プルサーマル計画を憂慮する有志の会

愛媛県伊方発電所3号機におけるプルサーマル発電の問題を考える有志の会です。

東電福島第一原発事故の教訓

2011年05月11日 | 日記
以下、ブログ「Finance GreenWatch」からの(一部)転載です。
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スイスの金融機関UBSが、投資家の立場から東電福島原発事故を分析したレポートをまとめている。・・・非常時対応の不十分さ、バックアップシステムが独立していなかった、危機管理体制の遅さと情報提供の乏しさ、使用済燃料の管理の不十分さ、冷却システムの不完全さ等。・・・(訳はFGW)・・・

①非常事態に対する十分な保護体制
 今回の原発事故の主要な要因は、東電の想定を越えた高さ14mに達した津波の高さだった。これは東電の防潮堤の二倍以上にも達した。今回の地震は日本で過去最大の震度だったが、福島を襲った津波の高さは1896年に起きた明治三陸地震のほうが今回よりも高かった。こうしたことを思うと、規制当局は過去の経験を体系的にとらえ、最悪の可能性に備えているべきである。・・・
 
②バックアップシステムの相互依存性
 今回の地震は発電所が電源を喪失し、津波が発電所の予備電源(バックアップ)も破壊した。津波によって外部電源へリンクする接合部分も水没してしまった。このことは、福島原発で各安全システムが相互に独立したものだったのかという疑問を提起する。安全システムの品質、精度、相互依存性を検証しなければならない。・・・

③鈍感なクライシス管理体制とコミュニケーションの欠如
 すでに日本においても、国際的にも批判にさらされているように、今回の事故で日本が示したクライシスマネジメント(危機管理)は、スローで、かつ場当たり的だった。海水による冷却手段は直ちには採用されなかったことが、原発の炉の破壊を進めたと思える。炉が過熱する前に冷却するという重要な時間を失った。また使用済み燃料プールの冷却のために消防車などからの放水をしなければならなかったことは、事態への想定が前もってできていなかったことを物語る。
情報の提供も部分的で遅かった。しかも、今もそうである。我々分析者にとって、もっとも役に立つ情報は、しばしば他の国(米国やフランス)の当局から得られた。ワーストシナリオを事前に想定した、もっと明確な危機対応計画が求められるべきだと思う。これは必ずしも高い費用を要する問題ではなく、組織としての対応力の問題である。

④旧式の原発
 福島の原発は日本で最も古い形式だった。より新しいタイプの原発は福島でも女川でも地震の震源地に近いところにあっても、同じような問題を起こさなかった。最新の原発はより堅牢になっており、旧式のものより安全であるのは間違いない。原子炉の使用年限もまた安全性のわかりやすい指標である。適切な使用期限をどう設定するかは政治的議論の対象となる。・・・

⑤使用済み燃料の不十分な保護体制
 福島原発では、使用済燃料プールの放射性物質の拡散が、原子炉からの拡散と同様に起きた。原子炉内の燃料は何重にも保護策が施されているが、プールに入れられた使用済燃料については単に建屋で覆われているだけだった。その建屋は事故当日に屋根が吹っ飛んでしまった。現在のところ、放射性物質漏れの大半は使用済燃料関連とみられる。
 我々は当局に対して使用済燃料の安全管理をしっかりするよう求めたい。その方法としては、使用済燃料を速やかに原発から別の場所に移管するか、あるいは建屋内に置く場合はよりしっかりとした安全体制をとることである。・・・

⑥能動的な冷却設備の導入
 新しい原発は、非常時の冷却を確実にするため、汲み上げ方式による冷却の必要性を軽減するデザインをとっている。例えば、ウェスティングハウスのAP1000タイプは、重力方式による自然循環システムで、汲み上げもファンなども一切使わないで、原子炉の完全停電に対応可能である。しかし、現在の原発はアクティブ汲み上げ方式を採用しているところが多い。我々は、原子炉に重要な問題が生じる前に、非常時の電力供給を再設定することに時間を費やす必要があると考える。・・・

⑦地震地帯の国境沿いにある旧式原発がもっともリスクが高い
 技術的評価に加えて、原発の政治的評価も必要になるだろう。政治家は、原発の信頼性を再構築するために、福島事故から学んだことを示すために、いくつかの原発を閉鎖する必要があるかもしれない。これまでの議論などを踏まえると、こうした閉鎖対象原発は、4つのクライテリアに基づいて選別されると思われる。理論的には、第一に、閉鎖対象となる原発は、安全性評価で重要な問題が明るみに出たところとなるはずだ。・・・使用年限が、2つ目の主要なクライテリアとなるだろう。原発が古ければ古いほど、閉鎖対象として選ばれるリスクも高い。旧式の原発が新しいものより問題がありそうだというのはわかりやすいし、たぶんそうである。・・・

⑧MOX使用による燃料リスク増
 福島第一の第3原子炉は、混合酸化物燃料(MOX)を使用していた。93%のウラニウムと、7%のプルトニウムの混合燃料で、これが放射性物質を大量に漏洩させている。今後の原発の安全性を評価においては、MOXの使用制限も考えられる。

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 スイスの金融機関の金融機関がこれだけのことを学んでいるのですから、日本政府も電力会社も、そして私たちも、きちんをこのシビア・アクシデントの教訓を胸に刻み込まなければいけないと思うのです・・・

P.S. それにしても、「放射性物質漏れの大半は使用済燃料関連」というのは、「使用済燃料リスク」というものが如何に大きなものであるかを物語っています。やはり使用済燃料は、他の別の安全な施設に移動させなければ、原発を運転すべきではないと思うのですが・・・

P.S.2 今朝の『朝日新聞』には、「2号機の汚染水の総量は移送前の段階で計2万5千トン、含まれる放射能の総量は単純計算で約40万テラベクレル」とのことです。40万テラベクレルとは、40京ベクレルですから、大気中への放出の試算(保安院)37京ベクレルを、2号機の汚染水だけで超えてしまっているのです。その他にも、1号機の建屋と地下坑道に、低から高レベルの汚染水が2万トン、3号機の建屋と地下坑道に、低から高レベルの汚染水が2万2千トン、4号機の建屋と地下坑道に、中レベルの汚染水が2万トン、さらに作業用ピットから流出してしまった高レベル汚染水が520トン(4700兆ベクレル)、意図的に廃棄した低レベル汚染水が1万トン(1、500億ベクレル)あるのです。(亀裂から流出したものは、港に滞留しているものが約30万トンあるそうです)これらの汚染水をどのように処理していくのか、対処していけばよいのか、これは日本そのものが背負った非常に大きな、途方もないほど大きな課題です・・・

「使用済燃料リスク」

2011年05月11日 | 日記
今回の事故で明らかになったことの一つに、使用済燃料の危険性が挙げられます。使用済燃料となっても熱を発し、冷やし続けなければならず、さらに今回のように電源喪失の事態ともなれば、プールの水温の上昇に伴って水が蒸発、燃料が露出する危険性も高まり、そうなれば燃料に閉じ込められている多種の放射性廃棄物が気化し、或いは粉塵として大気へと飛散していくことが実証されてしまいました。

燃料プールの危険性は、水の蒸発によって、いとも簡単に「死の灰」が漏れ出てしまうということです。しかも、定期点検中の使用中の燃料がある4号機では、使用済燃料だけでなく、さらに使用中の燃料までプールに入っており、除崩熱の高い使用中の燃料がさらにプールの水温を上昇させました。定期点検中だから炉心に燃料はない、だから炉心溶融はないという「神話」は打ち破られました。実際、4号機の燃料棒は一部溶けていると言われいます。使用済燃料プール自体が、炉心同様、一つの核爆弾と同じ危険性を持っているのです。

1~6号機のプール自体の構造物としての健全性のデータが分かりませんが、もし仮に、地震や水素爆発等でプールに亀裂や穴が開けば、冷却のため注水し続ける限り、その放射性物質に汚染された水が漏出し続けるという、悪夢のような自体が発生します。(実際、福島第1原発でも、そのような事態となっているのかもしれません)

そもそも、原子炉建屋の中に、しかも炉心の真上に、使用済燃料プールがあること自体が重大な構造的欠陥です。リスクにリスクを掛け合わせるような、信じられないことです。私自身は、不勉強なのでこのことを知りませんでした。どこか安全な別の場所に、隔離され保管・管理されているものとばかり思っていたのでした。正直、こんな恐ろしいことをよく今まで平気で放置できたものだと思います。使用済燃料は、即座に別の場所に移して管理すべきです。その危険性が、「使用済燃料リスク」が自明のものとなった訳ですから、今のような構造的欠陥を抱えたままで、原発を運転し続けることなど容認できるはずがないのです。

ちなみに、「『原子炉等規制法』第23条第2項第8号によれば、設置者は「使用済燃料の処分の方法」を主務大臣に申請書を提出しなければならない」が、「原子炉等規制法の第24条第1項第2項に定められた許可基準『原子力の開発、利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと』については、法律上、具体的な内容は明定されておらず、その解釈・運用は、主務大臣の法律の趣旨を踏まえた合理的な判断に委ねられて」おり、「原子力安全・保安院は、設置許可の審査に当たっては、再処理の見通しがあることの確認を行って」おり、「電気事業者は、以上の行政における審査方法を踏まえ、これまでの案件において、『使用済燃料の処分の方法』に関しては全て再処理を前提とした申請を行っているのが現状」なのです。

一言で言うと、事業者が国の方針に基づいて(六ヶ所村等で)「再処理」しますと言って申請すれば(実際六ヶ所での再処理など夢のまた夢ですが)、使用済燃料の処分の方法が決まっていなくても(本当は違法なのですが)、国は原発の設置許可を与えているわけです。しかも政府(保安院)は、2004年の「内規」(「『使用済燃料の処分の方法』の確認について」)で、使用済燃料のプールでの長期保管を容認しており、半永久的な原発内での使用済燃料の保管は「処分」ではないのだけれど、違法でもないというご都合主義の抜け道を作ったのです。そしてその付けが、今回の事故の複雑さと困難さと危険となって返ってきているのです・・・

P.S. その使用済燃料の処分場について、「日本と米国、モンゴルが共同して、使用済み核燃料などの国際的な貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する構想を持っている」、「原発導入を計画する国にとって、使用済み燃料をはじめとする放射性物質の処分は大きな課題。日米とも最終処分場を持っていない」、「経済産業省は原発の輸出を目指し、新興国でニーズが高い使用済み核燃料の処分もセットにして売り込む狙い」だとか。自国に危険な「トイレ」が造れないので、日米仲良く手を繋いで、放射能まみれの「トイレ」も輸出して金儲けをしようという訳ですか。これまでもバーゼル条約を反故にして、廃棄物を輸出し続けてきた日本ですが、今度は手に負えない放射性廃棄物まで合法的に「輸出」しようとしていたとは・・・そう言えば米国は、処理に困った核廃棄物を劣化ウラン弾として、大量にアフガン、イラクにぶち込みました。それでもまだまだ「処理」し切れない核廃棄物が溢れ出ているというわけです。米国に唆(そそのか)されて、この際だから高濃度に放射能汚染した「フクシマ」を、放射性廃棄物の最終処分場になどと、自ら進んで言い出さないよう、くれぐれも注意して頂きたいものです・・・