以下、ブログ「Finance GreenWatch」からの(一部)転載です。
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スイスの金融機関UBSが、投資家の立場から東電福島原発事故を分析したレポートをまとめている。・・・非常時対応の不十分さ、バックアップシステムが独立していなかった、危機管理体制の遅さと情報提供の乏しさ、使用済燃料の管理の不十分さ、冷却システムの不完全さ等。・・・(訳はFGW)・・・
①非常事態に対する十分な保護体制
今回の原発事故の主要な要因は、東電の想定を越えた高さ14mに達した津波の高さだった。これは東電の防潮堤の二倍以上にも達した。今回の地震は日本で過去最大の震度だったが、福島を襲った津波の高さは1896年に起きた明治三陸地震のほうが今回よりも高かった。こうしたことを思うと、規制当局は過去の経験を体系的にとらえ、最悪の可能性に備えているべきである。・・・
②バックアップシステムの相互依存性
今回の地震は発電所が電源を喪失し、津波が発電所の予備電源(バックアップ)も破壊した。津波によって外部電源へリンクする接合部分も水没してしまった。このことは、福島原発で各安全システムが相互に独立したものだったのかという疑問を提起する。安全システムの品質、精度、相互依存性を検証しなければならない。・・・
③鈍感なクライシス管理体制とコミュニケーションの欠如
すでに日本においても、国際的にも批判にさらされているように、今回の事故で日本が示したクライシスマネジメント(危機管理)は、スローで、かつ場当たり的だった。海水による冷却手段は直ちには採用されなかったことが、原発の炉の破壊を進めたと思える。炉が過熱する前に冷却するという重要な時間を失った。また使用済み燃料プールの冷却のために消防車などからの放水をしなければならなかったことは、事態への想定が前もってできていなかったことを物語る。
情報の提供も部分的で遅かった。しかも、今もそうである。我々分析者にとって、もっとも役に立つ情報は、しばしば他の国(米国やフランス)の当局から得られた。ワーストシナリオを事前に想定した、もっと明確な危機対応計画が求められるべきだと思う。これは必ずしも高い費用を要する問題ではなく、組織としての対応力の問題である。
④旧式の原発
福島の原発は日本で最も古い形式だった。より新しいタイプの原発は福島でも女川でも地震の震源地に近いところにあっても、同じような問題を起こさなかった。最新の原発はより堅牢になっており、旧式のものより安全であるのは間違いない。原子炉の使用年限もまた安全性のわかりやすい指標である。適切な使用期限をどう設定するかは政治的議論の対象となる。・・・
⑤使用済み燃料の不十分な保護体制
福島原発では、使用済燃料プールの放射性物質の拡散が、原子炉からの拡散と同様に起きた。原子炉内の燃料は何重にも保護策が施されているが、プールに入れられた使用済燃料については単に建屋で覆われているだけだった。その建屋は事故当日に屋根が吹っ飛んでしまった。現在のところ、放射性物質漏れの大半は使用済燃料関連とみられる。
我々は当局に対して使用済燃料の安全管理をしっかりするよう求めたい。その方法としては、使用済燃料を速やかに原発から別の場所に移管するか、あるいは建屋内に置く場合はよりしっかりとした安全体制をとることである。・・・
⑥能動的な冷却設備の導入
新しい原発は、非常時の冷却を確実にするため、汲み上げ方式による冷却の必要性を軽減するデザインをとっている。例えば、ウェスティングハウスのAP1000タイプは、重力方式による自然循環システムで、汲み上げもファンなども一切使わないで、原子炉の完全停電に対応可能である。しかし、現在の原発はアクティブ汲み上げ方式を採用しているところが多い。我々は、原子炉に重要な問題が生じる前に、非常時の電力供給を再設定することに時間を費やす必要があると考える。・・・
⑦地震地帯の国境沿いにある旧式原発がもっともリスクが高い
技術的評価に加えて、原発の政治的評価も必要になるだろう。政治家は、原発の信頼性を再構築するために、福島事故から学んだことを示すために、いくつかの原発を閉鎖する必要があるかもしれない。これまでの議論などを踏まえると、こうした閉鎖対象原発は、4つのクライテリアに基づいて選別されると思われる。理論的には、第一に、閉鎖対象となる原発は、安全性評価で重要な問題が明るみに出たところとなるはずだ。・・・使用年限が、2つ目の主要なクライテリアとなるだろう。原発が古ければ古いほど、閉鎖対象として選ばれるリスクも高い。旧式の原発が新しいものより問題がありそうだというのはわかりやすいし、たぶんそうである。・・・
⑧MOX使用による燃料リスク増
福島第一の第3原子炉は、混合酸化物燃料(MOX)を使用していた。93%のウラニウムと、7%のプルトニウムの混合燃料で、これが放射性物質を大量に漏洩させている。今後の原発の安全性を評価においては、MOXの使用制限も考えられる。
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スイスの金融機関の金融機関がこれだけのことを学んでいるのですから、日本政府も電力会社も、そして私たちも、きちんをこのシビア・アクシデントの教訓を胸に刻み込まなければいけないと思うのです・・・
P.S. それにしても、「放射性物質漏れの大半は使用済燃料関連」というのは、「使用済燃料リスク」というものが如何に大きなものであるかを物語っています。やはり使用済燃料は、他の別の安全な施設に移動させなければ、原発を運転すべきではないと思うのですが・・・
P.S.2 今朝の『朝日新聞』には、「2号機の汚染水の総量は移送前の段階で計2万5千トン、含まれる放射能の総量は単純計算で約40万テラベクレル」とのことです。40万テラベクレルとは、40京ベクレルですから、大気中への放出の試算(保安院)37京ベクレルを、2号機の汚染水だけで超えてしまっているのです。その他にも、1号機の建屋と地下坑道に、低から高レベルの汚染水が2万トン、3号機の建屋と地下坑道に、低から高レベルの汚染水が2万2千トン、4号機の建屋と地下坑道に、中レベルの汚染水が2万トン、さらに作業用ピットから流出してしまった高レベル汚染水が520トン(4700兆ベクレル)、意図的に廃棄した低レベル汚染水が1万トン(1、500億ベクレル)あるのです。(亀裂から流出したものは、港に滞留しているものが約30万トンあるそうです)これらの汚染水をどのように処理していくのか、対処していけばよいのか、これは日本そのものが背負った非常に大きな、途方もないほど大きな課題です・・・
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スイスの金融機関UBSが、投資家の立場から東電福島原発事故を分析したレポートをまとめている。・・・非常時対応の不十分さ、バックアップシステムが独立していなかった、危機管理体制の遅さと情報提供の乏しさ、使用済燃料の管理の不十分さ、冷却システムの不完全さ等。・・・(訳はFGW)・・・
①非常事態に対する十分な保護体制
今回の原発事故の主要な要因は、東電の想定を越えた高さ14mに達した津波の高さだった。これは東電の防潮堤の二倍以上にも達した。今回の地震は日本で過去最大の震度だったが、福島を襲った津波の高さは1896年に起きた明治三陸地震のほうが今回よりも高かった。こうしたことを思うと、規制当局は過去の経験を体系的にとらえ、最悪の可能性に備えているべきである。・・・
②バックアップシステムの相互依存性
今回の地震は発電所が電源を喪失し、津波が発電所の予備電源(バックアップ)も破壊した。津波によって外部電源へリンクする接合部分も水没してしまった。このことは、福島原発で各安全システムが相互に独立したものだったのかという疑問を提起する。安全システムの品質、精度、相互依存性を検証しなければならない。・・・
③鈍感なクライシス管理体制とコミュニケーションの欠如
すでに日本においても、国際的にも批判にさらされているように、今回の事故で日本が示したクライシスマネジメント(危機管理)は、スローで、かつ場当たり的だった。海水による冷却手段は直ちには採用されなかったことが、原発の炉の破壊を進めたと思える。炉が過熱する前に冷却するという重要な時間を失った。また使用済み燃料プールの冷却のために消防車などからの放水をしなければならなかったことは、事態への想定が前もってできていなかったことを物語る。
情報の提供も部分的で遅かった。しかも、今もそうである。我々分析者にとって、もっとも役に立つ情報は、しばしば他の国(米国やフランス)の当局から得られた。ワーストシナリオを事前に想定した、もっと明確な危機対応計画が求められるべきだと思う。これは必ずしも高い費用を要する問題ではなく、組織としての対応力の問題である。
④旧式の原発
福島の原発は日本で最も古い形式だった。より新しいタイプの原発は福島でも女川でも地震の震源地に近いところにあっても、同じような問題を起こさなかった。最新の原発はより堅牢になっており、旧式のものより安全であるのは間違いない。原子炉の使用年限もまた安全性のわかりやすい指標である。適切な使用期限をどう設定するかは政治的議論の対象となる。・・・
⑤使用済み燃料の不十分な保護体制
福島原発では、使用済燃料プールの放射性物質の拡散が、原子炉からの拡散と同様に起きた。原子炉内の燃料は何重にも保護策が施されているが、プールに入れられた使用済燃料については単に建屋で覆われているだけだった。その建屋は事故当日に屋根が吹っ飛んでしまった。現在のところ、放射性物質漏れの大半は使用済燃料関連とみられる。
我々は当局に対して使用済燃料の安全管理をしっかりするよう求めたい。その方法としては、使用済燃料を速やかに原発から別の場所に移管するか、あるいは建屋内に置く場合はよりしっかりとした安全体制をとることである。・・・
⑥能動的な冷却設備の導入
新しい原発は、非常時の冷却を確実にするため、汲み上げ方式による冷却の必要性を軽減するデザインをとっている。例えば、ウェスティングハウスのAP1000タイプは、重力方式による自然循環システムで、汲み上げもファンなども一切使わないで、原子炉の完全停電に対応可能である。しかし、現在の原発はアクティブ汲み上げ方式を採用しているところが多い。我々は、原子炉に重要な問題が生じる前に、非常時の電力供給を再設定することに時間を費やす必要があると考える。・・・
⑦地震地帯の国境沿いにある旧式原発がもっともリスクが高い
技術的評価に加えて、原発の政治的評価も必要になるだろう。政治家は、原発の信頼性を再構築するために、福島事故から学んだことを示すために、いくつかの原発を閉鎖する必要があるかもしれない。これまでの議論などを踏まえると、こうした閉鎖対象原発は、4つのクライテリアに基づいて選別されると思われる。理論的には、第一に、閉鎖対象となる原発は、安全性評価で重要な問題が明るみに出たところとなるはずだ。・・・使用年限が、2つ目の主要なクライテリアとなるだろう。原発が古ければ古いほど、閉鎖対象として選ばれるリスクも高い。旧式の原発が新しいものより問題がありそうだというのはわかりやすいし、たぶんそうである。・・・
⑧MOX使用による燃料リスク増
福島第一の第3原子炉は、混合酸化物燃料(MOX)を使用していた。93%のウラニウムと、7%のプルトニウムの混合燃料で、これが放射性物質を大量に漏洩させている。今後の原発の安全性を評価においては、MOXの使用制限も考えられる。
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スイスの金融機関の金融機関がこれだけのことを学んでいるのですから、日本政府も電力会社も、そして私たちも、きちんをこのシビア・アクシデントの教訓を胸に刻み込まなければいけないと思うのです・・・
P.S. それにしても、「放射性物質漏れの大半は使用済燃料関連」というのは、「使用済燃料リスク」というものが如何に大きなものであるかを物語っています。やはり使用済燃料は、他の別の安全な施設に移動させなければ、原発を運転すべきではないと思うのですが・・・
P.S.2 今朝の『朝日新聞』には、「2号機の汚染水の総量は移送前の段階で計2万5千トン、含まれる放射能の総量は単純計算で約40万テラベクレル」とのことです。40万テラベクレルとは、40京ベクレルですから、大気中への放出の試算(保安院)37京ベクレルを、2号機の汚染水だけで超えてしまっているのです。その他にも、1号機の建屋と地下坑道に、低から高レベルの汚染水が2万トン、3号機の建屋と地下坑道に、低から高レベルの汚染水が2万2千トン、4号機の建屋と地下坑道に、中レベルの汚染水が2万トン、さらに作業用ピットから流出してしまった高レベル汚染水が520トン(4700兆ベクレル)、意図的に廃棄した低レベル汚染水が1万トン(1、500億ベクレル)あるのです。(亀裂から流出したものは、港に滞留しているものが約30万トンあるそうです)これらの汚染水をどのように処理していくのか、対処していけばよいのか、これは日本そのものが背負った非常に大きな、途方もないほど大きな課題です・・・