お多福 満腹 大福帳

金沢でお芝居にかかわっています。
今かかわっている舞台などの情報や、お芝居についての思いなど書いていきます

「土田英生戯曲講座」報告レポート  (2日目)

2006年09月12日 | 戯曲講座
さて、2日目。
昨日欠席されていたうちの1名の方がこの日より参加。

私と一緒に聴講生として参加していた方が、土田さんの講座のあまりの面白さに惹かれて、
本日より正式な受講生となりました。

昨日の講座の補足として、戯曲のテーマについてのお話がありました。
誰が見ても聞いても、当然だと思う正しいこと、例えば
「愛は大事だ」とか「争うのはよくない」とか、
そういう当たり前の正しいこと(共同幻想)を
大上段にかまえた芝居をすることがいいのではなく、
むしろ観客が見たいのは
個人の心にうずまくとんでもない思い(個的幻想)を表現してもいいのだということ。
むしろそのほうが、興味をひく。
大事なのはその心のつぶやきをどう表現するかが大事。
自分のなかにある甘さを自覚した上で、
観客に自分の思いを伝えること。

そんな説明をうけたうえで、昨日出た宿題、
自分が感動したこと、心が動いた瞬間について発表することになりました。

10人の参加者それぞれ(聴講の私も参加しました)、
様々な自分の心の動きをみんなの前で話します。
土田さんは、一生懸命話しての言葉を聞き、みんなに伝わりにくかったところを
うまく言葉を引き出して話しを深めていきました。
私は、ずっと自分の心のなかにひっかかっていることを話しました。
ほんとは、もっと無難な表層的なことを話そうと思っていたのですが、
ぶだんは触れないようにして避けてきたことを、この際人前で話すことで、
自分自身を見つめてみようと思いました。
思ったよりは、冷静に客観的に話せたのが自分でも驚きでした。

そのあと、今度は実際に台詞を考えてみようということになりました。
土田さん曰く、上手い台詞を考えるのが目的ではなく、
与えられた条件のなかで悩むことが目的とのこと。
正解があるわけではないので、とにかくいろいろ頭を悩ましてみましょうということで、
与えられた条件は、
別れ際に相手にまた会いたいということを、間接的にさりげなく気づかせるひとこと。
相手は、べつに異性に限られたわけではないし、
状況や相手との関係も各自で考えていいということでしたが、
………む、むずかしい。

さりげなく、というのがすごく難しい。

ついつい、ストレートな表現をしてしまったり、
なんだかひねりすぎてわかりづらかったり。

本やCDを貸し借りするとか、相手の好物が手に入るからとか、
何か小道具をいれることでさりげなくなるものだということを感じました。

そのあと、いよいよ会話を書いてみることになりました。
条件は、AとB2人の会話5行で
観客にどちらか片方がもうじき死ぬのだということを気づかせること。
NGワードは「死ぬ」という直接的なことば。
あとは、AとBとの関係も性別も年齢も場所も自由。

これもかなり悩みました。
なかには、何パターンもすらすら書いている人もいましたが、
かなり時間をかけて何度も推敲しながら考えました。
途中土田さんに見せると、まずいところを指摘してくれるので、
その部分を他の表現や設定に替えて考え直します。

最終的に順番にその会話を、発表します。
自分ひとりで読んでもいいし、
参加者のなかから自分でキャスティングして読んでもらってもいいということで、
私も、母役になったり、妻役になったりして参加しました。
私が書いた会話は、他の参加者に読んで貰いました。

別れ際のひとことにしろ、この2人の会話にしろ、
自分でやってみて驚いた事が分かりました。
私はなんだか、すかした格好いい嘘くさい台詞をついつい書いてしまうのです。
ふだん、こんなこと言わんだろう~というようなキザなことを書く自分に呆れました。
気をつけないとある意味ありきたり、
どこかで見たり聞いたりしたことのある陳腐な世界になってしまうよ、
と土田さんに注意されました。

生活感のある、手触りのあるリアルな台詞のなかに切なさがあり、
観ている人にも伝わるのだということ。
私は自分の死期を察した主婦が、
夫にゴミの収集日やクリーニング屋さんがまわってくる日を伝えて、
自分がいなくてもしっかりしてねと伝える設定にしたのですが、
どうしてもラストの台詞が自然にならないままタイムアウトでした。

他の人たちが書いた台詞を聞き、ああその手があったのかとか、
この方はこんなロマンチストだったのかとか、
わっ独創的!と感じたり、とても面白い時間でした。

次回12月の講座までに、各自書きたいものを考えてみようと宿題が出ました。
それは、べつに決まったかたちではなく、
あらすじを考えてもいいし、どうしてもこの台詞を言わせたいとか、
こういうシーンを作りたいという断片でもいいとのこと。
断片をつなぎ合わせて、作品にしていくやりかたもあるし、
書き始めたいひとは書いてみてもいい、
分からないことや疑問に思ったことがあればメールをしてくれれば、
多少時間差はあるけれど答えます。
という心強い土田さんのことば。

私は、土田さんから
「聴講生ではなく、受講生として
 さっきみんなの前で話した心にひっかかっている話しを書いてみたらいいのに」と言われました。

ということで、現在思案中です。

役者として、戯曲がどういう風にできていくのかを学ぼうと思ったのと、
土田さんの作品が好きで書かれたご本人にお会いしてみたいという理由で、
軽い気持ちで聴講したのですが…。

土田さんの講座で、ちょっと書いてみたいなという気持ちもわいてきました。
それほど、土田さんの講座は分かりやすく積極的な気持ちになるものです。

今回の受講生には、劇団でオリジナル脚本を書いている人の参加は1名のみです。
あとは、フリーの人だったり、今までの戯曲講座の常連の方。
高校生が1名いることをのぞけば、年齢層の高い受講生ばかりです。
若手の劇団の人たちが受けたらどんなに刺激になるだろうかという内容なのに、
なんだかすごくもったいないです。

劇団を運営していると、自分の劇団の公演や稽古を優先しがちだし、
それは仕方がないことですが今までの自分のやり方を見直すいい機会を逃すのは
残念なことだと思います。

せめて、聴講してみるだけでもとても勉強になるはずです。