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毎週小説

一週間ペースで小説を進めて行きたいと思います

東風(コチ)の再会 14

2025-08-26 11:46:48 | ヒューマン
山路の友人佐藤は違う営業所だが、毎年の研修で話す様になってからは遊び仲間となり、一緒に月岡温泉に行ったりした。コンパニオン目当てで、有名な温泉でいい思いをしたかった。
しかしこの時は3次会まで引っ張り回され、支払いで8万円請求され受付で文句を言うと、お客様の自由意志ですので又よろしくお願いします、とコンパニオンも来て笑顔で送り出された。
その佐藤に、今自分が送迎している紺野家の話をした所、知っているとの事。
「紺野家に仕事があってね、金融関係の経営者らしいよ」
「そう、知らなかった」
「取引のある会社役員の運転をしてるんだけど、とても気を使っていて、頼まれたお届け物を運ばされたんだよ」
「何か高い品物?」
「料理屋に注文した特別料理で、自宅で会合が有る時はよく頼むらしく、100万単位の領収書を見た事がある。」
「日本の企業?」
「いや、元は中国らしいが、アジアに何ヶ所か拠点があるらしいよ」
「大規模だね」
「実は、僕の大先輩が一時警察公安課の運転をしていて、そこで紺野ファミリーの話題が出てたって」
山路は今まで考えていた以上の組織に、大きな闇を感じ、興味も増してきた。

紺野美沙子は、あせりと苛立ちで心療内科を受けようか、と本気で考えていた。
都心に有る営業所の1つを任されているのだが、成績は下から数えた方が早く、父親に仕事から外してくれと頼んでも聞き入れてくれなかった。
若過ぎる自分には無理だと言っても、母が千恵子と同じ年の頃は責任者になって活躍していた、と繰り返すだけだった。
日本人スタッフが少ないのがネックだが、ファミリーは正社員を入れたがらない。
田沢は紺野からゆっくり会いたい、とメールが何回もくるので、はっきり断わろうと会う事にした。
市川駅に迎えにいくと連絡がきたので、正面口で待っていると、黒のクラウンが前に止まり紺野の笑顔が見えた。













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東風(コチ)の再会 13

2025-08-23 09:58:28 | ヒューマン
山路はファミリー企業には慣れていた。
自身は在日韓国人で、両親が日本に着てから生まれたので日本しか知らなかった。
10才の時初めて韓国に連れていかれ、その後毎年行くようになった。
幾たび大歓迎され、親戚一同集まる会合は2日掛かりの大宴会になる。
社会人になってからは付き合いを敬遠し始めたが、行かないと親が責められるので仕方なく1日だけ出るようにしていた。
2年前両親が続けて亡くなり、その後1人で韓国の会合に出席した時、責任者の長老に呼び止められた。
それは、このファミリー組織はどこも似た用なもので年会費を集めている。
ところが山路家は3年前から納めていない。
まだ両親がいた頃で、幹事が数回催促したが納めていない。至急送金してくれと言われた。
金額を聞くと年間50万円だと、山路はそんな金どこにも無いし貯金はゼロと言ったら、ローンで150万円毎月少額でもいいからすぐに始めてくれ、と懇願され困ってしまった。
よほど親の責任で、自分は何も知らされてなかったと言いたいのを我慢した。

父が亡くなった年の正月は、2人でお詣りに行こうと誘われ、初めて母を残して出かけ、帰りに寿司屋に入ったが、父は殆ど食べずお茶ばかり飲んでいた。
あまりに食べないので、早く帰ろうと支払いを済ませた。
「今年からは、日本の生活だけを考えて働こうと考えている」
と、父がひとり事みたいに呟いたのを思い出した。
そういえば、あれからあまり口をきかなくなり、いき詰まった表情が多く感じられた。

山路は年会費を払わない事にして、連絡もしなかった。
両親と住んでいた賃貸ビルは高すぎるので、古くて安い独身向けのアパートに移った。
ギャンブル好きの自分にはピッタリで、小遣いは殆ど休日の競馬に注ぎ込んでいた。
日曜日に中山競馬場に午前中から行き、少し儲かったので中に入ってカツ丼を食べていると、同じ会社の友人に会った。




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東風(コチ)の再会 12

2025-07-14 23:37:14 | ヒューマン
田沢は休みの日になったが何も手につかず、紺野千恵子からのメールにも返信しなかった。
その週は連休で一度美沙子の見舞いに行ったが、受付で誰にも会いたがっていないと言われ、里見公園から江戸川を見渡せるベンチで途方にくれていると、紺野からのメールで今日どうしても会いたいので何処でも行くとの事。
田沢は彼女にはもう関わりたくなかったが、じっとしていられない精神状態で会いに行った。
市川駅近くの古くからある喫茶店に入った。
「田沢さん、何があったの?」 
「友人の健康状態が心配なんだけれど、僕は見守っているしかないから」
美沙子の名前は伏せておいた。
「長いお付き合いなの?」
「子供の頃から、親戚みたいな」
「そう、大変ね···」
千恵子は迷い始めていた。相談事は急がれているが切り出し難い。
これから大事な用件も控えているので、少し様子をみる為銀行通帳を返し、改めて予定を合わせて会う約束して別れた。

千恵子のファミリー企業の日本での予定は、一度台湾に引き上げて新体制で始めたが、日本に詳しい人材確保が難航していた。ファミリー意識が強いので日本人スタッフはまだ足りず、人材派遣会社から営業車の運転手を頼んでいた。
山路という40代半ば位の男性で、営業や物流システムの経験もあり、性格的に大らかなので頼みやすかった。
千恵子は帰りに、父と一緒に山路の車で送って貰う事が多く、話も豊富な経験談が面白かった。独身で気ままに暮したく、正社員には執着しない様だ。
千恵子の父にしても、解任しやすい契約社員を探していたので、募集の話をしてみた。
山路は考えていた。
今の仕事は臨時で、本来は内閣府の仕事があるので、派遣でなら来てもいいと答えた。
派遣となると会社に支払う分当然高くなる。
山路は会社に、給料が下がっても暫く行かせてくれと頼んだ。
紺野千恵子の存在と、その家族の仕事内容が妙に気になったからだ。
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東風(コチ)の再会 11

2025-06-28 21:51:10 | ヒューマン
美沙子は1か月の入院となった。
それも治療の結果次第で更に延びる事になる。
田沢と会う約束をしてすぐだったので隠せなくなり、入院先を知らせた週末に田沢が見舞いに来た。
「君の好きなスイーツ、これでよかった?」
「ありがとう、覚えていたのね」
美沙子の変わらぬ笑顔に涙が出そうになった。
「湯沢の時は元気そうに飲んでいたから、本当に驚いた」
「あの時は迷ってばかりで、飲み過ぎてしまったわ」
「話してくれればよかったのに」
「私、後悔はしたくなかったの」
そう言って美沙子は田沢の手を取った。
田沢は涙を止められなかった。
「新潟の母には検査入院したとだけ連絡しておいた、母も病気がちなので詳しく話さなかったけど、昨日病院宛で私に封筒が届いだの」
美沙子が読んだ封筒には、母が行けなくてすまないという謝罪に始まり、父についてどうしても話しておきたい今のうちにと、ためらいながら書き添えた内容だった。

母は父と結婚した時すでに妊娠していた。
他の男性の子供だった。
婚約を正式にしていた訳ではなかっが、将来を見据えた付き合いをしていた。
その時期に彼は車で得意先回りをしていたが、交差点で追い越しをかけて来たトラックに弾かれ、即死した。
茫然としている母を助けたのは、彼と同じ職場にいた先輩の父で、結婚まで発展していった。
母はずっと断っていたが、年老いた両親の安心した様子をみて、受け入れるしかない気持ちが強くなっていった。
父は美沙子の名付け親になり、美沙子の希望は何でも叶えてくれた。特に外国語の教育に熱心で、将来の海外勤務や生活を夢見る彼女を後押しした。
その父が2年前に亡くなったが、親というより異性を亡くしたショックが強かった。
母の告白を読んだ今、時おり夢の中に出てくる父に異性を感じていたのは、血縁ではない現実故なのかと自己嫌悪に陥り、誰も知らない国で消えるのが相応しいと想った。


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東風(コチ)の再会 10

2025-06-15 03:59:49 | ヒューマン
美沙子は、外山の上司である杉浦専務と3人で会合に出向いた。
偉い人が来る位だから大事な相手なのだろう。
早めについて30分過ぎた頃、4人連れの顧客がやって来た。
杉浦専務を見ると、その中の責任者らしい男が歩み寄り、
「専務さん、ご無沙汰していました」
と嬉しそうに握手してきた。
「お久し振りです、台湾では本当にお世話になりました」
「いいえ、家族の皆もとても会いたがっていますよ」
台湾の実業家らしい。
2時間過ぎるまで食事をして、専務と台湾の責任者だけ何処かに行き後は解散となった。
「近くで飲んで行きませんか?」外山が誘ってきたのでついて行く事にした。
「全員台湾の方々なんですか?」
「僕も詳しくは聞かされていなかったけど、名刺を貰ったので」
4枚の名刺を見せてくれたが、部長の肩書が付いた紺野正雄の名前が目に止まった。
「この紺野部長が責任者なの?」
「そうだけと」
美沙子は田沢と、紺野千恵子の名が出たばかりだったので気になった。
治療が一段落するまで連絡しないと決めておかないと、会いたい気持ちが強く揺らいでくる。
しかし紺野姓が頭から離れず、メールを送った。

田沢は美沙子のメールが来た数日前に紺野千恵子と会い、預金通帳を渡したばかりだったが、何故か不吉な予感がした。
美沙子が紺野家について詳しく教えてくれときたので、会って話さないかと送った所、了解の返事がきた。
湯沢の時以来一度も会わず、彼女も暫く会えない様なメモを思い出したが、同時に熱い想いが込み上げてきた。

美沙子は会える嬉しさはあったが、同時に病気の進行が不安で、次回の検査次第では入院治療が必要となると、約1ヶ月は掛かる。
田沢に全て話してしまった方が良いのか、いや話すには早すぎる、と迷いが尽きない。
いっそ病気で全てが終わってしまえば楽になる、と曇り空を仰いだ。

                    ー1ー

                    




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東風(コチ)の再会 9

2025-06-06 21:08:00 | ヒューマン
田沢は重い意識の中から目が覚めてきた。
少しずつ思いだしてみると、カクテルで乾杯した後ビールを2·3杯飲んだ頃から眠く、それも急に動けなくなり、薬で眠った後の様な頭痛がある。まさか彼女に仕組まれた訳ではないだろうが、体調もすっきりしない。
ゆっくり体を起こし、ベッドルームを見回しても、人の気配はなくしんとしている。
食事をした部屋に戻ってみると、片付けられたテーブルに便箋が一枚置いてあった。

田辺さん 私今日は早くから出かける予定なので支払いを済ませておきました。
忙しい時につきあって頂き有難うございました。
夕方には戻れると思いますので連絡します。
                     千恵子

まだぼんやりした頭で今日どうするか迷っていたが、急に美沙子の笑顔が浮かんで消えた。

美沙子は派遣会社から、以前と似た外資系の事務で通勤場所も近い所に行ける用になった。手伝い仕事の気楽な気持ちで人事担当と面会したが、彼女の履歴書をみて嬉しそうに話し始めた。
「同じ大学です」
外山と名乗って名刺を差出した担当者は田辺と同じ位の年で、田辺は4才年上だったから親しみやすさを感じた。
「勿体ないな、もっと稼げる職場ありますけど」
「いえ、今の事情があって、時間が経てば考えてみますけど」
「人と接する仕事は興味ありませんか?」
「特に嫌いという訳ではありませんけれど」
外山の説明では、重要人物相手で話の出来る人がいいらしい。
「来週末に経営者の集まりがあって、自分も出席の予定なので一緒に出てくれませんか、この会合は日本語だけなので気楽です」
日頃の日程は急用で変更したい時等融通する、と熱心に誘うので出席に同意した。
いつも若く見られるので、パーテイーによく着ていく黒のワンピースを選んだ。
行き先は銀座で有名な中華飯店だった。



                 
 
      
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東風(コチ)の再会 8

2025-06-01 15:20:00 | ヒューマン
「僕の銀行口座?」
「こんなお願いなんだけど、ついさっきも父から連絡あって、けして迷惑かけないから誰かお願いしてくれと言われて」
「僕名義の新しい通帳を作って渡せばいいの?」
「そう、もし手数料かかるようならすぐ払います」
一度金額が振り込まれすぐ引き落とされる予定なので、後は通帳を破棄をしてくれれば良いとの父からの伝言だそうだ。
結局引受けてしまった。
「私、今日はホテルに予約を取っているけど来てくれない、話したい事があるし」
わざわざホテルに予約を取って帰らないらしい。迷ったが彼女の強気な言葉に従った。
19時過ぎに指定されたホテルの部屋をノックすると、すぐにドアが開いて笑顔の彼女が迎えてくれた。
「好きなもの何でも頼んで、食事してないんでしょう」
「軽く食べてきたよ」
「じゃあ飲み物とオードブル取るから、好きなものを言って」
とても機嫌が良さそうで、以前はあまり話さなかったのが不思議な位だ。
春の淡いグリーン系のワンピースを着ていて、顔は以前より細くなっているが、プロポーションはモデル並に整っていて圧倒された。
「父が大変喜んで、改めてお礼したいけどこれを渡してくれって」
2万円分の商品券を渡された。
部屋に食事が運ばれ彼女が選んだカクテルで乾杯した。
ビールを飲みながら食べ始めたが、あまり飲めない田沢はもう気持ち良くなっていた。
千恵子はマイペースで飲んでいる。
「紺野さんは飲める方なの?」
「両親共集まりがあると翌日まで飲んでるわ」
「酒豪なんだ」
「ファミリーの集まりでは、全部飲まないと失礼になるんだって、私は絶対出ないって決めてるの」
彼女の血色は良くなり、話も弾んできた。
逆に田沢は酔いで話すのが億劫になってくると、
「田沢さん少し休んだら」
と言って彼の体を支えながらベッドルームに連れていった。
寝かされる時、彼女の亜麻色の髪が、彼の頬を優しく撫ぜた。
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東風(コチ)の再会  7

2025-05-29 14:57:13 | ヒューマン
カフェに入ると、紺野はほっとした表情でア−ルグレイミルクティーを注文した。
「海外に行ったんですか?」
「ええ··うまく言えないけど父の仕事が急になって」
話しにくそうにしていたが、徐々に語り出した。
彼女の両親は在日の台湾人で、両親共日本の小学校に入る以前に来ていたそうだ。
在日でも他の外国人と違い、日本との友好関係はとても良好で環境には馴れやすかった。
紺野千恵子は、幼稚園からあの高校中退まで徒歩か自転車で通った。
「いい場所に住んでいたね」
「本当に恵まれていたわ···あなたと映画に行った翌日、家族全員で台湾に戻ったの」
「戻った?」
「ファミリーが待ってたわ、私は何回か会った位だけど、両親はファミリーの人達が日本に来る度迎えに行き、仕事を手伝っていた」
「貿易の仕事?」
「詳しくは知らないけど、コンビニエンスと取引があって、雨が長引いてビニール傘一万本を中国から緊急輸入したとか」
日本からの注文は台湾を経由して入ってくるという。
彼女の両親は日本支部になっている様だ。
「それが大きなトラブルが起きたので、至急戻れと一方的な通知で··」
「大事件だね」
「私達家族は日本しか知らないのて戻れない、と何回も行ったけど、ともかく一度戻れと総帥からの通達なので戻ってほしいと、本部の責任者が困り果てたので仕方なく」
「現在はどうしているの?」
「とりあえず戻れたけど、まだ仮住まいなの」
「高校はどうしたの」
「中退した後、インターナショナルスクールに行って卒業したわ」
「いろいろな国の人がいたの?」
「もうほんと多くの国から来ていたわ」
英会話は10才の時から習っていたので、外国の人達と楽しく過ごせたとの事。
「実はね、お願いがあるの」
「どんな?」
「久し振りでこんな話申し訳ないけど」
「遠慮しなくていいから」
「父の仕事になんだけと、貴方の口座を貸してくれない一度だけ」

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東風(コチ)の再会  6

2025-05-24 17:37:26 | ヒューマン
美沙子は会社を辞め、派遣会社に登録した。
この先治療がまだどうなるか分からず、英会話とフランス語もある程度話せるので、増えている外国人相手に何とかなると考えていた。
父が亡くなってから母は病気がちになり、自宅を売って、親戚や知人の多い上越市に引っ越していった。美沙子は迷ったのだが、母は私の事は周りがみてくれるので、自分のしたい事をしなさいと、父の保険金も受けとっていると話し、2,3年遊んでいられる位の金額を分けてくれた。
美沙子は一旦辞退したが、自宅も処分してしまったので、どうしても受け取ってくれと引かなかった。
今となってはとても有り難く、節約の為にもっと安い部屋を物色中だった。

田沢は美沙子と会ったのがきっかけで、紺野千恵子が気になっていた。、
あの時映画を観て食事を早めに済ませると、彼女は家の電話番号のメモを渡し足早に帰っていった。
数日後3回電話を掛けたが誰も出なかった。美沙子の家から割と近いと聞いていたが、今さら
彼女の家の事等聞けず、暗中模索になっていた。

田沢の父方の親戚が新宿の中落合に住んでいて、アルバイトも新宿のデパートに行った事があるので、新宿は一番行く場所になり社会人になってからは仕事で週2回は行っている。
休日に父に頼まれた用事で中落合に寄った後、西武新宿線の中井駅から新宿に出た。
西武新宿駅は歌舞伎町のすぐ前だが、改札を出て新宿駅東口側に行く為信号待ちしていると、後から肩を叩かれ、振り向くと紺野千恵子が田沢の顔をじっと見つめていた。
「紺野さん!」
「田沢さん、何しに此処に?」
「親戚が中落合に居るので会ってきたのです」
「そう··」
「紺野さんの家に電話もしたのですが」
「いろいろ重なって」
「休憩していきませんか?」
「少しでしたら」
一番近くにあったカフェに入った。
「あの後、学校は?」
「急に海外に行ったので」












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東風(コチ)の再会 5

2025-05-16 22:23:42 | ヒューマン
美沙子がどれ位飲んでいるのか、靖夫は彼女の言動が理解できなくなっている。
「さし向かいっていいわね、私初めてだから」
「水も飲めば?」
「平気よ··まだ始まったばかりでしょ」
「でも、もう酔ってきたみたいだよ」
「大丈夫よこれくらい」
靖夫はみているしかなく、テレビをつけてゆっくり飲んでいたが、携帯を自分の部屋に取りにいって戻ると、美沙子は座ったままうつ伏せになっていた。
完全に寝てしまったのかと思い、肩に手をかけて起こそうとすると、
「いや」
と彼女は言って靖夫に抱きついてきた。
その勢いで二人は床に倒れ、激しく重なり合った。

美沙子は亡くなった父を時々夢見る様になった。それも親ではなく、自分の相手
として肩を寄せあって歩いている。
場所は分からないが、以前来た様な懐かしさがある。
故郷ではなく、人がいなく植物も見えない殺風景な所だが、気持ちは安らいでいる。
土よりも殆ど岩ばかりの景色だが落ち着きがある。大体こういう夢なのだが何回かみている。

血液の病気だから脳にきたのかも知れない。
そうでなければいくら酔ったからといって、男性にあんな行動をとる訳がない。
結果に後悔はないが、彼にあんな事をする女と思われるのが耐えられず、翌朝彼が熟睡しているのを見届け一人チェックアウトした。

靖夫が起きてみると、メモが置いてあった。

靖夫さんごめんなさい··先に帰ります。
恥ずかしくて今はなにも話せませんが、事情があり、今後の事も思案中ですが、少し時間が掛かりそうです。
落ち着いてまた会って頂けたら嬉しく思います。
その時がぜひ訪れます様に。
              倉本美沙子

靖夫は、よほどの出来事があったのだと心配になった。
すぐに追い掛けて行きたくなったが、会ってくれないだろうと考えた。
こんなきっかけの関係に納得いくものでは決してないが、嬉しい気持ちは勿論あった。
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