ブログ小説 過去の鳥

淡々と進む時間は、真っ青な心を飲み込む

トマトは丸かじりを待つ

2007-08-07 06:05:32 | 食物の咆哮 野菜編
 赤く熟したトマトには
 そこはかとない色香がある

 太陽の光を浴びて
 赤く熟したその肌は
 瑞々しく晴れやか

 頬を寄せると
 えもいわれぬトマトの匂い

 茄子科の持つアルカロイドのかすかな毒々しさも
 トマトの美しさに深みを与える

 遠く南アメリカから来た夏の味覚
 今やいつの季節でも食すことができるが
 やはり味は夏の路地モノ

 トマトのハウス栽培は邪道
 ましてロックウールの栽培はもってのほか
 トマトは
 太陽の光で育ってこそトマト

 畑で採れたトマトを
 氷水の入ったバケツに放り込み30分
 冷えたトマトを取り出し丸かじり
 これは美味しい
 途方もなく美味しい
 トマトのほのかに甘く
 ほのかに生臭いかおりが
 口の中にいっぱいに広がる

 ほんの少し食塩を振り掛けて食うのも良し
 
 が、最近のトマトをめぐる退廃
 なんという哀しいトマトの増殖

 本来の香りと味を失ったトマトが
 店頭で大きな顔をしている
 この退廃が
 私には許せない
 手にはいらなくなった美味しいトマト
 あのトマト臭いトマトはどこへ消えた
 私は哀しい

 で、仕方なく自ら育てることに
 そして我が菜園のトマトを食すことに
 これは美味しい
 本当に美味しい

 トマトは丸かじりを待っている
  
 


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