテアスに告げられた。
これは相手の黄色い靴のエースを警戒しての作戦だ。この黄色い靴の男は現在得点ランキング6位で15試合で106得点を叩き出している。
全体ミーティング後マテアスと個人的に話をした。
『相手のエースが左45度にポジションを取っている時は、俺が牽制しながら守るのは分かった。このエースがポジションチェンジをしてセンターや右45度に移動した時はどうする?俺がそのまま真ん中で出て5:1DFに移行するか、そこまでは追わずに俺は45度に残るか?』
相手もアホではないので、ピルナのこのDFに対しての最近はしっかりと対策を講じてくる事が多い。その一つの対策として上記のポジションチェンジがある。
マテアスは少し考えながら『まずは45度に残って守ろう。それでやられるようなら、真ん中で守るように指示を出す。話しながらやろう』と言った。
僕は『分かった。コミニュケーション取りながらやろう』と返した。
自分の役割をしっかり把握して試合に臨んだ。
試合開始。僕はOFは右サイド、DFは右45度でスタートから出場。立ち上がりから一方的に『HSG Neudorf/Döbeln』ペースが続く。
さすが上位チーム、尚且つアウェーゲーム。そんなに甘くはない。ガイチ、アンドレアス、ペーパーのスタメン3人がベンチに戻される。シュートがなかなか決まらない。
前半10分過ぎに3対8と5点のリードを許す。
肝心のDFだが、試合開始直後こそ黄色い靴のエースは左45度でプレーしていた。しかしファーストコンタクトで僕ががっちり守ってから、センターや右45度にポジションをチェンジして攻めてくる。
マテアスに『どうする真ん中に出ようか?』とアイコンタクトする。マテアスはもう少し様子を見よう的な返し。
攻撃ではペーパーの代わりに入った男前マイクのシュートが何本か決まり徐々に差を詰めだす。
前半15分過ぎ少しピルナが追い上げた所で『HSG Neudorf/Döbeln』はタイムアウト。このタイミングでマテアスから『攻撃は一休みでDFはそのまま入ってくれ』と指示を受ける。ここまでシュートチャンスは一度もなかった。
アンドレアスと僕がDFのみ。DFに関してはこの二人が中心にならなくてはいけない。ベンチに戻るたびに少しづつ修正していった。
その修正点とはこうだ。相手の黄色い靴の男が左45度でプレーしている時は基本的(図1)に僕とマッチアップなので問題ない。僕が守る。今回は手っ取り早く真ん中の4対4に絞っての図だ。
図1
敵 敵 黄色い靴
僕
味方 味方 敵 アンドレ
そいつがセンターに移動した時は基本的(図2)に僕はそのまま自分のDFポジションで守る。
図2
敵 黄色い靴 敵
味方 味方 敵 アンドレ 僕
しかしその時の対面をマークしつつもセンターの黄色い靴の男が前を狙いそうな時、いい状態でボールを持ちそうな時は僕が自分のマークを捨ててクロスアタック(図3)を掛けて黄色い靴の男を押さえに行く。本来こいつのマークはアンドレアスになるんだけど、僕が自分のマークを捨てて黄色い靴の男にプレスを掛けに行くのでアンドレアスが僕の後方からスライドする形で本来僕がマークしている45度へ移動する。
図3
敵 黄色い靴 敵
僕
味方 味方 敵 →アンドレ
クロスアタックを掛けて守ると自分のマークを捨てる事になるので失敗した時のリスクはでかい。ほんまに一瞬のタイミングが命だ。当然失敗して失点に繋がると容赦なく周りからは責められる。自分のマークを最優先する傾向にあるうちのチームでこのDFを理解してる奴、実践出来る奴はそんなに多くない。今でも僕の両隣のDFによってはこのDFが使えない時も少なくない。
しかし多くの実践を重ねアンドレアスとは少しのやり取りで分かり合えるようになっている。相手がうちのDFにポジションチェンジで対応してきている以上、多少のリスクを背負ってでも黄色い靴の男を仕留めにいく必要があった。
このDFが徐々に相手の攻撃を抑え始める。前半開始直後から相手に終始リードは許したままだが前半を終える時には12対13の1点差まで追い上げた。
ハーフタイムのロッカールームではマテアスが全員を座らせて鼓舞していた。
後半開始。後半のスタート僕はDFのみ基本的には前半の途中からと同じだ。今日は全体的に攻撃の調子が良くない、大量得点は望めない。DFが勝敗を分ける。
後半の立ち上がりピルナの鉄壁のDFが機能する。後半の立ち上がりで直ぐに同点に追いついた。ここからは一進一退の攻防が続く。
我慢比べだ。
相手のキープレーヤーは攻め切れない事に業を煮やし、僕を避けてとうとう右45度にまでポジションを移動させていた。(図4)
図4
黄色い靴 敵 敵
味方 味方 敵 アンドレ 僕
こうなるとこちらの思う壺だ。幾らいいシューターでも右利きの選手がそう何本もこのポジションからシュートを決める事は容易ではない。もともとこのポジションをしているならわかるが、本来黄色い靴の男はこのポジションではない。
相手は攻め手を失い、ピルナがわずかにリードする。しかし相手もそう簡単にリードを広げさせてくれない。1、2点差の攻防が続く。
そんな中アクシゼントが僕を襲った。DFで隣の選手のフォローに行った際に敵の選手と味方の選手が縺れながら僕の上に突っ込んできた。右膝が伸びきったまま2人分の体重がそこに乗っかってきた。僕はうずくまる『これはヤバイ・・・』直ぐにフィジカルサポートのシモーネとマテアスが飛んできた。
ここはアウェーだ。すさまじいまでのブーイング。『この野郎日本人が、痛いふりして時間かかせいでんじゃねーぞ!!!』まあ言葉は分からんけどこんなところだろう。
シモーネに『ゆっくり膝を曲げれる???ゆっくりよ、クシ』と言われる。
超アウェーの大ブーイングの中、それを掻き消すほどの『クシ、クシ、クシ、クシ』というピルナサポーターからの『クシコール』が聞こえてきた。
幸い何とか動けそうなのでゆっくり立ち上がる。マテアスに『どうだ?』と聞かれる。僕は『やらしてくれ』と意思を示した。つーかあの『クシコール』を耳にしたらやるしかねーよ。戦術的にも僕を嫌がって相手の黄色い靴の男はポジションを右45度にかえている。ここで引っ込むわけには行かなかった。
ゲーム再開。こういう後のワンプレーは大事だ。敵にも味方にもやれる、大丈夫という事を示さないといけない。2mを超える相手の突進を僕は正面からがっちり止めた。
試合は進む。後半ラスト15分をきり本当に体力的にも精神的にも脳みそも一番疲れる時間帯。依然として大接戦は続く。僕はこの時間もう一度右サイドで攻撃も出ていた。一瞬も気を抜けない。集中。チリチリしてくる。
わずかのリードを保ちながら終盤へ。サイドシュートのチャンスはただの一度もない。チャンスがきたら絶対に決めてやる。それだけはいつも自分に言い聞かせていた。
勝負ところでマルティンがミドルシュートを決める。さすがだ。
相手も残り時間と点差を考えてマンツーマンでプレスを仕掛けてくる。
落ち着いてボールを回す。実際の時計よりもかなり遅く僕の中での時間はゆっくりと進む。早く終わってくれ。
タイムアップ。
24対22。何とかほんまにきつい試合をものにした。
試合後はしばらく放心状態だった。動けなかった。
全員でサポーター達の下に駆け寄る。
マテアス、アンドレアス、ラディ等から『スーパーDF!!!』と抱きかかえられた。
試合後敵のサポーターから『DFすげーな。ビールご馳走させてくれ』と言われほんまにビールを奢ってくれた。
その奢ってもらったビールを片手に試合時間が変更になった理由を知る事となるのだが、それは後日に書く事にしよう。
試合から一夜明け、体全体にかなりの疲労はあるものの幸い右膝は思ったほど悪くはないので一安心。後でペーパーとスタニスとサウナでも行ってこよう。
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