「デザインとは、科学の実用化である/イギリス・コンラン卿」
筆者/岸 勇希 出版社/電通 1,890円
◆目次
刊行によせて
はじめに
目次
第1章 激変する広告環境
1、変わるメディア環境
2、変わる生活者行動
3、変わる広告コミュニケーション
第2章 事例とその設計図
CASE1、話題を広げる…永谷園『ミス冷え知らずCOLLECTION08』
CASE2、徹底的に尖る…ワールド通商「求ム、天才」
CASE3、ニュースを作る…フマキラー「一発命虫!バイラル・キャンペーン」
CASE4、売れる空気を作る…ロケットカンパニー「『漢検DS』プロモーション・キャンペーン」
CASE5、気持ちをデザインする…マリエール「40人40色の恋愛模様」
CASE6、メディアを見つける…メ~テレ「『ウルフィ・ティッカー』配布キャンペーン」
CASE7、メディアを作る…「『新聞ブログ』開発プロジェクト」
第3章 考え方とヒント
1、コミュニケーション・デザインの特徴
2、プランニング・プロセス
3、3つの意識と5つの原則
第4章 日々試行錯誤
1、Facilitation Deesign
2、Contents Creation
3、“autopoiesis”
4、Social Design
amazonのカスタマーレビューでも非常に評価が高いこの本は、各企業でもテキストとして使われているそうです。
実際購入して読んでみて、現代のメディアビジネスの置かれている状況とその本質について、非常に丁寧にかつわかりやすく書かれていると感じました。
特に下記の電通常務の杉山恒太郎氏の「刊行によせて」の部分は、イギリスのブレア首相が“デザイン立国”というコンセプトに、戦略的に施策を推進し、成功を収めた事例紹介が秀逸です。以下、御紹介します。
■刊行によせて/電通常務執行役員 杉山恒太郎
僕は最近(デザインはソリューションである。)という考え方が気に入っている。デザインというと何か特別な才能による意匠といったものを想像しがちであるが、デザインとは企業に新たな収益をもたらす最良のソリューションなのだ、と。
ここでデザイン立国を目指して大成功を収めたイギリスについて触れたい。
今や世界の金融センターの座をニューヨークから奪回しそうなほどの活況を呈するロンドン。イギリスはサッチャー、ブレアの出現で完全に蘇ってしまった。特に文化面でいえばブレアの改革(クール・ブリタ二ア)は見事というしかない。
例えばだ、イギリスは食事がまずい!とそれまで世界中の誰もが言っていた常識?を覆し、(イギリスは美味しい)と言わしめよう!を新たなテーマに掲げたのもこの改革であったが、確かにこのロンドンを世界のデザインの中心に!であり、この明確な戦略のもと、象徴としてテームス河沿いに世界初のデザインミュージアムが誕生する。
こうしてブレアはイギリス再興のための硬軟さまざまな施策、構想を打ちたて、ロンドンの街を、そして国そのものをリ・デザインすることで沈み行く大英帝国復活をなしとげた。因みにこの改革の中心的役割を担ったといわれるコンランショップのコンラン卿は、(デザインとは、科学の実用化である。)という名言をこの時残している。(※中略)
そして今広告は少し元気がない、と言われている。
ここで時代はネットワーク社会の申し子でもある岸君たちを必要とした。コミュニケーション・デザイン、この言葉の故郷も実はロンドンだ。いまから7、8年前、世界の広告界に突然出現したノントラ(ノン・トラディショナル)といわれるクリエーティブ・ショップの若者が使い始めたコトバでもある。
リアルスペース、サイバースペース問わず変幻自在に飛び回る彼ら。サッカー選手のように楓逸なステップを踏み僕たちの伝統的なエージェンシーを振り回し始め、彼らをして誰からともなくアンファン・テリブル(恐るべき子供たち)と世界の広告界は呼んだ。そしてそのうねりは瞬く間にニューヨークにトウキョウに伝播されたのだった。
この本の中に掲載されている数々の広告キャンペーンの成功事例はコミュニケーション・デザインという考え方が今や広告界では主流へと変わりつつあるなかで我らがトウキョウの代表選手でもある岸君の(明日の広告)への答えでもある。彼は日常の広告作業を通し我々の(広告そのもの)をも、まるごとひっくるめてのリ・デザインに果敢にも挑戦しているように僕には見える。
その他、本書の中で印象深かった箇所を以下記します。
・「AISASの法則」も「AIDMA」同様、生活者の行動プロセスを並べたものですが、Attention(注目)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(行動/購入)→Share(共有)と、SearchとShareというプロセスが新たに加わったことが大きな特徴です。
・「AISASの法則」が持つもうひとつの特徴はShareです。Shareが生まれた背景は、ブログやSNSなどCGM(Consumer Generated Media)と称される、生活者が自ら情報を発信するためのメディアの爆発的な普及にあります。「買ってみたら、とてもよかった!」「高機能と聞いて買ったのに、機能が足りない」など、ポジティブ、ネガティブを問わずさまざまな体験情報が次々とCGMで共有されていきます。
・広告として発信された情報よりも、同じ生活者が発信した情報(Shareされた情報)の方が生活者にとっては信憑性が高く、購買決定への強い影響力を持つことがあるのです。
・単に“伝える”で終わらずに、生活者との間に関係性をつくるところまで広告が受け持つというのはとても難しい課題だと思います。
・「メディア」と「表現」を切り離さないことはコミュニケーション・デザインの最も大切な視点のひとつです。メディアと表現を切り離して考えるのではなく、メディアを通じ、生活者がどのような状態で広告に接触するのかをこと細かに想像し、そのメディアだからこそできる最大限の表現を考える必要があります。
・自分の大学のミスキャンパス(身近な人)が出演しているという仕掛けは、バズを起こすうえではとても重要な要素でした。なぜなら、「ねぇ、○○ちゃんが出てるタダコピ知ってる?」とか「うちの大学のミスが永谷園の広告に出てるの見た?」など、会話のネタになりやすく、人伝いに広がっていく力が強いためです。
まだまだ御紹介したい部分は山ほどありますが、ここからは本を買って見て下さい(笑)。
最後に、著者のプロフィールを以下に記します。
◆岸勇希(キシユウキ)
電通コミュニケーション・デザイン・センターコミュニケーション・デザイナー。
東海大学海洋学部水産学科卒業。早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了。中央大学研究開発機構専任研究員を経て2004年電通に入社。中部本部にて雑誌部、メディア・マーケティング部を経験。2006年より東京本社インタラクティブ・コミュニケーション局クリエーティブ室にてコミュニケーション・デザイナー。2008年7月よりコミュニケーション・デザイン・センター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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1、変わるメディア環境
2、変わる生活者行動
3、変わる広告コミュニケーション
第2章 事例とその設計図
CASE1、話題を広げる…永谷園『ミス冷え知らずCOLLECTION08』
CASE2、徹底的に尖る…ワールド通商「求ム、天才」
CASE3、ニュースを作る…フマキラー「一発命虫!バイラル・キャンペーン」
CASE4、売れる空気を作る…ロケットカンパニー「『漢検DS』プロモーション・キャンペーン」
CASE5、気持ちをデザインする…マリエール「40人40色の恋愛模様」
CASE6、メディアを見つける…メ~テレ「『ウルフィ・ティッカー』配布キャンペーン」
CASE7、メディアを作る…「『新聞ブログ』開発プロジェクト」
第3章 考え方とヒント
1、コミュニケーション・デザインの特徴
2、プランニング・プロセス
3、3つの意識と5つの原則
第4章 日々試行錯誤
1、Facilitation Deesign
2、Contents Creation
3、“autopoiesis”
4、Social Design
amazonのカスタマーレビューでも非常に評価が高いこの本は、各企業でもテキストとして使われているそうです。
実際購入して読んでみて、現代のメディアビジネスの置かれている状況とその本質について、非常に丁寧にかつわかりやすく書かれていると感じました。
特に下記の電通常務の杉山恒太郎氏の「刊行によせて」の部分は、イギリスのブレア首相が“デザイン立国”というコンセプトに、戦略的に施策を推進し、成功を収めた事例紹介が秀逸です。以下、御紹介します。
■刊行によせて/電通常務執行役員 杉山恒太郎
僕は最近(デザインはソリューションである。)という考え方が気に入っている。デザインというと何か特別な才能による意匠といったものを想像しがちであるが、デザインとは企業に新たな収益をもたらす最良のソリューションなのだ、と。
ここでデザイン立国を目指して大成功を収めたイギリスについて触れたい。
今や世界の金融センターの座をニューヨークから奪回しそうなほどの活況を呈するロンドン。イギリスはサッチャー、ブレアの出現で完全に蘇ってしまった。特に文化面でいえばブレアの改革(クール・ブリタ二ア)は見事というしかない。
例えばだ、イギリスは食事がまずい!とそれまで世界中の誰もが言っていた常識?を覆し、(イギリスは美味しい)と言わしめよう!を新たなテーマに掲げたのもこの改革であったが、確かにこのロンドンを世界のデザインの中心に!であり、この明確な戦略のもと、象徴としてテームス河沿いに世界初のデザインミュージアムが誕生する。
こうしてブレアはイギリス再興のための硬軟さまざまな施策、構想を打ちたて、ロンドンの街を、そして国そのものをリ・デザインすることで沈み行く大英帝国復活をなしとげた。因みにこの改革の中心的役割を担ったといわれるコンランショップのコンラン卿は、(デザインとは、科学の実用化である。)という名言をこの時残している。(※中略)
そして今広告は少し元気がない、と言われている。
ここで時代はネットワーク社会の申し子でもある岸君たちを必要とした。コミュニケーション・デザイン、この言葉の故郷も実はロンドンだ。いまから7、8年前、世界の広告界に突然出現したノントラ(ノン・トラディショナル)といわれるクリエーティブ・ショップの若者が使い始めたコトバでもある。
リアルスペース、サイバースペース問わず変幻自在に飛び回る彼ら。サッカー選手のように楓逸なステップを踏み僕たちの伝統的なエージェンシーを振り回し始め、彼らをして誰からともなくアンファン・テリブル(恐るべき子供たち)と世界の広告界は呼んだ。そしてそのうねりは瞬く間にニューヨークにトウキョウに伝播されたのだった。
この本の中に掲載されている数々の広告キャンペーンの成功事例はコミュニケーション・デザインという考え方が今や広告界では主流へと変わりつつあるなかで我らがトウキョウの代表選手でもある岸君の(明日の広告)への答えでもある。彼は日常の広告作業を通し我々の(広告そのもの)をも、まるごとひっくるめてのリ・デザインに果敢にも挑戦しているように僕には見える。
その他、本書の中で印象深かった箇所を以下記します。
・「AISASの法則」も「AIDMA」同様、生活者の行動プロセスを並べたものですが、Attention(注目)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(行動/購入)→Share(共有)と、SearchとShareというプロセスが新たに加わったことが大きな特徴です。
・「AISASの法則」が持つもうひとつの特徴はShareです。Shareが生まれた背景は、ブログやSNSなどCGM(Consumer Generated Media)と称される、生活者が自ら情報を発信するためのメディアの爆発的な普及にあります。「買ってみたら、とてもよかった!」「高機能と聞いて買ったのに、機能が足りない」など、ポジティブ、ネガティブを問わずさまざまな体験情報が次々とCGMで共有されていきます。
・広告として発信された情報よりも、同じ生活者が発信した情報(Shareされた情報)の方が生活者にとっては信憑性が高く、購買決定への強い影響力を持つことがあるのです。
・単に“伝える”で終わらずに、生活者との間に関係性をつくるところまで広告が受け持つというのはとても難しい課題だと思います。
・「メディア」と「表現」を切り離さないことはコミュニケーション・デザインの最も大切な視点のひとつです。メディアと表現を切り離して考えるのではなく、メディアを通じ、生活者がどのような状態で広告に接触するのかをこと細かに想像し、そのメディアだからこそできる最大限の表現を考える必要があります。
・自分の大学のミスキャンパス(身近な人)が出演しているという仕掛けは、バズを起こすうえではとても重要な要素でした。なぜなら、「ねぇ、○○ちゃんが出てるタダコピ知ってる?」とか「うちの大学のミスが永谷園の広告に出てるの見た?」など、会話のネタになりやすく、人伝いに広がっていく力が強いためです。
まだまだ御紹介したい部分は山ほどありますが、ここからは本を買って見て下さい(笑)。
最後に、著者のプロフィールを以下に記します。
◆岸勇希(キシユウキ)
電通コミュニケーション・デザイン・センターコミュニケーション・デザイナー。
東海大学海洋学部水産学科卒業。早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了。中央大学研究開発機構専任研究員を経て2004年電通に入社。中部本部にて雑誌部、メディア・マーケティング部を経験。2006年より東京本社インタラクティブ・コミュニケーション局クリエーティブ室にてコミュニケーション・デザイナー。2008年7月よりコミュニケーション・デザイン・センター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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