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なでしこジャパンの成功の向こう側 その意味するものとは?

2011-07-26 12:26:24 | 日常生活
「なでしこ」勝利の意味するもの

2011年07月18日(月)12時18分


日本中が歓喜に湧いた、なでしこジャパンの優勝

決勝戦でも延長前半にへディングシュートを決めた米国のエース、アビー・ワンバック選手は試合後の感想として「日本の決して諦めない姿勢に感服しました。選手たちのことを日本人は誇りに思うでしょう」と述べていました。また、オバマ大統領は2人の娘がサッカー選手だということで、家族4人でTV観戦している写真を公開すると同時に、日本の勝利を称える声明を発表しています。

試合ですが、この欄での私の予想と結果的に同じ、つまり米国チームは走り続けて最後には運動量で互角になるという展開にはなりましたが、その中身は歴史に残る死闘というべき濃厚なものでした。勝因は2つ、1つは日本の守備陣が120分とPKを徹底的に守り切ったということ、2つ目は、集中力と持久戦という点で、最後には日本が米国を逆転したことだと思います。

ファインプレーは特に2つ特記できるように思います。1つ目は、前半28分まだまだ米国がシュートを打ち続けていた時期のことです。ワンバックのミドルシュートがクロスバーに当たった際に、リバウンドの球が危険な状態になったのを鮫島選手が見事にセーブしたプレー、そしてもう1つはPK戦の一番手、シャノン・ボックスのシュートをGKの海堀選手が空中で蹴り上げた足でセーブしたプレーだと思います。こうしたプレーは、正に世界最高水準のものでした。

ニューヨークタイムスの電子版の速報では、ジェレ・ロングマンという記者は「日本は二度も先行を許したが耐えた。その勝利を幸運と呼ぶならば、彼女らは自分たちでその幸運をつかんだ」と賞賛しています。


ニューヨークタイムズの報道

私の住むニュージャージーでは、USAチームに地元出身の選手が3人も入っており、雰囲気としてはかなり盛り上がっていました。試合の数時間前に買い物に出たところ、USAのユニフォームを着た夫婦が買い物をしていましたし、地元紙の「スター・レジャー」などでは事前の予想記事(勿論USAの勝利を前提としたもの)が大きな扱いになっていました。ただ、結果的にはPK戦で、その3人のうち2人(ロイド選手とヒース選手)が外してしまい、電子版の速報ではかなり落胆した記事になっていたりもしています。

とりあえず、決勝戦直後のアメリカの状況はそんなところです。非常に悔しいが、日本の勝利は讃えたいという感想で一致していると言って良いでしょう。

では、この「なでしこ勝利」の意味するところは、どのように考えたらいいのでしょうか? 「ウォール・ストリート・ジャーナル」の電子版などは、震災以来の悪夢の続く状況で珍しい吉報に湧く日本とか、停滞した政治も「なでしこ」のように頑張って欲しいという「街の声」などを紹介していました。この辺は、あくまで「海外特派員」としての感想、それ以上でも以下でもないと思います。

私の直感的な印象はこうです。サッカーというのは、全体が個を押しつぶしていてもダメであり、また個が全体に100%貢献できなくてもダメな中、個が高いモチベーションで全体に貢献してゆく心理と身体機能を高めることが要求されます。そうした技能において、全日本女子が世界一の水準に達したということは、2つの意味があるように思います。

1つは、権限のない、注目のされない、予算もない中で、本当にサッカーが好きだというモチベーションからあらゆる努力を重ねて這い上がって来た人間の持つ「ホンモノの実力」というのは、もしかしたら女子サッカーに限らず、日本社会の中で常に女性がチャレンジャーであったことが生み出したものではないかということです。

もう1つは、仮にそうであるのならば、そうした日本の女性の潜在的な能力をもっともっと引き出すことが、震災からの復興、バブル崩壊以来の「高付加価値創造型社会へ移行できない」という停滞からの復興という意味でも、可能性があるのではないかと思うのです。

PKへ向かう直前の円陣で見せていた「なでしこ」イレブンの表情には澄み切った輝きがありました。それは自信でもないし、開き直りでもない、自分たちが120分を戦い抜いた満足感であり、その先にあるものを受け止めるという強さの表れであったように思います。

教育というものがもしもあるのであれば、彼女らが見せた輝くような表情の人間を育てることであるし、社会制度というものがもしもあるのであれば、人々があのような表情で活き活きと生きていけるように人材が活用される社会を実現するためなのでしょう。その意味で「なでしこ」の成功物語は、様々な形で語られていって良いのだと思います。


冷泉彰彦(れいぜいあきひこ)

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修了(修士、日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。主な著書に『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』(阪急コミュニケーションズ)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」を毎週連載中。


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