お多福 満腹 大福帳

金沢でお芝居にかかわっています。
今かかわっている舞台などの情報や、お芝居についての思いなど書いていきます

前説について

2006年09月06日 | 観劇にまつわるあれこれ
羅針盤の公演の前説が、私にはちょっと辛かったという記事を書きました。
私だけかと思ったら、同じような意見のひとも少しいたようです。
もちろん、とても可愛くて楽しくて良かったと言っている人もいます。
人それぞれです。

ちょっと今日は、前説について書いてみたいと思います。

芸術村ができるまで、劇団の公演は大きなホールで行ってきました。
そこでは、ほとんどの公演が幕が上がる前に舞台にひとが出てきて注意事項を説明する
「前説」ということをしていなかったように記憶しています。
夫が昔代表をつとめていた劇団110SHOWで、夫が辞める少し前あたりから、
劇団員が出てきて前説をする方式をとっていたように思いますが、
もう10数年以上も前のことなので定かではありません。

だいたい、携帯電話や音の出る器機がさほど普及していなかった(もしくは存在すらなかった)時には、
注意事項などそんなになかったのです。
大きなホールでの公演の場合、非常口の説明なども別段義務づけられていなかったようだし。

しかし、小学生ですら携帯電話を持とうかという時代になり、
実際あれほど口を酸っぱくして注意しても上演中に着信音を鳴らすひとが減らない現在、
前説で注意を促すことはせざるを得ないようです。
それに芸術村は、古い建造物のため防災面でもかなり神経を使っているため、
非常口の説明は必須となっています。

芸術村のドラマ工房を使用する各団体は、それぞれ工夫を凝らしてこの前説をしています。

劇団の代表が出てきて、ご挨拶を含めてスムーズに説明するところ。
その公演に出演していない、劇団の中堅役者が面白おかしくするところ。
または、入ったばかりの新人が、初々しくたどたどしくするところ。
今回の羅針盤のように、劇団外部の方にお願いして前説だけを独立したかたちでやるところ。
もしくは、事前に録音しておいたものを流すところ。
この録音したものも、劇団によってはDJ風にアレンジしたのを流すところもあれば、
オーソドックスに定番の文章をナレーションするところもあります。

以前、ステージアウラムーブメントとしてプロデュース公演を行った際は、
「ウィンズオブゴット」のときは、前説を担当する人にも役者たちと同じ特攻隊の服を着てもらって
敬礼をして出てもらいました。
「絢爛とか爛漫とか」のときは、劇中名前だけ出てくるお手伝いのおきぬを、
前説として舞台の火鉢に薬缶をかける芝居で登場させて、
お手伝いのおきぬが注意事項を説明しているというかたちをとりました。
お客さまがするっと、芝居の世界に入っていけるようにという演出の考えでした。


正直、私はこの前説でその劇団やその公演のカラーを判断しているところがあります。
前説のひとが、達者な喋りできちんと内容を観客に伝えていれば、
そこの団体は基礎訓練をちゃんとしているところなんだろうなと思うし、
声も小さく、目も泳いで、何を言っているのか分からない前説だと、
大丈夫なのか、この団体は…と心配になります。

えらくハイテンションだと、元気な劇団なんだなと思いますが、
それが自分にはどうしてもついていけないくらいのハイテンションだと、
これから始まる芝居も、自分は置いてけぼりになるのではないかと、
不安になり、始まる前から構えてしまいます。

センスのいい前説だと、その団体やこれから始まる芝居もセンスのいいものだろうと期待がもてます。

前説って、ほんとはとっても大事な存在だと思います。
そういう私は、実は前説をやったことがありません。
録音の前説は何度かやりましたが、人前に出て注意事項の説明をするのは、
多分私には難しいような気がします。